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歯列矯正すると知覚過敏になりやすいのは本当?その原因と対策方法について解説

歯列矯正すると知覚過敏になりやすいのは本当?その原因と対策方法について解説

歯列矯正を行うと、知覚過敏になりやすいという話を聞いたことはありますか?
なぜ歯列矯正によって知覚過敏になってしまう可能性があるのか、その原因や対策方法などについて、詳しく解説します。

歯列矯正について

歯列矯正について

歯列矯正はどのような治療ですか?
歯列矯正は、歯に対して一定の力をかけ続ける矯正器具を使用することで、時間をかけてゆっくりと歯を移動させ、整った歯並びを手に入れるための治療です。
歯は歯槽骨という骨から生えていますが、この歯槽骨と歯の間には歯根膜と呼ばれる繊維の層があり、クッションの役割をはたしています。
歯列矯正で歯に対して一定方向の力をかけると、歯を動かしたい方向では歯根膜が圧迫されて歯槽骨の分解が進み、歯の逆側では歯根膜が緩むことで歯槽骨の生成が促進されます。そのため、一定方向に力をかけ続けると歯槽骨の分解と再生が繰り返され、徐々に歯が動いていき、歯の位置を修正することができます。
歯列矯正はこの働きを利用することで、歯を少しずつ理想とする位置へと移動させて整え、適切な噛み合わせへと導いたり、美しさを実現したり、歯磨きなどのケアを行いやすくしたりといった効果をえることができる治療法です。
歯列矯正の具体的な方法を教えてください
歯列矯正の方法として主に行われている方法には2つの種類があります。 1つ目は歯にブラケットという装置を取り付ける方法で、歯の表面や裏側に金属などでできたブラケットという装置を歯科用の接着剤で取りつけ、ブラケットに形状記憶効果のあるワイヤーを通します。
形状記憶効果があるワイヤーが、正しい歯並びの形に戻ろうとする力を利用することで、歯に対して一定の力をかけ続け、歯列矯正効果を得ます。
もう1つはマウスピース型矯正器具を使用する方法で、今の歯並びよりも少しだけ理想に近い歯並びのマウスピースを歯にはめることで、歯に少しずつ力をかけていき、歯列矯正の効果を得ます。
どちらの方法も一定期間ごとに矯正器具の調整や交換をしながら、時間をかけて歯並びを整えていく方法となっていて、大人であれば歯列矯正にかかる期間は1~3年程度となっています。
ブラケットやワイヤーを使用した方法よりも、マウスピース型矯正器具の方が目立たずに治療を行える点や、取り外しが可能であるため歯磨きや食事などがいつもどおり行いやすいといったメリットがある一方で、歯並びによってはワイヤーによる方法でないと治療が難しいケースがあったり、マウスピース型矯正器具は毎日一定時間以上装着する必要があり、治療を受ける本人の自己管理能力が必要になるといった側面があるため、どちらの方法が適しているかは歯科医師による診断のもと、ライフスタイルなども含めて検討する必要があります。

知覚過敏について

知覚過敏について

知覚過敏とはどのような症状ですか?
知覚過敏は、簡単にいえば冷たいものを口に含んだ際などに、歯がしみるような痛みをかんじるといった症状です。
症状の進行度合いなどによっては、甘いものや温かいものを口に含んだ時も痛みを感じる場合があります。
知覚過敏はどのように生じますか?
知覚過敏の原因は、歯の内部にある神経が冷たさや温かさといったシグナルを過敏に受け取る状態になってしまうことです。
歯はエナメル質という硬い層で覆われていますが、何らかの理由によりこのエナメル層が薄くなってしまうと、歯の内部に冷たさなどの刺激が伝わりやすくなり、知覚過敏の症状が発生します。
エナメル層が薄くなる要因は例えば歯ぎしりや食いしばりといったくせがあり、日常的に歯を強くこすり合わせてしまうことで、徐々にエナメル層が削れて薄くなり、知覚過敏へとつながる場合があります。
また、健康的な歯茎が維持されている方の場合は歯の根元部分が歯茎に覆われていますが、歯周病などが進行して歯茎が退縮をおこすと、歯の根元部分が露出していきます。歯の根元部分はエナメル層で覆われていないため、これによって知覚過敏を生じることもあります。
そのほかにも、研磨剤が入った歯磨き粉を使用して日常的に歯を強く磨きすぎるなどによっても、知覚過敏へとつながってしまう可能性が考えられます。
歯列矯正をすると知覚過敏になりやすいですか?
歯列矯正の治療における1つの副作用が、知覚過敏が生じるというものです。
ただし、歯列矯正によって生じる知覚過敏は、歯列矯正を行っている期間の症状であり、治療が終わった後もずっと知覚過敏が続くというものではない場合が多いでしょう。
歯列矯正で知覚過敏になる原因はなんですか?
歯列矯正で知覚過敏が生じる理由は、主に4つあります。
一つ目は、歯列矯正の影響で歯肉退縮をおこし、歯根が露出してしまうためです。
歯列矯正によって歯が骨の無い位置に移動してしまった場合や、治療の過程で咬合力(噛む力)が過度にかかりすぎてしまう場合、そしてプラークの磨き残しがある場合などに歯肉退縮が引き起こされ、エナメル質で覆われていない歯の根元部分が露出することで知覚過敏が生じます。

二つ目は、歯を動かすためのスペースを作るために歯を削るためです。
歯列矯正では、歯を理想的な位置に移動させていくため、歯がおさまるためのスペースを確保する必要があり、場合によっては歯の表面を薄く削ったり、抜歯をしたりしてスペースを作ります。
歯を削る場合であっても、基本的にはしっかりと検査を行ったうえでトラブルが出ないような範囲で治療が進められますが、問題ない範囲とはいってもそれまでと比べれば歯が刺激を感じやすくなるため、特に治療を開始した直後はこの感覚に慣れず、知覚過敏の症状につながることがあります。

三つ目は、歯磨き方法などの変化で、特にブラケットとワイヤーを使用して行う歯列矯正では、歯についた矯正器具の影響で歯磨きがしにくくなり、歯垢が溜まりやすくなってしまうため、健康な状態を維持するためには通常よりも入念な歯磨きが行われるようになります。
正しく歯磨きができていればそこまで問題が出ることはありませんが、どうしても歯列矯正中の歯磨きは難易度が高くなり、余計な力も入りやすくなってしまうことなどから、エナメル質が削られて知覚過敏につながってしまうという可能性があるといえるでしょう。

そして四つ目は、歯を動かすことによって歯の中の血流に障害が発生して、その影響で歯の神経が過敏になってしまうことで、過敏になった神経により痛みや刺激を感じやすくなるため、知覚過敏の状態となる場合があります。

歯列矯正中の知覚過敏について

歯列矯正中の知覚過敏について

歯列矯正の方法によって知覚過敏のなりやすさは変わりますか?
ブラケットとワイヤーを使用した方法と、マウスピース型矯正器具を使用した方法を比べた場合、マウスピース型矯正器具の方が知覚過敏を生じやすい可能性があります。
その理由として、マウスピース型矯正器具はワイヤーによる歯列矯正よりも歯の移動をコントロールしにくく、骨がない位置に歯を移動させてしまうことで歯肉退縮を引き起こす可能性があるため、知覚過敏につながりやすいと考えられるためです。
ただし、現在のところどちらの方法がより知覚過敏になりやすいかというエビデンスはありませんので、知覚過敏への影響ではなく歯並びや目的にあった方法での歯列矯正を選択するとよいでしょう。
歯列矯正で知覚過敏になった場合の対処法はありますか?
歯列矯正で歯を動かすことにより知覚過敏が生じている場合は、歯にかかる力のかかりかたなどを調整することで改善できる場合があります。
ただし、力のかかり方を弱めると歯列矯正にかかる期間が長くなるなどのリスクもありますので、痛みが気になる場合はまず担当の歯科医師と相談して、治療計画の見直しなどを行うとよいでしょう。
また、歯磨きの方法などが適切でない場合は、しっかりとした磨き方ができるまで歯磨き指導を受けて、適切なケア方法を身に着けることも大切です。
知覚過敏をしっかり治す方法を教えてください
歯列矯正期間における知覚過敏の症状は、治療が終われば落ち着く可能性が高いです。
一方で、そもそも歯のエナメル質が薄くなっている場合や、歯の根元が露出してしまっているようなケースでは、まずは歯ぎしりなどのクセや、歯磨きのしすぎといった原因となる行動を見直すことや、しっかりと歯周病を治療して歯茎の退縮を防ぐといった対策が必要になります。
そのうえで、歯の再石灰化を促進してエナメル質を厚くするフッ素塗布などのケアを受けたり、場合によっては歯肉移植などの治療を受けることで、歯がしっかりと保護されて知覚過敏を改善させることができるでしょう。

編集部まとめ

編集部まとめ

歯列矯正の治療では、歯を動かす際の変化などによって知覚過敏が生じる可能性がありますが、ほとんどの場合で歯列矯正が終われば痛みもおさまります。 治療中の知覚過敏症状が気になる場合は、まずは担当の歯科医師とよく相談して、痛みを抑えるための対策を行うようにするとよいでしょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
遠藤 眞次医師(グランメゾンデンタルクリニック)

遠藤 眞次医師(グランメゾンデンタルクリニック)

長崎大学歯学部を卒業後、東京と群馬の歯科医院で分院長を歴任。臨床のかたわら、歯周治療やインプラント治療についての臨床教育を行う「Dentcation」の代表を務める。他にも、歯科治療のデジタル化に力を入れており、デジタルデンチャーを中心に、歯科審美学会やデジタル歯科学会等で精力的に発表を行っている。

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