噛み合わせ

受け口の噛み合わせを改善するには?原因と治療法を併せて解説

受け口の噛み合わせを改善するには?原因と治療法を併せて解説

受け口の噛み合わせを改善するにはどうしたらいいのでしょうか。
本記事では受け口(反対咬合)について以下の点を中心にご紹介します。

  • 受け口(反対咬合)の原因
  • 受け口(反対咬合)の治療法
  • 受け口(反対咬合)治療にかかる費用

受け口(反対咬合)について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

受け口(反対咬合)とは

受け口(反対咬合)とは

受け口、正式には反対咬合とは、不正咬合の一種で、下顎が上顎よりも前に出ている状態を指します。お口を「イー」としたときに上の前歯よりも下の前歯が前に出ている場合、受け口であると判断できます。

反対咬合の原因は歯並びや骨格に起因することがあり、それに応じて治療法も異なります。歯並びが原因の場合、歯列矯正で改善が期待できますが、骨格の問題が関与している場合には外科的矯正治療が必要になることがあります。

日本人は欧米人と比べて下顎の骨格が大きいことが多く、受け口になりやすいと言われています。受け口は乳歯が生え揃う3歳頃に特徴が現れ始め、永久歯が生える8〜9歳頃が治療を開始する理想的な時期とされています。早期治療は再発のリスクを低減しますが、長期的な経過観察が重要です。

受け口(反対咬合)の原因

受け口(反対咬合)の原因

受け口やしゃくれの原因はさまざまで、遺伝、幼少期の癖、下顎の過度な成長などが関与しています。以下では、それぞれの要因について詳しく説明します。

遺伝

受け口、またはしゃくれは、下の歯が上の歯よりも前に出る状態で、噛み合わせが通常と逆になります。その原因として、遺伝的要素が大きく関与しています。
親族に受け口やしゃくれがある場合、その傾向が子どもにも受け継がれることが多いようです。
また、歯並びや骨格は顔や声と同様に遺伝するため、両親のどちらかが反対咬合である場合、子どももその骨格を引き継ぐ可能性があります。

幼少期の癖

受け口やしゃくれの原因として、幼少期の癖が大きく影響することがあります。幼少期の子どもの顎の骨はやわらかく、吸唇癖(唇を吸うくせ)や頬杖、顎を前に突き出す仕草などが長期間続くと、反対咬合を引き起こす可能性があります。特に、前歯が内側に生え、下の前歯が外側に生えることや、舌で下顎の前歯を押し出す癖は、受け口を促進します。
これらの癖が長引くと矯正が難しくなり、反対咬合が進行するリスクが高まります。早期に癖を改善することが、健康な噛み合わせの維持に重要です。

下顎の過度な成長

受け口やしゃくれの原因の一つに、下顎の過度な成長があります。成長過程で下顎が上顎よりも大きく発達することで、反対咬合が引き起こされることがあります。これは、舌の位置が影響することも少なくありません。
本来、舌は上顎に接触して支える位置にあるのが理想ですが、舌が下がってしまうと、下顎前歯が前に傾いてしまいます。舌の正しい位置を保つことが、歯列の形を保つために重要です。このように、下顎の過度な成長が原因で受け口になることがあるため、舌の位置や顎の成長を適切に管理することが大切です。

受け口(反対咬合)を放置するデメリット

受け口(反対咬合)を放置するデメリット

受け口やしゃくれは、見た目に関する悩みだけでなく、健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。まず、上下の歯の噛み合わせが逆転しているため、咀嚼や発音に問題が生じることがあります。正しく咀嚼できないと食事の消化が不十分になり、消化不良を引き起こすことがあります。

また、「サ行」や「タ行」の発音が難しくなり、コミュニケーションに支障をきたすこともあります。さらに、噛み合わせの問題から顎の形が変形し、顔のバランスが崩れることもあります。

咀嚼がうまくできないことは、唾液の分泌を減少させ、満腹感を感じにくくさせるため、食べ過ぎや消化不良を引き起こす原因となります。また、発音の際に舌の位置が正常よりも前に出ることで、特にサ行、タ行、ダ行の発音が難しくなり、舌足らずな話し方になることがあります。これは、日本語だけでなく、英語など他の言語の発音にも影響を与えることがあります。

見た目に関しても、受け口は下顎が前に突き出ているため、顔の印象に大きな影響を与えます。顎が目立つことで、外見にコンプレックスを抱く方も多いです。また、噛み合わせが悪いと顎の関節に負担がかかり、顎関節症になるリスクも高まります。顎関節症は、口を開けるときに音がしたり、痛みを感じたりする症状を引き起こし、さらに悪化すると、日常生活にも支障をきたすことがあります。

加えて、噛み合わせの悪さは口腔内の問題だけに留まらず、全身の健康にも影響を及ぼします。頭や首、背骨、腰などの歪みを引き起こし、頭痛や肩こり、腰痛の原因になることもあります。これらの歪みは、血行不良を招き、自律神経にも悪影響を与える可能性があります。

受け口(反対咬合)の治療法

受け口(反対咬合)の治療法

受け口(反対咬合)の治療には、子どもと大人で異なる方法があります。それぞれの治療法について詳しく説明します。

子どもの場合

子どもの反対咬合治療には、取り外し可能な装置や固定式装置を用います。成長中の骨格のバランスを整えるために、下顎の成長を抑えたり、上顎の成長を促進したりする装置が使用されます。
寝る時に使用するマウスピースタイプの装置は、前歯の伸び具合に応じて変わります。例えば、上の前歯が生え始めた際にはプレオルソⅢを使用し、舌や唇の力を利用して前歯を前に導きます。改善が見られない場合は、可撤式(取り外し可能)床矯正装置を用いて、ワイヤーで前歯を前方に移動させます。

また、上顎歯列の幅が小さい場合は拡大機能を追加し、上顎骨が後方にある場合は上顎前方けん引装置を使用します。これらの装置は、夜間のみの使用でむし歯のリスクを増やさず、痛みも少ないため子どもにとって負担が少ないです。
ただし、使用しないと効果が出ないため、取り外しが難しい子どもには固定式装置も提案されます。

大人の場合

大人の反対咬合治療には、主にワイヤーを使って上顎歯列を前方に、下顎歯列を後方に移動させる方法が採用され、必要に応じて抜歯も行われます。矯正治療だけでは効果が不十分な場合や骨格的な不均衡を改善するためには、外科手的矯正治療が必要です。
この治療では、下顎骨骨切り術(セットバック法)を行い、下顎の骨を切り、後方へ移動させます。

歯の傾きが原因の場合、一般的にはマルチブラケット装置で矯正治療を行います。目立ちにくいセラミックブラケットやホワイトワイヤーを使用する方法や、裏側からの治療であるリンガルブラケット装置、マウスピース型矯正装置を選ぶことも可能とされています。
これらの方法により、見た目を気にせずに治療を受けることができます。

受け口(反対咬合)の矯正治療で期待できる効果

受け口(反対咬合)の矯正治療で期待できる効果

受け口(反対咬合)の矯正治療は、噛み合わせの改善だけでなく、見た目や発音、全身の健康にもさまざまな効果をもたらします。

しっかりと噛める

受け口(反対咬合)の矯正治療により、顎の位置を正しく整えることで、食べ物をしっかりと咀嚼できるようになります。噛み合わせが悪いと、食べ物を十分に細かく噛み砕くことができず、その結果胃腸に負担がかかり、消化不良を引き起こしやすくなります。
しかし、矯正治療を受けることで咬合が改善され、効率的な咀嚼が可能になります。これにより、食べ物の消化がスムーズになり、腹痛や消化不良のリスクが減少し、日常生活がより快適になります。正しい噛み合わせは、消化器官の健康にも寄与し、全身の健康維持に役立ちます。

発音しやすい

受け口(反対咬合)の矯正治療により、下顎が前に突出していたことで制限されていた舌の動きが改善され、正しい発音が可能になります。発音は舌の位置によって大きく影響を受けますが、反対咬合の場合、舌が前方に出るため、サ行やタ行などの発音が難しくなり、「舌足らず」と呼ばれる状態が生じます。
矯正治療によって顎の位置が正常化すると、舌の位置も正しく戻り、発音がスムーズになります。これにより、会話が明瞭になり、コミュニケーションが円滑に進むようになるため、社会生活や学業にもよい影響を与えます。

顔のラインが整う

受け口(反対咬合)の矯正治療は、見た目の改善に大きなメリットがあります。治療により顎が正しい位置に収まることで、噛み合わせが整い、顎の突出が解消されます。その結果、横顔のラインが美しくなり、全体的な顔のバランスが向上します。
反対咬合の場合、下顎や下の歯が前に出ているため、下唇が厚く見えやすく、口角が下がりがちです。また、横顔のEラインが崩れ、顔全体が平面的に見えることもあります。矯正治療によって歯並びと噛み合わせが改善されると、唇が薄く見え、口角も上がりやすくなります。さらに、顎の突出が引っ込むことで、Eラインが整い、顎が短く見えることがあります。
噛み合わせの改善により、顔全体のバランスも整い、より魅力的な印象を与えることができます。ただし、治療後の変化には個人差があるため、具体的な効果については歯科医と相談することをおすすめします。

体の歪みが改善

受け口(反対咬合)の矯正治療により、噛み合わせが改善されると、正しく咀嚼できるようになります。噛み合わせが悪いと、片側の奥歯だけで噛む癖がつきやすく、顎の歪みを引き起こします。この顎の歪みは、次第に体全体の歪みに影響を及ぼします。
矯正治療によって偏った噛み癖が改善されると、顎の歪みが解消され、体のバランスも徐々に整っていきます。これにより、全身の健康状態が向上し、日常生活での快適さも増すでしょう。

受け口(反対咬合)治療にかかる費用

受け口(反対咬合)治療にかかる費用

受け口(反対咬合)の治療費用は、使用する矯正方法や症状の重さ、治療を行う場所、歯科医の専門性によって大きく異なります。一般的に、マウスピース型矯正の場合は50万円〜120万円程度、ブラケット矯正の場合は30万円〜130万円程度が相場です。これに対し、口腔外科手術を伴う場合は、総額で150万円〜300万円程度かかることが多いようです。

保険適用については、基本的には自由診療であり健康保険の適用は受けられません。ただし、顎変形症で顎外科手術が必要と診断された場合や、そのほかの先天性疾患などで歯科矯正治療が必要な場合には保険が適用されることがあります。具体的な適用条件や手続きについては、治療を行う医療機関に確認することが重要です。

軽度の受け口の場合、マウスピース型矯正が適用されることが多く、費用は50万円〜120万円、治療期間は1〜3年程度です。透明なマウスピースを用いるため、見た目が目立ちにくく、食事や歯磨きの際に取り外しが可能とされています。しかし、自己管理が必要であり、適応症例が限られます。

中度の受け口には、より強い矯正力が必要となるため、ワイヤー矯正が適用されます。費用は60万円〜170万円、治療期間は1〜3年程度です。ワイヤー矯正は歯の表側にブラケットを装着し、ワイヤーで引っ張る方法で、適応範囲が広いです。ただし、装置が目立ちやすいことがデメリットです。

重度の受け口は、骨格的な問題が関与しているため、外科的矯正治療が必要です。費用は140万円〜400万円、治療期間は2〜4年程度です。外科的矯正治療では、術前矯正、外科手術、術後矯正の流れで行われ、全身麻酔下で手術を行うため、入院が必要です。また、術後にはしびれや麻痺などのリスクも伴いますが、保険適用される場合には費用が50万円程度に抑えられます。

どの治療法が適しているかは、個々の症状や状況により異なるため、専門医と相談して適切な治療法を選択することが重要です。

まとめ

まとめ

ここまで受け口(反対咬合)についてお伝えしてきました。受け口の噛み合わせを改善する方法についての要点をまとめると以下のとおりです。

  • 受け口(反対咬合)の治療は、子どもと大人で方法が異なる
  • 子どもの反対咬合治療には、取り外し可能な装置や固定式装置を用いる
  • 大人の反対咬合治療にはワイヤー矯正や顎の位置を正し外科的矯正治療があり、見た目や機能を改善する

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
坂本 輝雄医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

坂本 輝雄医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

東京歯科大学卒業 東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科矯正学専攻)修了 東京歯科大学歯科矯正学講座助手 慶応義塾大学医学部形成外科学教室非常勤講師 米国オクラホマ大学歯科矯正学講座 Visiting Assistant Professor 東京歯科大学歯科矯正学講座講師 東京歯科大学退職 東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科 臨床准教授

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坂本 輝雄医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

東京歯科大学卒業 東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科矯正学専攻)修了 東京歯科大学歯科矯正学講座助手 慶応義塾大学医学部形成外科学教室非常勤講師 米国オクラホマ大学歯科矯正学講座 Visiting Assistant Professor 東京歯科大学歯科矯正学講座講師 東京歯科大学退職 東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科 臨床准教授

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