歯並びを整えたいけれど、歯を削ることに抵抗があるという方も多いのではないでしょうか。部分矯正では、歯を削ることでスペースを確保しますが、痛みやデメリットが気になるところですよね。
本記事では、歯を削る必要性やメリット・デメリットについて以下の点を中心にご紹介します。
- 部分矯正で歯を削る必要性とメリット
- 部分矯正で歯を削るデメリット
- 部分矯正で歯を削る方法
歯を削る必要性やメリット・デメリットについて理解するためにもご参考いただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
部分矯正とは
部分矯正は、その名のとおり、歯列全体ではなく特定の部分だけを対象に行う矯正治療です。全顎矯正とは異なり、気になる部分だけの治療を行うため、治療期間が短く、費用も少なく抑えられます。
部分矯正は、ワイヤー矯正やマウスピース型矯正など、さまざまな方法で行われ、主に1本から数本の歯を対象とします。治療期間は6ヵ月から1年程度で、心理的な負担も軽減される点がメリットです。
しかし、部分矯正では対応できないケースや、噛み合わせの調整が難しい場合もあるため、事前に歯科医師との相談が重要です。気になる部分の歯並びを改善するためには、まずは専門の歯科医師に相談し、自身に合った治療方法を見つけることが大切です。
部分矯正で歯を削る必要性とメリット
部分矯正では、歯並びを改善し、審美性と機能性を高めるために歯を削る手法が用いられることがあります。以下では、歯を削る必要性とそのメリットについて詳しく説明します。
歯を動かすためのスペースを確保
デコボコの歯並びを改善するためには、歯が動ける隙間が必要です。IPR(歯冠隣接面切削)は、歯と歯の間をわずかに削ることでスペースを確保する方法です。前歯は逆三角形の形をしているため、端を少し削るだけで効果が期待されています。
奥歯はエナメル質が厚いため、片面0.5mmまで削ることが可能で、より大きなスペースをえることができます。IPRは、少量の削りで大きな効果を生むため、抜歯を伴わない矯正が可能とされています。
例えば、6本の前歯に片面0.2mmのIPRを施すと、合計で約2.5mmの隙間が生じ、スペースを十分に確保できます。軽度の歯並びの乱れには、IPRと後方移動だけで治療できることが多く、抜歯矯正に比べて治療期間も短縮されます。
必要な分だけスペースを作ることで、非抜歯での矯正が可能となり、IPRの利点が際立ちます。
歯のサイズ調整
正常な噛み合わせには、上下の前歯6本の大きさのバランスが重要です。このバランスが崩れていると、理想的な噛み合わせを実現することが難しくなります。
例えば、上顎の前歯が大きく、下顎の前歯が小さい場合、そのままでは適切に噛み合いません。この問題を解決するために、ストリッピングという方法で上の歯のエナメル質を少し削り、サイズを調整します。
安全に削れる量は1本あたり0.5mm以内であり、歯の大きさのバランスを取るために重要です。歯のサイズは個人差が大きいため、特に上下の歯のバランスを整えるために部分矯正でストリッピングを行うことがあります。
これにより、審美性の向上だけでなく、噛み合わせの改善も期待でき、全体的な口腔機能の向上にもつながります。
ブラックトライアングルの改善
ブラックトライアングルとは、歯肉が痩せて歯と歯茎の間にできる三角形の黒い隙間のことです。特に前歯では、笑ったときに目立つため、審美的な問題となります。この問題を解決するために、ストリッピングが有効です。
ストリッピングでは、歯と隣の歯の隣接面を少し削ることで接触面積を増やし、ブラックトライアングルを小さくすることができます。 これにより、隙間が目立たなくなり、笑顔の見栄えが向上します。特に前歯は逆三角形の形をしているため、隣接面を削ることで効率的にブラックトライアングルを改善できます。
ストリッピングは、審美性を高めるだけでなく、歯列全体のバランスを整えるためにも有効です。
このように、ストリッピングを活用することで、ブラックトライアングルを目立たなくし、笑顔に自信を持つことができます。
歯列の安定性を図る
ストリッピングによって、歯と隣の歯の接触面を増やすことで、歯列の安定性を向上させることができます。
通常、歯と歯は点接触で支え合っていますが、ストリッピングを行うことでこの接触が面接触に変わり、支え合う面積が広がります。
これにより、整えた歯列が崩れにくくなり、長期的な安定性が確保されます。特に部分矯正では、個々の歯の位置を正確に調整することが重要であり、この手法はその実現に役立ちます。
面接触が増えることで、噛み合わせの力が均等に分散され、歯列全体が安定します。歯列の安定性を図るためには、ストリッピングはとても効果的な方法です。
この方法を用いることで、矯正後の歯列が持続しやすくなり、美しい歯並びを長く維持することができます。
部分矯正で歯を削るデメリット
部分矯正は歯並びを整える効果が期待されていますが、いくつかのデメリットも存在します。特に歯を削ることに伴うリスクについて理解しておくことが重要です。以下に、具体的なデメリットを紹介します。
歯のエナメル質が薄くなる
部分矯正では、歯並びを整えるためにディスキングやIPR治療を行うことがあります。これらの手法では、歯の最も外側にある保護層であるエナメル質を削ります。
エナメル質は再生しないため、この処理をするとエナメル質が薄くなるデメリットがあります。エナメル質が薄くなると、歯の保護機能が弱まり、知覚過敏やむし歯のリスクが増す可能性があります。 IPR治療では、コンタクトメジャーを使って正確に計測しながら歯と歯の間の隣接面を削るため、削る量はごくわずかです。
しかし、エナメル質の削減は慎重に行う必要があります。治療計画を綿密に立て、歯科医師と十分に相談しながら進めることが重要です。エナメル質が薄くなるデメリットを理解し、適切なケアを続けることで、部分矯正の効果を引き出すことができます。
知覚過敏のリスク
部分矯正では、歯を動かすためのスペースを確保するために、IPR(歯冠隣接面切削)という処置が行われることがあります。これは、硬いエナメル質を少量削ることでスペースを作る方法ですが、この削りによって知覚過敏が生じることがあります。
エナメル質が薄くなると、冷たいものや熱いものに対して歯の神経が敏感になり、痛みを感じることがあります。大抵の場合、これは一時的なものであり、時間が経つにつれて徐々に治まります。
しかし、長期間にわたって痛みを感じる場合もあります。
IPRは基本的にエナメル質をわずかに削るだけであり、大部分の患者さんには痛みやしみることは少ないと言われています。
しかし、摩擦や熱、水や振動が刺激となり、一時的に歯がしみることがあります。この場合、知覚過敏用の歯磨き粉や薬剤を使用することで緩和されることがあります。
しみる症状が続く場合は、歯科医師に相談することが重要です。適切なケアを行いながら、知覚過敏のリスクをなるべく抑えることが大切です。
処置後に歯茎から出血することがある
部分矯正において、歯を削る際には歯茎の近くまで器具を入れることがあり、処置後に歯茎に炎症や出血が生じることがあります。
これは特に歯肉炎などで歯茎が腫れている場合に起こりやすいです。出血は通常、数時間から2日程度で治まりますが、その間は歯茎のケアを念入りに行うことが重要です。
IPR(歯冠隣接面切削)では、歯と歯の間を削るため、歯茎に近い部分にも影響を与える可能性があります。出血自体はほとんどの場合すぐに治まりますが、歯茎の状態はその後の矯正治療や口腔内の健康に影響するため、適切なケアが求められます。
歯茎が健康であれば、処置後の出血や炎症もなるべく抑えられます。したがって、日頃からの歯茎のケアを徹底し、歯科医師の指導にしたがって適切な口腔ケアを行うことが大切です。
部分矯正で歯を削る方法
部分矯正では、歯並びを整えるためにエナメル質を削ることが必要になる場合があります。
以下では、歯を削る時期、量、使用する道具、および痛みや麻酔の有無について詳しく説明します。
歯を削る時期
部分矯正で歯を削る時期は、症状の重さによって異なります。重度の歯の重なりや不正咬合がある場合、治療の初期段階で削ることが多いようです。
一方、軽度の場合は、治療が進んだ後半に削ることが多いです。初期に削ることでワイヤー治療の期間が短くなる利点がありますが、その分、削る量が少し多くなるデメリットもあります。
適切なタイミングは、歯科医の豊富な治療経験に基づいて決定されます。
削る歯の量
部分矯正では、歯を動かすためにエナメル質を削り、必要なスペースを作ります。個人差はありますが、エナメル質の厚みは通常1ミリ〜1.5ミリで、ディスキングではそのうち0.25〜0.5ミリ程度を削ります。
削る量が少ないため、痛みや知覚過敏のリスクは低いです。日本人のエナメル質は薄く、特に下顎前歯では0.6ミリ程度です。
そのため、片側0.25ミリ、一本あたり0.5ミリまで削ることが推奨されています。
歯を削る道具の種類
部分矯正では、歯を動かすためにエナメル質の表層を削る必要がありますが、使用する道具にはいくつかの種類があります。
まず、「やすり」は、歯と歯の間を手動またはエンジンを使って削ります。
やすりの厚みを調整して正確に削ることが可能とされています。次に、「バー」は、虫歯治療で使用するタービンに装着し、とても細いバーで削ります。バーの太さによって削る量を調整でき、早く削ることができます。
最後に、「ディスク」は、タービンに取り付けた丸い円盤状のディスクで歯の間を削ります。ディスクの厚みも調整可能で、安全カバーを使用してほかの歯を保護しながら削ります。これらの方法はいずれもエナメル質のみを削るため、痛みを感じることはほとんどなく、麻酔も不要です。
ただし、タービンの音が苦手な患者さんには、手動のやすりが推奨されることが多いようです。
歯を削るときの痛みや麻酔の有無
部分矯正で歯を削る際の痛みや麻酔について心配される方も多いようですが、削るのはエナメル質の表層部分だけで、痛みは少ないと言われています。
差し歯やかぶせ物の際には象牙質まで削るため麻酔が必要ですが、部分矯正ではそこまで削らないため、麻酔は不要です。
また、削る量も僅かであり、処置時間も短く、1本あたり約30秒で完了します。
歯を削った後のデンタルケア
歯を削った後のデンタルケアはとても重要です。通常の歯磨き方法とフロスの使用を続けることが基本ですが、特にフッ素入りの歯磨き剤を使うことで石灰化を助け、エナメル質を強化することが推奨されます。 知覚過敏がある方は、知覚過敏用の歯磨き粉を使用するとよいでしょう。クリニックで塗布できる知覚過敏用の薬も利用可能とされています。
また、食べ物が隙間に挟まったり、プラークが残ると知覚過敏が悪化することがあるため、デンタルフロスや歯間ブラシを使ってしっかりとお手入れをすることが大切です。 削った後の隙間は治療後にしっかり埋まると言われています。
エナメル質はとても硬い組織で、削ることでその防御力が一部失われる可能性がありますが、適切なデンタルケアを行うことでそのリスクをなるべく抑えることができます。
部分矯正で歯を削る必要がない人
部分矯正において、歯を削る必要がない場合もあります。例えば、すきっ歯の方や軽度の歯列不正がある方は、すでにスペースが十分に確保されているため、IPR(歯の削減)が不要なことが多いです。
IPRは、歯を並べるためのスペースを作る目的で行われますが、スペースが足りている場合にはこの処置は必要ありません。ただし、歯並びの乱れがスペース不足によるものであれば、IPRが必要になることがあります。
歯を削ることに抵抗がある方もいらっしゃると思いますが、その場合は医師に相談してみてください。実際にIPRが必要かどうかの判断は自己判断が難しいため、専門医の診断を受けることが大切です。
まとめ
ここまで歯を削る必要性やメリット・デメリットについてお伝えしてきました。
歯を削る必要性やメリット・デメリットの要点をまとめると以下のとおりです。
- 歯を削るには、歯を動かすためのスペースを確保する、歯列の安定性を測るなどのメリットがある
- 歯を削るデメリットには、歯のエナメル質が薄くなる、知覚過敏のリスクがある、処置後に歯茎から出血することがあるというものがある
- 歯を削った後は、フッ素入りの歯磨き剤を使うことで石灰化を助け、エナメル質を強化することが推奨される
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。