噛み合わせ

前歯の正しい噛み合わせとは?チェック方法や歯列矯正した方がよい噛み合わせも解説

前歯の正しい噛み合わせとは?チェック方法や歯列矯正した方がよい噛み合わせも解説

食べるのに不都合を感じていないけど噛み合わせが悪いことを気にしている、または噛み合わせをよくするために歯列矯正を受けようか迷っている方に、正しい噛み合わせについて説明します。

正しい噛み合わせはどういうものか、自分でチェックするには何を基準にすればいいのか、どのような歯並び・噛み合わせが歯列矯正で治療できるのかを説明した記事です。

噛み合わせで歯列矯正を受けようか迷っている方は、歯列矯正の種類も説明しているので、ぜひ最後までお読みいただき参考にしてください。

前歯の正しい噛み合わせとは?

歯を確認する

奥歯を噛みしめたとき、前歯の横の歯もしっかり噛めているでしょうか。歯並びは、見た目の美しさだけではなく、すべての歯がきちんと噛み合い食べ物を噛めなければなりません。

食べ物をしっかり噛むことができる歯並びと噛み合わせ、4つの基準を説明します。

上下の歯の中心が一致している

上下それぞれの前歯の中心線を正中線といいます。この正中線が上下でほぼ一直線になり、顔の中心線上にきていることが大切です。

歯列がきれいなU字になっている

日本人はアジア人のなかでも歯が大きいといわれています。大きめの歯に適した歯列がU字型です。よい歯列は、前歯の飛び出しや奥歯の倒れこみがなく、きれいなU字を描いています。

上の歯1本に対して下の歯2本が噛み合う

左右両側の犬歯から奥の歯が、上の歯1本に対して下の歯2本の割合でバランスよく噛み合っている状態が正しい噛み合わせです。一歯対二歯(いっしたいにし)といいます。上下左右の奥歯が隙間なくしっかり咬み合っていることが大切です。

左右どちらか片側だけで食べ物を噛んでいると、噛まない側の自浄作用が失われ、むし歯や歯周病のリスクが高くなります。

上の前歯が下の前歯に2mm程度かぶさっている

前歯で食べ物を噛み切るには、歯を自然に噛み合わせたとき、上の前歯が下の前歯に約2mmかぶさっているのが理想です。

噛み合わせのセルフチェック方法

指立てる女性

鏡を見ながら、簡単な歯並びや噛み合わせのチェックをしてみましょう。気になる項目があれば矯正歯科の医師に相談してください。

  • 噛んだとき上の前歯が下の前歯より5mm以上前に出ている
    →出っ歯(上顎前突)
  • 噛んだとき上の前歯が下の前歯の内側に入っている
    →受け口(下顎前突)
  • 奥歯で噛んだとき上と下の前歯の間に隙間が空いて舌が見える
    →開咬
  • 顎の先がどちらかに偏っている。顔や歯並びの左右が非対称
    →交叉咬合
  • 歯並びがデコボコしている(八重歯や内側に倒れこんだ歯などがある)
    →デコボコ(叢生)
  • 左右で、あるいは上下で永久歯の数に違いがある
    →永久歯の先天性欠如
  • 前歯で食べ物を噛み切れない
    →開咬、受け口(下顎前突)、出っ歯(上顎前突)、デコボコ(叢生)
  • 奥歯で食べ物を左右同じように噛めない
    →デコボコ(叢生)、開咬、出っ歯(上顎前突)
  • 上手に発音できない音がある(特にサ行、タ行)
    →開咬、受け口(下顎前突)、出っ歯(上顎前突)、デコボコ(叢生)
  • 歯が抜けたままになっている
  • 部分的に食べ物が歯の間にはさまる
  • ひどくすり減っている歯がある
  • 口呼吸をしている

歯列矯正をした方がよい噛み合わせは?

ワイヤー矯正

正しく噛み合わせることができない歯並びを不正咬合(ふせいこうごう)といいます。不正咬合の原因は主に2つに分けられます。

  • 遺伝的要素(顎や歯の大きさ)
  • 後天的要素(舌の位置や口呼吸などの悪習慣)

不正咬合は噛み合わせの機能面の問題だけでなく、笑うことを控えるようになったりコンプレックスから消極的になったり、精神面にも影響を及ぼします。

サ行やタ行など発音しにくい、歯をしっかり食いしばれないなどの影響が出ることも少なくありません。

叢生

歯並び

歯並びがデコボコになっている状態を乱ぐい歯または叢生(そうせい)といいます。顎の大きさに対して歯が大きすぎたり、歯に対して顎が小さすぎたり、歯と顎の大きさのバランスが悪いことが原因です。上の犬歯が飛び出ている状態の八重歯も叢生の一種です。

歯磨きのときに歯ブラシが行き届かずに汚れが残りやすく、むし歯や歯槽膿漏(歯周病)の原因となります。

下顎前突

受け口の状態を下顎前突(かがくぜんとつ)または反対咬合(はんたいこうごう)といいます。噛み合わせたとき下の前歯が上の前歯より前に出ている噛み合わせです。上の歯のかぶさりがないため、下の歯全体が見えてしまいます。

下顎前突の原因は2つあり、上下の前歯の傾きに問題がある場合と、顎の大きさに問題がある場合です。

噛み合わせが悪いだけでなく、サ行やタ行など発音がしにくい場合があります。また舌の位置の癖も発音に影響を及ぼすため、舌の位置を正すトレーニングをすることもあります。

上顎前突

上の前歯が前に傾いている、または上顎が前に出ている状態が上顎前突(じょうがくぜんとつ)です。一般的には出っ歯といわれます。下顎が小さい場合や後退している場合も、見かけ上出っ歯に見えることもあります。

お口を閉じるのがむずかしく、けがで前歯を折ることや唇を切ることも少なくありません。

交叉咬合

通常、上の歯が下の歯にかぶさっていますが、それが歯並びの途中で逆になっている噛み合わせを交叉咬合(こうさこうごう)またはクロスバイトといいます。上の奥歯が下の奥歯の内側にはいる状態です。

空隙歯列

空隙歯列(くうげきしれつ)は、歯と歯のあいだに隙間が空いている状態で、すきっ歯といわれる歯並びです。歯が小さいことや、歯に対して顎が大きいことが原因で起こります。正中離開(せいちゅうりかい)といわれる場合もありますが、これは上の前歯の真ん中に隙間が空いている状態です。

歯が顎の骨の中に埋まって出てこない埋伏歯(まいふくし)や、もともと歯の本数が足りない先天性欠如歯が原因となることもあります。

過蓋咬合

歯並び

噛み合わせが深く、上の歯で下の歯が隠れてほとんど見えない状態を過蓋咬合(かがいこうごう)またはディープバイトといいます。

噛みこみが深いため奥歯へ負担がかかりすぎ、奥歯のすり減りがあるケースも少なくありません。

開咬

奥歯をしっかり噛み合わせたとき、上下の前歯が噛み合わず隙間ができてしまう状態を開咬(かいこう)またはオープンバイトといいます。前歯の上下で隙間が空いているため、食べ物を前歯で噛み切ることがむずかしかったり、正しい発音ができなかったりすることも珍しくありません。

お口が開いていることが多くなるため、お口の中が乾き、唾液の持つ自浄作用や殺菌作用がうまく働かずむし歯や歯周病へのリスクがあります。また、顎関節に負担がかかり顎関節症のリスクも高くなります。

小さいお子さんの場合、指しゃぶりが原因となることもよくあることです。

悪い噛み合わせを放置するとどうなる?

説明する歯科医

悪い歯並びや噛み合わせを放置することによるリスクは、以下のとおりです。

  • 顎の正常な成長や発育が阻害される
  • 歯並びや噛み合わせがさらに悪化する
  • 硬い食べ物を食べることがむずかしくなる
  • むし歯や歯周病になりやすい
  • 口元の見た目のため、精神的な影響が出る

歯並びや噛み合わせが悪化し、上下の顎がずれることによって起こる不正咬合は、まず顎の大きさを改善する治療を行うことがあります。顎のずれを治療せずに歯を動かす歯列矯正のみで改善しようとしても、なかなか成果が出ず、元の悪い状態に戻ることや歯の寿命を早める危険性もあります。

このような顎の問題による不正咬合の方は、顎がずれているなどお顔の見た目の問題を気にされる方も少なくありません。この場合、手術によって改善される可能性があります。手術を行う場合も歯列矯正を併用し、噛み合わせの微調節のために歯の移動を行うことが多いです。

8020運動という言葉をご存じでしょうか。8020運動は80歳になっても20本以上自分の歯を保とうという運動です。20本以上の歯があれば、食生活において、ほぼ満足できるといわれています。

歯列矯正は8020運動を実現していくうえで、重要な役割を果たします。歯列矯正により上下の歯が正常に噛み合うと、しっかり噛み、正しく食事を摂取できるようになるからです。

将来、自分の歯をできるだけ多く残すために、定期的な歯科検診を受けることはとても重要です。

歯列矯正の種類

歯の模型

悪い歯並びや噛み合わせがあると、さまざまな問題が起こる可能性があります。気になるようであれば矯正歯科の医師へ相談してください。

歯列矯正は歯並びや噛み合わせをよくしますが、次のようなデメリットもあります。医師とよく相談し理解してから、治療を受けるようにしてください。

  • 少しずつ歯や顎を動かすため治療期間が長くなる
  • 一般的には保険適用されず、自費負担となるため高額になる
  • 装置を装着するため痛みや圧迫感がありストレスとなる
  • 歯並びや噛み合わせを改善するために、健康な歯を抜くことがある

治療期間は、通常の不正咬合の場合は約2〜3年です。簡単な治療で改善する場合は約半年で済むこともあります。受け口など顎に問題がある場合は、さらに長い期間に及ぶこともあります。

次に紹介するのは、代表的な歯列矯正の種類です。

ワイヤー矯正

目立ちにくい矯正

一般的な矯正装置で知られているのがワイヤー矯正です。歯の表側にマルチブラケット装置と呼ばれる小さな装置とワイヤーを使って、一定期間圧力をかける方法です。この装置には金属製のものと、見た目が気にならない透明や白の硬質プラスティックやセラミック製のものなどがあります。

歯並びや噛み合わせが悪く歯を大きく動かさなければならない場合、マルチブラケット装置の使用で正確かつ迅速に歯を移動できるのが特徴です。

マルチブラケット装置で歯列矯正が始まると、歯が周囲の歯肉や骨を圧迫することや、装置が唇や頬の裏側に当たるなどで痛みがでます。個人差がありますが、成人では1週間程度痛みが持続します。徐々に痛みも軽減し食事も取れるようになってきますが、我慢できない程の痛みの場合は医師に相談してください。

ある国立大学病院では、成人の患者さんがマルチブラケット装置を使用して2年間治療を行った場合の治療費総額は約750,000円(税込)です。ただし治療内容により金額は異なります。

この大学病院で、上下顎マルチブラケット装置での治療で、ブラケットの種類による金額の差は以下のとおりです。

  • 金属ブラケット……90,718円(税込)×2(上下)
  • プラスチックブラケット……91,850円(税込)×2
  • セラミックブラケット……102,975円 (税込)×2

この費用のほかに、検査料・診断料・施術料・来院毎の調整料などが費用としてかかります。

裏側矯正(舌側矯正)

マルチリンガルブラケットは歯の裏側に矯正装置を付ける方法です。お口をあけても歯列矯正していることがわかりにくい点で選ばれます。

歯の裏側に装置が取り付けられるため、舌が接触して痛みを感じることや、しゃべりづらい、歯磨きがしにくいなどの点を理解して治療を始めなければなりません。

表側の装置と比べると、裏側の装置の調整は大変むずかしく治療時間、治療期間ともに長くなる傾向があります。

このため治療費も高くなります。先程のワイヤー矯正で紹介した大学病院での費用(税込)は、リンガルブラケット……255,090円×2(上下)と、表側のマルチブラケット装置の約2.5倍です。

マウスピース型矯正

マウスピース型矯正

取り外しが可能な透明なマウスピース型の矯正装置を使う方法です。治療の段階にあわせて矯正装置を1〜2週間ごとに交換することで、徐々に歯並びを整えていきます。

透明なマウスピースは歯列矯正していることを周囲に気付かれにくく、食事の際には取り外せるため歯列矯正中でも食事を楽しむことが可能です。

歯並びの状態によっては、大きく歯を動かす必要があり、マウスピース型矯正装置による治療が適さない場合があります。以下の場合は治療が長引くこともあります。

  • 抜歯が必要な症例
  • 重度の叢生(そうせい、歯が部分的に重なっている症例)
  • ワイヤー矯正や外科手術を併用する症例
  • 治療計画の修正・追加(リファインメント)

1日20時間以上装着する必要があるため、ご自身で装着時間の管理が必要です。

ある私立大学病院の治療費は約880,000円(税込)です。ただし治療内容により金額は異なります。

まとめ

相談にのるスタッフ

奥歯を噛みしめたとき、すべての歯がきちんと噛み合うことが大切です。正しい噛み合わせは、きちんと噛み合い食べ物を噛めることで機能を果たします。

口元の美しさを求めて歯列矯正をされる方が一般的ですが、噛み合わせを治すためにも歯列矯正による治療は有効です。

噛み合わせを治療することにより、食べ物がよく噛めない・むし歯や歯周病・口臭・顎関節症などの症状も改善できることがあります。

将来、自分の歯をできるだけ多く残すためにも、噛み合わせの治療が有効です。

この記事では、噛み合わせの種類、自分の噛み合わせをチェックするためのリストや歯列矯正の種類などを紹介しました。

ご自身に当てはまる項目があれば、矯正歯科の医師に相談してみてください。このとき治療方法や抜歯の有無、治療期間やトータルの費用など、相談する項目は多くあるため、しっかり準備して相談しましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
坂本 輝雄医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

坂本 輝雄医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

東京歯科大学卒業 東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科矯正学専攻)修了 東京歯科大学歯科矯正学講座助手 慶応義塾大学医学部形成外科学教室非常勤講師 米国オクラホマ大学歯科矯正学講座 Visiting Assistant Professor 東京歯科大学歯科矯正学講座講師 東京歯科大学退職 東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科 臨床准教授

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坂本 輝雄医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

東京歯科大学卒業 東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科矯正学専攻)修了 東京歯科大学歯科矯正学講座助手 慶応義塾大学医学部形成外科学教室非常勤講師 米国オクラホマ大学歯科矯正学講座 Visiting Assistant Professor 東京歯科大学歯科矯正学講座講師 東京歯科大学退職 東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科 臨床准教授

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