ワイヤー矯正

裏側矯正(舌側矯正)ができない例とは?適応外のケースやできない場合の選択肢

裏側矯正(舌側矯正)ができない例とは?適応外のケースやできない場合の選択肢

矯正装置が目立ちにくいことで有名な裏側矯正(舌側矯正)ですが、見られることが仕事である芸能人やタレント、役者といった職業の人だけでなく、一般の人の需要も高まっている矯正法です。しかし、すべてのケースに使えるわけではないため、その点は注意が必要です。ここではそんな裏側矯正(舌側矯正)が適応できないケースやそれ以外の治療の選択肢について詳しく解説します。裏側矯正(舌側矯正)に関心のある人は参考にしてみてください。

裏側矯正(舌側矯正)とは

裏側矯正(舌側矯正)とは はじめに、裏側矯正(舌側矯正)の概要や種類、メリット・デメリットなどを確認しておきましょう。

裏側矯正(舌側矯正)とはどのような治療方法ですか?
裏側矯正(舌側矯正)とは、その名のとおり歯列の裏側にブラケットとワイヤーを固定する治療法です。舌が存在している側に装置を設置することから、舌側矯正(ぜっそくきょうせい)と呼ばれることもあります。ブラケットやワイヤーを歯列の表側に固定する表側矯正とは見た目が大きく異なります。使用する装置も少し異なり、歯科医師に求められる治療の技術や知識も表側矯正より高くなっている点に注意が必要です。
裏側矯正(舌側矯正)にはどのような種類がありますか?
裏側矯正(舌側矯正)は、フルリンガルとハーフリンガルの2つに大きく分けられます。フルリンガルとは、上下とも裏側にブラケットとワイヤーを固定する方法です。裏側矯正(舌側矯正)というと、フルリンガルを指すのが一般的です。一方、ハーフリンガルは、上顎を裏側矯正(舌側矯正)、下顎を表側矯正で治療する方法です。半分(ハーフ)だけ裏側なので、このような名前が付けられています。基本的にフルリンガルよりもハーフリンガルの方が費用を安く抑えられます。
裏側矯正(舌側矯正)のメリットについて教えてください。
裏側矯正(舌側矯正)には、次に挙げるメリットが得られます。

【メリット1】矯正装置が見えにくい

透明な樹脂製のアライナーを使うマウスピース型矯正は、装置が目立ちにくいものの、至近距離で見るとその存在に気付きます。その点、裏側矯正(舌側矯正)は装置が歯列の裏側に固定されるため、目立ちにくいというよりは見えにくいといった方が正確です。これは口元の審美性を重視する人にとって極めて大きなメリットといえます。

【メリット2】むし歯や歯周病のリスクが低い

ブラケットを使った矯正法は、装置の周りに汚れがたまりやすく、歯磨きもしにくいことから、むし歯・歯周病になりやすいのですが、裏側矯正(舌側矯正)の場合は唾液による自浄作用が期待できるため、そのリスクをできる限り抑えられます。歯列の表側は、近くに唾液腺の開口部がないので、唾液による自浄作用が働きにくいです。

【メリット3】出っ歯の治療がしやすい

歯列矯正は、装置がある方に歯を引き込みやすいという特徴があります。ですから、歯列の裏側に装置を設置する裏側矯正(舌側矯正)の場合は、前に出ている歯を後ろに下げやすいため、出っ歯の治療がしやすいというメリットを伴います。

【メリット4】舌癖による悪影響を防止できる

舌を前に突き出したり、前歯を押したりする習癖は、歯並びを悪くする原因にもなります。歯列の裏側にブラケット装置とワイヤーが固定されていれば、こうした舌癖も自然と解消されます。その結果、歯列矯正もスムーズに進んで行きます。

裏側矯正(舌側矯正)のデメリットについて教えてください。
裏側矯正(舌側矯正)には、次に挙げるデメリットを伴います。

【デメリット1】矯正にかかる費用が高くなる

裏側矯正(舌側矯正)は、標準的な表側矯正よりも費用が1.5倍程度、高くなります。これは裏側矯正(舌側矯正)専用の装置を使ったり、歯科医師に高い技術や知識が求められたりするからです。表側矯正なら1,000,000円程度の費用で治療できたケースでも、裏側矯正(舌側矯正)の場合は1,500,000円程度かかる点は、経済面において大きなデメリットといえます。

【デメリット2】発音がしにくい

歯列に裏側に設置した装置は、舌の動きを制限することがあるため、発音・滑舌が悪くなりやすいです。

【デメリット3】装置による違和感・異物感が大きい

裏側矯正(舌側矯正)の装置によって口腔が狭くなると、違和感や異物感が生じやすくなります。

【デメリット4】歯磨きが難しい

裏側矯正(舌側矯正)では、鏡で見ながら歯磨きできないため、はじめのうちは磨き残しが多くなります。慣れてきたら上手に磨けるようになるでしょう。

裏側矯正(舌側矯正)ができない例・できる例

ここからは、裏側矯正(舌側矯正)ができる症例とできない症例について解説します。

裏側矯正(舌側矯正)ができない例について教えてください。
次に挙げるケースでは、裏側矯正(舌側矯正)できないことが少なくないです。

【ケース1】噛み合わせが深い(過蓋咬合)

噛み合わせが深い過蓋咬合(かがいこうごう)では、噛んだときに前歯の装置がぶつかってしまうことから、裏側矯正(舌側矯正)できないことがあります。

【ケース2】舌のサイズが大きい

裏側矯正(舌側矯正)のブラケットとワイヤーは、舌が収まっている部分に設置するため、舌が標準よりも大きいと物理的に装着することが困難となります。無理に装着しても、舌の運動を妨げたり、舌を傷つけたりするので、慎重に判断する必要があります。

【ケース3】重症度の高い歯列不正・不正咬合

歯並び・噛み合わせが極端に悪い症例は、裏側矯正(舌側矯正)はもちろん、表側矯正も適応できないことが少なくないです。そうしたケースには、外科矯正を併用します。

裏側矯正(舌側矯正)ができるのはどのような歯並びですか?
裏側矯正(舌側矯正)は、基本的にほとんどの歯並びへの適応が可能です。具体的には、上顎前突、下顎前突、上下顎前突、空隙歯列、開咬、交叉咬合などの歯並びが挙げられ、過蓋咬合も軽度から中等度であれば裏側矯正(舌側矯正)で問題なく改善できることが少なくないです。
裏側矯正(舌側矯正)を受ける歯科医院を選ぶポイントについて教えてください。
もっとも重要なポイントは、裏側矯正(舌側矯正)の経験が豊富であるかどうかです。裏側矯正(舌側矯正)は、矯正治療のなかでも極めて専門性が高く、対応できる歯科医院は全国的にも一部に限られます。仮に裏側矯正(舌側矯正)に対応していたとしても、経験が浅い場合は、きれいに治せないこともあるため十分な注意が必要です。また、歯列矯正の選択肢として、裏側矯正(舌側矯正)以外に表側矯正やマウスピース型矯正にも対応していると、患者さんそれぞれの歯並びに合った治療法を提案してもらえます。

裏側矯正(舌側矯正)ができない場合の選択肢

裏側矯正(舌側矯正)ができない場合の選択肢 ここでは、裏側矯正(舌側矯正)を適応できない場合の対処法について解説します。

裏側矯正(舌側矯正)はできないと診断されました。あきらめるしかないですか?
まずは、セカンドオピニオンを求めましょう。裏側矯正(舌側矯正)が得意な歯科医院でも適応が難しいと診断された場合は、あきらめた方がよいです。
裏側矯正(舌側矯正)ができない場合のほかの選択肢について教えてください。
裏側矯正(舌側矯正)の適応が難しい場合は、表側矯正かマウスピース型矯正で歯並びを治すことになります。ケースによっては、外科矯正で骨格的な異常を改善することで、裏側矯正(舌側矯正)ができるようになる場合もあります。その点はカウンセリングの際に確認しておくことが大切です。

編集部まとめ

今回は、裏側矯正(舌側矯正)が適応できないケースやその他の治療の選択肢について解説しました。裏側矯正(舌側矯正)は、歯列の裏側にブラケットやワイヤーを固定する治療法なので、噛み合わせが極端に深い過蓋咬合や舌が標準よりも大きいケースには、物理的に適応が難しくなります。また、その他の歯列不正・不正咬合でも重症度が高いと、裏側矯正(舌側矯正)だけで治すのは難しく、外科矯正の併用が必要になる場合もあります。

いずれにしても裏側矯正(舌側矯正)でよりよい治療結果を得たい、もしくは裏側矯正(舌側矯正)の適応の可能性を模索したい場合は、この矯正法について豊富な診療経験をお持ちの歯科医院を探しましょう。それでもなお裏側矯正(舌側矯正)の適応が難しい場合は、表側矯正やマウスピース型矯正を選択せざるを得なくなります。

参考文献

この記事の監修歯科医師
福田 尚美医師(フリーランス)

福田 尚美医師(フリーランス)

歯科医師臨床研修終了後、審美歯科・ホワイトニング専門医院勤務。 / 一般歯科・小児歯科非常勤勤務。美容健康記事年間500記事作成したライター経験を生かして、歯科コンテンツ作成や歯科企業サポートやセミナーサポート等も行っている。

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