歯列矯正の方法はさまざまですが、そのなかでもインビザライン(※1)という歯列矯正方法をご存じでしょうか。
インビザラインはマウスピースを使った歯列矯正方法で、世界中で多くの方が使用しています。
しかし、インビザライン矯正をしているときは、食事や飲みものを飲むときなどいくつか注意が必要です。
そこで本記事では、インビザライン装着中に飲んでもよい飲み物や、メリット・デメリットと併せて費用なども紹介します。
(※1)未承認医薬品等であるため医薬品副作用被害救済制度の対象とはならない可能性があります。
インビザライン矯正中の飲み物
- インビザライン矯正とはどのような治療法ですか?
- インビザラインとはマウスピースを使用した歯列矯正治療の一種です。マウスピースを装着することで徐々に歯列矯正をします。
マウスピースは透明なのでワイヤーを使用した歯列矯正治療よりも目立ちにくく、審美性に優れた治療方法です。マウスピースは1〜2週間で交換し、クリニックへの通院は1ヵ月に一度程度になります。
また、インビザラインは通常のマウスピース治療と異なり、海外でマウスピースを作製しています。海外でマウスピースを作製する理由は、インビザラインがアメリカのアライン・テクノロジー社で開発されたもので、マウスピースを作製するための工場が海外にあるからです。インビザラインのマウスピースは、通常のプラスチックとは異なるSmartTrackという特殊な素材で作られているため、海外の工場で生産する必要があります。そのため通常のマウスピースよりも作製に時間がかかります。
一方で、インビザラインによる歯列矯正治療は世界中で取り入れられており、経験豊富な治療法です。
- インビザライン矯正装置を付けたまま食事はできますか?
- 食事をするときはインビザラインの矯正装置を外す必要があります。矯正装置をつけたまま食事をすると破損する恐れがあり、矯正治療の進行に悪い影響を及ぼす可能性があります。
また、カレーなどの食事は矯正装置に色がついてしまう場合があり、見た目も損ねてしまうかもしれません。食事後、すぐに矯正装置をつけるのではなく、歯磨きをしてから装着すると清潔に使用できます。
インビザライン矯正中の飲み物の注意点
- インビザラインを装着中に飲んでもよい飲み物を教えてください。
- インビザラインを装着したまま飲んでよい飲み物は水です。水であればインビザラインを装着していても影響がなく水分補給ができます。
また、水のほかに飲んでよい飲み物としては炭酸水が挙げられます。ただし、炭酸水は無糖でフレーバーが付いていないことが条件です。
- インビザラインを装着したまま飲んではいけない飲み物はありますか?
- インビザラインを装着したまま飲んではいけない飲み物は、上記に挙げた水・炭酸水・白湯以外の飲みものです。例えば、砂糖が入った甘い飲み物はむし歯の原因となるので飲んではいけません。通常であればむし歯の原因となる糖などは唾液による自浄作用である程度中和されます。
しかし、インビザライン装着中は歯と唾液が触れ合う時間が減少することで、自浄作用が低下しやすくなります。そのため、口腔内はむし歯になりやすい環境といえるでしょう。
また、お茶や無糖のコーヒーなどは砂糖は入っていませんが、色が濃くインビザラインに色が移る可能性があります。
- 温かい飲み物のときは装置を外した方がいいですか?
- 温かい飲み物を飲むときはインビザラインの装置を必ず外しましょう。インビザラインの装置である素材のポリウレタンは熱に弱い特徴があり、温かい飲み物が装置に触れると変形してしまう恐れがあります。そのため、温かい飲み物を飲む前に装置は外すようにしましょう。
変形してしまうと歯に合わなくなるので、歯列矯正治療の効果がなくなり装置の作り直しになってしまいます。また、飲み物を飲むときだけでなく、洗浄の際も熱湯を使用しないように注意しましょう。
- 装置を付けたまま飲み物を飲んだときはどうしたらいいですか?
- インビザラインの装置をつけたまま飲み物を飲んだときは、一度装置を外してお口の中を水で洗いましょう。糖分を含んだ飲み物は特にむし歯になりやすいため、できれば歯磨きを行い清潔にすることが望ましいです。装置の方も水で流しながら指ややわらかい歯ブラシを使用してきれいにしておきましょう。
また、インビザラインの装置は一日に20時間以上つけていなければ効果が下がってしまうので、洗浄後は装着を忘れないように気をつけてください。
インビザライン矯正のメリット・デメリット
- インビザライン矯正のメリットを教えてください
- インビザラインのメリットは2つあります。
1つ目は通常のマウスピース型矯正よりも治療範囲が広いことです。例えば、前歯が噛み合わない開咬や、下の歯が上の歯より前に出る受け口など複雑な症例にも対応しています。通常のマウスピース型矯正よりも治療範囲が広い理由は、インビザラインが世界中で行われており豊富な治療データをもとに発展しているからです。ただし、成人の受け口は骨格性の問題を抱えていることが多く、インビザラインでは治療が難しいケースが多いため注意が必要です。
2つ目は治療前にスキャナーを使用して歯形が取れることです。通常のマウスピース矯正の場合は、粘度のような印象材を使って型取りをしますが、印象材は誤嚥の危険や歯に押し当てた際の吐き気など患者さんに負担がかかってしまいます。また、マウスピースを交換するごとに型取りが必要で、2週間〜1ヵ月に一度はクリニックに通う必要があります。
一方で、インビザラインの歯列矯正では印象材ではなくスキャナーで型取りをするので患者さんに負担がかかりにくいです。さらにマウスピースの形が歯列に合ってる限り、型取りは最初の一度だけなので、通院回数も2ヵ月に一度程度で済ませられます。また、スキャンした口腔内のデータはアメリカに送られ、そこで治療開始から終わりまでの治療計画が作成されます。そのため、おおよその治療期間を事前に知ることが可能です。
ただし、すべてのクリニックでスキャナーで歯の型取りを行なっているわけではなく、印象材で型取りを行なっている場合もあります。また、スキャナーはほかのマウスピース矯正でも使用されるケースもあるため、マウスピースによる歯列矯正をする場合は事前にクリニックを調べたり、相談するとよいでしょう。
- インビザライン矯正のデメリットを教えてください
- インビザライン矯正のデメリットは、すべての症例に対応しているわけではないことです。通常のマウスピース型矯正よりは治療範囲が広いのですが、抜歯が必要な重度の症状や骨格性の症状までは適用できません。
ただし、インビザラインのみでは矯正が難しい場合でも、抜歯を行なうことでその後にインビザラインが適用できるケースもあります。そのため、インビザライン歯列矯正ができるかどうかは歯科医師に相談する必要があります。
- インビザライン矯正の費用はどのくらいですか?
- インビザライン矯正は、部分矯正か全体矯正で費用が変わります。部分矯正は軽度の歯並びを治すインビザライン・ライトのコースがあり、費用は200,000〜600,000円(税込)程度です。部分矯正なので治療期間は長くとも1年半程度で終了します。
全体矯正はインビザライン・フルと呼ばれるコースで重度の歯並びの歯列矯正を行います。費用は800,000〜1,000,000円(税込)程度で、治療期間は1〜2年半程度です。
また、その他に6〜10歳のためのインビザライン・ファースト(※2)や中高生を対象としたインビザライン・ティーン(※3)のコースもあります。インビザライン・ファーストの費用は400,000〜800,000円(税込)程度で治療期間は1年〜2年半程度です。インビザライン・ティーンインは800,000〜1,000,000円(税込)程度の費用がかかり、治療期間は8ヵ月〜1年半になります。また、インビザラインは自由診療のため全額自費での治療となります。
自由診療の場合は、クリニックによって同じ治療でも数万円程度の差額があるので注意しましょう。
(※2,3)未承認医薬品等であるため医薬品副作用被害救済制度の対象とはならない可能性があります。
- 自分でできる矯正装置の洗浄方法はありますか?
- インビザラインの装置を自分で洗浄するときは、水で流しながら指ややわらかい歯ブラシを使って汚れを落としましょう。強く擦ってしまうと破損する恐れがあるので、優しく丁寧に洗います。ただし、歯磨き粉を使用して洗ってはいけません。歯磨き粉には研磨剤が入っているものがあり、矯正装置が傷ついてしまいます。
また、基本的には毎日洗浄液に浸すことが必要です。インビザラインの洗浄液はクリニックで購入することが望ましいですが、マウスピース用と表示されている洗浄液であれば、市販のものを使用しても問題ありません。使い方は容器に40度以下のぬるま湯100mlに洗浄剤を混ぜて、溶け切ったら15分マウスピースを浸けておきます。15分経ったらマウスピースを取り出しぬるま湯で流しましょう。
編集部まとめ
インビザラインはマウスピースを使用した歯列矯正方法です。世界中で治療が行われているため経験豊富で信頼性の高い治療方法といえるでしょう。
インビザラインを装着しているときに飲んでもよい飲み物は水・炭酸水・40度程度の白湯のみです。
甘いものではむし歯になりやすく、コーヒーなどの色の濃い飲み物ではマウスピースを変色させてしまう恐れがあります。
そのため、インビザライン装着中は水・炭酸水・40度以下の白湯のみを飲むようにしましょう。
インビザラインのメリットは、通常のマウスピース型矯正より治療範囲が広い・正確な治療計画の2つです。
デメリットは、マウスピースの作製が遅い・すべての症例に対応していないことが挙げられます。
インビザライン矯正が気になる方は、クリニックで相談してみてはいかがでしょうか。
参考文献