歯の噛み合わせが悪くなり、食べ物を噛みにくくなって悩んでいらっしゃる方もいるのではないでしょうか。
歯の噛み合わせが悪いと、食べ物が噛みにくいだけではなく、むし歯や歯周病のリスクが高くなります。
噛み合わせを治すための歯列矯正による治療法と併せて、噛み合わせが悪くなる原因と歯や顎に及ぼす影響も解説しますので、参考にしていただければ幸いです。
噛み合わせの治し方
- 歯列矯正による噛み合わせの治し方を教えてください。
- 歯列矯正のための治療は、ワイヤーを使用したマルチブラケット矯正装置やマウスピース型矯正装置を使用した方法があります。
ワイヤーを使用した矯正は、ブラケットと呼ばれる装置を歯に取り付け、ワイヤーを通して歯列矯正を行う治療法です。ブラケットは金属製のものが一般的に使われていますが、透明なプラスチックで作られたものやセラミック製など、目立ちにくい素材のブラケットもあります。
なかでも、ジルコニア製ブラケットは歯の色に近く、審美性も優れたブラケットです。マウスピースによる治療は、歯列矯正中でも取り外しができるため、詰まりなどを気にせずに食事ができます。一方で、マウスピース型矯正装置による歯列矯正は1日20時間以上の装着と、歯の変化に合わせたマウスピースの交換が必要です。
- 歯列矯正以外で噛み合わせを治療する方法はありますか?
- むし歯や歯周病の放置などで歯がぐらつくと、噛みやすい歯を使いすぎて摩耗することがあります。むし歯や歯周病が原因の場合は歯列矯正による治療ではなく、原因となっているむし歯や歯周病の治療を行うことで噛み合わせを改善することが可能です。
歯や詰め物などの摩耗が原因で噛み合わせが悪くなることもあり、この場合は新たに詰め物や被せ物を作製して高さの調整を行うことで、改善する場合もあります。患者さんのお口の健康状態によって治療法は異なるので、受診の際に治療方針を相談しましょう。
- 噛み合わせの改善にはどれくらいの時間がかかりますか?
- むし歯治療や被せ物で改善できる状態であれば、治療が終わるまで通院が必要です。歯列矯正を行う場合は、治療を開始する歯の状態によって変わります。
乳歯の状態から始めた場合は、永久歯が完全に生え揃うまで歯列矯正治療を行うことが必要です。永久歯の状態から治療を始めた場合の治療期間は、2年〜3年程度必要です。歯列矯正を行っている期間中は、月に1回程度は通院して状態の確認をし、ワイヤーやマウスピースの調整が必要と知っておきましょう。
- 自力でできる噛み合わせの治し方はありますか?
- 歯が乳歯の場合、指しゃぶりや爪の噛み癖などの悪習を治すことで、予防や改善ができる場合があります。予防をしていても、永久歯が生えるスペースが少なく、重なって生えたり斜めに生えてしまう可能性があります。予防で防ぎきれない場合は患者さんご自身で治すことはできません。早めに歯科医院を受診をしましょう。
成長途中の早い段階で治療をすることで、歯列矯正による治療期間を短くすることができます。永久歯が生え揃った後に治したい場合も、患者さんご自身で治すことはできません。歯科医院を受診し、正しい治療を受けましょう。
すべての歯が永久歯の場合、成人矯正と呼ばれる本格的な歯列矯正を行います。不正咬合を自力で治そうとする行為は、歯が折れる可能性があり、骨にも悪影響を及ぼす恐れがあります。噛み合わせの状態は患者さんによって異なるため、自己判断で治そうとしないで、歯科医院を受診するようにしましょう。
噛み合わせが与える影響
- 噛み合わせの治療が必要なケースを教えてください。
- 以下のような不正咬合(ふせいこうごう)と呼ばれる症状がある方は、治療が必要な場合があるので受診をしましょう。
- 叢生(そうせい):八重歯など歯が顎に入りきらずガチャガチャに生えている
- 反対咬合(はんたいこうごう):上の前歯が内側に入ってしまい受け口の状態になっている
- 過蓋咬合(かがいこうごう):歯の噛み合わせが深く上の前歯が下の前歯に対して過剰に覆かぶさっている
- 切端咬合(せったんこうごう):上下の前歯の間にあるべきスペースがなく前歯同士がぶつかる
- 開咬(かいこう):奥歯を噛み締めても上下の前歯が当たらない
- 上顎前突(じょうがくぜんとつ):上の前歯が出てしまい下の前歯とうまく噛み合わせることができない
歯の状態がこのような症状に該当する場合は、放置すると噛み合わせの悪化や、むし歯や歯周病などの原因になります。異常がないか、日頃から観察をしましょう。
- 悪い噛み合わせを放置すると歯にどのような影響がありますか?
- 歯の噛み合わせが悪いまま放置すると、以下のような影響があるので早め受診しましょう。
- 硬い食べ物を噛みづらくなる
- むし歯や歯周病になりやすい
- 噛み合わせの悪さがさらに悪化する
- 全身疾患を発症するリスクがある
歯の噛み合わせが悪いと上下の歯がうまく噛みあわず、噛む力が弱まって硬い食べ物が噛みづらくなります。また、歯が前後に重なった状態だと歯ブラシが隙間に入りにくく、歯垢が落としづらくなりむし歯や歯周病の原因にもなります。むし歯や歯周病は、咀嚼や嚥下などの機能が低下する原因となり、しっかり栄養を吸収することができません。
その結果、低栄養のリスクが高くなり、内臓疾患を発症する可能性があります。噛み合わせが悪化することで噛みやすい歯を使う癖がつくと、歯にかかる力の負担が偏るため、さらに噛み合わせを悪化させる原因にもなります。
- 噛み合わせの悪さが顎に与える影響を教えてください。
- 噛み合わせの悪さによる顎の症状として、代表的なのは顎関節症です。顎には三叉神経と呼ばれる太い神経があり、大きな筋肉によって支えられています。噛み合わせが悪さが、咀嚼のために使われる筋肉のバランスが崩れ、顎関節症の原因となります。
主な症状は、お口を開けるときに顎の関節に痛みが走り、お口を開くことが困難になることです。症状が悪化すると、急にお口を開けなくなってしまうこともあります。食事をするときは、できるだけ顎にかかる負荷が均等になるように心がけましょう。
噛み合わせが悪くなる原因
- 噛み合わせが悪くなる原因を教えてください。
- 乳歯や永久歯などの歯の状態や、年齢によって原因は様々です。乳歯列期と呼ばれる時期は、乳歯の生え始めから永久歯が生え始める間を指します。乳歯列期で噛み合わせが悪くなる原因は大きく分けて二つあり、顎の発育状態によるものと、外的要因によって噛み合わせが悪くなる場合があります。
顎の発育状態が原因の場合、顎と歯の大きさが調和しないことによる乱れや受け口になりやすいです。外的要因による不正咬合は、指しゃぶりなどによって歯が移動したり、外傷によって歯を失ったりすることにより生じるケースがあります。
乳歯と永久歯が混ざっている時期を混合歯列期と呼びます。乳歯の前後に永久歯が生えることで、歯の並びが重なる状態になることが主な原因です。また、乳歯と永久歯の大きさが異なるため、歯と歯の間に隙間が見えることがあります。この場合は永久歯が揃うまで判断はできません。
永久歯が生え揃うまでは経過を観察し、状態が変わらなければ受診するようにしましょう。すべての歯が永久歯になっても身体が成長途中の場合は、身体の成長とともに下顎の骨も成長するため噛み合わせに影響が出ることがあります。下顎に影響が出ることから、受け口の状態になりやすいです。
成人の不正咬合の場合は、噛み合わせの悪い状態を放置していたこと以外に、親知らずとも呼ばれている智歯が萌出してくることで生じることがあります。智歯の萌生によって周囲の歯が圧迫され、歯の生え方にズレが生じるためです。また、歯周病やむし歯によっても生じることがあります。
- 噛み合わせが悪くならないための予防策があれば教えてください。
- 患者さんができる予防策として、早い段階で指しゃぶりを卒業させてあげることや、歯や顎にかかる負荷が偏らないように促してあげることが大切です。また、よい噛み合わせにするために、乳幼児期から成長が盛んな中学生頃までの間に予防治療を行うことも予防策の一つです。
顎の骨が成長段階にあるお子さんのうちから歯の成長をコントロールすることで、顎のバランスや歯の生える向きを改善できる可能性が高くなります。乳歯が生え揃った時期から永久歯に生え変わるまでの間に予防治療を行うことで、将来歯列矯正を行うことになっても短い期間で治療を終わらせられる可能性があります。
また、歯の生え方や隙間の状態をしっかりと観察し、異変に気付いたら早めに受診をしましょう。
編集部まとめ
審美的な観点からも、歯の噛み合わせはきれいな方が周囲によい印象を与えてくれます。
できるだけ早いうちに噛み合わせの治療を行うことで、むし歯や歯周病のリスクを減らすことが可能です。
お口の健康状態を維持することは、身体全体の健康維持にもつながります。
健康な歯を長く保つためにも、噛み合わせに異常を感じたら早めの治療をおすすめします。
参考文献