子どもの「口ゴボ」は、小児矯正によって改善できる可能性があります。口ゴボは見た目の問題だけでなく、噛み合わせや発音、口呼吸などにも影響を与えるため、早い段階での対策が重要です。
本記事では口ゴボは小児矯正で改善できるのかについて以下の点を中心にご紹介します。
- ロコボとは
- 子どもがロコボになる原因
- 口ゴボが子どもに与える影響
小児矯正で口ゴボは改善できるのか理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。 ぜひ最後までお読みください。
口ゴボとは
口ゴボとは、上唇と下唇の両方が前に突き出している状態を指す言葉です。横から見ると、唇が前に張り出し、口元が膨らんだように見えるのが特徴です。
ただし「口ゴボ」という言葉は歯科や医学の専門用語ではなく、インターネットなどを通じて広まった俗称です。そのため、明確な定義が存在するわけではありません。
以下のような歯並び・噛み合わせの状態を指して「口ゴボ」と呼ばれることが多いようです。
- 上顎の前歯が前方に出ている「上顎前突」
- 上顎・下顎の両方が前に突き出している「上下顎前突」
また、一部の情報では上下顎前突のみを口ゴボとする説明もありますが、実際に歯科医院を訪れ、「口ゴボが気になる」と相談される患者さんの多くは上顎前突の状態であることが多いようです。
口ゴボの状態になると、顎の筋肉のバランスが崩れたり、顎関節に負担がかかったりすることがあります。さらに、発音が不明瞭になるなどの影響が出るケースも少なくないようです。
口元が突き出ているか自身で確認するには、横顔の写真を利用しましょう。
まず、鼻先から顎先まで直線を引き、その線に対して唇がどの位置にあるか確認します。
口ゴボの場合は、唇が線よりも前に出ている状態です。
また、下顎が後方に引っ込んでいると、より口元が突き出して見える場合があります。
子どもが口ゴボになる原因
ここでは、子どもが口ゴボになる原因について詳しく解説します。
遺伝的要因
口ゴボの発生には遺伝的要素が大きく関わっているとされています。 子どもの歯並びや顎の発達は、両親の遺伝的特徴を引き継ぐことがあり、歯のサイズや顎の骨格、上顎の形状などが遺伝することで、口ゴボのリスクが高まる可能性があるようです。
例えば、父親または母親のどちらかが口ゴボの特徴を持っている場合、子どもにも同じような骨格の特徴が受け継がれることがあり、結果として上下の顎が過度に成長し、口元が突出した状態になることがあります。
また、祖父母を含めた家族のなかに上下顎前突の方がいる場合も、遺伝的な影響を受けやすいと考えられます。そのため、家族のなかで口ゴボの傾向が見られる場合は、子どもの成長に伴う顎の発達を注意深く観察することが重要です。
環境的要因
口ゴボは遺伝だけでなく、生活習慣や周囲の環境によっても引き起こされることがあります。具体的な例は以下のとおりです。
口呼吸の習慣
子どもの頃から口呼吸が習慣化している場合、成長期にお口が開いた状態が続くことで、顎の骨格が前方に突出しやすくなる傾向にあります。
近年、口呼吸をする子どもが増えていると言われており、その背景にはアレルギー性鼻炎やアデノイド肥大といった医学的な要因が関係していると考えられています。 また、特に病気がなくても、単なる習慣や癖として口呼吸を続けてしまうケースも少なくないようです。
指しゃぶりやおしゃぶりの長期使用
3~4歳頃を過ぎてもおしゃぶりを使い続けたり、年齢が大きくなっても指しゃぶりを続けたりする場合、顎の発達に影響を与え、上下の顎が前に突き出してしまう可能性があります。
また、舌で前歯を押す癖があると、歯並びや顎の位置に影響を及ぼし、歯や顎が前方へ押し出されてしまうことがあります。
舌癖
口ゴボの原因には、日常の生活習慣が影響する環境的な要因も考えられます。 具体的には以下のようなものが挙げられます。
- 歯の喪失:永久歯が抜けたまま放置されることによる影響
- 歯の萌出時期:歯の生え変わりのタイミングによる影響
- 口呼吸:お口を開けたままの状態が続くことで骨格に影響を与える
- 舌癖(ぜつへき):舌で歯を押したり触れたりする癖
舌癖は、舌が上下の前歯を継続的に押すことで歯並びを乱し、前歯が前方へ押し出される原因になります。長期間続けると、口ゴボのリスクが高まるため、早めの対策が重要です。
唇の筋力低下
唇の筋肉(口輪筋)が弱くなると、舌の圧力に対抗できず、歯や顎が前に押し出される原因となることがあります。近年、食生活の変化やアレルギーの影響によって口呼吸が増えていることが指摘されており、これが口元の突出にも影響を与えていると考えられます。
例えば、やわらかい食べ物を中心とした食生活が習慣化すると、口周りの筋力が衰え、お口を閉じる力が弱くなることで、口呼吸が増えやすくなります。 また、アレルギー症状により鼻呼吸がしにくくなると、無意識のうちに口で呼吸する習慣がついてしまうこともあります。
口呼吸が続くと、細菌やウイルスが直接体内に入りやすくなり、風邪をひきやすくなるほか、歯並びや横顔の輪郭にも影響を与える可能性があるようです。 お口が常に開いている状態が続くと、上顎前突(出っ歯)や口元が突出した形になりやすいため、見た目の変化にもつながるのです。
口ゴボが子どもに与える影響
口ゴボが子どもに与える影響は以下のとおりです。
食事のしづらさ
子どもの口ゴボをそのままにしておくと、食事がしづらくなる原因になります。 口ゴボは歯並びの乱れによって引き起こされることがあり、噛む力が弱まるため、食べ物をしっかり噛み砕くことが難しくなります。
結果、前歯でうまく食べ物を噛み切れず、奥歯でも細かくすり潰すことができないまま飲み込んでしまうことがあります。
十分に噛み砕かれていない状態で食べ物を消化すると、胃や腸に負担がかかりやすく、消化不良を引き起こすリスクが高まります。
発音や会話の困難
子どもの口ゴボを放置すると、スムーズな会話がしづらくなる可能性があります。
口ゴボが口呼吸や舌の位置のズレが原因の場合、お口周りの筋力が低下している可能性があります。お口周りの筋肉が十分に発達していないと、意識してもうまくお口を動かせず、発音が不明瞭になったり、言葉をはっきりと発することが難しくなったりすることがあります。
本来、舌の正しい位置は上顎の裏側にあるべきですが、口ゴボの場合は舌が下顎の前歯に触れた状態で安定してしまい、下に垂れ下がる形になりがちです。この状態が続くと、舌や口周りの筋肉を適切に使えなくなり、会話に支障をきたす原因になります。
口ゴボを放置すると、舌やお口の動きが制限され、発音が不明瞭になったり、会話の際に違和感を覚えたりする可能性があるため、早めの対策が重要です。
むし歯や歯周病のリスク増加
口ゴボの状態が続くと、むし歯や歯周病のリスクが高まる可能性があります。
その理由の一つは、噛み合わせが悪いために食べ物をしっかり噛み砕くことができず、口内に食べかすが残りやすくなることです。食べかすが歯に付着しやすいと、歯垢(プラーク)の蓄積につながり、むし歯の原因となります。
また、口ゴボの影響で噛む動作が十分に行われないと、唾液の分泌が減少しがちになります。唾液には口内の自浄作用や細菌の増殖を抑える働きがありますが、分泌が少ないとこれらの機能が低下し、むし歯や歯周病を引き起こしやすくなります。
さらに、唇が閉じにくいためお口のなかが乾燥しやすくなることもリスク要因のひとつです。口内が乾燥すると、唾液の殺菌作用が十分に働かなくなり、細菌が繁殖しやすい環境になってしまいます。
こうした理由から、口ゴボの状態を放置すると、むし歯や歯周病のリスクが高まるため、早めの対策が重要です。
口臭の発生
口ゴボの影響で唇がしっかり閉じられない状態が続くと、口内が乾燥しやすくなり、口臭が強くなる原因となります。
お口のなかが乾燥すると、唾液の分泌が減少し、口腔内を清潔に保つ自浄作用が低下します。結果、細菌が繁殖しやすくなり、口臭の原因菌が活発に働くことで、口臭が悪化しやすくなります。
また、口ゴボが原因で歯並びが乱れたり、歯周病になりやすくなったりすることも、口臭を引き起こす一因です。歯周病が進行すると、歯と歯茎の間に細菌が溜まり、より強い口臭を引き起こす場合があります。
このように、口ゴボが続くと唾液の働きが弱まり、口臭のリスクが高まるため、早めの対策が重要です。適切な口腔ケアや矯正治療を検討し、口内環境を整えることが、口臭予防につながります。
いじめや社会的なストレスのリスク
子どもの口ゴボをそのままにしておくと、見た目をからかわれることが原因で、いじめに発展するケースがあるようです。
口ゴボの特徴として、横から見ると口元(上唇・下唇)が前に突き出している状態であり、正面から見ると鼻の下が長く見えたり、口元が目立つ印象を与えることがあります。
そのため、口元の特徴が原因でからかわれたり、いじられることも考えられます。もしもこうした状況が続くと、精神的な負担が大きくなり、学校に行きづらくなるなど、不登校につながるケースもあり得ます。
口ゴボが原因で子どもの自己肯定感が下がることを防ぐためにも、早期の対策や適切なケアを行うことが重要です。
子どもの口ゴボに対する歯列矯正治療
成長期の子どもは、顎の骨がやわらかく、矯正治療によって改善しやすい時期でもあります。
治療時期は第1期治療(混合歯列期)と第2期治療(永久歯列期)があります。以下で詳しく解説します。
第1期治療(混合歯列期)
第1期治療(混合歯列期)とは、乳歯と永久歯が混在する6~12歳頃に行う矯正治療で、顎の成長を利用して歯並びや噛み合わせを整える期間になります。
この時期は、顎の骨がまだやわらかく、成長のコントロールがしやすいため、適切な治療を行うことで上下の顎のバランスを整え、永久歯が正しく並ぶためのスペースを確保することができます。上下顎前突(口ゴボ)や歯のデコボコを防ぐためには、この段階での治療が重要です。
【第1期治療の目的】
- 永久歯が適切な位置に生えるスペースの確保
- 上下の顎のバランスを整える
- 舌やお口の周りの筋肉の機能改善(MFT:口腔筋機能療法)
- 将来的に抜歯を伴う矯正治療を避けるための成長コントロール
【使用する矯正装置】
第1期治療では、子どもの顎の状態に合わせて、以下のような装置を使用することがあります。
- ヘッドギア:上顎の成長を抑えることで、上下の顎のバランスを調整
- 拡大床:顎の骨を広げて歯が正しく並ぶスペースを確保
- クアッドヘリックス・バイヘリックス:奥歯の位置を調整し、噛み合わせを整える
【治療期間と費用について】
第1期治療の期間は1~2年程度で、顎の成長や歯の生え変わりの経過を観察しながら進めていきます。その後も、定期的なチェックを行い、成長の様子を見守ることが大切です。
費用は、検査・診断・調整などを含めて50万円程となります。また、歯の移動を目的とした装置を追加する場合には、3万~7万円程度の追加費用が発生することがあります。
第1期治療を適切に行うことで、第2期治療の負担を軽減し、歯並びの後戻りを防ぐことができます。お子さんの歯並びが気になる場合は早めに歯科医師に相談し、治療を検討することが大切です。
第2期治療(永久歯列期)
第2期治療(永久歯列期)は、乳歯が抜けてすべての歯が永久歯に生え変わる10~13歳頃(小学校高学年~中学生)から開始する矯正治療です。この段階では、第1期治療で改善しきれなかった部分を調整するとともに、噛み合わせや口元のバランスを整えることを目的としています。
第2期治療では、患者さんの希望や口元のバランスに応じて、抜歯を伴う治療(抜歯矯正)と、抜歯をせずに歯列を整える治療(非抜歯矯正)のいずれかを選択します。
また、第2期治療の目的とメリットには以下のことが挙げられます。
- 歯並びと噛み合わせの最終調整
- 口元のバランスを整え、より美しい仕上がりを目指す
- 長期的な安定性を確保し、後戻りを防ぐ
第2期治療は、見た目の改善だけでなく、正しい噛み合わせを獲得し、将来的な歯の健康を守るためにも大切な時期です。 抜歯・非抜歯については、患者さんに合った治療法が選択され、理想的な口元へと導いていきます。
子どもの歯並びを守るための予防策
子どもの歯並びを守るための予防策は以下のとおりです。
定期的な歯科検診
子どもの歯並びを守るためには、定期的に歯科検診を受けることが大切です。
歯並びの歯列矯正は大人になってからでも可能とされていますが、成長後の矯正治療は治療期間が長くなりやすく、費用の負担も大きくなる傾向があります。
しかし、子どものうちから定期的に検診を受けていれば、歯や顎の成長を見守りながら健康な状態を維持することが可能とされています。
さらに、歯並びが乱れそうな兆候が見つかれば、適切なタイミングで必要な矯正治療を開始できるため、後々の負担の軽減が期待できます。
生活習慣の見直し
子どもの歯並びを守るためには、よい生活習慣を早い段階で身につけることが大切です。
歯並びは、約8割が親からの遺伝によるものとされていますが、残りの2割は日常の生活習慣が影響しているといわれています。
そのため、口呼吸や指しゃぶりなど、歯並びに悪影響を与える癖を早めに改善することが重要です。これらの習慣が続くと、顎の発達に偏りが生じ、歯並びが乱れる原因となる可能性があるようです。
小さいうちから「その癖はよくないよ」と繰り返し伝え、悪い習慣を早めに断つことで、歯並びが悪くなるリスクを減らすことにつながります。
子どもの健康な歯並びを守るために、日々の生活習慣を見直してみましょう。
まとめ
ここまで口ゴボは小児矯正で改善できるのかについてお伝えしてきました。
口ゴボは小児矯正で改善できるのか、要点をまとめると以下のとおりです。
- 口ゴボとは、上唇と下唇の両方が前に突き出している状態を指す言葉である
- 子どもがロコボになる原因には、遺伝的要因や口呼吸の習慣があることなどが挙げられる
- 口ゴボが子どもに与える影響には、食事のしづらさを感じたり発音や会話が困難だと感じたりする場合がある
口ゴボは小児矯正によって改善できる可能性があり、早めの対策が将来の歯並びや口元の美しさに大きく影響します。また、普段の生活習慣を見直し、適切な予防を行うことで、口ゴボのリスク軽減につながります。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。