噛み合わせでお悩みの方のなかには、噛み合わせの治し方には自分でできる方法はないだろうかと考えたことがある方もいるのではないでしょうか。噛み合わせが悪いと、歯や顎が痛くなる可能性が生じるほか、頭痛や肩こり、さらには顔の見た目の印象が悪くなる恐れもあります。噛み合わせの悪さは、心身に対して思わぬ悪影響を与える可能性があるため、噛み合わせの大切さやセルフケア、さらには噛み合わせの治し方に関して、しっかり理解しておくことが求められます。この記事では、自分で噛み合わせを治す方法があるのかや、噛み合わせの治し方を初心者にもわかりやすく解説します。
自分で噛み合わせを治せるかどうか
- 噛み合わせは自分で治せますか?
- 噛み合わせは自分では治せないと考えてください。理由は、正しい噛み合わせは、医師による専門的な診断が不可欠であること、そして医師による適切な治療法が必要なためです。噛み合わせの重要な要素となる、歯と顎の位置を自分で判断することは困難であり、自分で噛み合わせを正確かつ安全に治す方法はありません。特に、インターネットのSNSなどで散見されるセルフトレーニングや、噛み合わせの改善をうたった装置などは、手軽さや低料金などが魅力に思えるかもしれませんが、噛み合わせを治す方法とはいえず、危険を伴います。したがって、噛み合わせを自分で治す方法はないと考えてください。
- 指などで歯を押して歯並びを整えることはできますか?
- 指などで歯を押して歯並びを整えることはできないと考えましょう。なぜなら、指などで歯を押すことは適切な力が加わりにくいほか、そもそも歯列にスペースがないと押しても歯は動かないためです。歯並びを整える際は、力を加えることが重要なのではなく、精密に検査した後に正しい方向に適切な力を加えることが求められます。指などで押すことで、歯に一定の力を加えることはできますが、方向や強度などの正確性を伴いません。また、指などで歯を押す行為は、歯や歯ぐきにダメージを与えたり、かえって歯並びを悪化させたりする可能性が高まるため、控えるべきと考えましょう。これは、成人だけが対象の話ではなく、お子さんも例外ではありません。
- 噛み合わせは大人になってから治せますか?
- 噛み合わせは大人になってからでも治せます。噛み合わせは、小さなうちに治した方がよいとする考え方もありますが、大人になってから治しても、特に問題はありません。小さなうちに噛み合わせを治すことと、大人になってから治す際の違いは、治療期間です。小さなうちに治すときは、まだやわらかさがある顎や歯の成長を利用しながら治すため、大人よりも短期間で済むことがほとんどとされています。一方、顎や歯の成長が終了した大人の場合は、小さなうちと比べて時間がかかります。噛み合わせを治すことは、年齢や若さだけを基準にして決めることではないと知っておくとよいかもしれません。
自分でできる噛み合わせの治し方
- 噛み合わせのセルフチェック方法を教えてください
- 噛み合わせのセルフチェック方法はいくつかあります。簡単な方法としては、ご自分の歯を確認できるように鏡の前に立ち、左右の奥歯を噛み合わせた状態で「イー」を発音するお口の状態にします。その際に、上下の前歯の中心が縦に一直線上で揃っているかを確認しましょう。中心がずれている場合は、横ずれの可能性があります。また、上の歯が下の歯よりも外側にあるかどうかで反対咬合を、さらには、下の歯が見えない場合は過蓋咬合かを判断可能です。もし、上下の歯が閉じず、隙間が生じている場合は、開咬が疑われます。水平を評価するには、割り箸を水平に加えた状態で奥歯を噛み合わせ、割り箸の傾き加減をチェックする方法があります。あくまでもセルフチェック方法のため、正確な診断はできませんが、噛み合わせの状態を把握する方法として試してみるとよいでしょう。仮に、何かしらの症状に該当する場合は、歯科医院に相談することをおすすめします。
- 今以上に噛み合わせを悪くしないための注意点を教えてください
- 現状から悪化させないためには、以下に注意するとよいでしょう。
- 背筋を伸ばして正しい姿勢を心がける
- 首や肩の筋肉に負担をかけない
- 食事の際に片方だけで咀嚼しない
- 頬杖をつかない
- うつ伏せ寝を控える
- 歯ぎしりや食いしばりが起きないようにする
- 痛みや不快感がある場合は無理に噛み込まない
- 定期的なセルフチェックまたは歯科医院でチェックする
上記のように、噛み合わせを悪化させないためには、日頃から姿勢や咀嚼の癖に注意するようにしてください。一方、噛み合わせは自然によくなることは考えにくいため、なるべく早く歯科医院に相談するようにしましょう。
- 検査前でもできるセルフケア方法を教えてください
- 検査前にできるセルフケア方法として、以下が挙げられます。
- 適切な歯磨き
- 顎周りの緊張をほぐす
- 顎と舌を動かす
- 定期的な歯科検診と歯科治療
噛み合わせの検査を受ける前に取り組むべきセルフケアのポイントは、むし歯や歯周病を防ぐこと、顎の緊張を和らげる、なるべく顎や舌を動かす、そして歯科医院で日常的な歯科メンテナンスを受けることです。セルフケアの一環として、歯磨きでは歯間ブラシなども活用すること、顎周辺のマッサージやストレッチ、さらには舌トレーニングなどを心がける、半年に1回の歯科検診に取り組むのがよいでしょう。
歯科医院での噛み合わせの治し方
- 噛み合わせの治療方法にはどんなものがありますか?
- 噛み合わせの治療方法には、以下のような方法が用いられます。
- マウスピース型矯正
- ワイヤー矯正
- 咬合調整
- 補綴治療
- 顎関節治療
- 外科的矯正治療
噛み合わせの治療方法では、マウスピースやワイヤーによる歯列矯正が一般的とされています。また、わずかにバランスが崩れている場合には、歯の表面を削って調整する咬合調整で済むこともあります。ほかにも、被せ物やインプラントを用いた補綴治療、マウスガードを使用した顎関節治療なども選択肢になるでしょう。これらの方法では改善が見込めない場合には、顎矯正手術が必要になる可能性もあります。どの治療方法が適切かは、患者さんの症状や意向も考慮したうえで、医師が判断することも忘れないでください。
- 歯列矯正を受ければ噛み合わせは治りますか?
- 噛み合わせは歯列矯正によって治ることがほとんどと考えてよいでしょう。一方、骨格に異常が認められる場合は、歯列矯正で治るとは言い切れません。また、被せ物の高さが合っていない場合や、歯ぎしり、食いしばりなどの症状がある方は、歯列矯正だけでは治らないかもしれません。多くの場合、噛み合わせは歯列矯正によって改善が期待できますが、すべてのケースではないこと、そして医師の診断が不可欠であることを忘れないでください。
- 噛み合わせ治療は保険適応で行えますか?
- 噛み合わせ治療では、一部の治療に対し保険が適用されます。保険が適用されるのは、マウスピースを使ったスプリント治療、顎変形症を伴う不正咬合、唇顎口蓋裂、そしてゴールデンハー症候群などの先天異常(現在66の疾患が保険適用です)に該当する場合です。対照的に、噛み合わせ治療の定番ともいえる歯列矯正は保険適用外となります。したがって、噛み合わせ治療の多くは保険適用外といえるでしょう。なお、噛み合わせ治療として受けた歯列矯正にかかる費用は、医療費控除の対象です。保険は使えないものの、医療費控除によって費用負担を抑える方法があることを知っておくとよいでしょう。
編集部まとめ
噛み合わせを自分で治す方法はないと考えるようにしてください。噛み合わせは歯科医院で検査を受けた後、医師による指示のもとで治療を始める必要があります。 噛み合わせのセルフチェックは可能ですが、噛み合わせを治療する場合は、必ず医師の診断を受けるようにしましょう。
参考文献