透明で目立ちにくい歯列矯正器具のインビザラインは、歯列矯正歯科全般の基礎知識を身につけ、臨床的なトレーニングを受けた歯科医師のもとで行うことが大切です。
また、決められた装着時間を守り正しく装着して理想的な歯並びへ近づけるため、歯科医師の指示のもとできちんと使用しましょう。
本記事では、インビザラインが歯にフィットせずに浮く原因やリスク、対処法を紹介しています。
インビザラインが浮くのが気になる方は本記事を参考にし、対応が難しいと感じた場合には早めに歯科医師に相談しましょう。
インビザラインが浮く現象とは
インビザラインが浮く現象とは、装着した際に歯の一部にフィットせずに隙間ができた状態のことです。
インビザラインはマウスピース型の歯列矯正装置のひとつで、着脱して食事や歯磨きがしやすいことや金属アレルギーのある方でも使用できるメリットがあります。
しかし、正しく装着できないと治療期間が長引いたり歯が予期せぬ動きをしてしまったりするので、正しい装着が求められます。
インビザラインが浮く現象が続くと正しく装着できているとはいえないため、放置せずにしっかりと歯にフィットさせることが大切です。
インビザラインが浮く原因
インビザラインが浮く原因はさまざまですが、主に以下の原因が考えられます。
交換直後のため
インビザラインは通常2週間ごとに、少しずつ歯を理想の位置まで近づけるように新しい形の装置に交換する仕組みです。
新しいインビザラインは0.2mmほど歯が動くように作られているため、交換直後は浮くこともあります。
特に、交換してから3日ほどは浮く印象が強く出る場合もあるので、様子を見ていきましょう。
また稀に、次に交換するはずのインビザラインを間違えて使用している場合もあります。交換の際には、正しい順番のインビザラインかどうかも確認しましょう。
通常は交換してから3日ほどで歯が少しずつ移動しきちんと装着できるようになりますが、もし3日以上経っても浮いた感じが消えない場合は歯科医師に相談することが大切です。
装着時間が短い
インビザラインは自身で着脱が可能な歯列矯正器具です。種類によって異なるものの、1日に装着する時間が決められています。
インビザラインは一般的に1日20〜22時間程度装着する必要のある装置なので、決められた装着時間より短い時間しかつけていないと、当然歯の動きは悪くなるでしょう。
きちんと装着していた場合と比較して歯の動きが遅いため、新しいインビザラインへ変更したときや長期間つけていなかったときなどに、インビザラインが浮く可能性があります。
着脱回数が違う
インビザラインの着脱回数自体に特別な制限があるわけではないものの、装着時間が短くなると、歯が元の位置に戻ろうとしてインビザラインが浮くことがあります。
インビザラインを外すタイミングは次のとおりです。
- 食事のとき
- 歯磨きのとき
食事を1日3回で1回30分、歯磨きを1日3回10分ほどとすれば合計2時間インビザラインを外すことになり、装着時間は1日22時間です。
食事のときと歯磨きのとき以外に着脱する機会が増えると、必然的に装着時間が短くなってしまい、歯の動きが悪くなりかねません。
食事と歯磨き以外では基本的には外さないと考えて治療を進めていくのが一般的です。
歯の大きさが合っていない
歯の大きさや形には個人差がありますが、インビザラインの形と歯の大きさが合っていないと、うまく装着できないため浮く原因となります。
歯の大きさとインビザラインが合っていない場合には、調整や作り直しが必要です。
うまく装着できないからといって無理やり押し込もうとすると、破損の可能性もあるため十分注意しましょう。
歯の大きさと合っておらずきちんと装着できない場合には、歯科医師に相談しましょう。
ゴムがけがうまくいっていない
インビザラインでは、主に上下の噛み合わせやずれの改善のために、ゴムがけが行われることがあります。
インビザラインの表面などに作られた小さな突起にゴムをかけて使用し、ゴムの伸び縮みの力を利用してきれいな歯並びになるのをサポートします。
ただ、歯科医師の指示どおりに適切にゴムがけを行わなければ、歯の動きに支障が出る可能性があります。
ゴムがけがうまくいっていないと、インビザラインや歯並びに負荷がかかってしまい、インビザラインが浮く原因となる場合があります。
インビザラインが浮くと生じるリスク
通常、インビザラインは少しずつ理想の歯並びに近づけられるように、2週間ごとに新しい形のものへと変更して少しずつ歯を動かします。
今より理想に近い歯並びのインビザラインを装着するため、新しいものへ交換した直後は、違和感や浮いた状態が生じるのは仕方ないことです。
しかし、浮いた状態を放置しているとさまざまなリスクが生じる可能性があるので、インビザラインが浮く場合は注意が必要です。
計画どおりに歯が動かない
インビザラインが浮いていると、正しく装着できていないため計画どおりに歯が動かないことが想定されます。
インビザラインは、種類にもよりますが一般的には1日20〜22時間の装着により効果を発揮するため、きちんと装着できなければ歯の動きは悪くなります。
計画どおりに歯が動かないと治療期間が延長したり理想の歯並びにならなかったりするケースがあるため、インビザラインの浮いた状態が続く場合には歯科医師に相談しましょう。
マウスピースの破損や変形につながる
インビザラインが浮いているからといって、無理やり装着しようと押し込むと、破損や変形につながる恐れがあります。
また、取り外すときにも爪で引っかけたり横着して片手で外したりすると、同じように破損や変形の恐れがあるのできちんと両手でゆっくり外すようにしましょう。
装着時間をなるべく長くしたい気持ちから、食事中も外さない方がよいのではないかと感じる方もいるかもしれません。
しかし、インビザラインが高温にさらされて変形したり、力がかかって壊れてしまったりする可能性があるので食事中は外しましょう。
インビザラインが変形してしまうと歯にフィットせずに浮く原因にもなるので、インビザラインの取り扱いには十分注意しましょう。
口腔内に傷ができる
インビザラインが浮く不安定な状態が続けば、口腔内に傷をつくってしまうことが考えられます。
口腔内の皮膚はとても弱く、インビザラインの縁やアタッチメントで簡単に傷ができてしまいます。インビザラインの浮いた状態が解消されて、傷ができなくなれば問題ありません。
きちんと装着していても傷ができる場合には、インビザラインの一部を削ったり研磨したりするなどで対処できるケースもあるため、歯科医師に相談してみましょう。
インビザラインが浮かないようにする対処法
インビザラインが浮いた状態が続くと計画どおりに歯は動かず治療期間が長くなるほか、理想の歯並びにならない可能性もあるため、正しく装着しましょう。
しかし、歯にフィットせずに違和感が続き、対処できずに困っている方もいるかもしれません。
自分でできるインビザラインが浮かないようにする対処法を紹介します。
治療計画を見直す
一般的にはインビザラインを2週間ごとにどんどん理想の歯並びに近づけられるように形の違う新しい型へシフトしますが、歯の動きや歯へのフィット感には個人差があるため、2週間経っても理想的な位置まで移動しない歯も出てきます。
また、マウスピース型の歯列矯正装置は歯の移動の少ない軽度な症例に限られるとされているため、大きく動かそうとすると時間がかかることも想定されます。
早く歯並びをよくしたいからと、無理に新しいインビザラインへと交換するとトラブルになるケースもあるため、歯科医師と相談して1つの器具を通常より長く使用するように治療計画を見直すことも必要です。
装着時間を守る
食事と歯磨きの時間以外は外さずに装着し続けることで効果を発揮するため、決められた装着時間を守ることが重要です。
インビザラインは、種類によって違いがあるものの、一般的には1日20〜22時間の装着が望ましいといわれています。
装着時間が短いと、新しいインビザラインへと交換したときに歯にフィットせずに浮きやすくなることが考えられます。
着脱方法が正しいか確認する
インビザラインを装着するときには、前歯をまず入れて少しずつ奥歯へと順番にインビザラインに収め、しっかりと噛んでフィットさせます。
片手だけで外したり爪でインビザラインの縁を引っかけたりせずに、両手でインビラインを持ちゆっくり行いましょう。
着脱方法が間違っているとうまく歯にフィットしないほか、インビザラインの破損や変形の恐れもあるので、丁寧に取り扱うことが大切です。
1つ前の器具を使う
新しいインビザラインへ交換したときにフィットせずに浮くようなら、ひとつ前の今までつけていた器具に戻すのも有効です。
1つ前の器具を2〜3日続けると、新しいインビザラインへの移行がスムーズに行くこともあります。
治療の遅れが気になってフィットしていないのに新しいインビザラインを使い続けると、口腔内のトラブルを招いたり歯の動きが悪くなったりもあるので十分気をつけましょう。
補助器具を使用する
インビザラインが浮かないようにするためには装着時に補助器具を使用すると、より歯とインビザラインを密着させられるので、必要に応じて用意しましょう。
補助器具はアライナーチューイーと呼ばれる、シリコンでできた弾力性のある棒です。
インビザラインを装着した際にアライナーチューイーを数分程度噛み続けることで、インビザラインが浮かずによりフィットした状態となります。
正しく装着できているか心配なときや新しいインビザラインへ交換直後で浮いた感じが気になるときは、アライナーチューイーのような補助器具をあわせて使用するとよいでしょう。
インビザラインが浮きやすい箇所
インビザラインが浮きやすい箇所は大きく3箇所あります。
- 前歯
- 奥歯
- 動きの悪い歯
前歯は見えやすい部分なので、インビザラインが浮くと自分からも他人からみても大きな違和感が出やすい部分です。
前歯の歯根が長く動きが遅い場合や歯茎に炎症がある場合などに、インビザラインが浮くことが考えられます。特に、前から2番目の歯や八重歯のある方の3番目の歯は、前歯のなかでも浮きやすい歯です。
また、奥歯はインビザラインがしっかり奥まで装着されていないと、噛み合わせのときに浮くような違和感が出ることがあります。
奥歯は噛む力が強くインビザラインにかかる負担も大きくなり、正しく装着できていないと変形して余計に浮く恐れもあるので注意が必要です。
インビザラインは、理想の歯並びへ歯を移動させるシミュレーションに基づいて、治療のはじめに形の異なるインビザラインを複数枚作成します。
したがって、治療の途中で動きの悪い歯が出てくると、動きにくい歯の周辺だけが浮きやすくなることもあります。
インビザラインが浮く場合の許容範囲
通常、インビザラインは1mm程度なら浮いても大丈夫といわれています。
特に、新しいインビザラインへ交換直後は多かれ少なかれ浮きやすい状態なので、浮いていても2〜3日は様子をみながら装着を続けましょう。2〜3日経って浮いた状態が改善されて、歯にフィットすれば問題ありません。
浮きが気になる場合でも、無理やり押し込もうと力を入れてしまうと、口腔内を傷つけたりインビザラインの変形や破損につながったりするので注意が必要です。
正しい装着方法で取り付けられているか、装着時間が守れているかなどを再度確認し、補助器具なども上手に使ってなるべく歯にフィットさせるように心がけましょう。
ただ、3日ほど経っても浮いた状態が改善しない場合は早めに歯科医師に相談して対応してもらうことも大切です。
まとめ
本記事では、インビザラインが浮く原因や浮いた場合のリスクおよび対処法を紹介してきました。
インビザラインでは透明なマウスピース型の歯列矯正器具を用いるため、他人から歯列矯正していることがわかりにくく、食事や歯磨きの際には着脱できる歯列矯正方法です。
しかし、決められた装着時間を守り正しく装着できないと、満足のいく結果が得られなかったり治療期間が長引いたりすることも考えられます。
インビザラインが浮いた状態が続けば正しく装着できているとはいえないため、治療期間や治療計画の見直しが必要になるケースもあります。
インビザラインが浮く場合には原因や対処法を確認して、不具合が気になる際には、早めに歯科医師に相談するようにしましょう。
参考文献