「むし歯があるけれど、歯列矯正って始められるの?」「矯正中にむし歯ができたらどうすればいいの?」このような不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
歯列矯正は、むし歯の状態によって治療の進め方が変わります。また、装置の影響で歯磨きが難しくなり、むし歯のリスクが高まる点にも注意が必要です。
本記事では、むし歯がある状態での歯列矯正の進め方や、治療中にむし歯ができた場合の対処法、さらに予防のポイントを詳しく解説します。
むし歯だらけの場合の歯列矯正治療の進め方

- むし歯だらけでも歯列矯正はできますか?
- むし歯があるままでは、治療を始めることはできません。矯正装置をつけると歯の清掃が難しくなり、むし歯が進行しやすくなるためです。治療を始める前に、むし歯や歯周病を治療し、お口を健康な状態に整えておくことが大切です。そのうえで、歯や顎の状態を詳しく調べ、問題がなければ治療を進められます。
- 治療の進め方を教えてください。
- 歯列矯正は、むし歯や歯茎の状態を整えたうえで、いくつかの段階を踏んで進めていきます。主な流れは次のとおりです。
- 初診や検査
- 治療計画の立案
- むし歯や歯周病の治療
- 矯正装置の装着
- 定期調整と口腔ケア
まず、歯並びや噛み合わせ、むし歯や歯周病の有無を詳しく調べます。検査結果をもとに治療の流れや必要な処置を立て、むし歯や歯周病がある場合は治療が優先です。そのうえで歯並びの状態や生活スタイル、費用の目安などを考慮し、使用する矯正装置を選択します。代表的な矯正装置は、次の4種類です。
- ワイヤー矯正:歯の表面に小さな装置(ブラケット)をつけ、ワイヤーで少しずつ歯を動かす方法
- マウスピース型矯正:透明なマウスピースを使って歯を動かす方法
- 舌側(裏側)矯正:ワイヤー矯正の一種で、歯の裏側に装置をつける方法
- 部分矯正:歯全体ではなく、前歯など一部だけを整える方法
初診や検査で得られた情報をもとに、歯科医師がそれぞれの装置の特徴を説明し、患者さんの希望や生活に合わせてより適切な方法を提案します。
- 治療前に注意すべきことはありますか?<
- 歯列矯正を始める前は、これまでの治療歴や持病、服薬の有無を正確に伝えることが欠かせません。特に過去のむし歯治療の内容や現在のお口の状態は、治療計画に影響するため、歯科医師に伝えましょう。全身疾患や骨の代謝に関わる薬を服用している場合は、治療法に制限が生じることがあります。また歯列矯正治療は数年単位におよぶ長期的な治療になるケースも多いため、通院の頻度や費用面についてもあらかじめ確認しておくことが大切です。事前に十分な説明を受け、疑問点を解消しておくことで、安心感を持って治療を進められるでしょう。
- むし歯を放置したまま歯列矯正はできますか?
- むし歯を治療せずに歯列矯正を始めることはおすすめできません。むし歯が進行すると神経に影響を及ぼし、場合によっては抜歯が必要になることもあります。そうなると治療計画の変更や、治療期間の延長につながる可能性があります。こうしたトラブルを防ぐためにも、歯列矯正を始める前にお口の中を健康な状態に整えておくことが大切です。
歯列矯正中にむし歯になった場合の対処法

- ワイヤー矯正中にむし歯になった場合の対処法を教えてください。
- 軽度のむし歯であれば、装置をつけたまま治療できる場合もあります。ただし、むし歯が進行している場合や装置が治療部位に干渉する場合は、装置を外したうえで治療を行うことが一般的です。装置を外している期間中は、歯の移動が止まったり元の位置に戻ろうとしたりするため、治療期間が延びる可能性があります。ワイヤー矯正は装置の構造が複雑で清掃が難しく、歯磨きを怠るとむし歯や歯周病を引き起こすリスクが高くなります。そのため、定期的な検診で早期にむし歯を発見し、適切な対処が大切です。
- マウスピース型矯正中にむし歯になった場合の対処法を教えてください。
- マウスピース型矯正の場合、装置を自分で取り外せるため、ワイヤー矯正よりもむし歯治療がスムーズに行えます。むし歯が発見された場合は、マウスピースを外してむし歯治療を受けることができます。治療後も同じマウスピースを使用できる場合がありますが、むし歯治療で歯の形が変わった際は、調整や作り直しが必要です。また、マウスピースは取り外しができる分、装着時間が短くなると歯の動きに影響が出ることがあります。治療の効果を維持するためにも、むし歯の治療中でも、指定された装着時間は守るようにしましょう。
- むし歯になりにくい歯列矯正方法はありますか?
- むし歯のリスクを抑えやすいのは、マウスピース型矯正です。装置を取り外して食事や歯磨きができるため、お口の中を清潔に保ちやすく、むし歯を予防しやすい点が特徴です。さらに、透明なマウスピースは見た目が自然で、装着していても目立ちにくいメリットもあります。一方、ワイヤー矯正は装置が常に歯についているため、食べ物が詰まりやすく歯磨きが難しい傾向があります。ただし、歯の動きを細かくコントロールしやすいという大きな利点があり、複雑な歯並びの矯正にも対応可能です。各歯列矯正法にはそれぞれ特徴があるため、歯科医師と相談して自分に合った方法を選びましょう。
歯列矯正中のむし歯の予防方法

- 歯列矯正中にむし歯を予防するためのセルフケア方法を教えてください。
- 歯列矯正治療中は、装置の周りに汚れが残りやすく、むし歯や歯茎の炎症が起こりやすい状態です。日常のケアでは、フッ化物を活用したむし歯予防が効果的です。フッ化物配合の歯磨き剤や洗口液を使用すると、歯の表面を強くし、むし歯になりにくい状態を維持できます。食後はできるだけ早めに歯を磨きましょう。特にワイヤー矯正では、矯正用ブラシや歯間ブラシを使い、装置の周りを丁寧に清掃することが大切です。マウスピース型矯正の場合は、装置を外したときに歯をみがき、マウスピース自体も清潔に保つことが必要です。
- 歯列矯正中の歯磨きの注意点を教えてください。
- 歯列矯正治療中の歯磨きでは、通常よりも時間をかけて丁寧に行うことが重要です。ワイヤー矯正の場合、ブラケットとワイヤーの周りや歯とブラケットの境目、歯と歯茎の境目など汚れが溜まりやすい箇所を意識して磨きましょう。歯ブラシはやわらかいものを使用し、45度の角度で当てて小刻みに動かすと効果的です。また、デンタルフロスや歯間ブラシの併用でより徹底的な清掃が可能です。歯列矯正治療では、歯を動かす装置やむし歯や歯周病などにより、歯並びや噛み合わせは変わり続けます。そのため、清掃が難しくなり、むし歯や歯茎の炎症を起こしやすくなります。マウスピース型矯正の場合は、装置を外した際に歯磨きを行いますが、装置を再び装着する前にお口をゆすぐだけでは不十分です。歯ブラシで丁寧に磨いてから装置を装着するようにしましょう。
- 歯列矯正中も歯科医院で歯のクリーニングはしてもらえますか?
- 治療中でも、歯科医院での定期的な歯のクリーニングを受けることができます。矯正装置があるとセルフケアだけでは落としきれない汚れが残りやすいため、専門的なケアが欠かせません。歯科医院では、専用の器具を使って矯正装置の周りや歯と歯茎の境目などをきめ細かいケアが可能です。定期的なクリーニングは、むし歯や歯周病の予防だけでなく、早期発見にもつながります。ワイヤーの調整は1ヶ月ごとに行われ、その際に口腔内の状態もチェックされます。治療期間中は通常よりも通院回数が増えるため、その機会を活用して口腔内の健康管理を徹底しましょう。
編集部まとめ

歯列矯正は治療を始める前にむし歯の治療を済ませておくことが大切です。
歯列矯正治療中は装置によって歯磨きが難しくなり、むし歯のリスクが高まるため、日々のセルフケアと歯科医院での定期的なケアが欠かせません。
特にフッ化物を取り入れたケアや丁寧な歯磨き、そして定期的な検診は、むし歯予防に大きな効果があります。もし治療中にむし歯ができてしまった場合も、早期に対処することで治療への影響を軽減できます。
マウスピース型矯正はワイヤー矯正に比べてむし歯リスクが低い傾向にありますが、どちらの方法を選ぶかは歯並びの状態や生活スタイルを考慮して決定することが大切です。
適切なケアを続ければ、健康な歯を保ちながら理想的な歯並びを目指すことができます。
参考文献