「なんとなく話しづらい……」「よく聞き返される」このように滑舌の悪さに悩んでいる方は少なくありません。
意外かもしれませんが、噛み合わせが悪いと舌や唇の動きに制限が出て滑舌に影響することがあります。
また、噛み合わせは滑舌だけでなく全身の健康にも関係するため、噛み合わせが崩れている場合は放置しないことが大切です。
本記事では、噛み合わせが悪くなる原因や治療方法について解説します。滑舌に悩んでいる方はぜひ参考にしてもらえると幸いです。
噛み合わせが悪くなる原因
- 噛み合わせが正しいかチェックする方法はありますか?
- 自分の歯が正しい噛み合わせかどうかわからない、と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。実は、自宅で簡単に確認できる方法がいくつかありますので、ご紹介します。1つ目は、割り箸を使って顎の左右差をチェックする方法です。割り箸を横にして噛み、割り箸が水平になっているかどうか確認します。斜めになっている場合は、噛み合わせがよくないかもしれません。2つ目は、お口を大きく開けて確認する方法です。カクッと顎の骨が鳴る場合は、顎関節の左右のバランスが悪く、噛み合わせに影響している可能性があります。3つ目は、上下の前歯の中心を確認する方法です。上下の前歯が真ん中で揃っていない場合、噛み合わせがずれている疑いがあります。セルフチェックして気になる場合は、歯科医院へ受診し正確な診断をしてもらいましょう。
- 噛み合わせが悪くなる原因を教えてください。
- 噛み合わせに影響を与える要因はさまざまですが、遺伝的なものと後天的なものに分けられます。遺伝的要因として家族の顎や歯の大きさ、形、数など噛み合わせに影響する原因を引き継ぐ可能性があります。後天的なものとしてあげられるのは、指しゃぶりや歯ぎしり、食いしばり、口呼吸などの習慣です。また、姿勢の悪さにも注意が必要です。デスクワークなどで前重心の姿勢が習慣になることで、下顎が後ろに下がり噛み合わせに影響することがあります。
- 不正咬合の種類を教えてください。
- 噛み合わせに問題がある不正咬合には、代表的なものとして以下の種類があります。
- 出っ歯(上顎前突)
- 受け口(反対咬合)
- 八重歯・乱ぐい歯(叢生)
- 開咬(オープンバイト)
- 噛み合わせが深い(過蓋咬合)
- すきっ歯(空隙歯列)
出っ歯(上顎前突)は上の前歯が前に突出した状態のことです。また、下顎が成長不足で小さい場合も出っ歯に見えることがあります。出っ歯は重度になるとお口が閉じにくくなる方もいます。一方で下の歯が上の歯よりも前に出ている状態が受け口(反対咬合)です。受け口は発音に影響が出る可能性があります。八重歯・乱ぐい歯(叢生)とは、歯がバラバラに生えてきたり、重なり合ったりと不規則に生えている状態のことです。歯磨きがしにくいため、むし歯の原因となります。開咬は、お口を閉じても上下の前歯が噛み合わないことを指します。食べ物がうまく噛めないと悩まされる方も少なくありません。一方で、上下の噛み合わせが深い過蓋咬合では、笑うと上顎の歯茎が見えるなど見た目の問題があります。すきっ歯(空隙歯列)は前歯に隙間ができている状態で、サ行などの発音に影響が出るのが特徴です。
噛み合わせの悪さがおよぼす滑舌や口腔環境への影響
- 噛み合わせが悪いと歯や口腔環境にどのような影響が出ますか?
- 噛み合わせが悪いと噛んだときに特定の歯に負担がかかり、むし歯や歯周病の原因となります。また、歯並びの状態によっては歯磨きがしにくいため歯に汚れが溜まりやすく、むし歯や歯周病を引き起こす可能性があります。歯磨きを丁寧にしているにも関わらず、むし歯になりやすい方は噛み合わせの悪さが影響しているかもしれません。
- 噛み合わせが悪いと滑舌にも影響が出ますか?
- 噛み合わせが悪いと滑舌に影響が出ることがあります。すきっ歯は、歯と歯の間から息が抜けやすく、発音が不明瞭になることがあります。特にサ行やタ行の発音に影響が出やすいそうです。受け口も噛み合わせの状態によっては、正しい発音が難しくなります。また、出っ歯は上の前歯が前に突き出ているため、お口を閉じて発音するマ行に影響があるのが特徴です。
- 噛み合わせが悪いと身体にも影響が出るというのは本当ですか?
- 実は噛み合わせが悪いと、お口だけではなく身体への不調にも関係します。噛み合わせが崩れることで、顎や首、背骨、股関節など骨格や筋肉に余計な負担がかかるため、肩こり、首の周りのこり、偏頭痛、耳鳴り、腰痛、膝痛などを引き起こすのです。このようにさまざまな不調と関係しているため、噛み合わせの悪さは放置しないようにしましょう。
噛み合わせの治療方法
- 噛み合わせはセルフケアで治せますか?
- 噛み合わせを自力で完全に治すことは難しいそうですが、症状を悪化させないためにセルフケアをすることは大切です。セルフケアには以下の方法があります。
- 前傾姿勢にならないように正しい姿勢を心がける
- 顎の周りの筋肉をほぐす
パソコンやスマートフォンなどを使うと、ついつい顎を前に出した前傾姿勢になりがちです。顎や肩に負担がかからないよう、日常生活で背筋を伸ばすことを意識して過ごしましょう。また、顎の周りの筋肉をほぐすのに割り箸を使ったトレーニングがおすすめです。割り箸を横にくわえてからお口を閉じ、数分間深呼吸をします。痛みが出る場合は、無理して続けないようにしましょう。なお、噛み合わせのズレが重度の場合は歯科医院での診察をおすすめします。
- 噛み合わせの治療方法を教えてください。
- 噛み合わせの代表的な治療方法として、咬合調整やスプリント治療、歯列矯正治療、補綴治療があります。咬合調整は、歯の表面を削ることで噛み合わせのバランスを整える治療法です。この治療により、歯にかかる負担が均等に分散されたり、顎関節の負担を抑えられたりします。スプリント治療は、歯ぎしりや食いしばり、顎関節症などの症状を緩和するため、専用のマウスピースをつかって治療する方法です。歯を削らなくてよいというメリットはありますが、マウスピースをはめると違和感を覚える方もいるでしょう。歯列矯正治療は、咬合調整やスプリント治療では対応できない場合に行います。長期間の治療が必要になりますが、噛み合わせが改善されるだけでなく歯並びもよくなります。ただし基本的に保険が適用されず全額負担となるため高額です。補綴治療は歯が欠けている場合にクラウン(被せ物)やインプラントを用いて歯を補綴する治療法です。歯を補填することで歯の機能が回復し、噛み合わせの崩れの改善を期待できます。
- 歯列矯正に使用する矯正装置にはどのような種類がありますか?
- 歯列矯正で使用される矯正装置は、マルチブラケット装置やマウスピース型矯正装置などがあります。マルチブラケット装置で行う治療は、ブラケットと呼ばれる装置を歯に固定し、ワイヤーを通して歯並びを整える方法です。ブラケットは一般的には金属製のものが使用されますが、目立ちにくい透明のプラスチック製やセラミック製、歯の色に近い白色のジルコニア製などもあります。マウスピース型矯正装置は、取り外しが可能な透明なマウスピースを使用します。ワイヤー矯正に比べて目立ちにくいそうですが、1日20時間以上装着が必要なため自己管理が大変と感じる方もいるでしょう。
- 歯列矯正で噛み合わせを治療する場合の費用相場を教えてください。
- 歯列矯正は特殊な症例を除いて、一般的には保険が適用できないため全額自己負担となります。ワイヤー矯正表側の費用相場は700,000~900,000円(税込)、裏側は90,000~150,000円(税込)です。また、表側矯正でブラケットやワイヤーを目立たちにくい白色や透明色にする場合は、80,000~100,000円(税込)と少し高くなります。マウスピースの費用相場は80,000~100,000円(税込)です。金属ブラケットの表側矯正と比べると少し費用は高くなります。なお実際の治療内容や地域、歯科医院によって金額の差があるため、費用の詳細は治療する歯科医院で確認することが大切です。また、分割払いが可能な医院もあるため、一括で払うのが難しい方は検討しましょう。
編集部まとめ
今回は、噛み合わせが滑舌に与える影響、噛み合わせが悪くなる原因や治療方法について解説しました。
噛み合わせの悪さは歯周病やむし歯、滑舌にも影響をおよぼします。また、お口の中だけでなく、肩こりなど全身の不調にも関係します。
一見歯並びがきれいでも噛み合わせが悪い可能性があるため、ご自宅で噛み合わせのセルフチェックをしてみて気になる方は歯科医院へ受診しましょう。
参考文献