「親知らずを抜きたいけれど、噛み合わせに影響するのでは」と不安に感じたことはありませんか?
親知らずは、その生え方や位置によって、歯並びや噛み合わせにさまざまな影響を及ぼす可能性があります。痛みや違和感を引き起こす場合もあるため、症状がある場合は早めの対処が必要です。
この記事では、親知らずが噛み合わせに与える影響や抜歯を検討すべきケースについて詳しく解説します。親知らずに関する悩みを解消したい方は、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。
噛み合わせと親知らずの関係
親知らずは、噛み合わせや歯並びに影響を与える重要な要素です。親知らずの生え方や位置によって、ほかの歯への負担や噛み合わせのバランスが崩れることがあります。
斜めや横向きに生えている親知らずは、隣接する歯を押し出し、歯並びが悪くする原因です。噛む力が均等に分散されず、一部の歯や顎に過剰な負荷がかかり、顎や周辺の筋肉に痛みや違和感が生じる場合もあります。
また、親知らずが部分的にしか生えていない場合、噛み合わせの高さに影響を与え顎関節症のような症状を引き起こすこともあります。
噛み合わせの問題は、食事や会話など日常生活に影響するので注意が必要です。
歯や顎に痛みや違和感があって親知らずが原因と考えられる場合は、歯科医師に相談し、抜歯や歯列矯正などを検討しましょう。噛み合わせのバランスを整えておくと、将来的なトラブルも防ぐことができます。
親知らずを抜歯した方がよいケース
親知らずの抜歯は必須ではありませんが、症状や状況によっては抜歯が推奨される場合があります。親知らずを抜歯した方がよい代表的なケースは次のとおりです。
- 痛み・腫れがある
- 頭痛の原因になっている
- 横向きや斜めに生えている
- 歯並び・噛み合わせに悪影響がある
- お口が開きにくい
順に解説します。
痛み・腫れがある
親知らずが原因で痛みや腫れがある場合、炎症や感染が進行している可能性があります。親知らずが正しい方向に生えず、周囲の歯茎や組織を圧迫することが原因です。
親知らずが部分的にしか露出していない場合、歯と歯茎の隙間に食べ物のカスや細菌がたまりやすく、むし歯や歯周病になりやすくなります。放置すると、さらに膿がたまり、ほかの歯や顎の骨に悪影響を与えることもあるでしょう。
痛みや腫れが慢性化すると炎症が顎全体に広がり、噛む動作や日常生活に支障をきたす可能性があります。そのため、痛みや腫れの程度によっては抜歯が検討されることがあります。
頭痛の原因になっている
親知らずがほかの歯や顎に圧力をかけ、顎関節やその周囲の筋肉が緊張し、頭痛を引き起こすことがあります。また、噛み合わせのバランスが崩れることで首や肩の筋肉が緊張し、慢性的な頭痛につながる場合もあります。
このような症状は、特に片頭痛や緊張型頭痛として現れることが多いです。さらに、これらの痛みは顔面神経にも影響を与え、頭だけでなくお顔や耳にまで広がることもあります。
横向きや斜めに生えている
親知らずが横向きや斜めに生えていたり、歯茎のなかで横倒しになっていたりする状態が水平埋伏歯(すいへいまいふくし)、または埋伏歯です。
このような親知らずは自然に改善されることがなく、隣接する歯を押し出して歯並びを乱す原因となります。歯に亀裂を作ったり、むし歯になったり、歯周病や炎症の温床になったりする可能性もあるでしょう。
これらは放置すると顎骨にも悪影響を及ぼし、歯の根が吸収(歯の根が溶かされること)されたり嚢胞(のうほう・病的な袋状のもの)ができたりする恐れがあります。
歯並び・噛み合わせに悪影響がある
親知らずが歯並びや噛み合わせに悪影響を与える場合は、抜歯を検討しましょう。親知らずが隣接する歯を押し出すような位置に生えていると、歯列全体が乱れる原因です。
親知らずの影響で、歯列矯正治療後に整えた歯並びが再び崩れる可能性も考えられます。そのため、歯列矯正治療を検討している場合は、事前に親知らずの抜歯をした方がよいか確認するといいでしょう。
噛み合わせの乱れが進行すると、顎関節や周辺の筋肉に負担がかかり、顎の痛みや頭痛といった症状が現れることもあります。
噛み合わせは食事や発音に影響を与え、日常生活の質を低下させる原因にもなるため、歯科医師の診断に基づいて適切な処置を受けることが大切です。
お口が開きにくい
親知らずが原因でお口を開けるのが難しくなる症状は、開口障害と呼ばれます。親知らずが顎の関節や周囲の筋肉に負担をかけることで、顎の可動域が狭まり、日常的な食事や会話に支障をきたします。
この状態を放置すると症状が悪化し、顎を動かすこと自体が難しくなることも少なくありません。さらに、顎周辺の筋肉が緊張して固まることで肩や首のこりも引き起こされる可能性があります。
親知らずを抜歯しない方がよいケース
親知らずは抜歯が必要な場合がある一方で、状況によっては無理に抜かない方がよいこともあります。親知らずが周囲の歯や噛み合わせに悪影響を及ぼさない場合、抜歯は必須ではありません。
親知らずを抜歯しない方がよいケースは、次のとおりです。
- 正常に生えている
- 適切なスペースがある
- 歯列矯正で移動可能である
順に解説しましょう。
正常に生えている
親知らずが正しい位置にまっすぐ生えており、ほかの歯に悪影響を及ぼしていない場合は、抜歯の必要がありません。このような親知らずは、通常の歯と同じように機能しており、噛む力の一部を担うこともあります。
正しく生えている親知らずは清掃がしやすく、むし歯や歯周病のリスクも低いでしょう。親知らずが健康な歯であれば、将来ほかの歯を失った場合の代用として活用できることがあります。
適切なスペースがある
親知らずが周囲の歯と適切な距離を保って生えている場合も、抜歯の必要はありません。隣接する歯に圧力をかけたり噛み合わせに影響を与えたりしていない場合には、健康な状態を維持することが可能です。
親知らずがある位置に十分なスペースがあれば、歯の清掃もしやすくなります。スペースが十分にある親知らずは、痛みや腫れを引き起こすリスクが低いとされ、ほかの歯への悪影響を回避できます。
歯列矯正で移動可能である
親知らずが斜めに生えている、またはわずかに位置が悪い場合でも、歯列矯正で移動が可能であれば抜歯せずに歯列矯正を行うことがあります。
歯列矯正によって親知らずを適切な位置に動かすことで、歯並びを整えるだけでなく、親知らずを活用することも可能です。
歯列矯正を計画している場合には、親知らずの抜歯が本当に必要かどうかを歯科医師と相談しましょう。親知らずを残すことでほかの歯への負担を分散させ、噛み合わせを安定させることができる場合もあります。
歯列矯正による親知らずの活用は、将来的な歯の健康を維持するためにも効果的な方法です。このような対応により、不要な抜歯を回避しつつ健康な歯列を目指すことができます。
抜歯のリスクを減らしつつ、歯列矯正治療を進められる点も大きなメリットです。
親知らずを抜歯する際の注意点
親知らずの抜歯は適切な準備と注意が必要です。抜歯前後に気をつけることで、痛みや合併症のリスクを減らし、スムーズな回復が期待できます。
抜歯前には、体調を整え、十分な休息をとることが大切です。風邪や感染症がある場合は、治療を延期することも検討しましょう。現在服用中の薬があれば歯科医師に伝え、必要に応じて事前に対応を行います。
また、抜歯の日は予定を入れず、治療後に安静に過ごせる環境を整えておきましょう。
抜歯後は、傷の治癒を妨げない生活が重要です。痛み止めは服用後30分くらいから効いてくるので、麻酔が切れる少し前の服用がおすすめです。止血を妨げるため、強いうがいは避けましょう。
運動や飲酒は血流を増加させ出血や腫れを悪化させる可能性があるため控えましょう。
食事はやわらかいものを選び、傷口に負担をかけないよう心がけます。唇や頬を噛んでしまう可能性があるので、食事は麻酔が切れてからとった方がよいでしょう。
親知らずが影響する可能性がある噛み合わせ以外の症状
親知らずは噛み合わせ以外にもさまざまな症状を引き起こす可能性があります。親知らずが原因となる可能性のある症状は、次のとおりです。
- むし歯・歯周病
- 痛み・腫れ
- 口内炎
- 口臭
- 顎関節症
親知らずが引き起こすこれらの症状について詳しく解説します。
むし歯・歯周病
親知らずは、むし歯や歯周病の原因になりやすい歯です。親知らずは奥に位置しているため、歯磨きが十分にできないことがあります。
また、親知らずが斜めに生えている場合や一部が歯茎に埋まっている場合、食べ物のカスや細菌がたまりやすいです。
この状態を放置すると、親知らずだけでなく隣接する歯にもむし歯や歯周病のリスクが広がります。さらに、これが進行すると歯茎の退縮や骨の吸収を引き起こし、顎全体の健康に影響を与える可能性があります。
特に歯周病が進行すると顎の骨にダメージを与え、さらなる健康問題につながることもあるため、早期の治療が重要です。定期的な歯科検診と適切なクリーニングが予防につながります。
痛み・腫れ
親知らずが原因で口腔内に痛みや腫れが生じることがあります。この症状は、親知らずが周囲の歯茎や組織を刺激するのが要因です。
親知らずが完全に生えきらずに一部が歯茎に覆われている場合、歯茎の炎症(智歯周囲炎)が起こりやすくなります。悪化すると膿がたまり、さらに広範囲の腫れや痛みを引き起こすことがあります。
炎症を抑えるためには歯科医院での治療が必須です。痛みや腫れを放置すると、顎の骨やほかの組織に感染が拡大する危険性もあるため、早めの診断と治療が必要です。
口内炎
斜めや横向きに生えている親知らずが原因で、口内炎が生じる場合もあります。親知らずが頬や舌を刺激することで、慢性的な炎症が引き起こされることもあるでしょう。
このような口内炎は自然治癒が難しく、痛みや不快感が長期間続くこともあります。また、親知らず周辺の清掃が不十分だと細菌が繁殖しやすくなり、口内炎の治りを遅らせる要因となります。
親知らずが原因と考えられる口内炎が頻繁に起こる場合、抜歯を含めた治療を検討することが必要です。早期対応で不快な症状を軽減できます。
口臭
親知らずは、口臭の原因となることがあります。親知らず周辺に食べ物のカスがたまりやすく、これが細菌の繁殖を促して悪臭を発生させるためです。
親知らずが一部しか生えていない場合や歯茎に覆われている場合、ポケットのような構造ができるため、汚れが蓄積しやすくなります。
また、親知らずがむし歯や歯周病にかかっている場合、それらの症状が口臭を悪化させることもあります。
口臭の原因が親知らずにある場合、セルフケアでは改善が難しいため、歯科医院で適切な治療やケアを受けましょう。
顎関節症
親知らずは顎関節症の原因の一つとなることもあります。ここでは、抜歯前と抜歯後に分けて顎関節症のリスクを解説します。
抜歯前
親知らずが正しい位置に生えておらず噛み合わせに影響を与えている場合、顎の関節や筋肉に影響を及ぼし、顎関節症の症状が現れることがあります。
症状は、顎の痛み・音が鳴る・開口障害などです。また、痛みが慢性化すると食事や会話が不便になるだけでなく、頭痛や肩こりなどの二次的な症状を引き起こすこともあります。
親知らずが噛み合わせを乱している場合、症状が悪化することがあるため、抜歯を検討した方がよいでしょう。
抜歯後
親知らずの抜歯後にも顎関節症のリスクが生じることがあります。これは、抜歯によって噛み合わせのバランスが一時的に崩れることが原因です。
抜歯直後は顎の動きが制限されるため、筋肉が硬直しやすく、関節に負担がかかる可能性があります。噛み合わせが安定するまでに時間がかかる場合もあるため、経過観察をしっかり行いましょう。ストレッチや理学療法なども症状の改善に役立ちます。
まとめ
親知らずは、噛み合わせや歯並びに影響を与えることがあり、注意が必要です。健康な親知らずであれば抜歯の必要はありませんが、痛みや歯列への悪影響がある場合は早めの治療を検討しましょう。
親知らずが原因でむし歯や歯周病が起きることもあるため、日常の口腔ケアと定期的な歯科検診を心がけることが大切です。
気になる症状があれば、早めに歯科医師に相談し、適切な対応を受けるようにしましょう。
参考文献