横顔が気になる、お口が閉じにくいと感じたことはありませんか。それは口ゴボや出っ歯の症状かもしれません。
口ゴボや出っ歯により口元が前に突出している状態は、見た目や精神的な面以外にもむし歯や歯周病、顎関節症などを引き起こし健康面に影響を及ぼすことがあります。
この記事では口ゴボや出っ歯になる原因、与える悪影響、治療法や費用について詳しく解説します。
口ゴボと出っ歯の基礎知識
口元の悩みのなかでも多くの方が気にしているのが口ゴボと出っ歯です。一見似ているようですが、それぞれ異なる特徴や原因があります。
ここでは、口ゴボと出っ歯について詳しく解説します。それぞれの状態を知り、違いについて理解を深めていきましょう。
口ゴボとは
口ゴボとは、上下の唇が前方に突き出ている状態です。横から顔を見たとき、鼻と顎を結んだライン（Eライン）よりも唇が大きく前に出ているのが特徴です。
お口を閉じにくかったり、無意識で口呼吸になっていたりする場合があります。原因は歯並びや骨格、筋肉のバランスなどさまざまです。
症状が重い場合は、口元が常に緊張した状態になり表情がこわばり、見た目にも影響を与えます。
出っ歯とは
出っ歯は、上の前歯が極端に前に突き出ている状態で、専門的には上顎前突（じょうがくぜんとつ）と呼ばれます。
日常生活では、お口が閉じづらい・発音がしにくい・笑うと前歯が目立つなどの悩みが出る場合があります。
出っ歯である方の主な原因は歯並びであるため、歯列矯正で改善が期待できます。
成長段階の子どもであれば顎の成長に合わせた治療法を行えるため、早期発見し受診することが大切です。
口ゴボと出っ歯の違い
口ゴボと出っ歯は見た目が似ていますが、それぞれ異なる原因や治療方針があります。
口ゴボは上下の唇全体や前歯だけではなく、顎の骨格そのものが前に出ている場合があります。一方、出っ歯は主に上の前歯だけが前方に傾いている状態です。
口ゴボは 顎の骨格の問題も関係するため、歯列矯正だけではなく顎の骨の調整を伴う外科的治療を行う場合もあります。
歯並びが原因の出っ歯は、歯列矯正のみで改善できます。
このように治療法が異なるため、口ゴボなのか出っ歯なのかを正しく診断してもらい適切な治療を受けることが大切です。
口ゴボと出っ歯の原因
口ゴボや出っ歯の原因は、複数の要素が関係しています。
なかでも、遺伝や生活習慣、骨格の3つは特に影響が大きいとされる要因です。
それぞれの原因を理解することで、予防や治療の適切な判断につながります。ここでは、3つの原因を詳しく解説します。
遺伝による影響
口ゴボや出っ歯は、親から受け継いだ骨格や歯の大きさ、顎の形など遺伝的な要因が影響する場合があります。
特に顎が小さい家系では、歯が前に押し出されやすく、出っ歯のリスクが高くなります。
遺伝が要因の場合は成長過程で症状が明らかになるため、早期に状態を把握し、適切に対応することが重要です。
歯列矯正を行うタイミングや歯列矯正の方法を選択する際に影響が出るため、家族に似たような症状がある場合は、子どもの頃から定期的に検査を受け早期発見につなげることが大切です。
生活習慣による影響
乳幼児期からの指しゃぶりや舌で前歯を押す癖、口呼吸、頬杖などの生活習慣も歯並びや口元の発育に悪影響を及ぼします。
これらの癖が長期間続くと、歯や顎の位置が変わり、口ゴボや出っ歯の原因となるのです。
日常生活のなかで、正しい姿勢や舌の位置を意識すると予防につながります。また、口腔周囲筋を鍛えるトレーニングが有効であるとされ、口腔機能療法が注目されています。
呼吸の仕方や飲み込み方、話し方の癖も影響を与える原因と考えられているため、機能的な観点からアプローチし改善していく方法を意識して取り組むとよいでしょう。
骨格による影響
上下の顎の成長バランスや大きさの差も、口ゴボや出っ歯の原因です。
特に、顎が小さかったり成長のバランスが悪かったりする場合、歯が並ぶスペースが不足し前方に押し出される場合があります。
原因が骨格である場合、歯列矯正だけでは改善が難しいため、外科的治療を検討する場合もあります。
成長期の子どもであれば、早い段階で矯正装置で顎の成長を促せる場合もあるため、早い段階から歯科検診を受け早期発見につなげることが大切です。
成人の場合は骨格の発育が完了しているため、歯列矯正と外科矯正を併用した治療が必要となる場合があります。
歯並びがきれいでも口ゴボや出っ歯は治療すべき？
歯並び自体が整っている場合、見た目を気にしなければそのままでよいと思う方も多いでしょう。
しかし、口元の突出がある場合、噛み合わせが悪いと咀嚼や発音に支障をきたすことがあります。
口呼吸になったり顎関節に負担がかかったりすることからむし歯や歯周病、顎関節症などのリスクも高まるのです。
呼吸が浅くなることで、睡眠の質が低下し、全身の不調を引き起こす可能性があります。そのため、審美面だけではなく健康面にも注意し、早めの受診が大切です。
見た目だけではなく健康面を考慮し、気になる場合は歯科医師へ相談しましょう。
口ゴボと出っ歯が与える悪影響
口ゴボや出っ歯は、見た目の印象に影響を与えるだけでなく、健康や日常生活にもさまざまな悪影響を及ぼします。
そのため、一見歯並びがきれいな場合でも、治療を検討するとよいでしょう。
歯や顎の位置が正常でないことで、前歯でしっかり物を噛めなかったり発音が不明瞭になったり、口呼吸になりやすいなどの機能面で問題が生じます。
さらに噛み合わせのバランスが崩れると顎関節に負担がかかり、顎関節症・肩こり・頭痛など全身症状が現れたり、胃腸の不調が現れたりする場合があります。
口呼吸によりお口が常に開いた状態になりやすいため、口腔内が乾燥してむし歯や歯周病のリスクも高くなるのです。
見た目が気になる
最も多い悩みが、見た目のコンプレックスではないでしょうか。
口元が前に出ていると、横顔のバランスが崩れ唇がはみ出して見えたり、顔が大きく見えたりすることがあります。
このため、自分の顔にコンプレックスを抱きやすくなり、自信が持てず人前で話したり笑ったりすることに抵抗を感じる方もいます。心理的にストレスを受けると、対人関係や自己肯定感にも影響を与えかねません。
また、無理にお口を閉じようとすると口元に力が入り、表情が不自然になったり口周りにしわが入りやすくなったりするなど美容面でのデメリットが生じやすくなります。
見た目に対する不安を抱えている方は、医師に相談し解決方法を一緒に決めていくとよいでしょう。
むし歯や歯周病のリスクが高まる
前歯が突出している状態になると、唇のせいでお口が閉じにくくなり口呼吸の状態が習慣化され、お口の中が乾燥しやすくなります。
唾液には自浄作用がありますが、お口の中が乾燥すると細菌の繁殖が進みやすくなります。
また、歯磨きをする際に歯ブラシが届きにくい部分が出てくるため、磨き残しが原因でむし歯や歯周病を引き起こす原因にもなるのです。
さらに噛み合わせがずれることにより、特定の歯に過剰な力がかかり歯がすり減ったり、歯茎に炎症が起こったりする可能性もあります。
口腔内のケアが困難になるため、早期に治療を受けることをおすすめします。
顎関節や胃腸に負担がかかる
噛み合わせが悪いと、食べ物を十分に噛まずに飲み込む傾向が強くなります。
これにより消化不良になり消化器官に負担がかかるため、胃腸が不調になる場合もあります。
また咀嚼がうまくできないことで顎関節に負担がかかり、頭痛や肩こり、顎関節症につながる場合もあるため注意が必要です。
顎の痛みやカクカク音が鳴る、お口が開けにくいなどの自覚症状が現れた場合は、早めに受診するようにしましょう。
口ゴボと出っ歯の治療法
口ゴボや出っ歯の状態を改善するためには、症状の程度や原因に応じた治療法を選択することが大切です。
軽度の歯列不正にはマウスピース型矯正が適している場合もあります。しかし、骨格的な問題が関与している場合は、外科的な矯正治療が必要になるケースもあります。
それぞれの治療のメリット・デメリットを理解し専門の医師と相談しながら自分に合った方法を見つけましょう。
ワイヤー治療
ワイヤー治療とは、歯の表面または裏側にブラケット型の矯正装置を装着し、ワイヤーを通して力を加え徐々に歯並びを整えていく治療法です。
重度の出っ歯や複雑な歯列不正など、歯を大きく動かしたい症例にも対応できるのが特徴です。
デメリットは、見た目が目立つことや食べ物が引っかかりやすいこと、歯磨きがしづらいことなどが挙げられます。
また、金具が口腔内を傷つけることで、口内炎ができやすくなる場合があるでしょう。
最近は、使用する装置が進化しており、審美に配慮できるセラミック製や裏側矯正（舌側矯正）など選択肢が増えています。
マウスピース型矯正
マウスピース型矯正とは、透明なマウスピースを使い少しずつ歯を動かしていく治療法です。
ワイヤー矯正よりも痛みや不快感が少なく、症状が軽い場合に適応されるケースがあります。
装置が目立ちにくいため、見た目が気にならないのが特徴です。また、取り外しも可能なため洗浄でき清潔を保つことができます。
しかし、適応する症例が少ないため、自分の状態が治療に適しているか医師に確認してもらうとよいでしょう。
マウスピース型矯正は、あらかじめ決められた使用時間を守らないと効果が得られにくいため、自己管理も重要です。
外科的矯正治療
顎の骨格に問題がある場合は、歯の矯正だけでは限度があるため顎の骨を切って正しい位置に整える外科手術と矯正治療を併用する外科的矯正治療が検討されます。
歯列矯正と外科手術を組み合わせる治療のため、治療期間が長期になります。治療を受けると決める際には、治療計画をよく理解することが大切です。
顎変形症などで保険適用になる場合もあるため、医師に相談し自分の症状を診断してもらいましょう。
外科手術は身体への負担がかかるだけではなく、ダウンタイムがあることも念頭に置き、よく理解したうえで選択する必要があります。
口ゴボと出っ歯の治療にかかる費用と期間
治療を検討するうえで多くの方が気にするのが、費用や治療時間ではないでしょうか。
歯列矯正の種類や症状の重さにより負担は大きく異なります。保険が適用される場合と適応ではない場合があるため、医師とよく相談したうえで決めることが大切です。
ここでは、治療にかかる費用と期間の目安を解説します。
治療にかかる費用
治療法により、費用は大きく異なります。治療は基本的に自費診療ですが、外科的矯正は条件を満たせば保険が適応されることもあります。
ワイヤー治療、マウスピース型矯正、外科的矯正治療の費用目安は下記のとおりです。
- ワイヤー治療：600,000～1,000,000円（税込）
- マウスピース型矯正：300,000～1,000,000円（税込）
- 外科的矯正治療（保険適用の場合）：300,000～500,000円
- 外科的矯正治療（自費治療の場合）：1,000,000円（税込）
歯列矯正する範囲が、部分矯正か全体矯正かによっても費用は異なります。
治療期間が長くなるとその分の費用がかかるため、治療法の内容や費用についてよく医師と相談し決めることが大切です。
審美目的の矯正は基本的に自由診療となるケースがほとんどのため、費用の見積もりをあらかじめ出してもらい、支払い方法も検討しておくとよいでしょう。
治療にかかる期間
歯列矯正治療は症状の程度や年齢によっても異なりますが、ある程度の時間を要します。
外科的治療の場合は顎の位置や大きさを調整したり、顎の中の歯を移動させたりするため、成人の場合は1～3年程度かかるのが一般的です。
治療後には、後戻りしないために移動させた歯を保定する期間が必要になります。
子どもの場合は、顎の成長に合わせた治療が必要になるため、治療期間が数年かかるケースもあります。
ワイヤー矯正では1年半～3年、マウスピース型矯正では1～2年ほどが治療期間の目安です。
治療中は、定期的に通院しメンテナンスが必要になります。費用だけではなく、治療から治療後の状態に関して医師とよく相談し、計画的に治療を進めていくことが大切です。
まとめ
口ゴボや出っ歯は、見た目の問題だけではなく、健康や生活の質にも影響を与える可能性があります。
そのため、早期に症状を把握し治療を受けることが重要です。原因は遺伝や生活習慣、骨格などさまざまありますが、どれも治療により改善が期待できます。
治療にかかる費用や時間は症状や年齢などにより異なるため、よく担当医師と相談し納得したうえで、治療法を選択することが大切です。
矯正治療は費用や時間がかかりますが、審美的な満足感と健康を維持できる手段の一つです。
自分に合った治療法を選択し、無理のない範囲で治療を受けるようにしましょう。
口ゴボや出っ歯が気になる方は、一度、歯列矯正歯科や口腔外科で専門の医師の診断を受け相談することをおすすめします。
参考文献
電話コンシェルジュで地域の名医を紹介します。