「子どものお口がいつも開いている」「お口の中が乾きやすい」などの症状がある場合、無意識のうちに口呼吸をしているのかもしれません。口呼吸をしてしまう原因はさまざまですが、原因がわからなければ改善も難しいでしょう。
口呼吸をそのままにしていると、健康面や見た目に大きな影響を及ぼす可能性があります。本記事では、口呼吸の原因や改善方法を詳しく解説します。口呼吸に悩んでいる方の参考になれば幸いです。
口呼吸の原因
- 口呼吸の原因を教えてください。
- 口呼吸をする背景にはさまざまな原因があります。代表的なものとして以下の原因が挙げられます。
- アレルギーや鼻ポリープ、副鼻腔炎、風邪などが原因の鼻詰まり
- 不正咬合
- 肥満や姿勢
- 不安やストレス
- 扁桃肥大やアデノイド肥大
鼻詰まりは、口呼吸の代表的な原因です。鼻詰まりの原因は多岐にわたりますが、症状がひどくなると空気の通り道が塞がれて鼻呼吸をする際に苦しさを感じるため、口呼吸をする習慣がつきます。不安やストレスが要因となって呼吸が浅くなったり、肥満や姿勢の悪さで気道が狭くなったりするのも口呼吸の要因です。また、扁桃肥大やアデノイド肥大によって鼻の奥や喉が狭くなることも口呼吸の原因となります。
- 歯並びの悪さが原因で口呼吸になるケースもありますか?
- 出っ歯(上顎前突)や受け口(下顎前突)は口呼吸になるケースがあるとされています。出っ歯は、上の前歯や上顎が前にでた状態のことです。また、下顎の成長が不足していて小さい場合も出っ歯に見えることがあります。受け口は、下の歯が上の歯よりも前に出ている状態です。出っ歯や受け口の歯並びは、前に出ている歯や舌が障害となりお口を閉じることが難しくなり、自然と口呼吸をする習慣がついてしまいます。
- 子どもはなぜ口呼吸になりやすいのですか?
- 子どもが口呼吸になりやすい理由には、以下のようなケースが挙げられます。
- ゲームやスマートフォンの使用で長時間猫背や前かがみになっている
- アデノイド肥大によって鼻の奥が塞がれて鼻呼吸がしにくい
- 咀嚼や発音不足が原因でお口の周りの筋力が十分に発達していない
- 舌が正しい位置に収まっていない
- 長期的な指しゃぶりが歯並びに悪影響を与える
子どもは、呼吸が浅くなる要因が多く存在するため口呼吸になりやすい傾向です。また、食事の際に咀嚼回数が少なかったり言葉を話す頻度が低かったりすると、口周りや舌の筋力が低下しお口を閉じていることが難しくなり常に開いた状態になります。
口呼吸が歯並びや健康に及ぼす影響
- 口呼吸が歯並びに及ぼす影響を教えてください。
- 成長期の子どもが口呼吸を長期的に行っていると、歯並びに影響を及ぼす可能性が考えられます。一般的に舌はお口の中の上側に収まっていますが、口呼吸が癖になっている方は、舌の位置が下がり気味です。そのため、上顎が十分に発達せず歯が生えてくるスペースが狭くなり、歯が重なり合ってしまいます。
- 口呼吸が健康に及ぼす影響を教えてください。
- 口呼吸が健康に及ぼす影響は以下です。
- むし歯や歯周病になりやすい
- 口臭が気になりやすい
- 顔立ちが悪くなる
- 睡眠時無呼吸症候群のリスクが高くなる
- 身体の代謝が落ちる
- 風邪を引きやすくなる
- アレルギー症状が増えてしまう
口呼吸をしていると常にお口が開いた状態になりがちです。長時間お口が開いたままになっていると、唾液の分泌が減少し、お口の中が乾燥します。お口の中の乾燥は、細菌の増殖を助長しむし歯や歯周病、さらには口臭の原因になります。鼻にはウイルスが侵入しないように防ぐフィルターのような機能がありますが、お口にはありません。お口から空気を吸うと空気中のウイルスが直接身体のなかに入り込んでしまい、結果的に風邪やインフルエンザなどにかかるリスクが高まります。また、アレルゲンを直接吸い込むこともアレルギー性鼻炎やアレルギー性皮膚炎になりやすい原因です。鼻呼吸に比べて口呼吸は吸い込む酸素の摂取量が減るため、結果的に身体の代謝の低下や集中力に影響を与える要因になります。
- 口呼吸は見た目にも影響を及ぼしますか?
- お口の周りの筋肉は、お口の開閉だけでなく表情を動かす役割があります。口呼吸は、表情筋を使う頻度を減少させるため、ほうれい線が目立ちやすくなったり頬周りがたるんで二重顎になる原因です。身体のなかに取り入れる酸素の量が減少することで全身の血流が影響を受け、お顔全体の血行不良を引き起こし、目の下のクマが目立ったり顔色が悪く見えたりと不健康そうな印象を与える要因になるので注意しましょう。口呼吸をする方は、片側で咀嚼を行う傾向があり骨格の歪みが起こります。また、成長期の口呼吸は顎の成長や筋力の低下の原因となり、顔立ちに影響を与えやすいでしょう。
口呼吸の改善方法
- 子どもの口呼吸は成長とともに自然に改善しますか?
- 子どもの口呼吸にはさまざまな要因があり、まずは原因を突き止める必要があります。アデノイド肥大は幼少期にピークを迎え10歳前後で徐々に小さくなるため、これが原因の場合成長とともに徐々に改善されることが一般的です。しかし顎の発達や筋力の発達、慢性的な鼻詰まりなどが原因の場合、これらの要因を改善しない限り口呼吸を自然に改善するのは難しいでしょう。本人が口呼吸に慣れてしまうと、習慣として定着しやすくなるので注意が必要です。子どもが鼻でしっかりと呼吸できているかどうかを確認して、早めに対処できるとよいでしょう。
- 口呼吸から鼻呼吸に改善する方法を教えてください。
- 口呼吸から鼻呼吸に改善する方法は、口呼吸になっている原因によって異なります。主な改善方法は以下のとおりです。
- 風邪やアレルギー性鼻炎などは医師に相談をする
- 必要であれば内服や点鼻薬を使用する
- 生活習慣を改善する
- 口周りのトレーニングを行って筋肉を鍛える
- 睡眠中は鼻呼吸テープを使用する
- 歯列矯正を行う
口呼吸が習慣になっている方は、原因を改善していかなければずっと口呼吸のままになる可能性があるため、まずは医師への相談から始めましょう。また、原因が改善されても口呼吸が改善されない場合があります。改善されないときは、自身で鼻呼吸を意識したり筋力を鍛えるトレーニングを行ったりすることが重要です。
- 口周りの筋肉を鍛えて口呼吸を改善するトレーニングを教えてください。
- 口周りの筋肉を鍛える代表的なトレーニングとして、あいうべ体操が挙げられます。あいうべ体操のやり方は以下のとおりです。
- 「あー」と声を出しながらお口を大きく開ける
- 「いー」と声を出しながらお口を横に大きく開ける
- 「うー」と声を出しながらお口を前に突き出すように動かす
- 「べー」と声を出しながら舌を突き出して下に向ける
あいうべ体操は、お口を大きく動かすことで表情筋を鍛える効果が得られます。1度に行う回数増やしてしまうと関節を痛める可能性があるため、1日20〜30回を目安に行いましょう。朝と寝る前などに分けてのトレーニングが理想です。
- 歯列矯正で口呼吸を改善できますか?
- 出っ歯や受け口が原因の口呼吸は、歯列矯正での改善が可能です。子どもと大人の歯列矯正の方法は異なります。子どもはまだ顎が十分に発達していないので、顎の発達を促しながら正しい位置に戻す治療を行います。顎の発達が終わっている大人は、歯を抜いてきれいな歯並びになるようにスペースを作り歯列矯正を行うのが一般的です。歯列矯正装置を使用し、歯を動かして正しい噛み合わせになるように治療します。また、歯並びが悪くお口が閉じにくい方も歯列矯正が必要です。マウスピース型歯列矯正装置や拡大床、ワイヤー矯正が主な方法です。拡大床は顎を広げる目的で子どもへの使用が多く、鼻のとおりがよくなり鼻呼吸がしやすくなります。
編集部まとめ
本記事では、口呼吸の原因や改善方法をご紹介しました。口呼吸はさまざまな原因で起こり、ご自身の意識だけでは改善が難しい場合があります。
長期間口呼吸のままにしているとお口の中の健康だけではなく身体の健康や顔つきにも影響を与える可能性があります。
口呼吸をしている自覚がある方は、そのままにせず早めの改善が大切です。原因がわからない場合や、自己改善が難しい方は耳鼻咽喉科や歯科、呼吸器内科などの医師に相談しましょう。
参考文献