奥歯は、そしゃく機能の主体となる歯であるため、歯の高さや並び方に違和感があると、食べ物が噛みにくくなったり、お口周りに悪影響を与えたりしてしまいます。 そのため、奥歯の噛み合わせが低いと感じたら、その原因を突き止めたうえで適切に対処する必要があります。この記事では、奥歯の噛み合わせが低くなる原因やそれを放置することで生じる問題、対処する方法について解説します。奥歯の噛み合わせが低いと感じている方は、参考にしてみてください。
奥歯の噛み合わせが低くなる原因
奥歯の噛み合わせが低くなる原因を確認しておきましょう。一般的には、以下に挙げる4つの原因によって奥歯の噛み合わせが低くなることがあります。
歯の摩耗やすり減り
奥歯の噛み合わせが低くなる原因のひとつに、歯の摩耗やすり減りがあります。 歯はエナメル質という硬い組織で覆われていますが、硬いもの同士が長年にわたって接触し続けると、徐々に摩耗が進んで行きます。その結果、歯の頭の部分である歯冠(しかん)の歯質がすり減り、噛み合わせも低くなるのです。
◎歯ぎしり・食いしばりに要注意
歯の摩耗やすり減りは、加齢に伴う変化で誰でも見られますが、歯ぎしり・食いしばりがある方は要注意です。歯ぎしり・食いしばりでは、歯と歯の接触に食べものがありませんので、歯のすり減り方は、加齢に伴う摩耗より大きくなります。 実際、歯ぎしり・食いしばりが習慣化している患者さんは、奥歯の著しい摩耗が見られ、噛み合わせも低くなっています。ちなみに、歯ぎしり・食いしばりによって歯が摩耗することを咬耗(こうもう)といいます。
噛み合わせの不良
噛み合わせの不良も、噛み合わせが低くなる原因です。自然に噛んだときに奥歯が低い位置でしか噛み合わないため、周囲の組織に負担がかかることがあります。 過蓋咬合(かがいこうごう)は、上の前歯が過剰に下の前歯を覆う状態を指します。これは、奥歯の咬合が低くなることで相対的に前歯が深く噛み込む場合や、下顎の後方位の影響で生じることがあります。
歯茎の低下
加齢や歯周病によって歯茎・歯槽骨が吸収されると、奥歯の噛み合わせも低くなることがあります。 歯を支えている歯周組織は、噛み合わせや歯並びにも深く関わっています。奥歯の噛み合わせを低くする程の歯茎・歯槽骨の低下は、かなりの重症な状態です。
歯列矯正後の調整不良
悪い歯並びをきれいに整える歯列矯正では、噛み合わせが変わってしまうこともあります。知識とスキルを持った歯科医師であれば、歯並びとともに噛み合わせもきちんと調整できますが、そうでない場合は歯列矯正後に奥歯が深い位置で噛むような状態となることがあります。 歯並びをきれいに並べることだけを意識した歯列矯正では、奥歯の噛み合わせが低くなるなどのトラブルが起こりやすいです。歯列矯正では、治療経験が豊富で技術も高い歯科医師のもとで受けるようにしましょう。
奥歯の噛み合わせが低い場合に生じる問題
奥歯の噛み合わせが低いことによる悪影響を解説します。
顎関節への負担や痛みが生じる
奥歯の噛み合わせが低いと、顎関節に負担がかかりやすいです。奥歯の噛み合わせが低いことで、顎全体が深く噛み込まなければならないためです。 奥歯の噛み合わせが低いと、上下の歯列が均等に噛み合わず、部分的に強く噛む歯があったり、ほとんど噛まない歯が出てきたりします。これも結果として顎関節に大きな負担をかけることになります。
◎顎関節症になるとどうなる?
奥歯の噛み合わせが低い状態が続くと、顎関節症を発症することがあります。顎関節症になると、顎が痛い、顎関節が「カクカク」「ジャリジャリ」と鳴る、お口を大きく開けられないなどの症状が現れ、食事や会話、場合によっては呼吸にまで悪影響が及ぶのです。
前歯やほかの歯に負担がかかる
奥歯の噛み合わせが低いと、前歯やほかの歯にも強くあたってしまいます。患者さんの歯並び・噛み合わせの状態によって異なるため、どの歯に負担がかかるかは一概にいえません。 上下の歯列全体の噛み合わせも乱れることから、ほかの歯に負担がかかってしまいます。
顔のバランスや輪郭への影響が出る
噛み合わせは、顔のバランスや輪郭にも影響を与えることがあります。 奥歯の噛み合わせが低く、過蓋咬合(かがいこうごう)となっている患者さんの場合は、鼻の下から顎までの、下顔面が短くなりやすいです。また、奥歯の噛み合わせが低い状態が左右でばらつきがある場合は、顔の輪郭もアンバランスとなることがあります。
噛みにくさや噛む際に不快感を覚える
奥歯の噛み合わせが低いと、噛む際に違和感や不快感を覚えることがあります。 奥歯は食べ物をすりつぶすための歯であるため、噛み合わせに異常があることで噛みにくさを感じることも少なくありません。その結果、食べ物を十分にそしゃくせずに飲み込むことになり、胃や腸といった消化器官への負担も大きくなります。
歯を失うリスクが高くなる
悪い噛み合わせでは、歯を失うリスクが高くなります。奥歯の噛み合わせが低いと、特定の歯の摩耗やすり減り、破折が起こりやすくなってしまいます。重症例では、歯の根っこの部分である歯根が折れることもあるため十分な注意が必要です。
奥歯の噛み合わせが低い場合の対処方法
奥歯の噛み合わせが低い状態を改善するためには、以下にあげる方法が有効です。
被せ物や詰め物で噛み合わせを調整する
奥歯の低い噛み合わせは、被せ物や詰め物の高さを調整することで改善できる場合があります。ただし、奥歯の噛み合わせが低い状態は、装着している被せ物や詰め物を削ることで改善が見込めるわけではないので、装置の作り直しが必要になるでしょう。 場合によってはコンポジットレジンを盛り足して奥歯の噛み合わせを高くしたり、特定の歯を削ることで奥歯の低い噛み合わせが改善したりする場合もあります。どの方法が有効であるかは患者さんのお口の中の状態によって変わるため、具体的な対処方法は精密な検査を行ってから決めることになります。
矯正治療
悪い歯並びが原因で奥歯の噛み合わせが低くなっている場合は、歯列矯正で改善させるのが望ましいです。乱れた歯並びを正常な位置へと矯正することで、噛み合わせも改善されます。 奥歯の低い噛み合わせを矯正する方法としては、マウスピース型矯正やワイヤー矯正が一般的です。骨格的な異常を伴うケースでは、顎の骨を切除して、上下の顎骨の位置を調整する外科矯正を併用しなければならないこともあります。
歯周治療で歯茎の健康を回復する
歯周病が原因で奥歯の噛み合わせが低くなっている場合は、歯周病治療を行う必要があります。奥歯の噛み合わせが低くなる程、歯茎や歯槽骨が吸収されている状態は、歯周病が進行していることを示します。 歯周病によって失われた歯茎や歯槽骨は、歯周病の基本治療を行っても回復することはなく、根本的に改善するには歯周組織再生療法などが必要となります。歯周病を放置することは、奥歯の噛み合わせを低くする以外のトラブルも引き起こすことから、治療を行わないという選択肢はないといえます。
日常生活での噛み合わせを悪化させないためのケア方法
噛み合わせの悪化を予防するためにできることを紹介します。すでに奥歯の噛み合わせが低くなっている方も、症状がこれ以上進行しないよう、以下のケア方法を実践してください。
歯ぎしりや食いしばりを防止する
歯ぎしりや食いしばりは、歯を摩耗させてしまいますので、可能な限り改善させるべきです。まずは歯ぎしり・食いしばりの原因を知ることから始めましょう。
◎歯ぎしり・食いしばりの原因
歯ぎしりや食いしばりの主な原因は、ストレス、睡眠不足、疲労の蓄積などです。 飲酒や喫煙、カフェインの過剰摂取によっても、歯ぎしり・食いしばりを引き起こしやすいです。日中に起こる食いしばりは、患者さん自身が意識的に抑えることも可能ですが、睡眠中の歯ぎしりは、無意識に起こるものなので予防は難しいです。 睡眠中の歯ぎしりを家族やパートナーに指摘された場合は、歯医者の力を借りるのもひとつの手段です。
◎歯科医院での歯ぎしりの改善方法
睡眠中に起こる歯ぎしりは、ナイトガードと呼ばれるマウスピース型の装置で改善できることもあります。 歯科医院で歯型を取り、患者さん専用のナイトガードを作って、睡眠中に装着します。そうすることで歯ぎしりが歯に与えるダメージを軽減できるだけでなく、顎の位置が正常化されて、歯ぎしりが起こりにくくなるという効果が期待できます。日常生活のセルフケアで改善できない歯ぎしりは、こうしたプロフェッショナルの力を借りた方が賢明といえます。
適切な食事や食べ物の選択をする
毎日の食生活によっても、噛み合わせへの影響は大きく変わります。 ナッツ類やおせんべい、フランスパンなどの硬い食べ物は、歯の摩耗や破折を引き起こすリスクを伴います。もちろん、歯や歯周組織が健康であれば、こうした硬い食べ物を習慣的に食べても大きな問題にはならないのですが、噛み合わせの悪化を防ぐという観点では、推奨できません。 pHの低い飲食物もできるだけ控えた方がよいといえます。pHが低いと酸性度が高いことを意味していますので、歯が溶けやすい食べ物・飲み物を頻繁に摂取していると、むし歯リスクが高くなるとともに、酸蝕症(さんしょくしょう)も発症しやすくなるのです。
◎酸蝕症とは?
酸蝕症とは、酸性の刺激によってエナメル質や象牙質が溶けていく病気です。細菌感染を伴わないため、むし歯とは根本的に異なります。近年、夏場のスポーツドリンクの頻回摂取による酸蝕症が増加していますが、この病気でも歯冠部の歯質が失われることで噛み合わせも低くなります。 ジュース 炭酸飲料 スポーツドリンク ワイン 柑橘系の果物 酢の物 梅干し ドレッシング 上記の食べ物を毎日の食事でお口にすること自体は悪いことではありません。あくまで酸蝕症の原因となるような頻度で飲んだり、食べたりすることが歯の健康によくないのです。
ストレス管理を行う
職場や学校などで強いストレスを受けていると、歯ぎしり・食いしばりや歯周病のリスクが高まります。ストレスによって唾液の分泌量が減ると、むし歯菌の活動も活発化します。ストレスを上手に管理できるようになれば、噛み合わせの悪化につながるお口のトラブルも未然に防げるようになるでしょう。日常生活で大きなストレスを受けている方は、以下の方法で管理してみてください。 ストレスの原因を明確にする 心を落ち着かせる ストレッチや軽い運動で体をリラックスさせる 適度に休憩をとる ストレスを感じていることを友人や同僚に話す 休みの日に趣味の時間を作る。
定期的な歯科検診で噛み合わせチェックを行う
噛み合わせの悪化を防ぐうえで、効果的な方法は定期検診を受けることです。歯科の定期検診では、悪い噛み合わせを早期に発見できるだけでなく、その原因となる症状や習慣、歯の異常を早期に治療することが可能なのです。
◎噛み合わせのチェック
噛み合わせの良し悪しを診断できるのは、歯科医師のみです。まだ自覚症状がない噛み合わせの異常も歯科医師であれば、正確に見極められます。詰め物や被せ物に異常があれば、その場で0.1mm単位の調整を行ってくれることでしょう。
◎歯周病やむし歯の検査
定期検診では、歯周病やむし歯の有無を調べる検査が受けられます。この2つの病気は、噛み合わせを悪くする主な原因でもあるため、予防や早期発見を行う意義は大きいです。
歯周治療で歯茎の健康を回復する
歯周病が原因で奥歯の噛み合わせが低くなっている場合は、歯周病治療を行う必要があります。奥歯の噛み合わせが低くなる程、歯茎や歯槽骨が吸収されている状態は、歯周病が進行していることを示します。 歯周病によって失われた歯茎や歯槽骨は、歯周病の基本治療を行っても回復することはなく、根本的に改善するには歯周組織再生療法などが必要となります。歯周病を放置することは、奥歯の噛み合わせを低くする以外のトラブルも引き起こすことから、治療を行わないという選択肢はないといえます。
まとめ
今回は、奥歯の噛み合わせが低いと感じる原因やそれを放置するリスク、悪い噛みあわせを改善する方法について解説しました。 奥歯の噛み合わせが低くなる原因としては、歯の摩耗、噛み合わせの不良、歯茎・歯槽骨の吸収、歯列矯正後の調整不良などがあげられます。奥歯の噛み合わせが低い状態を放置すると、前歯やほかの歯にダメージが及んだり、顎関節症を発症したりするなど、さまざまなリスクが生じるため、できるだけ早期に改善するのが望ましいです。 悪い噛み合わせを改善する方法は、ケースによって異なることから、まずは歯科医院で診てもらうことが大切です。
参考文献