噛み合わせ

出っ歯によって噛み合わせが悪いとどのような影響がある?原因から治療法まで詳しく解説

出っ歯によって噛み合わせが悪いとどのような影響がある?原因から治療法まで詳しく解説

日本人は、歯と顎の大きさのバランスが不安定で歯並びがきれいに揃っていない方が多いといわれています。

噛み合わせが悪いと口腔や顎の機能にも問題が生じてしまうため、よりよくしていくことが健康を維持していくためにもとても重要です。

この記事では、出っ歯で噛み合わせが悪いことによる影響・原因・治療法を詳しく解説していきます。

また、治療期間や費用の目安についてもご紹介しますので、参考にしていただければ幸いです。

噛み合わせと出っ歯の関係

キレイな歯

正常な噛み合わせとは、上下の歯が正しい位置で接触している状態です。

噛み合わせは歯・筋肉・顎関節・中枢神経が関係しており、どれか一つでも異常があると噛み合わせに問題が生じてしまいます。

出っ歯は上顎の歯並び全体が下顎の骨よりも前に出ていることで上下にずれが生じ、噛み合わせが悪化している状態のことです。

このように噛み合わせと出っ歯は関係しており、問題がある場合は改善していく必要があるでしょう。

出っ歯と噛み合わせについて以下で詳しく解説します。

出っ歯は不正咬合の一種

不正咬合とは歯が揃っていなかったり、上下の歯並びがお互いに噛み合っていなかったりする状態をいいます。

さまざまな状態の不正咬合があり、出っ歯も不正咬合の一種として挙げられています。日本人の出っ歯の割合は12.9%を占めており、不正咬合のなかでは2番目に多い状態です。

出っ歯の種類

出っ歯は専門的には上顎前突といい、次の3種類に分類されます。

  • 骨格性上顎前突
  • 歯槽性上顎前突
  • 機能性上顎前突

骨格性上顎前突とは、上顎の骨と下顎の骨の角度に大きく差があることで、上顎が下顎よりも前に出てしまう骨格に問題がある状態の出っ歯です。

この状態は、上顎の骨が下顎の骨に比べて大きく発達している場合と下顎の骨が後退している場合が考えられます。

実際は、下顎の骨が後退している状態である場合が、日本人の上顎前突の80%を占めるとされています。

歯槽性上顎前突とは、前歯が斜めに突き出てしまっている歯並びに問題がある状態の出っ歯です。

前歯が大きく傾いていることにより、横から見て口元が鼻と同じくらいの高さにあるのが特徴として挙げられます。

機能性上顎前突とは、上の前歯は正常な位置であるにも関わらず、噛むと下顎が後ろに噛み込まれる機能に問題がある状態の出っ歯です。

自身がどの状態の出っ歯なのかを理解し、改善していくことが必要です。

出っ歯と併発することがある不正咬合

出っ歯と併発することがある不正咬合として、過蓋咬合と呼ばれる状態が挙げられます。

過蓋咬合とは、下の前歯が上の前歯の裏側に完全に隠れる状態のことです。下の前歯が上の前歯に食い込むようにあたるため、上の前歯が前に押されて出っ歯になっていくことがあります。

出っ歯で噛み合わせが悪いとどのような影響がある?

歯が痛い女性

出っ歯の状態だとお顔のケガで前歯を折りやすかったり、噛み合わせによって下の前歯が上の前歯の裏側の歯茎を傷つけてしまったりする可能性があります。

また、口腔には発音・嚥下・呼吸・咀嚼などの機能があり、健康な身体を維持していくために必須の役割を担っています。

噛み合わせが悪いとこれらの機能も悪くなることが多いです。正しく口腔機能を活用していくためにも、口腔環境を整えておくことが必要です。

出っ歯で噛み合わせが悪いことで起こる具体的な影響について、以下で詳しく解説します。

むし歯・歯周病のリスクが高まる

頬に手を当てる女性

出っ歯により口呼吸になってしまっている場合、お口の中が乾燥してしまい、むし歯や歯周病の原因であるプラークと呼ばれる細菌の塊が溜まりやすくなります。

お口のなかが乾燥しやすいと、細菌を洗い流すために重要な唾液も少なくなるため、口腔内の細菌が活発に活動してしまうことからむし歯や歯周病のリスクが高くなります。

また噛み合わせが悪いことで、歯磨きがしっかり行き届かずプラークが溜まったり、一部の歯に不自然な圧力が加わり負担がかかったりすることも原因の一つです。

顎関節症のリスクが高まる

顎関節症とは、お口を開けようとすると顎が痛かったり、顎を動かすときにカクンカクンと音がしたりする症状がある病気です。

顎関節症は噛み合わせの悪さが原因だと考えられていましたが、現在は顎関節症と噛み合わせの悪さばかりではなく、さまざまな要因が重なることで発症するという考えが一般的です。

悪い歯並びの影響で、顎関節や筋肉に持続的な負担がかかることにより、顎関節症を引き起こしやすくなるとされています。

しっかり噛めない

食べ物は上下の歯がきちんと噛み合っていないと、食べ物をうまく噛むことができません。

噛み合わせが悪いままの状態だと食べ物を自然に噛むことが難しくなり、顎の負担にもなってしまいます。

また、しっかり噛むことで抗菌作用でもある唾液が分泌され、むし歯や歯周病の予防にもなります。

正しい噛み合わせで食事ができることは健康の基本です。十分に噛めなくなると食べ物を飲み込むときの舌や喉の動きにも異常がでてきます。

噛み合わせが悪い方は医療機関に相談してみるのがよいでしょう。

発音しにくくなる

言葉を話すためには音を作り出す口唇・舌・下顎などの器官に脳から指令を送り、舌の形を変えたり、口唇を動かしたりすることで音が作られます。

噛み合わせが悪いと舌や唇が適切な位置に配置されず、発音が不明瞭になることがあり、サ行・タ行・パ行・ラ行などの発音が難しくなるとされています。

頭痛・肩こり・腰痛の原因になることがある

頭が痛む若い女性

噛み合わせの異常が頭痛の原因になっているかは明確にはなっていませんが、噛み合わせを治療することにより、頭痛が改善することは少なくないとされています。

頭痛にはさまざまなタイプがあり、上顎前突による頭痛は緊張型頭痛が多く見られており、頭痛発症率は57.5%です。

また、噛み合わせが原因で左右の筋肉がアンバランスである場合、肩こりや腰痛などが間接的に引き起こされることがあります。

外見のコンプレックスを抱えやすい

出っ歯や噛み合わせの問題として咀嚼や発音などが挙げられますが、見た目が損なわれることによって起きる社会生活の不都合や心理的ストレスも大きな問題の一つです。

国内において、患者さん自身の不正咬合の原因となる心理背景を調査したところ、中学生あるいは青年前期以降から不正咬合に対するこだわりや劣等感が強くなるといわれています。

近年は、歯科治療に対する社会全体の意識の向上が見られ、同時に美意識の高まりによって余計に外見のコンプレックスを抱えやすいと考えられます。

噛み合わせが悪い出っ歯の原因

ベッドの上でいびきをかき寝る女性

口腔機能の問題は、骨格などの先天性の場合もありますが、大部分が乳幼児からの習慣が繰り返され習癖になっていくことが原因だと考えられています。

それぞれの家庭環境や生活習慣のなかで教わったり真似したりしながら癖として残り、繰り返すことによって口腔の形態が悪くなります。

出っ歯の原因はその他にどのようなものが挙げられるのでしょうか。以下で詳しく解説します。

遺伝

親子で身体つきが似てくるように、歯の形状や大きさ、顎の大きさなどは遺伝しやすいとされています。

必ずしも遺伝するものではありませんが、親族のなかに出っ歯がいる方は先天的に出っ歯となる可能性が高くなります。

指しゃぶりや癖

指しゃぶり

指しゃぶりとは、生後2〜4ヶ月以降の赤ちゃんが指を吸う行為であり、発達していくうえで自然な行動です。

しかし、指しゃぶりが何年も続いてしまうと圧力によって歯が少しずつ傾き、移動していくことで出っ歯になっていくとされています。

口呼吸

口呼吸とは、文字どおりに鼻ではなくお口から空気を吸って吐く呼吸法です。

お口で呼吸をしてしまう原因にはさまざまな問題がありますが、出っ歯などの口腔内の構造的な問題も一つの原因として挙げられます。

出っ歯は上顎の骨が下顎の骨よりも前に出てしまっていることからお口が閉じにくく、口呼吸になってしまうのが原因です。

繰り返すと出っ歯が悪化してしまう可能性があるとされているので、癖になっている方は改善を心がけましょう。

出っ歯で噛み合わせが悪い場合の治療法

歯の矯正

出っ歯で噛み合わせが悪い場合、歯列矯正を行っている医療機関で出っ歯の原因や自分の歯の形態を詳しく検査をしてもらうことが必要です。

それによって、適応する装置の選択や抜歯などが検討されていきます。

歯列矯正によって歯を整えることは年齢問わず可能ですが、その際に歯茎や歯を支えている骨が健康であることが必須条件です。 以下で具体的な治療方法を解説します。

歯列矯正

歯列矯正は矯正器具を使って歯を動かすことで歯並びを整え、噛み合わせを改善して健康な生活を送れるように行うものです。

特殊な病気による不正咬合の歯列矯正治療を除いては、基本的には自費扱いで保険適用されません。保険診療が適用になるには、次のような場合です。

  • 厚生労働大臣が定める疾患
  • 顎を手術で動かして治療する必要がある
  • 前歯が3本以上生えてこないことの噛み合わせの問題

上記に挙げられたものが保険適用となる医療機関は、厚生労働大臣が定める施設基準に適合し、地方厚生(支)局長に届け出た保険医療機関のみになります。

歯列矯正には、一般的に歯の表側からつけるマルチブラケット装置を使用することが多いです。

費用と期間についてですが、マルチブラケット装置は一般的な総額で800,000〜1200,000円(税込)とされています。

治療期間は通常の不正咬合の場合、装置を装着している期間が2〜3年程度です。

簡単な治療で改善する場合には半年程度で済むこともありますが、長時間の治療が必要な場合では、費用がかさむ場合もあるため受診する医療機関でよく確認しましょう。

地域や医院によって差がありますので、医療機関に相談し検討するのがおすすめです。

MFT

MFTとは正式名称で口腔筋機能療法といい、お口の周りの筋肉のトレーニングをすることで、歯並びや舌の癖を改善する療法です。

本人が癖を自覚し、やめようと思ったときからMFTを始めると効果的とされています。費用は3,000〜10,000円(税込)程度ですが、2018年より口腔機能発達不全症と診断された場合に保険適用が可能となっています。

口唇や舌の動きを正しくすることで、歯列矯正もスムーズに進められるメリットがあり、治療後の噛み合わせも安定するでしょう。

出っ歯の噛み合わせを治療するメリット

女性の歯

出っ歯の噛み合わせを治療するメリットには、次のようなものが挙げられます。

  • 噛み合わせの改善
  • 口呼吸の改善
  • 見た目の改善
  • 発音の改善
  • ストレスの軽減

上記に挙げられたものが改善していくことで、口腔機能を正しく使うことができ心身ともに健康な状態を維持することができるでしょう。

また、口呼吸の改善はむし歯や歯周病のリスクだけではなく、感染症のリスクも減らすことができます。

見た目の改善にもつながり、心理的なストレスも軽減されるメリットもあります。

出っ歯によって噛み合わせが悪くなるのを予防する方法

歯科衛生士

出っ歯によって噛み合わせが悪くなるのを予防する方法には、次のようなものが挙げられます。

  • 口唇閉鎖
  • 舌の挙上
  • 歯周病の予防
  • 親知らずの抜歯

口唇閉鎖とは、お口を閉じた状態のことを指します。

安静時に口唇を軽く閉じることは、鼻呼吸を行ううえで重要です。

お口を閉じる力を鍛えるために、ボタンと糸を用いたボタンプル法が効果的だとされています。

ただし、口唇閉鎖のトレーニングを中止した数週間後に口唇閉鎖力の低下がみられたことから、トレーニングは継続していくことが重要だと考えられています。

舌が正常な位置よりも下がっている状態の方には、舌を上げる筋力のトレーニングが必要です。

舌を上に上げて舌の先を口蓋におき、お口を開け閉めして舌の筋力を強めます。唇を閉じた状態で、舌が上顎におさまっているのが好ましい舌の位置です。

舌の筋力が強まることは、発音や嚥下などの機能でもとても大切になってきます。

その他、歯周病の予防や親知らずの抜歯なども、出っ歯による噛み合わせの悪化を予防する方法として有効です。

まとめ

食事をしている女性

歯列矯正は、成長期とともに小・中学生頃から行うのがよいとされていますが、近年では 30代・40代の方でも歯列矯正を行うことが可能です。

2016年の歯科疾患実態調査によると、40代後半から20本以上の歯を有する方の割合は少しずつ減少し始めています。

成人の場合は歯の移動が円滑でないため治療期間が長くなるケースも考えられますが、出っ歯が気になる場合には健康のためにも一度、歯科医院に相談することをおすすめします。

参考文献

この記事の監修歯科医師
木下 裕貴歯科医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

木下 裕貴歯科医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

北海道大学歯学部卒業 / 医療法人社団天祐会 副理事長 / 専門はマウスピース矯正、小児矯正

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