マウスピース型矯正のインビザラインは、樹脂製のマウスピース(アライナー)を装着するだけで歯を動かせることから、トラブルも少ないという特徴があります。そんな中でも「インビザラインが浮いている」と感じる症状は、多くの患者さんが経験します。ワイヤーが粘膜を刺激する痛みやブラケットの脱離などと比べたら、深刻度は低い症状となりますが、ケースによっては注意が必要な場合もあります。ここではそんなインビザラインが浮いていると感じる原因や対処方法、注意点などを詳しく解説します。
インビザラインが浮いてしまう原因
そもそもインビザラインのアライナーはなぜ浮いてしまうのか。その原因から解説します。
- なぜインビザラインが浮いてしまうのですか?
- インビザラインのアライナーが浮いてしまう主な原因としては、以下の5つが挙げられます。
◎定位置に装着できていない
インビザラインのアライナーが浮いてしまう場合にまず確認すべきは装着位置です。アライナーの装着位置が高いと、当然ですが浮いていると感じます。こうした症状が現れる患者さんは、アライナーの装着時にチューイーを使用していないケースが多いです。チューイーとは、シリコンで作られたロール状の補助器具で、アライナーを装着する際に噛むことで浮き上がりを防止できます。そのためアライナーの浮き上がりを経験したことがある方は、指の感覚だけに頼らず、チューイーを使用するようにしましょう。
◎アライナーの形に不備がある
インビザラインのアライナーには、不良品が含まれている場合があります。また、アライナーの着脱回数が多かったり、取り扱い方法に不備があったりすると、装置の変形や破損を招くことで歯列にぴったり合わなくなることがあります。その結果としてアライナーの浮き上がりが生じるのです。
◎アライナーの装着時間が不足している
インビザラインのアライナーは、1日20〜22時間装着する必要があります。この装着時間が不足していると、歯が計画通りに動かず、歯列とのズレが大きくなることがあるため注意が必要です。こうしたケースでインビザラインが浮いていると感じる症状は、アライナーの装着時間をきちんと守ることで改善されやすいです。
◎歯の小さい、歯の高さが低い
歯というのは、1本1本でサイズや高さが異なります。歯の中にはサイズが標準よりも小さかったり、高さが低かったりすることもあり、インビザラインのアライナーがフィットしにくいケースもあるのです。こうしたケースでは、インビザラインが浮いていると感じるかもしれません。
◎アタッチメントに不具合がある
インビザラインは、アタッチメントと呼ばれるパーツを使用することがあります。このアタッチメントの不具合がアライナーの浮き上がりの原因となる場合もあります。詳細は後段で解説します。
- アタッチメントの不具合でアライナーが浮いてしまうことはありますか?
- あります。アタッチメントとは、歯の表面に接着するレジン製の突起物で、もともとはアライナーの浮き上がりを防止したり、矯正力を高めたりする目的で使われます。そんなアタッチメントに不具合が生じると、アライナーを歯列にフィットさせることが難しくなることから、浮いていると感じるようになります。
- アライナーやアタッチメントが不具合を起こしてしまう原因を教えてください。
- アライナーに不具合が生じる主な原因は、不適切な取扱いやケア方法です。例えば、アライナーを着脱する際に力をかけすぎたり、熱湯で洗浄したりすると変形することがあります。アタッチメントの不具合は、食事の際に過度な力がかかったり、口腔ケアでアタッチメントに過剰な圧力を加えたりすることが原因となりえます。
インビザラインが浮いたときの対処方法
次に、インビザラインのアライナーが浮いたときの対処法を解説します。
- インビザラインが浮いてしまうときの対処方法はありますか?
- インビザラインのアライナーが浮いたときの対処としては、以下の3つが挙げられます。
◎チューイーを使用する
インビザラインのアライナーが浮いている感じた場合は、まずチューイーを使用してみましょう。アライナーが浮いていると感じている部分を重点的に噛むことで、症状を改善しやすくなります。ただし、この方法が有効なのは、アライナーの装着位置が高い場合に限られます。その他の原因でインビザラインのアライナーが浮いていると感じるケースには、それぞれに適した方法で対策しなければなりません。
◎ひとつ前のアライナーに戻す
アライナーの装着時間が足りないことで浮いている場合は、ひとつ前のアライナーに戻すことで症状が改善されるかもしれません。ひとつ前のアライナーに戻したら、装着時間をしっかり守って経過を見ていきましょう。
◎アライナーを作り直す
インビザラインが浮いていると感じる原因がアライナーの不具合である場合は、作り直しも視野に入れる必要があります。もともと不良品であったケースはもちろんのこと、不適切な取り扱いで変形してしまったケースも主治医に相談することでアライナーを作り直してもらえます。その際、費用が追加でかかることがありますし、マウスピースが複製されるまでの数週間分は、治療期間が延びることになるため、アライナーの変形等には十分注意しましょう。
- チューイーとは何ですか?
- チューイーとは、インビザラインのアライナーを正しく装着するための補助器具です。シリコンで作られたロール状の器具で、必ず歯科医院から配布されます。正しい使用方法は、インビザラインを始める際に指導してもらえます。
- チューイーの正しい使い方を教えてください
- チューイーは、上下のアライナーの間に挟む形で使用します。一般的にはチューイーを前歯から噛み、徐々に奥へと移動していきます。最後に全体で均等に噛むことで、アライナーの浮き上がりを防止できます。インビザラインを始めたばかりでまだ慣れていない方は、チューイーを噛み込んだあとも鏡で浮き上がりがないかチェックしましょう。
- チューイーを使用しても浮いてしまうときの対処方法はありますか?
- 適切な方法でチューイーを使用しても浮いてしまう場合は、原因に応じた対処が必要となります。アライナーの装着時間が不足していることで浮き上がりが生じているケースには、ひとつ前のアライナーに戻す方法が有効です。アライナー自体に不具合が生じているケースは、装置の作り直しが必要となるかもしれませんので、まずは主治医に相談しましょう。
インビザラインが浮く場合の注意点
最後に、インビザラインのアライナーが浮いてしまう場合に注意すべき点について解説します。
- インビザラインが浮いたままになる場合は何に注意すべきですか?
- アライナーの浮き上がりが許容範囲を超える場合は、その状態を放置することで歯や口腔粘膜に不適切な圧力や刺激が加わるかもしれません。アライナーの変形の仕方によっては、歯並びがかえって悪くなることもありえるため、放置はせずに対処する必要があります。
- インビザラインが浮く問題は歯科医院で解消できますか?
- 多くのケースで、解消が期待できます。まず、アライナーの装着方法の誤りによって浮き上がりが生じている場合は、歯科医師によってその問題を指摘してもらえます。アライナーの形が悪い場合は、作り直すことで浮き上がりの症状を改善できます。それでも改善が望めない場合は、後段の方法も視野に入れる必要があります。
- もし、インビザラインの浮きが解決しない場合は、別の歯列矯正方法に変更となりますか?
- 患者さんの歯並びによっては、インビザラインだけで適切に歯列矯正できない場合もあります。こうしたケースでは、部分的にワイヤー矯正を併用したり、完全にワイヤー矯正へと移行したりする方法も検討しなければなりません。
編集部まとめ
今回は、インビザラインのアライナーが浮いている原因や対処方法、注意点などを解説しました。インビザラインのアライナーは、チューイーを使用せずに装着したり、アライナーの形に不具合があったりすると、歯列にぴったりフィットせず浮き上がることがあります。こうしたアライナーの浮き上がりは、それぞれ適した対策をとることで改善できるケースがほとんどです。それでも改善が見込めないケースでは、インビザライン以外の歯列矯正を検討しなければならないかもしれません。いずれにしてもアライナーの浮き上がりに困っている場合は、主治医に相談するとよいでしょう。
参考文献