インビザライン(※)は、アメリカのアラインテクノロジー社が開発したマウスピース型カスタムメイド歯列矯正装置です。
CAD/CAM技術により透明な専用のマウスピースを大量に作ることができるため、コンタクトレンズのようにマウスピースを交換しながら治療できます。
この記事ではインビザラインが用意しているプランの特徴と費用および期間、さらにインビザラインのメリットとデメリットを解説します。
(※)未承認医薬品等であるため医薬品副作用被害救済制度の対象とはならない可能性があります。
インビザラインの種類と特徴
マウスピース型カスタムメイド歯列矯正装置は自分で取り外しができる可撤式に分類され、ワイヤーもブラケットもないため目立ちにくく治療を検討する方も少なくありません。
インビザラインとはアメリカのアラインテクノロジー社のマウスピース型カスタムメイド歯列矯正装置です。
CAD/CAM技術を用いて透明なマウスピースを大量に作成できるため、コンタクトレンズのように交換しながら治療が進められます。
そんなインビザラインですが、実は多くの種類があります。それぞれのインビザラインの特徴と違いについて正しい知識を身につけておきましょう。
インビザライン・フル
インビザライン・フルは、インビザライン・コンプリヘンシブとも呼ばれるお口全体の歯列矯正を行うプランで、重度の歯並びの歯列矯正に適しているのです。
使用できるマウスピースが無制限であることから長期の治療に適しており、重度の不正咬合や動くまで時間がかかる大臼歯の治療に向いているでしょう。
インビザライン・フルでは3年間で3回マウスピースを追加できるプランと、5年間ほぼ無制限にマウスピースを追加できるプランがあります。
このようにマウスピースの使用に制限がないので、ほかのプランでマウスピースが不足した際にこちらのプランに変更することもできます。
価格はほかのプランよりも高く、インビザライン・ライトが上下顎550,000円(税抜)に対しインビザライン・フルは850,000円(税抜)と約1.5倍です。
インビザライン・ライト
インビザライン・ライトは軽度の歯列不正や臼歯部に適した透明なマウスピースで、価格は上下顎で550,000円(税抜)および片顎のみで450,000円(税抜)と インビザライン・フルのおよそ半分から3分の2の価格です。
インビザライン・フルと同様にすべての歯を移動できますが、使用できるマウスピースが14個と決まっているため長期の治療計画を立てることはできません。
つまり治療まで時間がかかる重度の不正咬合の治療には適さないプランです。移動量が少ない軽度の不正咬合にちょうどいいプランでしょう。
もし当初の見込みよりも治療期間が伸び、マウスピースが足りなくなった場合はインビザライン・フルに変更します。
インビザライン・エクスプレス
インビザライン・エクスプレスは、インビザライン・ライトよりも使用できるマウスピースが少ない代わりに治療期間と費用を抑えたプランです。
使用できるマウスピースは7個とインビザライン・ライトの半分で、動くのに時間がかかる大臼歯は対象外と考えましょう。
裏を返せば大臼歯の噛み合わせが良好で、歯列に少しだけ気になる箇所がある方や歯列矯正後の後戻り治療にも適しています。
後戻りとは歯列矯正後の保定期間に歯列矯正前に戻ろうとする現象で、ワイヤー歯列矯正でもマウスピース歯列矯正でも発生します。
上下顎で400,000円(税抜)および片顎350,000円(税抜)と手頃な値段で後戻りを治療できる点は、インビザライン・エクスプレスの魅力でしょう。
インビザライン・ティーン
小児歯列矯正は0期・1期・2期と分かれており、インビザライン・ティーンは2期治療にあたります。
混合歯列期の6歳から12歳までを対象としたインビザライン・ファーストに対して、インビザライン・ティーンは13歳から16歳の成長期を対象としたプランです。
インビザライン・ファーストに比べると骨の成長をコントロールしにくくなっていますが、成人よりは動かしやすいでしょう。
インビザライン・ファースト同様、開咬などの不正咬合に対応しています。
インビザライン・ファースト
インビザライン・ファーストは混合歯列期の6歳から12歳までの永久歯が萌出しきっていない方をターゲットにした小児歯列矯正プランです。
小児歯列矯正は0期・1期・2期と治療が分かれており、インビザライン・ファーストは1期に相当します。1期治療の期間は1年半から2年程で、治療を終えると要望に応じて2期治療へと進むでしょう。
混合歯列期は歯や顎骨のコントロールがしやすい時期であり、この時期に痛みを抑えながら歯列矯正できることがインビザライン・ファーストの特徴です。
多くの不正咬合に対応しており、上顎前突や反対咬合だけでなく開咬や過蓋咬合も改善できるでしょう。
顎骨は10歳で8割成長するため、インビザラインを使用できる年齢になったら歯列矯正することを推奨します。価格は550,000円(税込)でインビザライン・フルに比べると安価です。
インビザライン・GO
インビザライン・GOは部分歯列矯正を目的としたプランで、特に前歯を対象とします。部分歯列矯正とはすべての歯並びを対象とするのではなく、前歯などの一部の歯列だけを対象とする治療方法です。
そのためインビザライン・GOを利用する患者さんに不正咬合で生活に支障が出る方はおらず、前歯の離開が気になる程度でしょう。
治療期間は1年2ヵ月程で330,000円(税込)、通院も3ヵ月に1回程度です。抜歯は想定しておらず、健康な歯を温存しながら歯列矯正治療が受けられます。
自分の歯列に大きな不満はないものの少しだけ歯列矯正に挑戦したい方に推奨できるプランで、入門用インビザラインといっても過言ではありません。
インビザラインの治療の流れ
歯列矯正装置はマルチブラケット装置のような固定式でも、インビザラインのような可撤式でも、初診・動的歯列矯正治療期間・保定期間の3つのプロセスをたどります。
初診では、初診後にX線撮影などの精密検査で治療計画を立案します。精密検査の1ヵ月後に治療の方法と期間および費用を説明し、患者さんが納得すると動的歯列矯正期間に移行します。
動的歯列矯正治療期間では作成したインビザラインを実際に装着してもらい、1ヵ月に1回の間隔で通院するでしょう。
その間患者さんは1日20時間以上インビザラインをつけ続け、歯が少しずつ動きだします。動的歯列矯正治療が無事終わると不正咬合ではないきれいな歯並びとなっているでしょう。
最後にきれいな歯並びが不正咬合に戻らないように保定装置を取り付けて、歯磨きの指導を受けると治療は終了します。
インビザラインの費用の目安
歯列矯正治療は先天性疾患がある場合に限り保険が適用されますが、それ以外では原則自費診療となり保険適用外でしょう。
治療費は不正咬合の状態と種類により上下しますが、基本的に長期間の治療となるため保険適用外も相まって1,000,000円(税込)以上の高額となります。
歯列矯正器具は大まかに分類するとマルチブラケット式のように歯の表面に接着する固定式と、インビザラインのように患者さん自身が取り外しできる可撤式の装置に分類できます。
しかしどちらを選択しても高額であることに変わりはないため、治療の内容を考慮して歯列矯正方法を選びましょう。
インビザラインの装着期間
歯列矯正治療は初診・動的歯列矯正治療期間・保定期間の3つのプロセスをたどります。
このうち動的歯列矯正治療期間は半年から2年程度が平均で、患者さんは毎日20時間以上つけることを求められます。
しかしインビザラインは患者さん本人がお口から取り外し可能な可撤式の装置なので、食事の際に取り外す場合やどうしてもお口から外す場合などで柔軟に取り外すことができるでしょう。
加えてインビザラインは1〜2週間に1回新しいマウスピースに取り替えるため、体感時間は短いかもしれません。ただ、歯の動き具合によって治療途中で変更することもあります。
この長期間に及ぶ動的治療に診断時間と保定期間を加えると、1年から4年程度が平均となります。
インビザラインのメリット
マウスピース型カスタムメイド歯列矯正装置のメリットは目立ちにくいことですが、そのほかにも多くのメリットがあるため解説します。
適応症例が多い
インビザラインは患者さんひとりひとりに合わせて先進的なCAD/CAM技術を用いて作成されるため、幅広い症例に対応します。
CAD/CAMとはPCを使用して設計や生産を行う技術でありCADはComputer Aided Designの略でPCを使った設計支援、CAMがComputer Aided Manufacturingの略でPCによる製造支援を意味するでしょう。
歯科技術のCAD/CAMとは、インビザラインのような口腔内の装着物をCADとCAMを用いて設計と作成する技術です。
患者さんの口腔内を3Dカメラでスキャンし、そのデータを使用して専用の加工機で一度にたくさんのインビザラインを製造します。
衛生的で目立ちにくい
インビザラインは患者さんが取り外し可能な可撤式の歯列矯正器具であるため食事の際に取り外すことができます。
加えて使い捨てのコンタクトレンズのように2週間毎にインビザラインを交換するため、マルチブラケット装置のような固定式の歯列矯正器具と比較して衛生的です。
またインビザラインは透明であり周囲に気付かれにくいです。そのため、歯列矯正中でも気にせず食事を楽しめるでしょう。
多くの患者さんがこの点をマウスピース型カスタムメイド歯列矯正装置メリットして挙げることから、患者さんのQOLを向上しているでしょう。
痛みが少ない
ゆっくりとはいえ歯列矯正器具で歯の並びを変えるため、歯列矯正のイメージに痛みはつきものです。
実際マルチブラケット装置のような固定式の歯列矯正器具はワイヤーで強く歯を締め付けるため、ご飯も食べられない辛い経験をしている患者さんが少なくないでしょう。
一方インビザラインは歯を0.1mm単位で動かすことに加え、もしトラブルが発生しても取り外せるために対処が簡単です。
またワイヤー歯列矯正は歯を抜くことで生まれたスペースに歯を動かし理想の歯並びを実現する歯列矯正器具ですが当然痛みを伴うでしょう。
インビザラインは叢生のように歯がデコボコであっても、抜歯を必要とせずに歯列矯正を行えるケースがあります。ただ、抜歯が不要かどうかは個々の状態によるため、インビザラインでも抜歯が必要なケースはあります。
その場ですぐシミュレーションができる
インビザラインはPCを用いたCAD/CAMで制作されるため、シミュレーションができます。シミュレーションはメカニズムの検証に用いられ、そのためのモデルの作成から始めます。
モデルは歯科用CTで撮影した断面画像などから作成するため、初診後の精密検査がいかに重要かわかるでしょう。次にモデルで使う係数を測定します。
その後、計算を繰り返すと歯の移動のシミュレーションに成功します。シミュレーションに成功すると、移動のメカニズムが検証され考察へ進むのが一般的です。
この考察をもとに歯科医師は治療計画を立て、動的治療へと至ります。
通院回数が少ない
2週間ごとに使い捨てのコンタクトレンズのように新しいマウスピースと交換するインビザラインですが、通院は2~4ヵ月に1回程でありマルチブラケット装置のような固定式の歯列矯正装置の治療に比べると通院回数が少ないです。
マルチブラケット装置では1ヵ月に1回となっています。治療期間そのものは24ヵ月から30ヵ月で変化がない点を考えると大きな違いです。
インビザラインは患者さん自身でマウスピースの交換を前提とし、マルチブラケット装置は歯科医師が装置の調整をする点が違いを生んでいるでしょう。
インビザラインのデメリット
インビザラインは患者さん自身でマウスピースを取り外せるメリットがある一方で、患者さんに負担をかける点もあります。
長時間装着する必要がある
インビザラインの想定装着時間は1日20時間以上です。
残りの4時間は食事やどうしても外さなければいけない状況に使う時間であり、実質1日中マウスピースをお口のなかに入れておかなければなりません。
いくら透明でQOLが伸びているとはいえ、負担がないとはいえません。
適応できない症例がある
インビザラインはCAD/CAMもあり多くの症例に適応しますが、歯の移動距離が遠い場合や重度の不正咬合の場合は対応できない場合があるので注意しましょう。
これらはマルチブラケット装置のような固定式の歯列矯正器具を使うべきです。
また骨格そのものが原因で発症する不正咬合の場合も、インビザラインでは対応が難しいでしょう。
アタッチメントの装着が必要なケースがある
インビザラインはインビザラインをはめるだけでなく、その前に歯の表面にアタッチメントという歯と同じ色の小さな突起物をつけます。
これをつけるとマウスピースがしっかりと歯をつかみ3次元的な歯の移動を可能にします。もしつけなければ歯が浮いてしまい、特に前歯部分のインビザラインが浮くことが少なくありません。
ところで、このアタッチメントはインビザラインを間違った方法で外したときに取れることがあります。
もしアタッチメントが取れたことに気付かずにインビザラインを使い続けると治療の効果が十分に得られないばかりか、インビザラインの破損や歯茎にダメージを与えるリスクとなります。
まとめ
この記事ではインビザラインの種類やそれぞれの特徴、治療費用と治療期間をまとめました。
インビザラインはアメリカのアラインテクノロジー社が開発したマウスピース型カスタムメイド歯列矯正装置です。
CAD/CAMの技術により透明なマウスピースを一度に大量に作ることができるため、コンタクトレンズのようにマウスピースを交換できます。
インビザラインはターゲットに応じたプランを用意しており、それぞれに費用と治療期間およびマウスピースの作製回数が決まっています。
重度の不正咬合に悩まされている方だけではなく、前歯だけ気になる方などにおすすめの入門用プランも用意されているので興味を抱いた方は専門機関で受診しましょう。
参考文献