マウスピース矯正

歯列矯正でリテーナーだけ作りたい場合の費用は?リテーナー製作の流れや注意点も解説

歯列矯正でリテーナーだけ作りたい場合の費用は?リテーナー製作の流れや注意点も解説

歯並びの乱れを細かく整える歯列矯正。専用の装置を使って歯を人為的に動かすことから、歯列矯正には、後戻りのリスクを伴います。リテーナーは後戻りを防止するため、歯の移動が完了してから数年間、使い続けることになります。

そのため、保定期間中にリテーナーが変形したり、破損したりするケースは珍しくなく、「リテーナーだけ作りたい」という需要は少なくありません。ここでは歯列矯正でリテーナーだけ作りたい場合の費用や製作の流れ、注意すべき点などをわかりやすく解説します。

リテーナーだけ製作できるのか

リテーナーだけ製作できるのか 歯列矯正は、歯を動かす動的治療から歯並びを固定する保定処置まで、一連の流れのなかで進行していくため、そもそもリテーナーだけ製作できるのかどうかが気になる点です。

リテーナーだけ製作できるケースとリテーナーだけ製作するのが難しいケースの2つにわかれます。

製作できるケース

歯列矯正のリテーナーだけでも製作することが可能です。リテーナーは、今の歯並びを維持するための装置で、歯を動かす動的治療より複雑な役割を担っていません。

歯列矯正を受けた歯科医院であれば、検査や治療に関する資料がすべてそろっており、リテーナーを作り直すことも難しくはないでしょう。動的治療が終わってからしばらく経過し、ほかの歯科医院でリテーナーの製作を依頼する場合でも対応してくれるでしょう。

ただし、あらためて検査や歯型取りを行う必要性が出てくるため、リテーナーを作り直す費用がやや高くなったり、製作期間が長くなったりすることがあります。

製作が難しいケース

リテーナーだけの製作は、次の3つのケースに該当すると難しくなります。

◎歯科医院がリテーナーだけの製作に対応していない

歯科医院の方針によっては、リテーナーだけ作りたいという要望に応えられないことがあります。院長の考え方や診療体制などによって決まるものなので、外部からどうこういえることではありません。

リテーナーだけ作ってもらった経験があったとしても、今回受診した歯科医院がリテーナーだけの製作に対応していないのであれば仕方ありません。

◎歯並び・噛み合わせの状態が極端に悪い

歯並びや噛み合わせの状態が悪い場合もリテーナーだけの製作が難しくなります。重度の乱ぐい歯や出っ歯、開咬などの症状が見られると、リテーナーの製作の難易度が高まるためです。重度の歯列不正や咬合異常がある状態で保定することは、デメリットが生じるため、歯列矯正をやり直した方がよいかもしれません。

◎むし歯や歯周病にかかっている

むし歯や歯周病を患っていたら製作を断られる可能性が高いです。むし歯や歯周病は自然に治らず、進行性の病気であることから、放置していると悪化します。

むし歯は歯質の溶解によって歯冠の形が変わり、歯周病では歯の安定性が低下していきます。治療せずにリテーナーを作るのは、技術的にも倫理的にも難しい場合があります。

リテーナーの種類によってはむし歯や歯周病の影響を受けにくいことから、そのまま製作する場合もありますが、病気を放置するという選択肢は避けましょう。

リテーナーの種類と費用相場

リテーナーの種類と費用相場 歯列矯正のリテーナーだけ作りたい場合は、費用がどのくらいかかるのか気になるところです。治療費の総額にリテーナーのコストまで含まれていたケースだと、リテーナーだけ作りたい場合の費用はどのくらいになるのかイメージしにくいことでしょう。

マウスピースタイプ、ワイヤータイプ、プレートタイプという代表的な3種類のリテーナーの費用相場を紹介します。

マウスピースタイプ

マウスピースタイプのリテーナーは、1〜2万円程度が相場となっています。

透明な樹脂で作られたマウスピースタイプのリテーナーは、何もつけていないように見えるため、保定期間中の審美性を重視する方に推奨されるリテーナーです。

マウスピースタイプのリテーナーは、上下の歯列で別々に装着し、歯全体を覆うような形となることから、噛み合わせを安定させることは難しいです。夜間に歯ぎしりや食いしばりをする習慣がある場合は、リテーナーの破損に注意しましょう。

ワイヤータイプ

ワイヤータイプの費用は、2~5万円程度が相場となっています。

歯列の裏側に金属製のワイヤーを付けて、歯科用レジンで固めるタイプのリテーナーです。固定式リテーナーに分類され、患者さん自身がつけたり外したりすることはできません。ワイヤータイプでは金属材料を使用するものの、歯列の裏側に装置が固定されることから、目立つことはありませんが、不潔になりやすい点は注意が必要です。

プレートタイプ

プレートタイプのリテーナーだけ作る場合は、2〜6万円程度の費用がかかります。

ワイヤーとプレートからなるリテーナーで、患者さんが自由に着脱できるタイプです。ワイヤーは部分的にプラスチックに置き換えることが可能ですが、マウスピースタイプや固定式のワイヤータイプと比較すると、どうしても目立ってしまいます。抜歯をしたケースでは、歯列全体をワイヤーで囲むベッグタイプリテーナー、非抜歯のケースでは主に前歯の部分をワイヤーで囲むホーレータイプリテーナーが適応されます。

リテーナー製作の流れ

リテーナー製作の流れ リテーナーだけ作る場合の診療の流れを解説します。ここでは歯を動かす治療を行った歯科医院以外でリテーナーだけ作り直すケースを想定しています。

カウンセリングと治療計画の説明

歯列矯正でリテーナーだけ作る場合でもカウンセリングと治療の説明は必要となります。

カウンセリングの際には、これまでの経緯や現在の状態などを歯科医師に細かく伝える必要があります。カウンセリングのときにリテーナーだけ作る場合の費用や手順なども正確に聞いておかなければなりません。

口腔内スキャンと歯型採取

現在の歯並びを詳しく調べるため、歯型取りを行います

歯科医院の設備や製作するリテーナーの種類によっては、口腔内スキャンで歯型取りを行います。一般的には、印象トレーにシリコーン材料を盛ってお口のなかに入れる印象採得を実施します。口腔内スキャンと印象採得の両方を行うこともあります。

リテーナー製作と調整

お口のなかや歯並び・噛み合わせの状態を診査して、歯型採取も行ったら、リテーナーの製作へと入ります。

リテーナーの作製は完成までに数週間かかるのが一般的です。リテーナーが完成したら再び歯科医院を受診して装着し、細かい調整を加えます。

見た目や装着感に問題があったら、遠慮せずに相談することが大切です。見た目や適合の悪いリテーナーを装着することは、患者さんの心身に大きな負担をかけます。

装着確認と定期的なメンテナンス

リテーナーだけ作った後も、歯科医院へ定期的に受診するのが望ましいです。

普段から、リテーナーを正しく扱えているのかチェックしてもらえます。ワイヤーの変形やプレートの破損など、リテーナーの不具合に関しても定期的な通院でメンテナンスしてもらえるでしょう。リテーナー装着後の通院の頻度は3〜6ヶ月に1回となります。

歯列矯正でリテーナーだけ作りたい場合の注意点

歯列矯正でリテーナーだけ作りたい場合の注意点 歯列矯正でリテーナーだけ作ることは決して珍しくありませんが、いくつか注意しなければならない点があります。

重度の歯列不正や咬合異常がある場合は製作できない

歯列矯正のリテーナーは、歯並びや噛み合わせの状態が悪いケースでは製作が難しいです。

乱ぐい歯や反対咬合などで上下の歯が正常に噛み合っていない状態でリテーナーを作っても、適切な保定効果は得られにくいです。重度の歯列不正や咬合異常がある状態は、歯列矯正を行っていない可能性が高いです。重度の歯列不正や咬合異常を放置していると、さらに悪い症状へと発展しかねませんが、歯列矯正を行わずにリテーナーだけで対処するのも正しい方法ではありません。

患者さんの歯並び・噛み合わせの状態によっては、リテーナーを製作することが物理的に困難なケースもあるため、歯科医師と治療法について相談した方がよいでしょう。

むし歯や歯周病が未治療だと悪化するリスクがある

むし歯や歯周病が未治療の状態でリテーナーを作ることはリスクを伴います。そのなかの一つが病気の悪化です。

リテーナーにはいくつかの種類があり、それぞれ構造や着脱方法が異なるため、衛生面における影響にも違いが見られますが、何もつけていない状態より不潔になります。むし歯や歯周病を患っている場合は、リテーナーを作る前にこれらの治療を終わらせておいた方が賢明です。むし歯が重症化して歯を大きく削ったり、歯周病の末期症状で歯を失ったりすると、製作したリテーナーの適合が悪くなって作り直しを余儀なくされる可能性もあります。

リテーナーの管理が不十分だと作り直しになることがある

リテーナーは、患者さんによる管理が大切な装置です。日頃の手入れを怠ったり、雑に取り扱ったりすると、劣化や変形、破損などを招きます。

プレートタイプのリテーナーは、樹脂で作られたプレート部分や金属製のワイヤー、場合によって樹脂製のワイヤーなどを組み合わせた複雑な構造をとっているため、お手入れや取り扱いには十分注意する必要があります。

リテーナーを作り直す場合は追加で数万円の支払いが生じることになりますが、変形したワイヤーなどを自分で修理するのはやめましょう。リテーナーのワイヤーやプレートは、正しい知識と技術を持った歯科医師が専用の器具を使って調整するものなので、患者さんが修理することは難しいです。無理に修理しようとすると、さらに深刻な不具合を引き起こします。

リテーナーを長持ちさせるお手入れ方法

リテーナーを長持ちさせるお手入れ方法 リテーナーを長持ちさせるためのお手入れ方法について解説します。上述した通り、リテーナーは不適切なお手入れをすることで変形や破損を招き、作り直しが必要となりかねないため、毎日のケアや管理は正しい方法で行いましょう。少なくとも以下の3つのポイントに留意することで、リテーナーは長持ちしやすくなります。

低刺激のリテーナー専用洗浄剤で毎日洗う

取り外し式のリテーナーは、想像している以上に汚れています。清潔に見えるリテーナーでも、表面では細菌が大量に繁殖しているのです。

リテーナーのお手入れは、やわらかめの歯ブラシを使って丁寧に磨くことに加えて、リテーナー専用洗浄剤による化学的清掃も毎日行う必要があります。リテーナー専用洗浄剤は、刺激性の少ない製品を使うことで、装置の劣化などを抑えられます。歯ブラシでは、プレート部分に傷がつく恐れがあるため、歯磨き粉は使用しません。また、リテーナーを洗浄する際に熱湯を使うと装置の変形を招くことから、ぬるま湯か常温の水を使うようにしてください。

通気性ケースで保管し高温や直射日光を避ける

歯列矯正のリテーナーは、外しているときの保管場所・保管方法が大切です。通気性の高いケースでリテーナーを保管しましょう。

湿度の高い環境で保管すると、リテーナーの表面で細菌が繁殖してしまいます。温度に関しても、室温付近が望ましいです。リテーナーを高温の環境で保管すると、樹脂の部分が変性する可能性が高まります。

直射日光はリテーナーの素材を劣化させるため、日の当たらない場所に置いてください。食事や歯磨きで数十分程度リテーナーを外す場合は、ティッシュにくるんで置いておけばいいと考えがちですが、誤ってゴミ箱に捨てたり、出先で紛失したりするケースが多発していますので、お口から外して洗浄したら保管ケースに入れるように習慣づけましょう。

歯科医院で定期的にリテーナーのメンテナンスを行う

歯列矯正のリテーナーは、時間の経過とともに変形や劣化が起こります。こうした変化を放置したままリテーナーを使い続けることは、歯や歯並びに良くないため、歯科医院でのメンテナンスは定期的に受けるようにしてください。3〜6ヶ月に1回くらいの頻度で歯科医院でのメンテナンスを受けていれば、リテーナーを正常な状態に維持しやすくなります。歯並びや噛み合わせの異常も早期に発見できることでしょう。

まとめ

今回は、歯列矯正でリテーナーだけを作りたい場合の費用や製作の流れ、注意すべき点などを解説しました。歯列矯正でリテーナーだけを作ることは可能ですが、歯科医院の方針や患者さんの歯並びによっては対応できないこともありますので、まずは相談してみることをおすすめします。

リテーナーだけを作る場合でもカウンセリングから歯型取り、装置の調整といった一連のプロセスを踏むことになります。過去に歯列矯正を受けた歯科医院でリテーナーだけ製作する場合は、いくつかのプロセスを省略できることが少なくありません。

参考文献

この記事の監修歯科医師
小田 義仁歯科医師(小田歯科・矯正歯科 院長)

小田 義仁歯科医師(小田歯科・矯正歯科 院長)

岡山大学歯学部 卒業 / 広島大学歯学部歯科矯正学教室 / 歯科医院勤務をへて平成10年3月小田歯科・矯正歯科を開院 / 所属協会・資格:日本矯正歯科学会 認定医 / 日本顎関節学会 / 日本口蓋裂学会 / 安佐歯科医師会 学校保健部所属 / 広島大学歯学部歯科矯正学教室同門会 会員 / 岡山大学歯学部同窓会広島支部 副支部長 / 岡山大学全学同窓会(Alumni)広島支部幹事 / アカシア歯科医会学術理事

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