マウスピース矯正

マウスピース矯正は保険適用できない?保険適用できるケースや治療するまでの流れを詳しく解説します

マウスピースを持っている人

少し前であれば歯並び矯正といえばワイヤーが主流でしたが、現在ではマウスピースでも矯正できるケースが増えてきています。

マウスピース矯正の何よりのメリットは、周囲に矯正していることを知られにくいことです。

マウスピースを検討している方にとって、やはり費用面は気がかりでしょう。保険適用できれば3割負担で済みますが、保険適用できなければ全額自費です。

実はマウスピース矯正はほとんどのケースで保険適用が不可能であり、費用が高額になりやすい傾向にあります。

ここでは、マウスピース矯正において保険適用できるケースや治療の流れなどをご紹介します。ご検討中の方はぜひ参考にしてください。

マウスピース矯正は保険適用できない

マウスピース

冒頭にてご説明した通り、マウスピース矯正は基本的に保険が適用されません。なぜなら、マウスピース矯正は審美的な改善を目的とした歯列矯正だからです。

そもそも保険というのは、病気・ケガ・出産などで働けなくなったときなどのためにみんなで助け合おうという制度です。

マウスピース矯正の目的が病気やケガの改善でないのであれば、保険は適用できません。そのため、マウスピース矯正では基本的に全額自費負担になると覚えておきましょう。

保険適用となるケース

口角を押さえる人

審美的な改善を目的としたマウスピース矯正は保険が適用できませんが、条件を満たしていれば同じ歯列矯正の治療でも保険適用できる可能性があります。

保険適用となるのはワイヤー矯正の表側矯正のみです。同じワイヤー矯正でも、裏側矯正(舌側矯正)は保険適用となりません。

保険適用できれば費用負担は3割で済むため、費用は安くなるでしょう。こちらの項では、歯列矯正において保険適用できるケースを確認していきましょう。

先天性疾患に起因した咬合異常があると診断された場合

先天異常に伴う咬合異常の場合には、歯列矯正でも保険適用できます。ただ厚生労働省が定める61の疾患に該当していなければなりません。

多くの症例がありますが、例えば以下の5つのような疾患が挙げられます。

  • 唇顎口蓋裂
  • 筋ジストロフィー
  • ダウン症候群
  • リンパ管腫
  • 軟骨形成不全症

このような疾患が原因で歯列矯正をするのであれば、保険適用が可能です。

診断書が必要になるので、まずは医師に相談することから始めましょう。

永久歯萌出不全に起因した咬合異常があると診断された場合

永久歯萌出不全とは乳歯から永久歯に生え変わるはずが、永久歯が歯ぐきの中に埋まったまま萌出せず、それが原因で噛み合わせに異常が生じてしまう状態を指します。

そもそもの永久歯の数が不足していることや、歯ぐきの中に埋まったままの永久歯が歯並びを悪くすることが原因で噛み合わせが悪くなってしまいます。

このような、前歯及び小臼歯のうち3歯以上の永久歯萌出不全が原因の噛み合わせを改善させるために歯列矯正を行うのであれば、保険適用になります。

手術を必要とする顎変形症と診断された場合

顎変形症とは、顎が上下左右前後に大きくずれてしまっている状態を指します。

歯列というよりは顎骨そのもののバランスがずれてしまっており、歯本来の機能が失われていることが多いです。

顎変形症には、先天性の異常と幼い頃の癖が原因の後天性がありますが、どちらにおいても保険は適用できます。

ただ、顎変形症の改善の中でも「骨を切る」といった外科的な手術が必要な歯列矯正の場合のみに適用できます。ただし、マウスピースで治療する場合は外科処置も保険適用外となり費用も極めて高額になるので、注意してください。

マウスピース矯正の治療の流れ

マウスピースをする人

それでは、実際にどのような流れでマウスピース矯正が行われるのかを確認していきましょう。ステップとしては、以下の3つで進められます。

  • カウンセリング・精密検査・診断結果の説明
  • 歯の型取り・アライナー作成
  • 治療開始・定期検査・完了

それぞれのステップについてご紹介します。

カウンセリング・精密検査・診断結果の説明

マウスピース矯正をご希望される方は、歯並びで気になっている部分があるでしょう。その部分について、まずはカウンセリングを行います。

どのような部分を改善したいのかといった悩みや理想をカウンセリングすることで、ご希望の歯並びにより近づけられるようになるのです。

次に、精密検査をして実際のお口の状態を確認します。口腔内の写真を撮ったり、レントゲンを撮ったりと歯科医院によって方法は様々です。

こうして詳しい情報を得ることで、正しい治療計画を立案できるようになります。

診断結果を元に治療計画まで立案できたら、患者様に説明をします。この段階で、目安の治療期間・治療費用などがわかるので、不明点や納得できない点があれば質問しましょう。

歯の型取り・アライナー作成

歯を触る人

同意を得たら、歯の型取りやアライナーの作成に入ります。アライナーとは、マウスピース矯正で装着する透明なプラスチックでできた装置のことです。

患者様の実際の歯並びとは微妙に異なる物が作成されるので、それを1日22時間以上装着していただくことで少しずつ歯並びが矯正されていく流れになります。

治療開始・定期検査・完了

アライナーの作成が完了したら、早速治療開始です。マウスピース矯正は、従来のワイヤー矯正よりも通院回数が少なくて済む特徴があります。

まずは1ヶ月後に定期検査を行い、その後は2ヶ月に1回のペースになることが多いです。医師の判断に従いましょう。

何種類かマウスピースが作成されるので、順番に交換しながら徐々に歯並びを矯正していきます。1日20〜22時間は装着していないと効果が発揮されないので注意してください。

マウスピース矯正にかかる費用と期間

マウスピース

ほとんどのケースでマウスピース矯正は全額自費負担となりますが、実際にかかる費用はどれくらいなのでしょうか。

ここではマウスピース矯正にかかる費用と期間について解説します。

費用の相場

マウスピース矯正の一般的な費用相場は、トータルで120万円程度です。費用の内訳としては以下のようになります。

  • カウンセリング・検査:0〜5万円程度
  • マウスピース作成:120万円程度
  • 定期調整:1回につき0〜5,000円程度
  • 保定装置:0〜6万円程度
  • 保定観察料:1回3,000〜6,000円程度

歯科医院によって費用には差が生じやすいので、こちらの費用相場はあくまで目安としてお考えください。

カウンセリングの段階で、費用目安や内訳についてしっかり聞いておくことが大切です。

費用の支払いは、トータルフィー制・都度払い制のどちらかを導入していることが多いです。

トータルフィー制は、マウスピース矯正の治療において必要な費用が最初の時点で決められるため、総額が増える心配をしないで済む料金制度です。

マウスピース矯正が思うように進まず、治療が長期化しても問題ありません。ただ比較的短期間で終わるような治療だと割高になる可能性があるので、注意してください。

都度払い制は、来院のたびに支払う料金制度です。最初の支払いでまとめて支払う必要がないため、初期費用の経済負担を減らせるメリットがあります。

ただ治療が長期化してしまうとそれだけ総額も増えてしまうため、長期化が予想されるような治療の場合はトータルフィー制の方が向いている可能性があります。

どちらを選ぶかによって費用の目安も大きな差が生じるため、治療期間を加味して決めると良いでしょう。

一般的な期間

頬を押さえる人

マウスピース矯正にかかる期間は、部分矯正と全体矯正によって大きな差が生じます。なぜなら、必要なマウスピースの使用枚数が異なるからです。

マウスピースを交換するタイミングは10日ごとであり、そのタイミングは部分矯正と全体矯正で違いはありません。

しかし、使用枚数では10〜70枚程度の違いがあるため、治療期間にも差が生じます。

具体的な期間としては全体矯正で2年〜2年半程度、部分矯正で1年未満です。ワイヤー矯正よりも治療期間は長くなりやすいですが、来院の回数を少なくできます。

初期段階では1ヶ月に1回程度は来院が必要となりますが、その後は2〜3ヶ月に1回の来院で十分です。

なお、マウスピース矯正は1日20〜22時間以上装着していることが前提のため、装着時間を守れないと治療期間はその分長引きます。

新しいマウスピースに交換した際に痛みが出たり、上手くはまらなかったりと、緻密な計画に誤差が生じてしまうので必ず守るようにしましょう。

マウスピース矯正が向いている方

マウスピース

マウスピース矯正は、透明なおかげで仰々しさがなく、周囲に気づかれずに歯列矯正できるのが魅力です。

そのようなマウスピース矯正に向いている方は、以下のような方が挙げられます。

  • 目立たない矯正がしたい
  • 自己管理がしっかりできる
  • 食事の時間を楽しみたい
  • 金属アレルギーがある

それぞれ詳しく見ていきましょう。

目立たない矯正がしたい

マウスピース矯正の何よりの魅力は、目立たないことです。透明のマウスピースなので、見た目も美しく、周囲にも気づかれずに矯正を進められます。

そのため、目立たない矯正がしたいとお考えの方には非常におすすめな矯正方法です。

マウスピース矯正で使用する装置の厚みは0.5mm程度しかなく、ほとんど自然の歯と変わらない見た目をしています。

食事の際には取り外しが必要ですが、トイレで外すなどの配慮をすれば周囲に気づかれないで済むでしょう。

自己管理がしっかりできる

マウスピースを見る人

マウスピース矯正には、自由に取り外しできるという魅力もあります。しかし、それはデメリットにもなりうる一面です。

例えば、痛みや不快感があったときに自分で外してしまったり、食事の後に再度装着することを忘れてしまったりすれば、装着時間を守れなくなってしまうことになりかねません。

装着していなければ歯は動かず、マウスピース矯正は計画通りに進めなくなってしまいます。

きちんと規定の時間以上装着するといった、自己管理がしっかりしていなければマウスピース矯正は難しいでしょう。

マウスピースを適切に取り扱う自信がない方は、ワイヤー矯正の方が向いている可能性があります。

また、装置は毎日ご自身でケアしていただかなければなりません。

ケアを怠ってしまうと虫歯や歯周病の原因になったり、マウスピースを破損させてしまったりする事態に発展しかねません。

そうなると追加で費用が発生してしまう恐れもあるため、マウスピースのケアについても注意が必要です。

食事の時間を楽しみたい

食事を楽しむ人

マウスピースは取り外しができるため、食事の時間は装置を取り外して楽しめます

ワイヤー矯正であれば、装置をつけている違和感や痛みからは逃れられないため、食事の時間が苦痛になってしまう恐れがあります。

痛みから食べられる食事に制限が出る可能性もあるでしょう。痛みの程度には日々違いがある場合が多いですが、その状態が2年近く続くと考えるとかなり不便です。

ワイヤーに食べ物が挟まってしまうこともあるため、食事中に見た目が気になってしまうこともあるでしょう。

矯正中であっても、食事の時間を思いっきり楽しみたいという方には、マウスピース矯正の方が向いているといえます。

マウスピース矯正はワイヤー矯正よりも比較的制限が少ないため、ストレスを感じることも少ない傾向にあります。

特に難しい症例の場合には、矯正と長く付き合っていく必要があるため、上手に向き合わなければなりません。

矯正がストレスになってしまえば、最悪続かない可能性も出てきます。

できるだけ制限なく過ごしたい・食事の時間は楽しみたい思いがある方は、マウスピース矯正の検討がおすすめです。

金属アレルギーがある

マウスピース矯正で使用される装置はプラスチック製のため、金属アレルギーがあってワイヤー矯正が向かない方でも安心して装着していただけます。

金属アレルギーがある方向けにセラミックを使ったワイヤー矯正もあるので、マウスピース矯正とどちらが適しているかは医師と判断するようにしましょう。

マウスピース矯正は、ワイヤー矯正よりも三次元的な動きを出すのが苦手です。

抜歯が必要な場合や歯の移動距離が大きい場合には、マウスピース矯正よりもワイヤー矯正の方が向いている場合があります。

骨格的な異常がある場合にもマウスピース矯正では矯正しきれないことがあるため、マウスピース矯正を希望されても実現できない可能性もあるでしょう。

最近では様々な矯正方法があるため、同じワイヤー矯正でも従来のものより目立ちにくいワイヤーもあります。

ご自身の希望する矯正の実現方法を加味した上で医師と相談し、対応を考えましょう。

まとめ

歯を見せる人

マウスピース矯正は、ほとんどのケースで保険が適用できません。保険適用できるのは審美目的ではなく、疾患による症状の改善が目的の場合のみです。

保険適用できない場合は全額自費負担となるので、医療費控除などを掛け合わせて費用対策をすると良いでしょう。

マウスピース矯正は目立ちにくい矯正ですが、装着時間を守っていただくことが大前提です。

装着時間さえ守っていただければ、ワイヤー矯正よりも制限なく歯列矯正を進められるため、ぜひご検討ください。

この記事の監修歯科医師
坂本 輝雄医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

坂本 輝雄医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

東京歯科大学卒業 東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科矯正学専攻)修了 東京歯科大学歯科矯正学講座助手 慶応義塾大学医学部形成外科学教室非常勤講師 米国オクラホマ大学歯科矯正学講座 Visiting Assistant Professor 東京歯科大学歯科矯正学講座講師 東京歯科大学退職 東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科 臨床准教授

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坂本 輝雄医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

東京歯科大学卒業 東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科矯正学専攻)修了 東京歯科大学歯科矯正学講座助手 慶応義塾大学医学部形成外科学教室非常勤講師 米国オクラホマ大学歯科矯正学講座 Visiting Assistant Professor 東京歯科大学歯科矯正学講座講師 東京歯科大学退職 東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科 臨床准教授

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