マウスピース矯正

マウスピース型矯正で開咬を治療できる?治療にかかる期間・費用について解説

マウスピース型矯正で開咬を治療できる?治療にかかる期間・費用について解説

開咬とは、前歯が正しく噛み合わず、食事や発音に不便を感じることがある不正咬合の一つです。最近では、目立ちにくく快適な装着感が特長のマウスピース型矯正で、開咬を治療する方法も用いられています。

本記事ではマウスピース型矯正を用いた開咬の治療について以下の点を中心にご紹介します。

  • マウスピース型矯正を用いた開咬の治療方法
  • マウスピース型矯正を用いた開咬の治療にかかる期間
  • マウスピース型矯正を用いた開咬の治療にかかる費用

マウスピース型矯正を用いた開咬の治療について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

開咬(オープンバイト)とは

開咬(オープンバイト)とは

開咬(かいこう)、またはオープンバイトとは、一種の不正咬合で、一部は正しく噛み合っていますが、一部では隙間が生じて閉じない状態を指します。

開咬には前歯部開咬と臼歯部開咬の二つのタイプがあります。前歯部開咬は、前歯に隙間がある状態を指し、臼歯部開咬は奥歯に隙間がある状態を指しますが、臨床でよく見られるのは前歯部開咬です。

開咬は、この隙間のために、硬い食べ物を前歯で噛み切るのが困難になり、食事の際に舌を使って食べ物を操作することが多くなることがあります。さらに、開咬は発音の問題を引き起こすこともあります。

このような噛み合わせの問題は、適切な矯正治療によって改善を図ります。治療を通じて噛み合わせが改善されると、食事や会話が以前よりも格段に快適になり、日常生活の質が向上します。

開咬の原因

開咬の原因

開咬の原因にはどのようなものがあるのでしょうか?
子どもの頃の癖や遺伝など、さまざまな要因について、以下に詳しく解説します。

指しゃぶり

幼少期の指しゃぶりは、開咬を引き起こす原因の一つとされています。指をしゃぶる習慣が長く続くと、歯や顎の発達に影響を与え、前歯が正常な位置から外れてしまうことがあります。
指しゃぶりによって、上顎の前歯が前方へ、下顎の前歯が後方へと押されるため、上下の前歯がしっかりと噛み合わなくなり、隙間が生じることがあります。

指しゃぶりによる開咬を防ぐためには、早期に親や保護者が習慣の改善を促し、場合によっては歯科医師の指導を受けることが望ましいです。

舌癖

舌癖(ぜつへき)とは、舌が前方や側方に突出する癖のことで、これも開咬の原因となります。
舌を前歯に押し付ける癖があると、前歯に常に圧力がかかり、歯が前方に押し出されてしまいます。
こうした舌の癖は発音や飲み込み方にも影響を及ぼします。そのため、早期に歯列矯正が推奨されることがあります。歯列矯正では、舌癖による歯並びや噛み合わせの改善も期待できます。

また、矯正治療後も歯並びが再び悪化するリスクを避けるためには、舌の癖を根本的に改善することが不可欠です。治療と同時に、舌を正しい位置に保つ習慣を身につけることが重要です。

舌癖の改善には、口腔筋機能療法(MFT)が有効とされており、正しい舌の位置や動かし方を訓練することで、癖の改善を図ります。

口呼吸

口呼吸も開咬の一因とされています。鼻ではなくお口を使って呼吸する習慣があると、口周りの筋肉が緩み、歯や顎への適切な圧力が不足し、噛み合わせが乱れる可能性が高まります。

アレルギーや鼻の疾患、アデノイド肥大などの理由で鼻呼吸が困難な場合に口呼吸が習慣化しやすく、これが長期間続くと歯や顎に影響を及ぼしやすくなります。

口呼吸による開咬の防止には、まずは口呼吸の原因となっている疾患を治療することが推奨されます。
また、必要に応じて歯列矯正を行い噛み合わせを改善することで、鼻呼吸がしやすくなることがあります。

遺伝

遺伝も開咬の重要な要因の一つであり、骨格的な特徴が親から子に受け継がれることで、開咬が生じることがあります。
例えば、顎の形状や骨の成長パターンが遺伝的に引き継がれると、噛み合わせに問題が生じやすくなります。

遺伝的な影響による開咬は、成長過程で徐々に顕在化する場合が多く、遺伝によって家族間で似た噛み合わせの問題が見られることがあります。

遺伝的要因が関与している場合は、歯列矯正による治療が選択されることが少なくなく、顎の成長に影響を与える成長期に適切な歯列矯正を始めることで、効果的な治療が可能なこともあります。

開咬を放置するリスク

開咬を放置するリスク

開咬をそのままにしておくと、どのような健康リスクが生じるのでしょうか?日常生活に与える影響も含め、見過ごせない問題点をご紹介します。

むし歯や歯周病になりやすい

前歯部開咬では前歯の噛み合わせがないために、奥歯に過剰な力がかかってしまうことがあります。過剰な力により、歯にヒビが入り、そこから虫歯が進行することもあります。
また、歯を支える顎の骨にもダメージが蓄積し、歯周病が進行することもあります。
このため、開咬は早期に対処し、適切な治療を受けることが推奨されます。

滑舌や発音が悪くなる

開咬があると、滑舌や発音に悪影響が出ることがあります。
歯が正常に噛み合わないと、特定の音を発音する際に空気の流れが不安定になり、舌の位置が定まりにくくなります。サ行やタ行の発音が難しくなるケースが多く、日常会話でのコミュニケーションに支障をきたすこともあります。

また、子どもの場合、発音が不明瞭なまま成長すると、その後の発音矯正に時間がかかることも考えられます。
発音や滑舌の問題は、社会生活や仕事での印象にも影響を与える可能性があるため、早期の開咬治療が推奨されます。

歯の寿命が短くなる

開咬があると、歯の寿命が短くなることが懸念されます。
噛み合わせが悪いと、特定の歯に過度な負荷がかかり、歯が早く磨耗したり、欠けやすくなります。

前歯や奥歯が正常に機能しないと、ほかの歯が無理に力を受けるため、歯全体のバランスが崩れやすくなります。歯が磨耗すると、歯質が脆くなり、むし歯や歯周病のリスクも高まります。

開咬の治療により、全体的な噛み合わせを均一にし、歯にかかる負担を減らせるため、歯の寿命を延ばし、健康な口腔環境を維持できます。

胃腸に負担がかかる

開咬を放置すると、胃腸への負担が増えることもあります。開咬によってうまく食べ物を噛み切れないため、咀嚼不足となり、食べ物が十分に細かくならないまま飲み込まれてしまいます。
十分に咀嚼されない食べ物は消化に時間がかかり、胃腸に負担をかける原因となります。これが慢性的になると、胃腸の調子が悪くなり、消化不良や便秘の原因となることもあります。

開咬の治療によって正常な噛み合わせを取り戻し、咀嚼機能を向上させることで、胃腸の健康を保ち、消化の負担を減らせます。

マウスピース型矯正で開咬を治療できる?

マウスピース型矯正で開咬を治療できる?

開咬は、マウスピース型矯正装置で治療可能なケースも多くあり、正しい診断と計画のもとで行えば、効果的に開咬の改善が期待できる方法の一つです。

マウスピース型矯正は、歯並びの状態に応じて個別に調整され、歯列矯正の進行状況に応じてマウスピースを交換しながら段階的に前歯を理想的な位置に移動させる仕組みです。患者さんにとって快適な装着感を提供し、日常生活への影響をなるべく抑えながら治療が進行します。
また、マウスピース型矯正は透明で目立ちにくいため、日常生活でも自然な見た目を保ちやすく、装着時間を守ることで取り外しが可能な点もメリットです。
さらに、力の加わり方が緩やかなため、痛みが少なく、歯や周囲の組織にかかる負担が軽減される点も大きな魅力です。

ただし、開咬の症状が重度である場合や骨格に起因する場合は、マウスピース型矯正のみで改善が難しいケースもあります。このような場合、ワイヤー矯正や外科手術など、ほかの治療法との併用が検討されることがあります。

開咬の程度や原因を正確に把握し、適切な治療法を選ぶためには、歯科医師の診断を受けることが重要です。

マウスピース型矯正を用いた開咬の治療方法

マウスピース型矯正を用いた開咬の治療方法

開咬を改善するために、マウスピース型矯正ではどのようなアプローチが取られるのでしょうか?

上下の前歯を内側に傾斜させる

マウスピース型矯正を用いた開咬の治療で、上下の前歯を内側に傾斜させる方法は、前歯が噛み合わないことで生じる隙間を改善するために行われます。
このアプローチでは、歯の角度を調整して前歯の歯軸を内側に向けることで、前歯同士が適切に接触しやすくなります。
その結果、上下の前歯がしっかりと噛み合い、食べ物がうまく噛み切れるようになると同時に、発音の改善も期待できます。

奥歯を歯茎方向に圧下させる

マウスピース型矯正を用いて奥歯を歯茎方向に圧下させることは、上顎と下顎の噛み合わせを改善するために重要なアプローチです。
開咬では、前歯が噛み合わないことが多く、奥歯のみが接触することで負担が集中してしまいます。奥歯を歯茎方向に圧下させることで、上下の顎全体が均一に噛み合うようになり、前歯の隙間が縮小し、前歯でものをしっかりと噛み切ることが可能になります。

マウスピース型矯正では、この圧下動作が徐々に進むように設計されており、歯に対する力が少しずつ調整されることで歯茎への影響をなるべく抑えながら治療が進行します。
この方法は、歯列に優しい点が特徴で、短期間での大きな圧力ではなく、時間をかけて奥歯を沈めていくため、患者さんにとっても負担が少ない治療法とされています。

また、奥歯の圧下により噛み合わせのバランスが整うため、顎関節や周囲の筋肉にもよい影響があり、長期的な健康維持にもつながります。

マウスピース型矯正を用いた開咬の治療にかかる期間・費用

マウスピース型矯正を用いた開咬の治療にかかる期間・費用

開咬の治療にマウスピース型矯正を用いる場合にかかる期間は、個々の症例によって異なるものの、目安として治療期間は1〜2年程度です。

マウスピース型矯正は、目立ちにくく、患者さんが取り外しできるという利便性から、成人に選ばれやすい方法ですが、治療が進むごとに新しいマウスピースを製作するため、適切な管理と交換が求められます。

治療効果を高めるためには、1日20時間以上の装着が推奨されており、継続的な装着が治療期間の短縮にもつながります。

費用に関しては、使用するマウスピースの種類やクリニックによって異なりますが、60万〜100万円程度が目安です。

マウスピース型矯正は、素材の特性や精密な設計により費用がやや高くなる傾向があります。
加えて、歯科医院への通院の頻度やメンテナンス、治療計画に応じて追加費用がかかることもあります。

まとめ

まとめ

ここまでマウスピース型矯正を用いた開咬の治療についてお伝えしてきました。
マウスピース型矯正を用いた開咬の治療の要点をまとめると以下のとおりです。

  • マウスピース型矯正では、前歯を内側に傾斜させたり、奥歯を歯茎方向に圧下させることで噛み合わせを整えながら開咬を改善する
  • マウスピース型矯正を用いた開咬の治療期間は1〜2年程度であり、1日20時間以上の装着時間を守ることで期間短縮が期待できる
  • マウスピース型矯正を用いた開咬の治療にかかる費用は60万〜100万円程度が相場であり、使用するマウスピースの種類や治療内容によって異なる

開咬の治療をマウスピース型矯正で行うことで、見た目の改善だけでなく、食事や発音など機能面の向上も見込まれます。治療を検討されている方は、期間や費用を考慮しつつ、歯科医師に相談してご自身の状態や希望に応じた治療方法を見つけることが重要です。

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
遠藤 眞次歯科医師(グランメゾンデンタルクリニック)

遠藤 眞次歯科医師(グランメゾンデンタルクリニック)

長崎大学歯学部を卒業後、東京と群馬の歯科医院で分院長を歴任。臨床のかたわら、歯周治療やインプラント治療についての臨床教育を行う「Dentcation」の代表を務める。他にも、歯科治療のデジタル化に力を入れており、デジタルデンチャーを中心に、歯科審美学会やデジタル歯科学会等で精力的に発表を行っている。

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