歯列矯正を検討している方のなかには、歯が動きやすい人と動きにくい人の違いを知りたいことかと思います。同じように矯正装置を使っていたとしても、歯が動く速さや治療にかかる期間は、人によって異なるとされています。
この記事では、歯列矯正で歯が動きやすい人の特徴や矯正治療の期間を短くするコツについて気になる疑問にお答えします。
歯列矯正で歯が動きやすい人・動きにくい人
マルチブラケット装置やマウスピース型矯正装置を使った歯列矯正で、歯が動きやすい人の特徴と歯が動きにくくなる原因などを解説します。
- 歯列矯正で歯が動きやすい人の特徴を教えてください
- 歯列矯正で歯がスムーズに動く人には、以下の特徴があります。
【特徴1】年齢が若い
歯の動きやすさは、治療を始める年齢によって変わります。 一生のなかで歯が動きやすいのは成長期のときといわれてます。中学生くらいの時期は、顎が成長する力も残っているため、歯が動きやすい状態です。 20代に入ってからでも遅くはありませんが、年齢を重ねるごとに、骨が硬くなり歯の移動に時間がかかってしまいます。
【特徴2】新陳代謝がよい
歯を動かすには、顎の骨の吸収と再生を繰り返す必要があります。 新陳代謝がよい人は、吸収と再生のサイクルが早くなります。一般的には、若い人の方が新陳代謝がよいとされていますが、体質や運動習慣の有無によっては中年の方でも歯が動きやすい人もいます。
【特徴3】歯列不正の症状が軽い
もともとの歯並びが悪くなければ、歯も動かしやすくなります。 歯列不正のなかでも、軽度な出っ歯と、デコボコした歯並びのいわゆる叢生では、歯の動かしやすさも大きく異なります。 軽度な出っ歯では、歯の傾きを改善させるだけで治療はできますが、叢生だと、歯根ごと動かす処置が必要になります。周りの歯を整えなければならないため時間もかかってしまいます。
【特徴4】顎の骨が正常でスペースが十分にある
上下の顎の骨が正常な大きさで、すべての永久歯をきれいに並べるためのスペースが十分にある場合は、歯の移動もスムーズに進みます。
【特徴5】歯並びを悪くする習癖・習慣がない
舌で歯を押し出す癖や頬杖をつく癖、歯ぎしりや食いしばりなどは、歯並びを悪くする習慣で、歯列矯正の妨げにもなります。 前歯を舌で押し出す癖がある人は、いくら装置で矯正力をかけても力が相殺されてしまいます。歯ぎしりや食いしばりは、矯正力以上に強い力がかかることもあるため、歯の動きが鈍くなってしまいます。
【特徴6】歯科医師の指示を守っている
歯科医師の指示どおり治療を行えている人は、歯を動かすのも早くなります。 歯列矯正の期間中は、歯科医師の指示どおりに生活することで、歯の移動もスムーズに進みます。患者さん自身が着脱や交換を管理するマウスピース型矯正は、歯科医師の指示をしっかり守れる人は歯も動きやすいです。
- 歯が動きにくいのはどのような場合ですか?
- 次に挙げるケースは、歯列矯正で歯が動きにくいです。
【ケース1】歯の重なりが大きい
互いの歯が大きく重なっている症例では、歯も動かしにくくなってしまいます。これは、きれいな歯並びを保つためのスペースが不十分であることが原因となります。
このようなケースでは、抜歯をしてスペースを作り出すことが一般的ですが、歯の移動距離が長くなるため、歯が動きにくいと感じやすくなります。
【ケース2】歯と骨が癒着している
歯と骨が癒着しているアンキローシスといわれる状態になっていると、歯列矯正で歯が動きにくいです。過去に事故などで歯を強く打った経験がある方は癒着している可能性があります。
【ケース3】噛む力が強い
噛む力が強い場合は、歯並びや噛み合わせを固定する力も強くなっています。矯正装置によって与えられる力が弱められるため、歯の移動も遅くなります。
- 治療がスムーズに進まない原因には何がありますか?
- 歯列矯正が計画どおりに進まない原因としては、以下の3つが挙げられます。
【原因1】歯科医師の指示を守れていない
歯列矯正は、歯科医師の指導を患者さん自身がしっかりと守らなければ治療は成功しません。マウスピース型矯正なら装置の装着方法、装着時間、交換頻度を適切に行う必要があります。 ワイヤー矯正でも通院間隔を守らなかったり、ブラケットやワイヤーが外れているにも関わらず放置したりしていると、治療が遅れてしまいます。
【原因2】歯周病やむし歯にかかっている
歯周病は、歯茎や顎の骨を破壊する病気なので、歯の移動の妨げとなります。むし歯は治療によって歯の形が変わることがあり、矯正装置の作り直しなどを余儀なくされるケースも珍しくないことから、治療計画を遅らせる原因となりやすいです。
【原因3】歯科医師の技術や知識が不足している
歯列矯正は、歯科のなかでも専門性が高い治療です。歯科医師の技術や知識によって差はうまれてしまいます。
歯列矯正で歯を動きやすくするためのコツ
歯列矯正の期間を短くする方法について解説します。
- 歯列矯正の治療期間を短くする方法はありますか?
- 次の方法を実践することで、歯列矯正を計画どおりに終わらせる、もしくは治療期間を短くすることができます。
- 適度な運動を行い、睡眠や栄養も十分にとる
- 歯並びを悪くする悪習慣を改善する
- 歯科医師の指示を厳守する
- 経験が豊富な歯科医師に治療を任せる
- 加速装置を活用する
- 加速装置とは何ですか?
- オーソパルスに代表される加速装置は、近赤外線を歯周組織に照射して、新陳代謝を担うミトコンドリアを活性化させるものです。
歯の周りの組織の細胞が活発に活動すれば、歯の移動が早くなります。加速装置による効果には個人差が見られますが、効果的な症例では治療期間を半分にすることも可能です。
- 治療を早めるために改善すべき生活習慣があれば教えてください
- 歯ぎしりや食いしばり、頬杖をつく癖、舌で前歯を押す癖などは早急に改善するとよいでしょう。全身の代謝が悪くなってしまう生活習慣も改めた方がよいでしょう。
- 偏った食生活
- 睡眠不足
- 運動不足
- 喫煙習慣
歯列矯正で治療計画を立てる際のポイント
歯列矯正をスムーズに進めるためのポイントを治療計画という観点で解説します。
- 治療計画を立てる際に重視すべきポイントは何ですか?
- 患者さんそれぞれの歯並びに適した治療計画を立てることが大切です。
例えば、スペースが不足しているのに非抜歯で治療計画を立てると、治療が長引いたり、矯正治療が失敗に終わる可能性もあります。適切な方法できれいに治せる治療計画を立てることを優先するのがおすすめです。
- 治療期間の見通しはどのように決めますか?
- 患者さんの歯並びや噛み合わせ、骨格、年齢などによって決まります。これらは矯正前の精密検査を行うことでわかります。
- 歯列矯正で注意すべき点があれば教えてください
- 歯が動きやすい人と動きにくい人がいることを、正しく理解しておく必要があります。歯が動きにくい原因もさまざまです。
患者さん自身の体質や生活習慣によるものもあれば、歯科医師に問題が存在していることもあるため、始めから決めつけることはせずに、その原因を調べることが大切です。
編集部まとめ
今回は、歯列矯正で歯が動きやすい人の特徴や矯正治療の期間を短縮するコツについて解説しました。年齢が若い、新陳代謝がよい、歯列不正が軽度、スペースが十分にある、悪習慣がない、歯科医師の指示を守れている人は、総じて歯が動きやすいといえます。
これらの条件が当てはまらない場合は、歯が動きにくい可能性が高くなりますが、適切な方法で対処することで、歯並びをきれいにすることはできます。自分がどちらに該当するか知りたいという場合は、まず矯正歯科でカウンセリングを受けることをおすすめします。
参考文献