出っ歯は、自力で治すことは難しいです。そのため小さい頃から出っ歯であることがコンプレックスになっているケースが極めて多くなっています。子どもの頃に出っ歯の矯正を受けることができれば、コンプレックスに悩まされることもないのですが、やはり複雑な装置を長い期間、装着し続けることはそう簡単ではありません。その結果、出っ歯の矯正を諦めざるを得なかったという方も少なくないことでしょう。
そこで気になるのが近年、普及しているマウスピース型矯正です。悪い歯並びを快適に治せると評判のマウスピース型矯正なら、大人になってからでも無理なく出っ歯を改善できそうなものです。ここではそんな出っ歯をマウスピースで矯正するメリットやデメリット、費用などを詳しく解説します。
マウスピース型矯正とは
- マウスピース型矯正とはどんなものですか?
- マウスピース型矯正は、比較的新しい歯並びの治療法です。透明なマウスピースを1日20~22時間程度、装着して、歯を少しずつ動かしていきます。マウスピース型矯正の中でも歴史が古いインビザラインなら、さまざまな出っ歯のケースにも適応できることでしょう。
- マウスピース型矯正のメリットについて教えてください。
- マウスピース型矯正には、次に挙げるような5つのメリットを伴います。・矯正装置が目立たず、気にならない
マウスピース型矯正の装置は、透明な樹脂で作られています。おそらく、皆さんの身の回りにもマウスピース型矯正を受けている人や受けていた人がいらっしゃるかと思いますが、よほどの至近距離で凝視しない限り、何もつけていないように見えることでしょう。マウスピースが光を反射することはあるものの、金属がギラギラ光るような見え方ではなく、むしろ歯に光沢があるようなポジティブな印象を与えやすいです。長年、出っ歯に悩まされている人は、矯正治療中であることを気づかれたくないかと思いますので、そうした目立ちにくい装置はとても大きなメリットとなることでしょう。・装置に違和感、異物感が少ない
従来のワイヤー矯正は、装置がデコボコとしているので、どうしても異物感が強くなります。マウスピース型矯正の装置は厚みが0.5mm程度しかなく、表面も滑らかで異物感が少ないです。装置の辺縁が歯茎や粘膜を傷つけるリスクも低くなっています。・痛みが弱い
マウスピース型矯正のインビザラインは、1枚で0.25mm程度まで歯を動かせます。1回の調整で1.0mm程度、歯を動かせるワイヤー矯正よりも移動距離が少ない反面、痛みも弱くなっています。ちなみに、インビザラインのマウスピースは、1~2週間に1回くらいの頻度で交換することから、ワイヤー矯正よりも極端に治療期間が長くなるということはありません。・食事や歯磨きがしやすい
マウスピース型矯正は、装置を取り外した状態で食事と歯磨きを行えます。口腔ケアがしやすいことは、むし歯・歯周病リスクを下げることにも寄与します。・通院頻度が低い
マウスピース型矯正のインビザラインは、従来のワイヤー矯正の半分の頻度で通院すればOKです。学校や仕事で忙しい人にとって、通院頻度が低い点は大きなメリットといえるでしょう。
- マウスピース型矯正のデメリットについて教えてください。
- マウスピース型矯正には、次に挙げる3つのデメリットを伴います。・適応できないことがある
マウスピース型矯正は、重症度が高い場合に適応できないことがあります。出っ歯に関しても、スペースの不足が大きかったり、骨格的な異常が背景にあったりする重症例では、マウスピース型矯正を適応できない可能性が高まります。・自己管理の能力が問われる
マウスピース型矯正は、装置の着脱・交換・ケアのすべてを自己管理しなければなりません。そうしたマウスピース型矯正のルールを守れない場合は、出っ歯を治すことも難しくなります。・マウスピース装着中は水しか口にできない
ワイヤー矯正は、食事しにくくはあるのですが、いつでも自由に間食できます。一方、マウスピース型矯正は、コーヒーやジュースを飲む時でも装置を取り外さなければなりません。それは歯の着色やむし歯のリスクを回避するためです。
出っ歯の矯正はマウスピースでできるのか?
- 出っ歯の原因はなんですか?
- 出っ歯の原因は大きく2つに分けられます。1つ目は歯の生え方の異常です。前歯が標準よりも前方に位置していたり、傾いていたりすることで出っ歯の症状が現れます。2つ目は顎の大きさ・バランスの異常です。上の顎骨が大きすぎたり、下の顎骨が小さすぎたりすると出っ歯になります。
- 出っ歯の矯正はマウスピースでできますか?
- 出っ歯はマウスピース型矯正で治すことが可能です。とくに歯の傾きや生えている位置の異常に由来する出っ歯は、マウスピース型矯正で治しやすいといえます。骨格的な異常に由来する出っ歯は、マウスピース型矯正単独できれいに治すことは難しく、外科矯正を併用しなければならないケースが多いです。
出っ歯の矯正をマウスピースで行う際の期間や治療の流れなど
- 出っ歯の矯正をマウスピースで行う治療にはどれくらいの期間が必要ですか?
- 出っ歯をマウスピース型矯正で治す場合の期間は、重症度によって異なります。比較的軽度であれば部分矯正で対応できるため、6~12ヵ月程度で治療が完了する場合もあります。中等度の出っ歯に関しては、1~3年程度の期間がかかるものとお考えください。重度の出っ歯はマウスピース型矯正単独では治すことが難しいため、治療にかかる期間も一概には語れません。
- 出っ歯の矯正をマウスピースで行う治療の流れについて教えてください。
- 出っ歯の矯正治療は、乱ぐい歯や八重歯の場合と大差はありません。カウンセリング、検査・診断、治療計画の説明を経て、マウスピース型矯正装置を製作します。出っ歯の場合は、スペース不足を解消するために、適宜、IPRという歯を削る処置を行っていきます。すべてのマウスピースを使い終わり、歯の移動が完了したら保定へと移ります。保定はリテーナーという装置を使った処置で、歯の後戻りを防止する目的で行います。 なお、IPRを行っても上顎前歯を後方に移動するスペースが足りない場合は抜歯が必要になる場合があります。
- 出っ歯の矯正をマウスピースで行う費用はどれくらいかかりますか?
- 標準的な出っ歯のケースでは、マウスピース型矯正の費用として、70万~90万円程度かかります。出っ歯のマウスピース型矯正には保険が適用されないため、全額自己負担となる点に注意が必要です。出っ歯の症状が軽度で部分矯正を適応できる場合は、30万~50万円程度の費用でマウスピース矯正できるケースもあります。その点は各歯科医院にお問い合わせください。
マウスピース型矯正がおすすめな人とは?
- マウスピース型矯正がおすすめな人の特徴について教えてください。
- マウスピース型矯正は、目立ちにくい装置で出っ歯を治したい、矯正中も普段通りに食事がしたい、矯正中のむし歯・歯周病リスクを抑えたい、毎月通院する時間がない、装置による痛み・刺激を最小限に抑えたい、という人におすすめです。このすべての希望を叶えてくれるのがマウスピース型矯正です。
- マウスピース型矯正をおすすめできない人の特徴について教えてください。
- マウスピース型矯正は、マウスピースの装着時間を守れそうにない、口腔内とマウスピースの両方をケアするのが面倒、間食を頻繁にする、歯並びの重症度が高い、身の回りのものをよく失くす、という人にはあまりおすすめはできません。ひとつでも当てはまる特徴がある場合は、マウスピース型矯正を第一に考えるのではなく、ワイヤー矯正から検討を始めた方が良いかもしれません。
編集部まとめ
今回は、出っ歯の矯正をマウスピース型矯正で行うメリットやデメリット、費用などについて解説しました。上顎前突である出っ歯は、基本的にマウスピース型矯正で治すことができますので、矯正中であることに気付かれたくない、食事や歯磨きを普段通りに行いたいという方にはおすすめといえます。ただし、マウスピース型矯正は装置の着脱、交換、お手入れをすべて自分で行わなければなりません。
そうした自己管理に不安のある方は、歯科医師が装着・調整してくれる固定式のマルチブラケット装置が向いているといえます。どちらにしようか迷っている場合は、両方の治療法に対応している歯科医院に相談すると良いでしょう。どちらかひとつしか対応していない歯科医院だと、どうしてもアドバイスに偏りが生じてしまいます。
参考文献