3歳児健診から歯科健診が入ってきますが、この健診をきっかけにお子さんの歯並びを気にする人もいるのではないでしょうか。
小さな子どもに行う歯列矯正を小児矯正と呼びますが、さまざま種類があります。そのなかでも低年齢からでも行えるマウスピース型装置のものがあります。
しかし、どのような装置でどのような効果があるのか疑問が残るでしょう。
この記事では、小児矯正に効果のあるマウスピース型装置を紹介します。併せて、治療期間・費用も解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
小児矯正に効果があるマウスピース型装置を用いた治療の特徴
小児矯正に効果のあるマウスピース型装置を大まかに分けると、お口周りの筋肉や機能の改善を目的とした装置と、顎の骨を広げながら歯並びを整える目的の装置の2種類です。
ここからはマウスピース型装置を用いた治療が行える年齢や適応症例、使い方を紹介します。
適応年齢
使用する装置によって異なりますが、4歳頃から適応できる年齢となります。
しかし、検討しているマウスピース型装置の適応年齢の対象であっても、お子さんによいとは限りません。
お子さんのお口の状態を確認してもらうために、一度歯科医院へ相談してみてはいかがでしょうか。
適応症例
使用する装置によって適応症例は異なります。
お口周りの筋肉や機能を回復する目的の装置の場合、適応症例は下記の癖や習慣のある子に適応されるでしょう。
- 指しゃぶりや爪を噛む癖がある
- お口がうまく閉じられず、ポカンとお口が開いている
- 口呼吸
- 噛み合わせが悪く、しっかり噛めていない
- 姿勢が悪いなど
顎の骨を広げながら歯並びを整える治療が行える装置は、叢生や反対咬合などすでに不正咬合がみられている場合に適応されることが多いでしょう。
マウスピース型装置の使い方
小児矯正で用いるマウスピース型装置の場合、日中の1時間と就寝時に装着します。
装着時間を守らなければ、効果は得られません。効果を得るためにも、決められた装着時間を守りましょう。
お口やお口周りの筋肉や機能の改善を目的としたマウスピース型装置は、装着プラスお口やお口周りの筋肉や機能の改善するためのトレーニングも行います。トレーニングにかかる時間は、1日数分程度です。
小児矯正で用いるマウスピース型装置の種類と特徴
小児矯正で用いるマウスピース型装置にもさまざまな種類があります。ここでは、下記の3種類を紹介します。
- マイオブレイス
- プレオルソ
- インビザライン・ファースト
これらは、小児矯正で用いるマウスピース型装置のなかでも主要な装置です。それぞれ特徴がありますので、検討する際の参考にしてみてください。
マイオブレイス
マイオブレイス(※1)は、歯並びに影響を与える根本的な原因を改善させる海外生まれ(オーストラリア)の上下一体型のマウスピース型装置です。
マイオブレイスは3歳から使用できるため、低年齢から治療を行えるのも特徴です。治療の段階により、行う治療内容は異なりますが、口呼吸や指しゃぶりなどの悪い習慣の改善からスタートします。
取り外しができ、装着時間は日中の1時間と就寝時のみです。悪い習慣の改善目的であるため、マイオブレイスを装着してのトレーニングが必要となります。トレーニングは下記の内容のとおりです。
- 鼻での呼吸
- 舌が正しい位置にくるようにする
- 正しく飲み込める
- お口がしっかり閉じられる
- 正しい姿勢
上記のことができるよう、マイオブレイスを使いながら改善を目指します。
プレオルソ
プレオルソ(※2)もマイオブレイス同様、口呼吸や指しゃぶりなどの悪い習慣の改善を目的とした治療ができる日本生まれのマウスピース型装置です。
両者どちらも歯を動かすことではできませんが、違いがあります。
- 顎の発達段階をうまく利用し永久歯が生えてくるスペースも確保できる
- 装置が上下一体型
- 治療できる年齢は早くて4歳から
プレオルソもマイオブレイス同様、お口周りの筋肉や機能の改善、舌の正しい使い方などを目的としたトレーニングが必要です。
取り外しが可能で、装着時間は日中の1時間と就寝時のみとなります。
プレオルソもマイオブレイスも、歯科医院での治療より家庭でのトレーニング時間の方が長く、そしてとても重要です。このトレーニングをしっかり行うことで後戻りに少なく、引き締まった口元を目指せます。
インビザライン・ファースト
インビザライン・ファースト(※3)は、マウスピース型矯正ブランド・インビザラインの子ども用です。インビザライン・ファーストはマイオブレイスやプレオルソとは違い、歯並びを改善する目的のマウスピース型装置です。
インビザラインは永久歯の生え揃った年齢からしか装着できないのに対し、インビザライン・ファーストは乳歯と永久歯が混合した混合歯列期である6歳頃から対応できます。
インビザライン同様、3DスキャナーiTeroで型取りを行い、お子さんのお口の状態に合ったマウスピースを作製します。
インビザライン・ファーストも大人のインビザライン同様、1日20時間以上の装着が必要です。
一般的にマウスピース型矯正による歯列矯正の有効性は確立されていません。そのため、安易に費用が極端に低いマウスピース型矯正には手を出さないようにしましょう。
ワイヤー矯正の経験や知識などが豊富にある歯科医師のもとで、マウスピース型矯正の治療をおすすめします。
(※1,2,3)未承認医薬品等であるため医薬品副作用被害救済制度の対象とはならない可能性があります。
マウスピース型装置による小児矯正の治療期間
個人差やお子さんの頑張り具合で異なりますが、治療期間は2年程度です。
その期間中にマイオブレイスやプレオルソは口腔機能の改善を図ったり、インビザライン・ファーストは顎を広げスペースを作り歯をきれいに並べたりします。
2年が過ぎ、まだ治療が必要と判断されれば、ほかの治療へと切り替えていきます。マウスピース型装置にて治療のゴールが達成されれば、同じ装置を使って引き続き治療を行うことはありません。
マウスピース型装置による小児矯正の治療費用
マウスピース型装置を用いた小児矯正は、どのくらいかかるのか?健康保険は適用されるか?など、気になる人もいるでしょう。ここからは治療費用に関して解説します。
費用相場
どのマウスピース型装置を使って治療を行うのか・どこの歯科医院で治療行うかなどで費用は異なります。費用相場を紹介していますので、参考にしてみてください。
- マイオブレイス:10万〜40万円(税込)
- プレオルソ:5万〜15万円(税込)
- インビザライン・ファースト:40万〜50万円(税込)
なかには、治療費用が高額であるため躊躇する人もいるでしょう。
歯科医院によっては支払いがしやすいよう、分割支払いやデンタルローンなどを用意しているところもあります。そのような方法を利用するのも一つです。
健康保険の対象外
マウスピース型装置を含む小児矯正は健康保険では治療は行えません。そのため、自由診療扱いとなり、治療費は全額負担となります。
保険適用がされる治療は、最低限の機能を元の状態に戻すためのものがほとんどです。歯科治療の場合は、噛めることです。そのため、治療方法や使える素材が限定されています。
一方、小児矯正を含む見た目をきれいにする治療は、最低限の機能を取り戻すものではありません。見た目がきれいではなくても噛めていれば問題ないため、健康保険の対象外になります。
しかし、小児矯正でも口腔内や顎に疾患や異常がみられ、うまく機能(噛めること)できなければ健康保険の対象になります。下記の条件のいずれかに該当する場合です。
- 厚生労働大臣が定める61種類の疾患に該当する
- 前歯の永久歯が3本異常に生えてこない
- 下顎切断などの手術を必要とする顎変形症
これらは機能回復の一環として歯列矯正を行う場合があります。治療費は保険適用となりますが、使える素材は限定されています。
医療費控除の対象
小児矯正は健康保険の対象外ですが、医療費控除は対象となるケースがほとんどです。
国税庁が定める記載によると、発達段階のお子さんの成長を妨げないように行う歯列矯正は、年齢や歯列矯正を必要する場合があると判断される場合は医療費控除と認められます。
小児矯正を必要とする年齢のお子さんは、お口やお口周辺の筋機能がうまく使えていないことがほとんどでしょう。うまく使えていないと、お子さんの健康に影響を与えやすいです。
- 口呼吸により風邪を引きやすい
- お口が開けにくい
- うまく発音ができない
- 将来、むし歯や歯周病になりやすいなど
放置していても自然に治癒するものではありません。むしろ悪化する可能性が高いでしょう。小児矯正をすることで機能回復だけではなく、将来起こるかもしれない疾患も未然に防ぐことが期待できます。
このようなことから、小児矯正は医療費控除の対象となりやすいです。
小児矯正でマウスピース型矯正を選択するメリット
小児矯正でマウスピース型矯正を選択するメリットは、主に下記の2点です。
- 将来的な歯列矯正の必要性を抑えられる
- むし歯・歯周病のリスクを軽減できる
それぞれのメリットを、より詳しく紹介しましょう。
将来的な歯列矯正の必要性を抑えられる
早いうちからマウスピース型装置を用いた小児矯正を行えば、将来的に起こりそうな不正咬合を未然に防ぎ将来的な歯列矯正の必要性を抑えられるでしょう。
小児矯正は予防矯正ともいわれ、治療中に歯並びに影響するような症状が現れはじめたとしても、状態が軽いうちに見つけられるので早期に治療を行えます。
歯列矯正を行わずきれいに歯が並べられればよいでしょう。しかし、歯列矯正が必要、もしくは行った方がよい子どもたちは増えてきています。
早くからマウスピース型装置にて治療を行うことで、顎の成長を利用し歯の生えるスペースを確保できます。スペースが確保でき、うまく歯並びが整えれば、本格的な歯列矯正を行わなくてもよい場合もあるでしょう。
大人になってから歯列矯正をすることもできます。しかし、大人は子どもと違い、顎の骨格で完成してしまっているため治療期間が長くなりやすいです。
さらに、顎の骨格が完成してしまっているため、顎を広げ歯を並べるためのスペースを作ることもできません。スペースを作るには抜歯をしなければなりません。
抜歯をする分、費用が高額になるのはもちろん、治療期間も長引くなどデメリットが大きいといえます。
費用面や抜歯のリスク、そして将来的な歯列矯正の必要性を抑えられるなどの点は小児矯正ならではのメリットといえるでしょう。
むし歯・歯周病のリスクを軽減できる
きれいに歯が並ばなければ、ねじれたり重なったりします。特に歯が重なった部分は大人でもうまく歯ブラシが当たらず、きれいに汚れを落とすことは難しいでしょう。
重なった部分は汚れも溜まりやすく、むし歯菌も増殖しやすいです。むし歯になりやすい口腔状態は、将来的に歯周病にもなりやすくなるでしょう。
口腔管理がうまくできなかった場合、歯周病は進行し、最悪歯を失う可能性もあります。
早いうちから歯列矯正を行えば、叢生などの不正咬合を防ぎます。重なる部分もないため、すべての歯に歯ブラシが当たり、むし歯や歯周病になりにくい歯を手に入れられるでしょう。
マウスピース型装置は取り外しが可能ですので、治療中でも口腔内の管理がしやすいです。仕上げ磨きや歯科医院での定期的な検診もやりやすいため、歯列矯正治療中のむし歯リスクも軽減できるでしょう。
小児矯正でマウスピース型矯正を選択するデメリット
メリットがあるように、小児矯正でマウスピース型矯正を選択するデメリットもあります。
- 歯列矯正中にストレスを感じるおそれがある
- 保護者の支援が必要となる
デメリットもしっかり理解することは大切です。
歯列矯正中にストレスを感じるおそれがある
入れたことのない装置を入れることになるので、お子さんによってはストレスを感じるおそれがあります。
装置をお口の中に入れることではじめて歯が動いたり、舌やお口周りの筋肉を正しく使えるようになったりします。
保護者からすればしっかり治療を行い、早く改善してあげたいと焦ってしまうでしょう。
焦っても改善するわけではないため、まずは子どもが嫌がらずに装置をはめられることからはじめてみてください。
何か好きなことに集中しているときに装着するのも一つの方法です。好きなことをしているので、装置への意識も分散できるでしょう。
抵抗なくはめられるようになれば、装着時間を徐々に伸ばしていき、装置に慣れてもらいましょう。
保護者の支援が必要となる
マウスピース型矯正に限らず、小児矯正はお子さんがメインとなり頑張りますが、保護者の支援が必要不可欠といえます。
トレーニングを必要とするマイオブレイスやプレオルソなどの機能的改善を目的としたマウスピース型装置は、保護者の支援なしに行うことは難しいでしょう。
一人ではトレーニングができない年齢から行う子どもは、保護者がやり方を見せ一緒に行ったり時間を図ったりなど支援が必要になります。
お子さんの気が乗らず、思うように治療ができず、心が折れそうになることもあるでしょう。小児矯正はお子さんが自ら望んで治療を行うのではなく、保護者の人がお子さんの将来のことを考えて治療を行うケースがほとんどです。
小児矯正は本人をはじめ、歯科医師や歯科衛生士、そして保護者の人みんなが協力し合うことで治療をスムーズに進めていけます。
小さな子どもに小児矯正の良さを理解するのは難しいため、本人のモチベーションを上げるためのサポートをしっかりしてあげましょう。
とはいえ、それでも難しいこともあります。その場合は焦らず、お子さんにとって適切な時期に歯列矯正を検討するのも一つです。
まとめ
低年齢からスタートできる小児矯正は、将来の歯(永久歯)がうまく並べられるようにするのが目的の治療法です。その手助けをする一つに、マウスピース型矯正装置があります。
装置によって適応年齢は異なりますが、早ければ3歳から治療できるマイオブレイスもあり、早い時期からお口やお口周りの機能が改善できる環境が整っています。
しかし、年齢が低ければ、保護者の支援が必要不可欠になるのもしっかり頭に入れておきましょう。
ぜひ本記事を参考に、お子さんにとってよい治療法を選択してみてください。
参考文献