部分矯正

出っ歯一本だけの歯列矯正は可能?治療法や部分矯正のメリット・デメリットを解説

出っ歯一本だけの歯列矯正は可能?治療法や部分矯正のメリット・デメリットを解説

前歯が一本だけ突出している出っ歯に悩んでいる方は少なくありません。歯並びが気になると、人前で笑うことに抵抗を感じたり、コミュニケーションに自信が持てなくなったりすることもあるでしょう。

しかし「全体の歯列矯正は大変そう」「費用も時間もかかりそう」といった思いから、矯正治療を諦めている方も多いのではないでしょうか。

実は、出っ歯が一本だけの場合、その歯だけを歯列矯正する部分矯正という治療法があります。この記事では、出っ歯一本だけの歯列矯正の治療方法や費用、部分矯正のメリット・デメリットなどを詳しく解説します。

出っ歯の原因と前歯の部分矯正

歯の模型

出っ歯とはどのような歯の状態ですか?
出っ歯とは、上の前歯が下の前歯よりも大きく前方に突き出している状態を指します。出っ歯は専門的には上顎前突と呼ばれ、上下の前歯の距離が4mm以上になると出っ歯と診断されます。単に出っ歯といっても程度はさまざまで、上下の前歯の距離に応じて次のように分類されるのが一般的です。
  • 軽度:4~6mm程度
  • 中等度:6~9mm程度
  • 重度:9mm以上

出っ歯は見た目だけの問題でなく、お口が閉じにくかったり、発音や噛み合わせなど機能面でも影響が出たりすることがあります。

出っ歯になる原因を教えてください。
出っ歯の原因は多岐にわたりますが、大きく分けて以下の2つに分類されます。
  • 骨格の問題:上顎が前に出ている、あるいは下顎が後ろに引っ込んでいる場合(遺伝も含む)
  • 癖の影響:指しゃぶりや口呼吸、舌で前歯を押す癖(舌突出癖)などが幼少期に続くと、前歯が前方に押し出されたことで出っ歯になる場合

出っ歯の原因は骨格や癖の問題に加え、生活習慣も大きな原因になります。

出っ歯一本だけの歯列矯正は可能ですか?
はい、一本だけ前歯が出ている場合でも歯列矯正は可能です。さらにお口の状態によっては、全体矯正だけでなく、部分矯正で対応できるケースもあります。部分矯正とは、通常2~8本程度の前歯の歯並びを整える治療法です。全体の歯を動かす全体矯正と比べて、装置の装着範囲が狭く、治療期間も短いのが特徴です。ただし、部分矯正は審美目的に行われる治療で、噛み合わせの調整には向いていません。噛み合わせの調整が必要な場合や重度の出っ歯などは全体矯正で対応します。
前歯の部分矯正は歯並びに影響しますか?
前歯の部分矯正は、前歯のみを動かすことを目的としています。歯は互いに連動しているため、ほかの歯の歯並びや噛み合わせに影響を及ぼす可能性があります。そのため、周囲の歯や顎全体のバランスを考慮し、適切な範囲で部分矯正を行うことが重要です。

出っ歯一本だけの歯列矯正

歯科用マウスピースを持つ若い女性

出っ歯一本だけの歯列矯正の治療法を教えてください。
歯が一本だけ出ている場合でも、歯列矯正にはいくつかの選択肢があり、歯全体を動かす全体矯正に加えて前歯の一部に装置をつけて歯を動かす部分矯正が選ばれるケースもあります。主な治療法は、以下の3つです。
  • マウスピース型矯正
  • ワイヤー矯正
  • 裏側矯正(舌側矯正)

マウスピース型矯正は、透明な装置で目立ちにくく、取り外し可能なため衛生的です。しかし装着時間の管理が必要で、対応できる症例が限られるデメリットがあります。ワイヤー矯正は、幅広い歯並びに対応でき、自己管理が少ない反面、装置が目立ちやすく歯磨きが難しい点がデメリットです。しかし、近年はプラスチックやセラミックなどの目立ちにくい素材を使用した装置の選択肢も増えています。裏側矯正(舌側矯正)は、ワイヤー矯正の装置を歯の裏側(舌側)に装着するため、より目立ちにくい点が特徴です。ただし、装着時の違和感や発音への影響を感じることもあり、症例によっては適応できない場合もあります。

出っ歯一本だけを歯列矯正する場合の費用相場はどのくらいですか?
歯列矯正の多くは、自由診療となり、歯が一本だけ出ている場合でも同様です。部分矯正を含めた歯列矯正の費用相場は、選択する治療方法や使用する装置、歯科医院の治療方針によって大きく異なります。以下は、あくまで目安として参考にしましょう。
  • マウスピース型矯正(部分矯正):100,000~400,000円(税込)
  • マウスピース型矯正(全体矯正):600,000~1,000,000円(税込)
  • ワイヤー矯正(部分矯正):300,000~600,000円(税込)
  • ワイヤー矯正(全体矯正):600,000~1,300,000円(税込)
  • 裏側矯正(舌側矯正)(部分矯正):400,000~700,000円(税込)
  • 裏側矯正(舌側矯正)(全体矯正):1,000,000~1,700,000円(税込)

近年では、数万円から始められるマウスピース型矯正も見られますが、これは試用目的で1枚のみ作製するプランである場合が多いです。希望する仕上がりまで治療を続けるには、追加費用が発生する場合もあるため、事前にプラン内容を十分に確認しておきましょう。また、ワイヤー矯正は使用するブラケットやワイヤーの素材によって費用が変動します。特に目立ちにくい素材を選ぶと費用が高くなる傾向があります。裏側矯正(舌側矯正)は、装置がオーダーメイドで作製されるほか装着に高度な技術を必要とするため、費用がほかの治療法と比べて高額になるのが一般的です。

前歯を部分矯正する場合の注意点はありますか?
前歯の部分矯正は軽度の歯並びの乱れに対して行われる治療のため、噛み合わせや奥歯の歯並びに問題がある場合は、適応外となることがあります。また、顎の骨が成長途中である子どもには、部分矯正よりも全体矯正が適していると判断される場合もあるでしょう。矯正装置には装置による違和感や治療後の後戻りなど、いくつかのリスクが伴います。事前にこれらの点を理解し、納得したうえで治療を進めることが大切です。また、部分矯正は一見シンプルに見えますが、専門的な診断と治療計画が不可欠な治療法です。経験の浅い歯科医師による治療では、治療期間が長引いたり後戻りが起きたりするリスクもあります。経験豊富な歯科医師が在籍する医療機関を選ぶことで安心して治療に臨めます。
歯列矯正で出っ歯が改善されるまで、どのくらいの期間がかかりますか?
出っ歯の歯列矯正にかかる期間は、症例の難易度や選択する治療法によって異なりますが、一般的には以下のような治療期間の目安があります。
  • 軽度の出っ歯(部分矯正):3ヶ月~1年
  • 軽度の出っ歯(全体矯正):1~1年半
  • 中等度の出っ歯(全体矯正):2~3年
  • 重度の出っ歯(全体矯正):3年以上

矯正治療が終了した後は、歯の後戻りを防ぐために保定装置(リテーナー)を装着する保定期間が必要です。保定期間は一般的に1~3年程度かかることがほとんどです。

出っ歯一本だけの歯列矯正のメリット・デメリット

歯科医療のマウスピースの説明をする男性

出っ歯一本だけを歯列矯正するメリットは何ですか?
出っ歯一本だけの歯列矯正には、以下のようなメリットがあります。
  • 治療期間の短縮
  • 治療費用の軽減
  • 審美性の改善
  • 口腔衛生管理のしやすさ

部分矯正による治療が可能な場合、全体矯正と比べて治療期間や治療費を抑えられます。装着する装置が歯の一部分のみであるため、歯磨きやフロスなどの口腔ケアがしやすい点もメリットの一つといえるでしょう。歯が一本出ているだけでも審美性に影響を与えるため、審美性が改善できるのもメリットです。また、出っ歯は汚れが溜まりやすく歯磨きがしづらいため、歯並びを改善することで口腔内を衛生的に保つことができます。

出っ歯一本だけを歯列矯正するデメリットはありますか?
出っ歯一本だけの歯列矯正には、以下のようなデメリットがあります。
  • 噛み合わせの改善が難しい
  • 上下の前歯の正中ラインを合わせることが難しい
  • 歯を削る場合がある

上下の噛み合わせのバランスを整えるには、全体の調整が必要となるため、出っ歯一本だけの矯正では改善が難しいことがあります。歯を一本引っ込めたことにより、歯並びが悪くなることもあるでしょう。出っ歯の原因が歯並びや顎の骨格の問題の場合、一本だけ矯正しても解決にはなりません。部分矯正を選択した場合、前歯の位置を動かせる範囲にも限度があるため、上下の前歯の中心がずれる可能性もあります。加えて、スペース不足を解消するために健康な歯を削る処置が必要になる場合があることも大きなデメリットです。これらのデメリットを事前に理解することで、治療後のギャップを避け、より納得のいく選択につながります。

出っ歯一本だけの歯列矯正でも後戻りしますか?
はい、出っ歯一本だけの歯列矯正でも、後戻りする可能性はあります。治療直後は歯を支える骨がまだ安定しておらず、歯が元の位置に戻ろうとする力が働くため注意が必要です。これを防ぐには、保定装置(リテーナー)を決められた期間正しく使用することが重要です。また、舌で前歯を押す癖や口呼吸といった習慣があると、後戻りを引き起こす原因になります。後戻りを防ぐためにも、生活習慣の見直しを心がけましょう。

編集部まとめ

歯列模型をもつ白衣の若い女性

今回は出っ歯の原因や前歯のみの歯列矯正について、治療方法や費用を交えて解説しました。出っ歯一本だけの歯列矯正は、症例によっては部分矯正で対応できる場合もあります。

部分矯正は、全体矯正に比べて治療期間や費用を抑えられる点が大きなメリットです。

治療法にはマウスピース型矯正やワイヤー矯正など、治療法も複数あるため、症例や希望に応じて選べるのも特徴です。

ただし、すべての出っ歯が部分矯正で改善できるわけではなく、歯並びや噛み合わせに問題がある場合は、全体矯正が必要になることもあります。

そのため、まずは歯科医院で適切な診断を受け、自分に合った治療法を確認することが重要です。

矯正治療は、見た目の改善だけでなく、噛み合わせやお口の健康維持にもつながります。気になる症状がある方は、専門の歯科医師に相談してみましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
小田 義仁歯科医師(小田歯科・矯正歯科 院長)

小田 義仁歯科医師(小田歯科・矯正歯科 院長)

岡山大学歯学部 卒業 / 広島大学歯学部歯科矯正学教室 / 歯科医院勤務をへて平成10年3月小田歯科・矯正歯科を開院 / 所属協会・資格:日本矯正歯科学会 認定医 / 日本顎関節学会 / 日本口蓋裂学会 / 安佐歯科医師会 学校保健部所属 / 広島大学歯学部歯科矯正学教室同門会 会員 / 岡山大学歯学部同窓会広島支部 副支部長 / 岡山大学全学同窓会(Alumni)広島支部幹事 / アカシア歯科医会学術理事

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