夜間に口呼吸になっていたり、マスクをしていて気付くと口呼吸になっていたりする方は少なくありません。
口呼吸は健康に悪影響を及ぼすことがわかっており、歯並びにも関連しています。
本記事では、口呼吸の根本的な原因や改善方法を解説します。口呼吸を改善し、健康的な生活を手に入れましょう。
口呼吸の原因やデメリット
- 口呼吸の原因を教えてください。
- 口呼吸になる原因は人によって異なりますが、主に次のようなものがあります。
- 慢性的な鼻づまり
- 歯並び
- お顔周りの筋肉の衰え
- 幼少期からの癖
慢性的な鼻づまりや歯並びなどの構造的な原因のほか、表情筋の活動が減り、お顔周りの筋肉が衰えることで口呼吸になる場合もあります。日常的にマスクをしている場合は、表情筋を動かさないためお顔周りの筋肉が衰えやすいです。構造的に問題がない場合でも、幼少期からの癖で習慣的に口呼吸になっていることがあります。
- 口呼吸のデメリットを教えてください。
- 口呼吸には多くのデメリットがあります。
- 歯周病や口臭の発生
- 睡眠の質の低下
- いびきや無呼吸症候群の発生
- 風邪や感染症のリスク
- 頬のたるみ、ほうれい線の原因
- 口元が出っ張ってくる
通常の鼻呼吸であれば、鼻腔の粘膜がフィルターの役割を果たします。しかし口呼吸ではフィルターの機能がありません。空気中のウイルスや冷たい空気が直接肺に入るため、風邪や感染症のリスクが高まります。口唇は食事や会話の場面を除いて安静時には常に閉じているのが正常です。そのため、口腔内は絶えず唾液で潤されています。口呼吸では、口腔内が乾燥するため細菌が増殖し、歯周病や口臭が発生します。夜間に口呼吸になっている方は、寝ている間に口腔内が乾燥し、細菌が繁殖しやすい口腔内環境です。口呼吸には、デメリットしかないといえるでしょう。
- 口呼吸を続けていると見た目にも影響が出ますか?
- 口呼吸を続けることで、見た目にも影響が出ます。徐々にお顔周りの筋肉が変化し、頬のたるみが生じて老けた印象を与えたり、口唇が閉じにくくなったりします。出っ歯の出現、歯肉の隆起も口呼吸の特徴です。特に幼少期から口呼吸の習慣がある場合、お顔や顎の骨の発育に影響し共通した外見が出現します。アデノイド顔貌と呼ばれ、面長で、いつもお口をポカンと開けていて筋肉の緊張がゆるんでいるのが特徴です。口呼吸は見た目を変えてしまうデメリットがあるといえるでしょう。
歯並びと口呼吸の関係
- 歯並びと口呼吸は関係があると聞いたのですが本当ですか?
- 歯並びと口呼吸は関係しています。本来呼吸は鼻で行いますが、口呼吸を続けることで口唇、頬、舌の力のバランスが崩れ、噛み合わせの悪化や上顎突出(出っ歯)の出現が生じます。もともと歯並びが悪い場合、口唇の閉じにくさから口呼吸になる場合も少なくありません。歯並びと口呼吸は双方向に関連しています。口呼吸が習慣化すると常にお口を開けているため口唇を閉じる力が弱くなって改善が難しくなるため、早めに対策する必要があります。
- 口呼吸は歯並びにどのような悪影響を与えますか?
- 口呼吸を続けることで不正咬合を引き起こす可能性があります。歯並びは外側と内側の両方からかかる圧力の均衡点で決まります。お口が開いた状態では、外側から歯にかかる圧力がありません。多くの場合は、上の前歯が前傾に傾斜し、下の前歯は内側に傾斜して上顎突出(出っ歯)になります。上下顎の間に隙間がみられ、舌がいつも見えている開咬と呼ばれる状態になる可能性もあります。開咬になると、意識してお口を閉じようとしても指や舌が挟まるほどの隙間ができるため、食べ物を噛み切りづらいです。口呼吸が習慣になっている場合、歯並びに影響が出る可能性は少なくありません。
- 逆に歯並びが悪いことで口呼吸になるケースもありますか?
- 上顎前突や開咬などの不揃いな歯並びは口唇が閉じにくい原因となり、結果的に口呼吸を引き起こします。上顎前突は上顎が突き出ている状態で出っ歯とも呼ばれるものです。飛び出した前歯により口呼吸になりやすくなってしまいます。上顎前突の原因は遺伝的要因などで上顎が大きかったり、下顎が小さかったりすることで引き起こされます。歯並びが悪いことで気付かないうちにお口が開いてしまうため、本人がお口を閉じようと意識しても改善できません。口呼吸の原因が構造的な問題の場合は自力で改善することが難しいです。歯並びの悪さと口呼吸の両方が気になる方は、まずは歯科医師に相談しましょう。
口呼吸の改善方法
- 口呼吸のセルフチェック方法を教えてください。
- 自分が口呼吸かどうか気になる方は、以下のセルフチェックをやってみましょう。
- 気が付くといつもお口が開いている
- お口を閉じると苦しく感じる
- 鼻が詰まりやすい
- 風邪をひきやすい
- お口が乾きやすい
- 朝起きたとき、喉がカラカラになる
- いびきをかきやすい
- 口臭が気になる
当てはまる項目が多ければ多いほど、日常的に口呼吸をしている可能性が高いです。小さなお子さんの場合、鼻の奥のリンパ組織が大きくなるアデノイド増殖症によって鼻呼吸がしづらくなり、口呼吸となることもあります。一度口呼吸の癖がついてしまうと、簡単には直りません。鼻呼吸と比べて酸素を取り込む量が圧倒的に少ないために、脳への酸素が不十分で集中力の低下につながることもあるので、口呼吸になっている場合は医療機関に相談しましょう。
- 普段から鼻呼吸を意識すれば口呼吸を改善できますか?
- 鼻呼吸を意識した生活を根気よく続けていれば、口呼吸を改善することができます。最初は呼吸しづらいかもしれませんが、徐々に筋肉が発達しお口がポカンと開くことは減るでしょう。歯ごたえのあるものを食べるのも効果的です。鼻は、およそ2時間半おきに2つの鼻の穴を切り替えながら呼吸し、片方の鼻を休ませています。これはネーザルサイクルと呼ばれ、睡眠の質にも影響する現象です。また、鼻から空気が入ることでお顔や鼻のなかに張り巡らされた三叉神経が刺激され、自律神経のバランスが整います。口呼吸を改善し、本来の健やかさを取り戻しましょう。
- 口呼吸を改善するトレーニング方法があれば教えてください。
- お口周りや舌の筋肉を鍛える運動が効果的です。舌の前後運動、舌の回転運動、舌や顎の運動を組み合わせたトレーニングがあります。舌の前後運動では、お口を開けて、舌を前に突き出して5秒間キープ、次にできるだけ引っ込めて5秒間キープします。舌の回転運動は、お口を閉じて、上唇と歯茎の間に舌を入れ、歯の表面をこするように円を描きながら、下唇の方にもぐるっと回して元の位置に戻す運動です。舌や顎の運動では、お口を大きく開いて「あーいーえーえーおー」と言いながら、お顔中の筋肉を大きく動かします。3種類の運動をそれぞれ3回程度繰り返します。ほかにもあいうべ体操が有名なトレーニング方法です。
- 「あー」とお口を大きく開ける
- 「いー」とお口を大きく開ける
- 「うー」とお口をすぼめて前に突き出す
- 「べー」と舌を突き出して伸ばす
実際に一度やってみると、口唇やお口周りの筋肉が動いた感覚がわかります。また、「べー」と舌を突き出すことで舌筋が鍛えられ、舌が正しい位置に引き上げられることでお口がむやみに開かなくなり、これによって鼻呼吸ができるようになります。
- 歯列矯正で歯並びを治療すれば口呼吸は改善しますか?
- 歯並びの悪さが原因で口呼吸になっている場合、歯列矯正によって改善が見込まれます。歯並びが正しい状態になれば、お口が自然と開いてしまう状態が改善されます。しかし、例外なのは口呼吸は歯並び以外にもお口周りの筋肉や鼻づまりが要因となっている場合です。1日中鼻づまりが続く、片側だけが常に詰まるなど鼻づまりの症状がある場合は医療機関に相談しましょう。鼻づまりの原因には、アレルギー性鼻炎のほか、慢性副鼻腔炎、鼻中隔湾曲症などの病気が隠れている場合があります。お口周りの自分の口呼吸の原因は何か、医師などにも相談しながら突き止めましょう。歯並びによって口呼吸を誘発している場合は、歯列矯正が口呼吸の根本的な解決につながります。
編集部まとめ
口呼吸は、歯周病や口臭、睡眠の質の低下などさまざまなデメリットがあります。
歯並びとの関連は強く、口呼吸によって歯並びが悪くなったり、逆に歯並びが悪いことで口呼吸を引き起こしたりします。
口呼吸の原因は人によってさまざまです。自分の口呼吸の原因を突き止め、適切な方法で解決しましょう。
参考文献