おしゃぶりを使っていると歯並びが悪くなるなど、歯並びへの影響を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。赤ちゃんの安心感につながるおしゃぶりは育児にとって欠かせないアイテムの一つですが、噛み合わせの悪化などが心配で使用を迷っているという方もいると思います。
この記事は、おしゃぶりによる歯並びの影響や、子どもの歯並びを良好に保つためにできるケアなどについて解説していきます。
おしゃぶりの歯並びへの影響
- おしゃぶりで歯並びが悪化することはありますか?
- おしゃぶりを長期にわたって使用し続けると、歯並びの悪化につながる可能性があります。
例えば、おしゃぶりを吸う動作によって前歯に持続的な圧力がかかってしまい、これによって前歯が前方に傾斜するケースです。前歯が前方に倒れてしまうと、一般的に出っ歯と呼ばれ、医学的には上顎前突と呼ばれる状態になり、咀嚼や発音などに影響が生じる可能性があります。
また、常におしゃぶりを使い続けていると、おしゃぶりの形状で歯に負担がかかるため、歯並びが変化して開咬と呼ばれる、前歯が閉じきらない状態になる可能性もあります。 なお、おしゃぶりの使用だけではなく、おしゃぶりの代わりに指をしゃぶる、指しゃぶりの癖によってもこうした悪影響が生じやすくなります。
日本小児歯科学会の調査報告によれば、指しゃぶりの癖がある場合は出っ歯になりやすく、おしゃぶりを使用している場合は開咬になりやすいというデータがあり、2歳児よりも5歳児など高い年齢になると、その傾向がより強く現れるとされています。
- 乳歯だけでなく永久歯にも影響はありますか?
- おしゃぶりの使用が適切な時期で終わっていれば、永久歯に悪影響を及ぼすということはありません。
しかし、長期間にわたっておしゃぶりを使用し続けた場合、お口の周囲にある筋肉のバランスが崩れてしまい、顎の骨の成長が十分に促進されなくなる可能性があります。そのほかにも、おしゃぶりを吸う強い力によって歯列の幅が狭い歯列狭窄の症状が出る場合があり、これによって永久歯が生えるためのスペースが不足すると、叢生などといった歯並びのトラブルにつながるリスクが考えられます。 また、おしゃぶりの使用によって口呼吸の癖がついてしまうことも、永久歯への悪影響につながります。
舌は大部分が上顎にくっついた状態が正しい位置で、この位置に舌があると、お口で呼吸が行えず、自然と鼻呼吸が習慣化されます。一方で、おしゃぶりを使用していると舌がおしゃぶりより下の位置に置かれるようになり、お口で呼吸ができる状態となります。
そのため、おしゃぶりを使い続けていると口呼吸が習慣化されやすく、口呼吸は口腔内の乾燥を引き起こしやすいことから、永久歯になってからもむし歯などのトラブルが生じやすくなるといえます。
- おしゃぶりによって生じやすい歯並びのトラブルを教えてください
- おしゃぶりで生じやすい歯並びのトラブルは、一般的に出っ歯と呼ばれる上顎前突や、開咬と呼ばれる状態です。
あかちゃんの歯は特に動きやすいため、おしゃぶりで強い力が加わるとこうしたトラブルが生じやすいといえます。
おしゃぶりの使用に関するお悩み
- おしゃぶりは何歳頃までにやめさせるべきですか?
- 日本小児歯科学会の報告では、おしゃぶりの使用はおそくとも2歳半頃までに中止させるべきとされています。
2歳半という年齢は乳臼歯が生え揃う時期で、歯が生えそろっているのにも関わらずおしゃぶりを使用し続けると、噛み合わせの異常が残りやすくなるためです。これ以前の年月でもおしゃぶりを使用していると噛み合わせの異常が生じることはありますが、早めに使用をやめれば自然と改善されやすいとされています。
- おしゃぶりを使う際の注意点を教えてください
- おしゃぶりは、長時間使用し続けないことが大切です。特に、ことばを覚え始める1歳を過ぎたら、おしゃぶりを外して会話のコミュニケーションを積極的にとることも、健康な発育のために重要です。
1歳を過ぎたらおしゃぶりのフォルダーを外して常時使用をしないように心がけ、おしゃぶり使用中も声かけなどのふれあいをしっかり行うようにしましょう。
- おしゃぶりのやめ方を教えてください
- おしゃぶりは、使用時間が長くなるほど依存性が高まり、やめさせにくくなる可能性があります。そのため、なるべく長時間の使用は避け、必要なときだけ使用するようにすることは、おしゃぶりをやめる際のポイントにもなります。
また、おしゃぶりをやめる際は急に使用を中止するのではなく、段階的に頻度を減らしていくようにしましょう。使用は睡眠時に限るなど、頻度を減らすことでストレスを強く感じずにやめやすくなります。
そして、対話によるコミュニケーションを増やすことや、夢中になれる遊びを増やし、自然とおしゃぶりへの執着を減らしていくことが大切です。
- そもそもおしゃぶりは使わない方がよいですか?
- おしゃぶりは、長期間使用し続けていると歯並びへの悪影響などが生じる可能性がある一方、赤ちゃんの精神的な安定を得るためには有用なアイテムです。育児の際のストレスを軽減するためにも役立つため、使用そのものを避ける必要はありません。
ただし、おしゃぶりに頼り過ぎてしまうと、長期的な使用につながって歯並びへの影響が生じやすくなるほか、親子のコミュニケーションが減ってしまうなどの問題にもつながりますので、適度な使用を心がけることが大切です。
歯並びを悪化させる要因と親ができること
- 指しゃぶりも歯並びに影響しますか?
- おしゃぶりの代わりに、自分の指をしゃぶる指しゃぶりの癖も、歯並びを悪化させる要因の一つです。
特に、指しゃぶりの場合は前歯を前方に引き出すような力がかかりやすいため、出っ歯になりやすいといえます。
指しゃぶりはおしゃぶりと異なり成長後も癖として続いてしまうケースがあるため、永久歯の歯並びにも直接影響してしまう可能性があります。
- 歯並びに影響する癖はほかにありますか?
- 歯並びに影響する癖は、頬杖や舌で歯を押す癖、そして食いしばりなどがあります。
いずれも子どものうちだけではなく永久歯が生え揃った後にも癖として継続してしまう可能性があり、癖が長期にわたることで歯並びのトラブルを生じさせやすくなりますので、気が付いたら早めに改善できるようにした方がよいでしょう。
- 歯並びをよくするための方法はありますか?
- 歯並びをよくするためには、歯科医院での歯列矯正を受けましょう。
子どもの年齢や歯並びの状態に応じた治療を受けることで、見た目のきれいさはもちろん、噛み合わせの機能面でも良好な歯並びを手に入れることが可能です。 子どもの歯列矯正は、永久歯が生え揃う前に行う1期治療と、永久歯が生え揃ってから行う2期治療があり、それぞれ治療の目的や方法が異なります。
1期治療は永久歯がきれいに生え揃うために顎の適切な発達を促すもので、1期治療を受けることで、歯並びのトラブルを予防することができます。
2期治療は生え揃った永久歯を理想的な状態に並べるもので、ワイヤー矯正やマウスピース型矯正といった方法で治療が行われます。 歯列矯正は大人になってから行うこともできますが、顎の発達段階である子どものうちに受けた方が歯を動かしやすく、早い時期に開始すれば抜歯や歯を削る対応が不要になることも多いので、歯並びを整えたい場合は早めに歯科医院で相談してみるとよいでしょう。
編集部まとめ
おしゃぶりは、長期間にわたって使用し続けると歯並びに悪影響を及ぼす可能性があります。
ただし、だからといって使用してはいけないというものではなく、適切な利用法を守ることが大切です。
なかなかおしゃぶりがやめられないという場合や、お子さんの歯並びが気になるという方は、小児歯科を取り扱う歯科医院に相談してみてはいかがでしょうか。
参考文献