ワイヤー矯正

ブラケット(矯正装置)の種類について詳しく解説!それぞれのメリット・デメリットや選び方のポイントも紹介

ブラケット(矯正装置)の種類について詳しく解説!それぞれのメリット・デメリットや選び方のポイントも紹介

歯並びの乱れを細かく整える歯列矯正は、ブラケット矯正(ワイヤー矯正)とマウスピース型矯正の2つに大きく分けられます。近年はマウスピース型矯正の人気が高まっているものの、ブラケット矯正(ワイヤー矯正)でなければ治せない症例が少なくないため、今後も歯列矯正のスタンダードであり続けることは間違いありません。ここではそんなブラケット矯正(ワイヤー矯正)のかなめとなるブラケットの特徴や歯を動かす仕組み、種類ごとのメリット・デメリットを詳しく解説します。ブラケット矯正を検討中の人やどの種類にしようか迷っている人は参考にしてみてください。

ブラケットとは

ブラケットとは はじめに、矯正用ブラケットの基本事項から確認していきましょう。

ブラケットの概要

ブラケットとは、歯の表面に専用の接着剤で固定する四角い装置で、矯正用ワイヤーを固定するために設置します。ブラケットの中心部分に付与されているスロットという凹みには、0.018インチと0.022インチの2種類があり、それに応じて使用するワイヤーも変わってきます。また、ブラケットには、後段で解説するような素材の種類による違いも見られます。

ブラケット矯正(ワイヤー矯正)で歯が動く仕組み

ブラケット矯正(ワイヤー矯正)で歯が動く仕組みはいたってシンプルです。1歯1歯に設置したブラケットを起点にして、任意の形に曲げた矯正用ワイヤーの方に歯が動くよう、力が働きます。例えば、歯列の内側に入り込んでいる歯は、アーチ状のワイヤーとブラケットを結紮線(けっさつせん)で結ぶことで、徐々に外側へと移動していきます。ブラケット矯正(ワイヤー矯正)は、歯を水平的に動かすだけでなく、垂直的にも移動できるため、うえの方に飛び出した八重歯を正常な位置へと下げることも可能です。そうした歯の移動のコントロールは、ブラケットを設置する位置やワイヤーの屈曲度などで管理します。そのためブラケット矯正(ワイヤー矯正)では、歯科医師に高度な技術と豊富な知識・経験が求められるのです。

ブラケット矯正(ワイヤー矯正)の強み

ブラケット矯正(ワイヤー矯正)の強み 次に、ブラケット矯正(ワイヤー矯正)の強みや特徴を説明します。冒頭でも述べたように、ブラケット矯正は昔も今も歯列矯正のスタンダードになっていますが、それは以下のような強みがあるからです。

幅広い症例に対応できる

ブラケット矯正(ワイヤー矯正)とマウスピース型矯正とでは、適応範囲に大きな違いがあります。前者はほぼすべての歯並びに適応できるのに対し、後者は軽度の歯列不正に適応が限定されるからです。どちらかというとマウスピース型矯正の方が新しいテクノロジーを駆使している点で、適応範囲も広そうに感じますが、実際はそうではないのです。

◎歯の移動様式の違い
歯の移動様式にはいくつかの種類があります。そのなかでも基本となるのが傾斜移動(けいしゃいどう)と歯体移動(したいいどう)です。傾斜移動は歯を傾ける処置で、矯正の難易度としては低く、歯を大きく移動する必要もありません。つまり、歯が少し傾斜している症状を治す際に使うテクニックなので、軽症の歯並びが対象となります。そして、マウスピース型矯正はこの傾斜移動が主体となる治療法であることから、適応症も自ずと軽いものに限定されるのです。

一方、ブラケット矯正(ワイヤー矯正)では傾斜移動はもちろん、歯体移動も自由に行えることから、抜歯をして歯を大きく動かさなければならない症例にも柔軟に対応できます。ブラケットを設置する位置やワイヤーの屈曲度を調整することで、歯を三次元的に動かせるのです。そうした背景から、マウスピース型矯正では治せないけれど、ブラケット矯正(ワイヤー矯正)ならきれいに治せるというケースが臨床の現場ではよく見られます。

治療結果が安定的

矯正治療によって得られる結果は、ブラケット矯正(ワイヤー矯正)の方が安定的です。なぜならブラケット矯正(ワイヤー矯正)は、アナログな治療法であるため、細かい調整がしやすいからです。1ヵ月に1回の通院の度に、ワイヤーを細かく曲げたり、結紮の仕方を変えたりすることで、治療の軌道修正を行っていきます。しかもブラケット矯正(ワイヤー矯正)を行ううえでは前提となる知識が膨大で、日々、技術の鍛錬を積んでいる歯科医師が大半を占めます。その結果、満足いく仕上がりが得られやすくなっています。

一方、検査から診断、治療計画の立案、矯正装置(マウスピース)の作成に至るまで、そのほとんどがデジタル化されているマウスピース型矯正は、知識や経験の浅い歯科医師でも手を出しやすいです。しかも毎回の診療で治療の方向性を細かく修正することはできないため、ブラケット矯正(ワイヤー矯正)より治療経過が不安定になりがちです。一見すると、デジタル化されている医療の方が結果も安定しそうなものですが、歯列矯正は極めて専門性が高く、熟練した技術を要する治療であることから、少なくとも今現在はアナログであるブラケット矯正(ワイヤー矯正)に軍配が上がります。

選択肢が豊富

マウスピース型矯正で使用できる装置は、基本的に1種類です。透明な樹脂製のマウスピースを使って、歯並びを治します。一方、ブラケット矯正(ワイヤー矯正)に使用するブラケットは選択肢が豊富で、患者さんの価値観やライフスタイルに合ったものを選べます。

短期間で治療可能

ブラケット矯正(ワイヤー矯正)は、強い力で歯を動かせるので、短期間で歯並びの治療を完了できることがあります。ブラケット矯正(ワイヤー矯正)は細かい調整も得意であることから、仕上がりのよさも追求できます。

噛み合わせも改善できる

ブラケット矯正(ワイヤー矯正)では、歯並びだけではなく噛み合わせも改善することが可能です。上下の歯がしっかりと噛み合うことで、顎に均等に力を入れることができるようになり、身体のバランスがよくなることも期待できます。

ブラケットの種類ごとのメリット・デメリット

ブラケットの種類ごとのメリット・デメリット 続いては、ブラケット矯正(ワイヤー矯正)で使用するブラケットの種類とそれぞれの特徴やメリット・デメリットについて解説します。

メタルブラケット

メタルブラケットは、金属製のもっとも標準的なブラケットです。ブラケット矯正(ワイヤー矯正)を受ける場合、特にオプションを選択しなければメタルブラケットを装着することになります。

・メリット
【メリット1】費用が安い
メタルブラケットは、原材料費が安価で、オプションを選択することにはならないことから、ブラケット矯正(ワイヤー矯正)の費用を安くできます。

【メリット2】強度が高い
メタルブラケットは、強度の高い合金で作られているため、壊れることはまずありません。1〜3年に及ぶ矯正期間中も摩耗せず、変形も起こらないことでしょう。

【メリット3】歯を動かしやすい
ブラケット矯正(ワイヤー矯正)では、ブラケットとワイヤーを結紮するという処置が必須になります。この結紮は、金属同士の方が安定性を高めることができ、矯正力も働かせ易くなります。その結果、歯を効率よく動かせるのです。

・デメリット
【デメリット1】目立ちやすい
金属色がむき出しとなっているメタルブラケットは、審美面が欠点となります。お口を開けたときにギラギラと光るブラケットが見えるため、ひと目で矯正治療中であることに気付きます。見た人によっては威圧的な印象を受けるかもしれません。

【デメリット2】粘膜を刺激することがある
患者さんの歯並びやメタルブラケットを設置する場所が悪いと、口腔粘膜を刺激することがあります。そうしたケースではブラケットやワイヤーの周りに矯正用ワックスを付けて対処します。

【デメリット3】金属アレルギーのリスクがある
メタルブラケットは、いくつかの金属を組み合わせた合金であり、唾液による腐食を受けやすい環境にあるため、金属アレルギーのリスクを伴います。ブラケット矯正(ワイヤー矯正)を始めた時点で金属アレルギーを持っていなかったとしても、治療期間中に発症する可能性もゼロではありません。

プラスチックブラケット

文字どおりプラスチックで作られたブラケットです。ブラケット矯正(ワイヤー矯正)においてはオプションとなりますが、原材料費は安価で、壊れたときのつけ直しもしやすいブラケットといえるでしょう。

・メリット
【メリット1】ブラケットが目立ちにくい
プラスチックブラケットは、透明なプラスチックを使用することから、メタルブラケットよりは目立ちにくいです。

【メリット2】金属アレルギーのリスクがない
プラスチックで作られたブラケットなので、当然ですが金属アレルギーのリスクはありません。

・デメリット
【デメリット1】強度が低い
プラスチックブラケットは、あくまでプラスチックなので強度が低いです。強い力がかかると容易に壊れます。

【デメリット2】摩耗しやすい
プラスチックブラケットは、一般的なプラスチックと同様、摩耗しやすいです。矯正治療が数年に及ぶ場合は摩耗が進むため、途中で交換しなければならなくなることも少なくないです。

【デメリット3】歯を動かしにくい
プラスチックブラケットは、メタルブラケットよりもしっかりと結紮できないことから、歯を動かすのに時間がかかります。

セラミックブラケット

セラミックで作られたブラケットです。見た目が白く、歯の色に馴染むことから、矯正中の審美性を重視する人におすすめのブラケットといえます。

・メリット
【メリット1】見た目が自然で美しい
セラミックは、色調や光沢などが天然歯に近いため、ブラケットを装着しても違和感が少ないです。

【メリット2】プラスチックブラケットよりも丈夫
セラミックは、強い衝撃が加わると割れてしまうことがありますが、プラスチックブラケットよりは丈夫です。

【メリット3】汚れが付きにくい
汚れが付きにくく、ケアしやすいのもセラミックブラケットのメリットのひとつです。

【メリット4】金属アレルギーのリスクがない
セラミックブラケットにも金属アレルギーのリスクはありません。

・デメリット
【デメリット1】強い衝撃で割れることがある
セラミックブラケットは、強い衝撃が加わることで割れる場合があります。

【デメリット2】費用が高い
メタルやプラスチックと比較すると、セラミックは原材料費が高く、矯正にかかる費用も高くなります。

ジルコニアブラケット

セラミックの一種であるジルコニアで作られたブラケットです。見た目が白色で目立ちにくく、強度が高いブラケットです。

・メリット
【メリット1】装置が目立ちにくい
白色をしたジルコニアは、天然歯と馴染みやすいです。一見するとブラケットを着けていないように見えますが、セラミックブラケットと比較すると審美性にやや劣ります。

【メリット2】強度が高く壊れにくい
ジルコニアは金属に匹敵する硬さを備えたセラミックなので、基本的に壊れません。

【メリット3】汚れが付きにくい
セラミックブラケットと同様、ジルコニアの表面も滑らかなので汚れが付きにくいです。

【メリット4】金属アレルギーのリスクがない
ジルコニアで金属アレルギーを発症することはありません。

・デメリット
【デメリット1】費用が高くなる
ジルコニアは、原材料費が高いため、矯正にかかる費用も高くなります。

【デメリット2】セラミックブラケットよりは審美性に劣る
透明感という観点では、ジルコニアブラケットよりもセラミックブラケットが優れています。

リンガルブラケット

歯列の裏側に設置するブラケットです。舌がある側に装着するためリンガル(舌側)ブラケットという名前で呼ばれています。裏側矯正でしか使用する機会のないブラケットで、基本的には金属製です。

・メリット
【メリット1】装置が目立ちにくい
リンガルブラケット自体は金属色がむき出しですが、設置する部分が歯列の裏側なので装置が目立ちません。

【メリット2】丈夫で壊れにくい
リンガルブラケットは金属製なので、壊れることがありません。

【メリット3】歯を動かしやすい
リンガルブラケットはワイヤーをしっかり結紮できることから、歯を動かしやすいです。

・デメリット
【デメリット1】費用が高い
裏側矯正でしか使用しないリンガルブラケットは、通常のメタルブラケットとは異なる形をしています。そのため費用も高くなります。

【デメリット2】金属アレルギーのリスクがある
メタルブラケットと同様、金属アレルギーのリスクがあります。

ブラケットを選ぶときのポイント

ブラケットを選ぶときのポイント ブラケット矯正(ワイヤー矯正)のブラケットを選択する際には、次の4つのポイントに着目しましょう。

見た目

見た目が気にならない場合はメタルブラケット、口元の審美性を重視するのであれば、プラスチックブラケットやセラミックブラケットがおすすめです。

費用感

経済面を重視する場合はメタルブラケットかプラスチックブラケットが推奨されます。

金属アレルギーへの対応

メタルブラケットとリンガルブラケット以外であれば、金属アレルギーのリスクをなくせます。ただし、ワイヤーや結紮線には必ず金属製のものを使用します。

治療内容との適合性

上述したように、裏側矯正の場合はリンガルブラケットしか選択できません。表側矯正の場合は、治療内容と適合性を踏まえて、適したものを選ぶことが大切です。

まとめ

まとめ 今回は、ブラケット矯正(ワイヤー矯正)に使用するブラケットの種類とそれぞれの特徴、メリット・デメリットについて解説しました。ブラケットの種類は、メタルブラケット、プラスチックブラケット、セラミックブラケット、ジルコニアブラケット、リンガルブラケットの5つに大きく分けられます。それぞれ見た目も費用も大きく異なるため、予算や希望する矯正法、審美面へのこだわりなどによってよいといえるものを選ぶようにしましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
坂本 輝雄医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

坂本 輝雄医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

東京歯科大学卒業 東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科矯正学専攻)修了 東京歯科大学歯科矯正学講座助手 慶応義塾大学医学部形成外科学教室非常勤講師 米国オクラホマ大学歯科矯正学講座 Visiting Assistant Professor 東京歯科大学歯科矯正学講座講師 東京歯科大学退職 東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科 臨床准教授

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坂本 輝雄医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

東京歯科大学卒業 東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科矯正学専攻)修了 東京歯科大学歯科矯正学講座助手 慶応義塾大学医学部形成外科学教室非常勤講師 米国オクラホマ大学歯科矯正学講座 Visiting Assistant Professor 東京歯科大学歯科矯正学講座講師 東京歯科大学退職 東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科 臨床准教授

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