ワイヤー矯正

裏側矯正(舌側矯正)後に使うリテーナーの種類について解説!メリット・デメリットや注意点

裏側矯正(舌側矯正)後に使うリテーナーの種類について解説!メリット・デメリットや注意点

歯列矯正で歯を動かした後には、必ず保定処置が必要となります。リテーナーと呼ばれる装置を使って、歯の後戻りを防止するための処置です。それは歯を動かす動的治療に、どのような装置を選んでも同じで、いくつか種類のあるリテーナーから適切な方法を選択することになります。ここでは装置が目立ちにくい裏側矯正(舌側矯正)の後に使うリテーナーの種類やメリット・デメリット、装着する際の注意点などを解説します。裏側矯正後の保定を目立ちにくいリテーナーで行いたい人は参考にしてみてください。

リテーナーとは

リテーナーとは はじめに、歯列矯正で使用するリテーナーの基本事項について確認しましょう。

歯列矯正にリテーナーが必要な理由

歯列矯正のメインとなるのは、乱れた歯並びを治す動的治療です。1本1本の歯を正しい位置へと移動して、理想的な歯列弓と噛み合わせを構築します。それだけで1~3年の期間がかかるため、歯列矯正も終了したものと思いがちですが、そのままでは後戻りという現象がほぼ100%の確率で起こるため、歯並び・噛み合わせをその位置で固定する保定処置が必要となるのです。

◎歯の後戻りが起こるメカニズム
矯正装置によって歯が移動して、きれいな歯並びが構築されているのになぜ後戻りが生じるのか?その疑問は、歯がどのような状態で歯周組織に支えられているのかを知ることで解消されます。まず、私たちの歯は、歯ぐき・歯根膜・歯槽骨といった歯周組織によって支持され、口腔内に存在していることを確認しておきましょう。 歯を動かす過程では、移動方向の歯槽骨が吸収し、元々歯があった場所の歯槽骨は再生されます。これを骨のリモデリングといい、骨の吸収と再生にはそれなりの時間がかかります。しかも歯は歯根膜という弾力に富んだ組織で歯槽骨と結合しており、歯の移動後もしばらくは元の位置へと戻るような力が働きます。その歯根膜のリモデリングが完了するまでには相応の時間がかかるため、リテーナーによってサポートする必要があるのです。

リテーナーによる保定期間

リテーナーによる保定は、動的治療と同程度の期間、使用する必要があります。例えば、マウスピース型矯正やワイヤー矯正で、歯を動かすのに2年かかった場合は、リテーナーの保定期間も2年程度となります。動的治療と保定処置を合わせると4年となるため、治療期間の長さに戸惑う人もいることでしょう。しかし、動的治療と保定処置は、目的にはもちろんのこと、装置による痛みや日常生活への影響などに大きな違いがあるため、「あと2年辛い思いを続けなければならない」と悲観する必要はありません。そもそもリテーナーは、夜間に装着するものであり、歯に強い矯正力を働かせることもないので、ストレスを感じにくくなっています。また、保定期間中の通院頻度は、3〜6ヵ月に1回くらいであることから、動的治療の期間よりもかなり楽になります。

裏側矯正(舌側矯正)後に使うリテーナーの種類

裏側矯正(舌側矯正)後に使うリテーナーの種類 次に、裏側矯正(舌側矯正)で歯を動かした後に使用するリテーナーの種類を解説します。裏側矯正(舌側矯正)を選択する人は、口元の審美性を重視していることから、リテーナーも目立ちにくいものが選ばれやすいです。一般的には次の3つが選択肢として挙げられます。

クリアリテーナー(マウスピースタイプリテーナー)

クリアタイプリテーナーとは、文字どおり透明な素材で作った保定装置で、歯列全体を覆うマウスピースの形をしています。インビザラインのアライナーと同じ見た目をしていますが、硬さに大きな違いが見られます。リテーナーというのは、歯を動かすためではなく、歯の位置を安定させるために装着するものなので、マウスピースの強度も高いことが優先されます。装置が透明で目立ちにくいという点は、インビザラインのアライナーと同じです。また、強く噛むと破損する恐れがあり、装置の構造上、噛み合わせを安定させるための調整ができない点もマウスピース型矯正装置と似ています。

フィックスタイプリテーナー

フィックスタイプリテーナーとは、歯に固定するタイプの保定装置です。リテーナーは、歯列の裏側に設置するため、外からは何も見えません。これは裏側矯正(舌側矯正)とほぼ同じです。リテーナーを構成するのは、レジンと矯正用ワイヤーであることから、裏側矯正(舌側矯正)よりもさらに目立ちにくいといえるでしょう。固定式の保定装置なので、患者さん自身が毎日着脱する必要はありません。ただ、裏側矯正(舌側矯正)の装置よりも外れやすく、歯磨きもしにくいというデメリットを伴います。装置が外れた際には速やかに矯正歯科を受診して、修理してもらう必要があります。

リンガルリテーナー

リンガルリテーナーもフィックスタイプリテーナーと同じ固定式の保定装置です。主に犬歯から犬歯までの前歯部に設置される装置で、歯列の裏側に固定します。そのため装置が目立たず、ひと目が気になりませんが、固定式であるがゆえに汚れがたまりやすく、発音や滑舌に悪影響を与えることがあります。

裏側矯正(舌側矯正)で使用するリテーナーのメリット

裏側矯正(舌側矯正)で使用するリテーナーのメリット 裏側矯正(舌側矯正)で使用するリテーナーには、次に挙げるメリットがあります。

審美性に優れている

裏側矯正(舌側矯正)で使用するリテーナーは、審美性に優れており、一見すると何も着けていないように見えます。特に固定式のフィックスタイプリテーナーとリンガルリテーナーは、歯列の裏側に装置を設置するため、保定期間中であることに気付かれにくいです。こうしたリテーナーは、裏側矯正(舌側矯正)後も口元の審美性を低下させたくないという人におすすめできます。

固定式なら取り外しの手間がない

フィックスタイプリテーナーとリンガルリテーナーは、固定式の保定装置なので、患者さんが毎日着脱する必要はありません。この点も裏側矯正(舌側矯正)の装置と同じです。専用の接着剤を使って歯列の裏側にしっかりと固定されることから、日常生活を普段どおりに送れます。また、装置の付け忘れがないため、着脱式のリテーナーより後戻りのリスクが低くなります。

裏側矯正(舌側矯正)で使用するリテーナーのデメリット

裏側矯正(舌側矯正)で使用するリテーナーには、次に挙げるデメリットを伴います。

歯磨きがしにくい

歯列の裏側に固定するタイプのリテーナーは、審美性に優れているものの、清掃性が悪くて汚れがたまりやすいです。それは裏側矯正(舌側矯正)を経験した人ならよくわかることでしょう。正しい方法で歯磨きしなければ歯垢や歯石が形成されて、むし歯・歯周病リスクが高くなる点に注意が必要です。

固定式は装置の除去に手間がかかる

固定式の装置は、専用の接着剤でしっかりと固定されているため、除去するには相応の手間がかかります。当然ですが患者さんが自分で取り外すことはできず、歯科医院を受診しなければなりません。

着脱式は固定式よりも費用が高い

クリアリテーナー(マウスピースタイプリテーナー)は、装置が目立たず、食事と歯磨きの際に取り外せることから、使い勝手がよいのですが、固定式のリテーナーより費用が高くなるというデメリットを伴います。また、着脱式は破損や紛失のリスクが高い点にも注意が必要です。患者さんの責任でリテーナーが壊れたり、失くしたりした場合は、もう一度製作する費用がかかります。

裏側矯正(舌側矯正)のリテーナーを装着する際の注意点

裏側矯正(舌側矯正)のリテーナーを装着する際の注意点 裏側矯正(舌側矯正)のリテーナーを装着する際には、以下の点に注意しましょう。

装着時間・期間を守る

リテーナーの装着時間と期間を守ることは、矯正治療後の歯の位置を安定させるためにとても重要です。矯正治療後の歯は、まだ移動しやすい状態にあります。そのため、リテーナーを指示されたとおりに装着し続けることで、理想的な歯並びを保つことができます。特に、装着時間を守らないと、治療の効果が薄れる恐れがあります。はじめの数ヵ月は可能な限り長い時間装着し、その後は夜間だけの装着に移行する場合ですが、必ず歯科医師の指示にしたがってください。

定期的にメンテナンスを受ける

リテーナーは定期的なメンテナンスが必要です。リテーナー自体の清潔を保つことはもちろん、定期的に歯科医院でチェックを受けることで、装置の状態や噛み合わせの変化を確認することができます。また、リテーナーは使用頻度が高いため、劣化や変形が起こることがあります。これを放置すると、歯並びに悪影響を及ぼす可能性があることから、定期的な診察を受けることが重要です。通常は、3ヵ月から6ヵ月に一度のメンテナンスが推奨されます。

装置の除去は必ず歯科医師に任せる

リテーナーの除去や調整は、必ず歯科医師に任せることが重要です。自己判断でリテーナーを取り外したり、調整しようとすると、装置が破損したり、歯や歯ぐきを傷つける恐れがあります。特に、リテーナーの素材や構造はとてもデリケートで、専用の器具を使わなければ正しく扱うことができません。歯科医師はリテーナーの構造を理解し、適切な調整方法を知っているため、安心して任せることができます。

慣れるまでは我慢強く装着し続ける

リテーナーの装着初期は違和感や不快感を生じることがありますが、慣れるまでは我慢強く装着し続けることが重要です。とりわけ裏側矯正(舌側矯正)のリテーナーは舌に触れる部分が少なくないので、はじめは話しづらかったり、食事がしにくかったりすることがあります。しかし、装着を続けることで次第に慣れてきて、日常生活に支障がなくなります。違和感が続く場合や痛みが強い場合は、無理をせずに歯科医師に相談してください。

破損・脱離時はすぐ歯科医院へ

リテーナーが破損・脱離した場合は、すぐに歯科医院へ連絡し、対応を受けることが重要です。破損したリテーナーをそのまま使用すると、歯に悪影響を及ぼす可能性があります。また、リテーナーが外れたまま放置すると、歯が元の位置に戻ってしまう恐れもあります。迅速に歯科医院で修理や交換を受けることで、矯正治療の効果を維持することができます。

その他の注意点

◎リテーナーで痛みが生じる原因と対処法
これからリテーナーを使用する人は、動的治療に用いる装置と同様に痛みが生じるのか、不安に感じる方もいるようです。結論からいうと、リテーナーで動的治療と同じような痛みが生じることはまずありません。なぜならリテーナーは、すでに整った状態の歯並びを安定させるための装置だからです。それは使用するリテーナーの種類に関わらず、すべてのケースに共通していえることでしょう。 それにも関わらずリテーナーの装着時に強い痛みが生じる場合は、装置か口腔に何らの異常が疑われるため、主治医に相談する必要があります。具体的には、リテーナーの装着時間の不足によって後戻りが生じ、装置の適合性が悪くなっていたり、歯や口腔粘膜に傷が生じていたりする可能性が考えられます。そうしたケースでは、後戻りをリカバリーする処置や口腔のトラブルを改善する取り組みを優先しなければなりません。

◎取り外し式リテーナーのケア方法
取り外し式リテーナーは、毎日適切にケアすることが大切です。リテーナーに付着した汚れは、やわらかめの歯ブラシでやさしく磨き、常温の水で洗い流しましょう。硬い歯ブラシでゴシゴシと磨くと、表面に傷がついて汚れが付きやすくなります。また、高温のお湯で煮沸消毒すると、樹脂で作られたリテーナーが変形する恐れがあるため、使用するのは常温の水かぬるま湯に限定してください。リテーナーに付着した汚れは、歯磨きだけで落とせないものもあるため、マウスピース型矯正装置と同じように、専用の洗浄剤を定期的に使うことが推奨されます。マウスピース用の洗浄剤を用いれば、入れ歯に残ったしつこい汚れも化学的に分解・除去できます。

◎リテーナーは正しく使用することが大切
裏側矯正(舌側矯正)のリテーナーを正しく使用するためには、装着時間・期間を守り、定期的にメンテナンスを受け、装置の除去は歯科医師に任せることが重要です。また、慣れるまでは我慢強く装着し続け、破損や脱離時にはすぐに歯科医院へ連絡することが求められます。これらの注意点を守ることで、矯正治療の効果をできる限り引き出し、美しい歯並びを維持することができます。

まとめ

まとめ 今回は、裏側矯正(舌側矯正)後のリテーナーの種類やメリット・デメリット、使用する際の注意点などを解説しました。裏側矯正(舌側矯正)の目立ちにくいリテーナーの選択肢としては、クリアリテーナー(マウスピースタイプリテーナー)、フィックスタイプリテーナー、リンガルリテーナーの3つが挙げられます。それぞれに異なる特徴とメリット・デメリットがあるため、詳細については本文を参照してください。また、裏側矯正(舌側矯正)の保定を成功させるためには、リテーナーの装着時間・期間を守る、定期的にメンテナンスを受ける、装置の除去は必ず歯科医師に任せる、慣れるまでは我慢強く装着し続ける、破損・脱離時はすぐ歯科医院へ連絡することが重要となりますので、十分に注意しましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
坂本 輝雄医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

坂本 輝雄医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

東京歯科大学卒業 東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科矯正学専攻)修了 東京歯科大学歯科矯正学講座助手 慶応義塾大学医学部形成外科学教室非常勤講師 米国オクラホマ大学歯科矯正学講座 Visiting Assistant Professor 東京歯科大学歯科矯正学講座講師 東京歯科大学退職 東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科 臨床准教授

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坂本 輝雄医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

東京歯科大学卒業 東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科矯正学専攻)修了 東京歯科大学歯科矯正学講座助手 慶応義塾大学医学部形成外科学教室非常勤講師 米国オクラホマ大学歯科矯正学講座 Visiting Assistant Professor 東京歯科大学歯科矯正学講座講師 東京歯科大学退職 東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科 臨床准教授

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