矯正治療で歯並びを改善したいけど、どのくらい痛みがともなうのか不安に思っている方は多いのではないでしょうか。
残念ながらどのような矯正治療にしても、歯を動かすにあたって痛みが生じることはあります。
矯正治療とは、矯正装置を装着して長期間日常生活を送るものです。そのため、日常的に痛みが生じるのではないかと心配されるのは当然のことでしょう。
安心して矯正治療を受けるためにも、ある程度時間が経過すれば痛みが落ち着くのか・痛みへの対処方法があるのかなどを知っておきたいところです。
また、通常の表側矯正と裏側矯正(舌側矯正)で違いがあるのかも気になるポイントです。
この記事では、裏側矯正(舌側矯正)の痛みはいつまで続くのかをはじめ、痛みの原因・対処方法についても解説しています。
また、裏側矯正(舌側矯正)がどのような方に向いている矯正治療なのか、メリット・デメリットとともに紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
矯正治療が終わったときに、歯並びが自分の納得できる仕上がりになっているのが理想です。そのため、矯正治療を始める前に、疑問点は徹底的にクリアにしておくことが大切です。
裏側矯正(舌側矯正)とはどのような矯正?
歯並びを改善したいけど、矯正しているのを周りに知られたくないという方は多いのではないでしょうか。特に仕事で人と接する場合は、できるだけ目立ちにくい矯正治療を受けたいところです。
裏側矯正(舌側矯正)は、まさにそのような要望にこたえるための矯正治療といってもよいでしょう。それでは裏側矯正(舌側矯正)とは、どのような矯正方法なのかを具体的にみていきましょう。
矯正装置を歯の裏側に取り付ける矯正
裏側矯正(舌側矯正)は、矯正装置を歯の裏側に取り付けて歯並びを改善する矯正方法です。歯の表側に矯正装置を付けるよりも、違和感が少ないのが特徴となっています。
そのため、矯正装置を付けていても唇を閉じやすく話しやすいです。また、前歯の歯並びは舌の癖の影響を受けることもあります。
舌で前歯を押す癖がある場合、裏側矯正(舌側矯正)だと装置に当たるので癖を改善できることがあります。
舌の癖を改善することで、前歯の矯正の後戻りを防止できるのも裏側矯正(舌側矯正)の特徴の1つです。
外側からは装置が見えにくい
裏側矯正(舌側矯正)の大きな特徴の1つは、歯の裏側に矯正装置を装着するので目立ちにくいことです。
矯正装置は通常のブラケットとワイヤーを使ったものですが、大人になってからでも矯正治療を受けやすいです。
そのため、営業職・受付といった人と接する機会が多い職業の方も選択しやすい矯正方法となっています。
裏側矯正(舌側矯正)の痛みはいつまで?
裏側矯正(舌側矯正)で痛みが生じる原因は、歯の移動・舌が矯正装置に当たる・むし歯などさまざまです。そのため、痛みがいつまで続くかは原因によって異なります。
ただ、矯正装置を装着した後・矯正装置を調整した後は歯が締め付けられたり、引っ張られたりする痛みが生じる場合があります。また、よくみられるのが噛んだときに鈍い痛みがするケースです。
このような痛みは、歯の移動によって生じることが多くなっています。そのため、個人差はありますが、数日~1週間ほどでおさまる場合がほとんどです。
痛みが強くて耐えられないという場合は、歯科医院で鎮痛剤をもらいましょう。
鎮痛剤を服用してしばらく様子をみても痛みが続く場合は、ほかの原因が考えられますので歯科医院に相談してください。
裏側矯正(舌側矯正)の痛みの原因は?
裏側矯正(舌側矯正)の痛みの原因は、大きく分けて歯が動くときの痛み・矯正装置が舌などに当たる痛み・むし歯による痛みの3つです。
また、むし歯以外にも口内炎・歯周病といった口腔内トラブルによる痛みの可能性もあります。歯周病は放置しておくと歯を失う危険性があります。
そのため、痛みが裏側矯正(舌側矯正)に起因するものなのか、しっかり原因を特定することが重要です。
歯が動くときの痛み
矯正装置を装着した後・ワイヤーなどの調整をした後は、歯が動くときの痛みと噛んだときの痛みが生じるケースがあります。ほとんどの場合は、数日~1週間ほどで痛みがおさまります。
痛みが強い場合は、痛み止めの服用がおすすめです。また、痛みが続く場合は、ワイヤーの引っ張る力が強すぎる可能性があるため、歯科医院に相談して矯正装置を調整してもらいましょう。
矯正装置が舌などに当たる痛み
特に裏側矯正(舌側矯正)の場合は、矯正装置が舌に当たりやすく粘膜を傷つけやすいです。それが原因で口内炎ができることもあります。
しかし、これらの痛みもほとんどの場合は、舌・粘膜が刺激に慣れることで次第に引いていきます。痛みが引かない場合は、歯科医院で矯正装置を調整するといった対応をしてもらいましょう。
むし歯があって痛いケースも
裏側矯正(舌側矯正)は、通常の表側の矯正よりむし歯になりにくいといわれています。その理由は、歯の内側は唾液の分泌量が多く、プラーク(歯垢)や汚れが付着しにくいからです。
また、歯の表側より裏側の方がエナメル質が厚いため、矯正装置が歯を傷つけるリスクも少ないです。
矯正装置を装着することで、歯磨きをしにくくなりむし歯になるケースがあります。歯が黒く変色している場合は、むし歯である可能性が高いです。
また、矯正装置によってプラークを落としにくくなり、歯周病になりやすくなるリスクもあります。むし歯・歯周病は自然に治癒しません。
違和感が続くようなら矯正治療が直接的な原因ではなく、お口のトラブルの可能性が高いので歯科医院で治療してもらいましょう。
裏側矯正(舌側矯正)で痛みが出た場合の対処法
裏側矯正(舌側矯正)の痛みは、ほとんどの場合は数日~1週間ほどで落ち着きます。そのため、様子をみる期間が必要です。
その期間の痛みにどう対応していいか不安に思っている方もいらっしゃるでしょう。できるだけ刺激を与えないようにして痛みをおさえることが大切です。
事前に痛みへの対処方法を把握しておけば、慌てず冷静に対応できるでしょう。
なるべくやわらかい物を食べるようにする
矯正装置を装着した後・矯正装置を調整した後は歯が動くことで、痛みが発生する場合があります。また、歯・歯茎も刺激に敏感になっており、噛んだときに痛みが生じるケースもあります。
そのため、食事はできるだけやわらかい食べ物をとるようにしましょう。極端に食生活を変える必要はありませんが、固い食べ物は避けてください。
食事をしていて痛みが生じたり、違和感を覚えたりする場合は、お粥・リゾットなどやわらかく噛みやすいものを食べましょう。
やわらかく煮たうどん・ハンバーグ・野菜スープなどもおすすめです。また、噛むときに負担がかからないように一口大に切るといった工夫をして、矯正治療による痛みを軽減してください。
歯磨きにはやわらかい歯ブラシを使う
歯磨きは力を入れ過ぎず、ペンを持つイメージで歯ブラシを握るようにしましょう。歯ブラシは、毛先がやわらかいものを使用することをおすすめします。
やわらかい歯ブラシで歯茎をマッサージするように磨くと、血行がよくなって痛みが和らぎます。また、矯正装置を装着していて磨きにくいため、丁寧に歯磨きをしてプラークをしっかり除去することも大切です。
痛み止めを飲む
矯正治療による痛みに対しては、ほとんどの歯科医院が痛み止めを処方してくれます。そのため、痛みが強い場合は痛み止めを服用しましょう。
1週間ほどで痛みがおさまるケースが多いですが、もし痛み止めがきれてしまった場合は市販の鎮痛薬でも問題ありません。
矯正用ワックスを使用する
矯正装置が舌・歯茎などに当たって痛みがある場合は、矯正用ワックスを使用します。矯正用ワックスは粘土のような形状をしており、これを適量取って矯正装置の舌・歯茎などに当たっている部分を覆います。
矯正用ワックスの役目は、矯正装置からお口の中を保護することです。矯正装置によって口内を傷つけること・痛みが生じることを防ぎます。
矯正用ワックスは食事中にとれたり、熱で溶けたりすることがありますが、食べても問題ない素材で作られているので心配はいりません。
気を遣うことなく食事をしたい方は、熱に対して強いシリコン製の矯正用ワックスを使用しましょう。
強い痛みがある場合は矯正歯科に相談
矯正装置の装着後・調整後から1週間ほど様子をみても、強い痛みが続く場合は矯正歯科に相談しましょう。矯正装置の装着に問題があるか、むし歯・歯周病といった口腔内トラブルの可能性があります。
具体的には舌・歯茎からの出血や神経がしみるように歯が痛むなどです。また、口が開きにくい状態が続いたり、顎に異常をきたして頭痛・耳鳴りが発生したりする場合は注意が必要です。
このような原因によって痛みが続く場合は、放置しておいても改善しないため矯正歯科でしかるべき治療を受ける必要があります。
大きな口腔内トラブルに繋がる可能性もあるため、決して痛みを放置しないようにしましょう。
裏側矯正(舌側矯正)のメリット・デメリット
裏側矯正(舌側矯正)の主なメリットとして、目立ちにくい・むし歯になりにくいといった点が挙げられます。
また、症例数が多い治療方法であることもメリットの1つです。
これに対して、費用が高くなりやすい・治療期間が長くなる場合があるというデメリットがあります。
また、裏側矯正(舌側矯正)は表側のマルチブラケット矯正と比べると歯の移動が遅いのもデメリットの1つです。
納得して矯正治療を受けるためにも、事前にメリット・デメリットをしっかり把握しておくことが大切です。
それでは、裏側矯正(舌側矯正)のメリット・デメリットについて具体的にみていきましょう。
メリット:歯科矯正を行っていることが周りにバレにくい
裏側矯正(舌側矯正)の大きなメリットは、矯正治療を行っていることが周囲にバレにくいことです。大人になってから矯正治療をしたいと思っても、矯正装置が目立つから躊躇してしまう方も多いでしょう。
その点、裏側矯正(舌側矯正)は歯の裏側に矯正装置を装着するので、ほとんど目立ちません。そのため、接客業をはじめとした人との対面・笑顔が重要な仕事をしている方にも、おすすめの矯正方法となっています。
メリット:むし歯のトラブルが起こりにくい
裏側矯正(舌側矯正)は、むし歯などの口腔内トラブルが起こりにくいのが特徴です。歯は表側より裏側の方がエナメル質が厚くなっています。
また、唾液による静菌作用・殺菌作用も歯の表側より裏側の方が高いです。そのため、むし歯菌・歯周病菌が繁殖しにくくなっています。
ただし、歯磨きをしっかり行わないと、高くなるのがむし歯になるリスクです。むし歯になると治療をしてから矯正治療を再開することになります。
これによって生じるのは、矯正治療にかかる期間が長くなってしまうというデメリットです。そのため、矯正装置を装着している部分に食べかすが溜まらないよう丁寧に歯磨きをしましょう。
デメリット:表側矯正に比べて費用が高くなりやすい
裏側矯正(舌側矯正)は、表側矯正に比べて費用が高くなりやすいというデメリットがあります。これは歯の裏側への処置を行うので、表側矯正よりも高い技術が必要とされ、施術時間も長くなるためです。
表側矯正の治療費用の目安は、上下の歯を合わせて100万円(税込)ほどです。裏側矯正(舌側矯正)の治療費用の目安は、上下の歯を合わせて150万円(税込)ほどとなります。
デメリット:表側矯正に比べて期間が長くなりやすい
裏側矯正(舌側矯正)は、治療終盤の歯の動き・噛み合わせの調整に時間が必要です。
また、表側矯正よりも内側に入っている歯を外に押し出すのに時間がかかる傾向があり、矯正装置の製作にも時間を必要とします。
そのため、表側矯正と比べると矯正治療にかかる時間が長くなる場合があります。
歯並びによって個人差はありますが、表側矯正より6ヶ月~1年ほど治療期間がかかると思っておいた方がよいでしょう。
まとめ
裏側矯正(舌側矯正)に限らず、矯正治療を行う上で少なからず痛みが発生するのは避けられません。ただ、矯正治療による歯の移動の痛みであれば、1週間ほどでおさまることがほとんどです。
食事・歯磨きに注意するとともに、痛み止め・矯正用ワックスなどの対処方法によって痛みの軽減に努めてください。
また、矯正治療が原因のものもあれば、むし歯などお口のトラブルに起因する痛みもあります。痛みが強かったり長引いたりする場合は、遠慮せずに矯正歯科に相談しましょう。
むし歯・歯周病であれば放置してしまうと、歯を失う原因になります。そのため、痛みの原因をしっかりと把握して、それに適した対処方法をとることが大切となります。
費用が高額になりやすいというデメリットはありますが、目立ちにくいというのは裏側矯正(舌側矯正)の大きな特徴です。
特に大人になってから歯並びを改善したい・接客業でも支障の少ない矯正方法を選びたいという方には、裏側矯正(舌側矯正)がおすすめです。
歯並びが気になるので矯正治療を考えており、目立ちにくいことを重視する方は裏側矯正(舌側矯正)を検討してみてください。
参考文献