「子どもの歯並び、可能ならきれいな歯並びになってほしい」このような思いを抱いている方もいるのではないでしょうか?
歯並びが悪いとむし歯や歯周病になりやすいだけでなく、見た目を気にし始める年頃になるとコンプレックスを抱く原因にもなりかねません。
しかしながら、歯列矯正を行おうとすると保険診療にならないケースが大半でお金もかかります。お金のかからない予防方法があるのなら、早めに取り組みたいでしょう。
今回は、そのような子どもの歯並びが悪くなる原因から治療・予防方法までを解説します。
子どもの歯並びが悪い代表的な症例・原因
- 歯並びが悪いといわれる代表的な症例を教えてください。
- 子どもの歯並びが悪いといわれる代表的な症例は以下です。
- 奥歯を噛んだ際、上下の前歯が噛みあわない(開咬)
- 前歯がカタカナの八の字に生えている
- 歯がガタガタに生えている(叢生)
- 上の前歯が前方に出ている(出っ歯)
- 下の歯が、上の歯より前方に出ている(受け口)
子どもは乳歯の段階ではすきっ歯で歯並びがよくないと感じていても、永久歯に生え変わる際に徐々に歯並びが整うことがあります。治療が必要な歯並びなのか素人では判断がつきにくいため、歯科医院で定期検診を受けながら治療を決定することが必要です。治療が必要なケースとして開咬・出っ歯・受け口・叢生などで骨格に問題がある場合、放っておくとうまく咀嚼できない歯並びになってしまうでしょう。歯並びの乱れの原因によっては、治療を開始する理想的な年齢もあります。歯科医院を受診し定期的な検診を行い、ベストなタイミングで治療を開始することが必要です。
- 歯並びが悪くなる原因は何ですか?
- 子どもの歯並びが悪くなる主な原因は以下の4つです。
- 遺伝
- むし歯の放置
- 指しゃぶりなどの生活習慣
- 口呼吸
遺伝など予防できないものもありますが、むし歯の放置・指しゃぶりなどの生活習慣・口呼吸などは気を付ければ予防できるものもあります。では、指しゃぶりや口呼吸はどのように歯並びに対して悪影響を与えるのでしょうか。指しゃぶりは3歳を過ぎても続けている場合、歯だけでなく顎にも悪影響が出るといわれています。これは、指をくわえることで上の前歯に前方へ押し出す力がかかってしまうためです。逆に、下の前歯は後方へ押し出されてしまい、上下の前歯同士の噛み合わせが悪くなります。指しゃぶりの悪影響はこれだけではありません。指を吸引する力によって、奥歯に対して外側から内側に向けて力が加わり、歯並びの横幅が狭くなる状態になってしまいます。次に口呼吸ですが、口呼吸では舌の位置が関係してきます。通常、鼻呼吸では舌はお口のなかの上側である口蓋におさまっていますが、口呼吸では舌の位置が下がりやすいです。舌の位置が下がることで上顎が発達しにくくなり、受け口の原因になるでしょう。また、口呼吸は鼻呼吸よりも口腔内が乾燥しやすく、むし歯や歯周病の原因にもなります。
- 子どもの歯並びは自然に治りますか?
- 顎の成長や永久歯への生え変わりに合わせて、自然に改善することはあります。しかし、受け口や出っ歯などの悪い歯並びの代表例があると、改善しない可能性もあるでしょう。まずは、歯科医師による定期検診で診てもらうことが必要です。
- 歯並びが悪いとどのようなリスクがありますか?
- 歯並びが悪いことによるリスクは以下のとおりです。
- 歯ブラシが届きづらくなり、むし歯や歯周病のリスクが高まりやすくなる
- 咀嚼がうまくできず、胃腸などに負担をかけるだけでなく脳の発達にも影響する
咀嚼がうまくできないと、食べ物を細かく裁断することができず、消化の効率が悪くなり吸収効率にも影響が出てくるでしょう。また、適切な咀嚼回数によって脳に満足感を与えることが報告されており肥満の予防にもなります。咀嚼と脳の関係はほかにも報告されており、適切な咀嚼回数は脳の知的機能にも影響を及ぼすとされ、子どもの健全な発育を促すために咀嚼は重要な行程といえるでしょう。
子どもの歯並びをよくする治療方法
- 歯列矯正とはどのような治療方法ですか?
- 歯列矯正とは、矯正装置を使い歯や顎に力をかけてゆっくり動かして歯並びや噛み合わせを整えていく治療です。装置の種類として、大きく2種類になります。
- 患者さん自身では取り外しができない固定式のマルチブラケット装置
- 患者さん自身で取り外しができる可撤式装置
マルチブラケット装置では一つひとつの歯に小さなブラケットという装置を装着し、そのブラケットにワイヤーを通して少しずつ歯列矯正していく治療法です。見た目が少し気になる点もありますが、透明なプラスチックやセラミック製のブラケットもあるので、気になる方は透明な装置を検討してみるのも一つかと思います。可撤式装置は噛み合わせの位置の調整や顎の成長を誘導する目的で使用され、ブラケット装置よりも部分的な歯列矯正を行うことができ、症状にあった歯列矯正ができるのが特徴です。これらの装置を装着した際の痛みは人によって異なり、装着した全員に出現するものではなく、痛みが出現しても数日で改善する場合もあるようです。装置を装着した際は、1ヵ月に1回程度は装置の調節のために通院する必要があります。また、歯列矯正装置が取り外されたとしても、歯は骨のなかで動いてしまう場合があるので治療後も受診し歯科医師に診てもらいましょう。
- 歯列矯正はいつ頃から始められますか?
- 歯列矯正の治療は症状によって開始できる年齢が異なります。顎を前後左右にずらさないと咀嚼することができない場合では、乳歯の時期から開始できるでしょう。また、成長するにしたがって出っ歯がひどくなることが予想される場合でも、積極的に治療を行っていきます。しかし、なかには顎の骨の成長を見極めて慎重に治療を決定していく場合があり、治療の回数も何回かに分けて行っていく必要もあるでしょう。子どもは成長とともに顎骨の形が変形したり、乳歯から永久歯に生え変わるなど歯の位置が変動したりします。また、症状に応じて治療方法も変わってくるので、焦らず歯科医師と相談しながら対応していくことが大切です。
- 子どもに向いている歯列矯正装置の種類を教えてください。
- 子どもの歯列矯正の場合、顎の成長発育を促したり抑制することによって、顎の成長を正しい方向へ導くことが重要です。そのような子どもの歯列矯正で使用される器具がヘッドギアやチンキャップです。ヘッドギアは上顎骨を、チンキャップは下顎骨の成長をそれぞれ抑制します。このように骨の成長を正しい方向へ導くことで、顔面の左右の歪みを改善することができるだけでなく、抜歯せずに歯並びを整えることができるでしょう。
- 歯列矯正にかかる費用・期間を教えてください。
- 歯列矯正にかかる費用は検査や治療の内容にもよりますが、乳歯から永久歯に生え替わる時期であれば200,000円台(税込)から300,000円台(税込)でおさまります。しかし、乳歯から永久歯にすべて生え替わってから治療を行おうとすると、300,000円台(税込)から600,000円台(税込)程かかってくるでしょう。また、これらの治療費は治療の難易度によっても変動し、1,000,000円(税込)以上かかる場合もあります。費用面で見た場合、小さい頃から開始している方が費用を抑えることができるといえるでしょう。
子どもの歯並びを悪くしないための予防方法
- 歯並びを悪くしないために日常で注意するべき点はありますか?
- 指しゃぶりや口呼吸など、歯並びを悪くする習慣を生活のなかから取り除くことです。なかなか指しゃぶりをやめてくれないこともありますが、3歳以降に行っている場合はできるだけやめさせてあげましょう。指しゃぶりは自分の気持ちを落ち着かせるためにとる行為とされ、ぬいぐるみなど子どもがリラックスするものを与えることでやめさせることができるようです。歯や顎に負担をかける原因として、頬杖をついたり悪い姿勢も挙げられます。まずは、歯科医院を受診し歯科検診を受けるとともに、歯並びを悪くする日常の行為やお口周りの筋肉を鍛える方法についても学んでみましょう。
- 食事の面で気を付ける点はありますか?
- やわらかい食事ばかりではなく、適度に固い食べ物を摂取するよう心がけましょう。これは歯並びをよくするために、ある程度顎やお口周りの筋肉を鍛える必要があるとされているからです。ほかにも、食べ物をよく噛んで食べることが、顎の成長を促すともいわれています。
編集部まとめ
今回、子どもの歯並びが悪くなる原因や治療法・予防方法までを紹介しました。
歯並びに関係する因子として、遺伝的なものから習慣的なものまで幅広くあります。まずは、指しゃぶりなどの習慣的な要因を取り除くことが予防の第一歩です。
それらを行ったうえで、よく噛んで食べるなど顎やお口周りの筋肉を鍛えていき、健全な歯列を目指していきましょう。
早めの介入によって、歯列矯正にかかる費用を安く抑えることができます。自分の子どもの歯並びに不安があるようなら、まずは早めに歯科医院を受診してみましょう。
参考文献