日常のなかで、子どもが無意識にお口を開けている姿を見かけたことはありませんか?
実はこの状態はお口ぽかんと呼ばれ、医学的には口呼吸と位置付けられています。
一見すると可愛らしい仕草にも見えますが、実際には健康や発達に深く関わる重要なサインの一つです。
本記事では、子どものお口ぽかんの原因や放置によるリスク、改善方法について質問形式で詳しく解説します。
子どもがお口をぽかんとする原因
- 子どもがお口をぽかんとする原因を教えてください。
- 子どもがお口をぽかんと開けてしまう背景には、さまざまな原因があります。主な原因は以下のとおりです。
- 鼻づまりなどの鼻呼吸障害:アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎などにより鼻が詰まりお口で呼吸せざるを得ない状態
- 口周りの筋力不足:食事や会話で十分な咀嚼や発音ができていないお口の周囲の筋肉が弱まり閉じる力が低下
- 習慣や姿勢の悪さ:長時間のスマートフォンやタブレットの使用による前かがみの姿勢や、お口を開けたままにする習慣が原因
- アデノイド肥大:鼻の奥にあるアデノイド(咽頭扁桃)が大きくなると、鼻呼吸がしづらくなり口呼吸に頼る
このように、子どものお口ぽかんは単なる癖ではなく、身体の機能や生活環境に深く関係しています。
- 口呼吸は親から遺伝しますか?
- 口呼吸自体が病気のように遺伝するわけではありません。ただし、口呼吸を引き起こしやすい体質や身体的特徴は、親から子どもに遺伝することがあります。例えば、鼻がつまりやすいアレルギー体質や顎が小さいなどの骨格の特徴は、遺伝的な影響を受けやすいといわれています。実際に、よく見られるのは以下のようなケースです。
- アレルギー性鼻炎などで、子どもも鼻づまりしやすい
- 親と同じように顎が小さく、お口を閉じるのが難しい
- 家庭内で口呼吸が習慣化している
体質や顔立ち、生活習慣などが親に似ていることで、子どもも自然と口呼吸をするようになりがちです。口呼吸の要因は、遺伝だけではなく生活環境にも関係しています。そのため、子どもがお口をぽかんと開けている場合は、まずは家族全体で口呼吸の習慣がないか見直すことが大切です。親自身も鼻呼吸を意識することで、子どもの改善につながります。
子どものお口ぽかん(口呼吸)は自然には治らない?
- 子どもの口呼吸は成長すれば自然に改善しますか?
- 子どもの口呼吸は、自然に治るとは限りません。原因がなくならないままだと、成長後も口呼吸の状態が続くことが少なくありません。子どもが口呼吸になる理由には、以下のような原因があります。
- 鼻が詰まりやすく、鼻でうまく息ができない
- 口周りの筋肉が弱く、お口を閉じる力が足りない
- 姿勢が悪く、自然にお口が開いてしまう
上記のような原因を放置すると成長しても鼻呼吸ができず、ずっと口呼吸のままになる可能性があります。乳児期から小学校低学年頃まで口呼吸が続いていると、顎の発達や歯並び、顔つきにまで影響を及ぼす可能性があります。口呼吸は癖になりやすく、一度その呼吸に慣れてしまうと、本人が自覚しないまま習慣として定着しやすくなります。成長を待つだけで自然に改善されることは少なく、原因に応じて早めに対処することが重要です。
- 子どもがお口をぽかんとしている場合、早めに治療を開始するべきですか?
- できるだけ早期に治療や対応を始めることが重要です。子どもは成長の過程で、呼吸方法や姿勢、筋肉の使い方などを学びながら、身体に習慣として定着させていきます。口呼吸の癖がついてしまうと、そのまま成長し大人になっても、お口を開けたままの状態が習慣化してしまう場合があります。小さな子どもは、鼻で呼吸することや口を閉じることを自覚して行うのが難しい時期です。そのため、大人が早期に気付き、適切にサポートすることが求められます。早い段階であれば、簡単なトレーニング生活習慣の見直しだけで改善する例も少なくありません。一方で、年齢を重ねてから改善しようとすると、歯列矯正や専門的な治療が必要になり注意が必要です。心配な場合は、耳鼻科や小児歯科、小児科などに相談し現在の状態を診てもらうことで、安心して適切な対応を進めることができます。
- 子どもの口呼吸を放置するリスクを教えてください。
- 口呼吸を放置すると、子どもの身体や心にさまざまな悪影響が生じるおそれがあります。例えば以下のようなリスクがあげられます。
- 歯並びが悪くなる
- 顎の成長に偏りが生じる
- 集中力の低下
- 睡眠の質の悪化
- いびき
- 睡眠時無呼吸症候群
お口を開けたままでいると舌の位置が下がり、顎や歯に適切な圧力がかかりません。その結果、出っ歯や受け口、歯の重なりといった歯並びの異常が起こりやすくなります。また口呼吸は浅い呼吸になりやすく、十分な酸素が脳に届かなくなることがあります。そのため、日中に集中力が続かず、疲れを感じやすいです。口呼吸を放置すると勉強や運動、身体の成長にも悪影響を及ぼすおそれがあります。ただの癖だからそのうち治ると軽く考えず、早めの対応がとても重要です。
- 口呼吸は顔つきにも影響すると聞いたのですが本当ですか?
- 口呼吸が続くと、お顔の骨格や筋肉の使い方に影響が生じ、アデノイド顔貌(がんぼう)と呼ばれる特徴的な顔つきになることがあります。アデノイド顔貌の主な特徴には次のようなものがあります。
- 顎が小さく後方に引いて見える
- 上顎や鼻周囲が平坦になる
- 口元が前方に突出する
正しい鼻呼吸ができていないことで、お顔の成長に偏りが生じた結果です。特に成長期の子どもは骨格がやわらかいため、口呼吸の影響を受けやすいとされています。一度骨格が固定されてしまうと、大人になってから顔つきを大きく変えるのは容易ではありません。そのため、お顔のバランスを整えるためにも、子どものうちに正しい呼吸習慣を身につけることが重要です。
子どものお口ぽかん(口呼吸)の改善方法
- 子どもの口呼吸の治し方を教えてください。
- 子どもの口呼吸を改善するには、なぜお口で呼吸しているのかという原因を把握することが重要です。以下に主な原因と、それぞれにあわせた治療法をまとめました。鼻づまりが原因の場合、自然に口呼吸になってしまいます。この場合は耳鼻科での治療が第一です。
- 耳鼻科で鼻のとおりを改善する治療を受ける
- アレルギー薬の内服や点鼻薬を使用する
鼻の通りが改善すると、自然と鼻呼吸がしやすくなります。次にお口周りの筋肉が弱く、お口を閉じていられない場合には、口腔筋機能療法(MFT)というトレーニングが効果的です。
- 舌を上顎につける練習:舌の正しい位置を覚える訓練
- 唇を閉じる練習:風船をふくらます運動や口すぼめ体操など
MFTトレーニングでは、お口を自然に閉じる筋力と習慣を身につけることができます。最後に骨格的にお口が閉じにくい場合や、歯並びが原因の場合は歯列矯正による改善が必要になることもあります。
- 小児歯科や歯列矯正歯科に相談し、適した歯列矯正装置を使用する
- マウスピース型装置を夜間使用する
歯列矯正によって、舌や顎の位置が正しく整い、自然にお口を閉じやすくなります。
- 子どもの歯列矯正ではどのような矯正装置を使用しますか?
- 子どもの口呼吸を改善するには、歯並びや顎の位置を整えることが効果的です。子どもの成長段階に応じて、以下のような歯列矯正装置が使われます。
- マウスピース型歯列矯正装置
- 拡大床(かくだいしょう)
- ワイヤー矯正(部分矯正含む)
マウスピース型歯列矯正装置は、夜間の装着を中心とし、歯列の乱れや口呼吸の改善が目的です。取り外しが可能なため、子どもにも負担が少なく慣れやすいのが特徴です。拡大床は、顎を広げることで、舌の位置を正しく保てるようになり、鼻のとおりも改善されることがあります。そのため、鼻呼吸の習慣が身につきやすくなります。ワイヤー矯正は、歯の位置を細かく調整できるため、より正確な歯列矯正が可能です。
上記の装置は、子どもの口呼吸の原因や歯の成長状態によって選ばれます。歯列矯正治療は長期的な取り組みですが、正しい呼吸ときれいな歯並びの両方を手に入れるためには有効な方法です。歯列矯正歯科での診断を受け、子どもに合った装置を選ぶことが重要です。
- 歯列矯正で口呼吸を改善するためにどのくらいの期間が必要ですか?
- 歯列矯正にかかる期間は、子どもの年齢や歯並びの状態、使用する装置の種類によって異なります。一般的には、数ヶ月から3年程度の期間が必要になるケースが多いです。目安としては以下のとおりです。
- マウスピース型装置:6ヶ月から1年半程度
- 拡大床:1〜2年程度
- ワイヤー矯正:2〜3年程度
装置の種類や目的によって、治療期間は大きく変わります。マウスピース型装置や拡大床は、自然にお口を閉じる習慣を身につけるための歯列矯正であるため、短期間で効果が現れやすい傾向があります。
- 歯列矯正で口呼吸を改善するためにどのくらいの費用がかかりますか?
- 費用は使用する装置や治療内容によって異なります。以下は一般的な目安です。
- 乳歯列期:約30,000~200,000円(税込)
- 混合歯列期:約150,000~600,000円(税込)
- 永久歯列期:約500,000~1,300,000円(税込)以上
多くの場合、保険が適用されないため、事前に費用を確認することが重要です。
編集部まとめ
子どものお口ぽかん(口呼吸)は、単なる癖ではなく成長や健康に深く関わるサインです。
放置すると歯並びや顔つき、免疫力、集中力など心身の発達にさまざまな悪影響を及ぼす可能性があります。
鼻づまりや筋力の弱さ、姿勢の悪さ、歯並びの問題など、原因は一人ひとり異なります。
そのため、耳鼻科や小児歯科、歯列矯正歯科などの専門機関と連携しながら、子どもに合った対応を見つけることが大切です。
まずは日常のなかで「お口が開いていないかな?」「鼻でしっかり息ができているかな?」と注意して見守ってあげましょう。
子どもの健やかな成長のために、家族みんなでサポートしていくことが、何よりの改善の近道です。
参考文献