前歯のガタガタが気になって、悩んでいる人は少なくありません。前歯は見えやすい位置にあるため、ガタガタしている歯は目立ちやすいです。
ガタガタを放置するとむし歯や口臭の原因になるので、気になる人は早めに歯列矯正をすることが大切です。歯列矯正は歯並びをととのえるだけでなく、健康な歯を維持できるでしょう。
この記事では、前歯のガタガタを歯列矯正する治療方法を解説します。ガタガタになる原因や治療期間、費用相場なども併せて紹介しますので、参考にしてみてください。
前歯ガタガタ(叢生)が起こる原因
前歯ガタガタは、顎と歯の大きさのバランスが悪くなることで生じます。歯の大きさは遺伝が原因といわれており、人によって大小さまざまです。
たとえ歯が大きくても顎が歯のサイズに合っていれば、きれいな歯並びが形成されるでしょう。歯の大きさに対して顎が小さければ、歯が列からはみ出てガタガタになるのです。
また、顎の大きさも歯と同様に遺伝が関係しています。加えて、乳幼児は顎の使い方で顎の発達に影響を与えると考えられています。
顎が未発達になる乳幼児の習慣として、代表的なのは口呼吸やちゃんと噛まない食事などです。口呼吸は風邪やアレルギー性鼻炎で鼻が詰まっていることが原因です。
そのため、口呼吸が習慣にならないように耳鼻咽喉科や歯科医院で治療を受けることが大切です。普段の食事では顎の発育のために、よく噛んで食べるようにしましょう。
前歯ガタガタを矯正する治療方法
ガタガタの前歯を歯列矯正する治療方法は3つです。一人ひとり症状が異なるため、それぞれに合った適切な治療方法を選択しなければなりません。
子どもや大人、患者さんの求める治療結果など、治療方法を選ぶにはさまざまな要素が挙げられます。適切な治療方法を選択するには、要素と合わせて患者さんと歯科医師の十分な話し合いが大切です。
また、人によっては歯列矯正効果を得られない治療方法があります。それぞれの治療方法にはメリット・デメリットがあるので、治療方法を選ぶ際の参考にしてください。
マウスピース型矯正
自由に取り外せる透明なマウスピース型を歯にはめて歯列矯正する治療方法です。毎日約20時間装着し、動いた歯に合わせて少しずつ形が異なるマウスピース型に切り替える必要があります。
透明な装置で人からは見えにくく、心理的なストレスを感じにくいメリットがあります。また、食事の際は取り外しができるため、食べ物の制限がありません。
しかし、歯の移動量が少ない治療法であるため、治療できる人は限られます。小児などは長時間の装着が難しいため、不向きかもしれません。
ワイヤー矯正
歯の表面に歯列矯正器具を固定し、常に歯列矯正状態を維持する治療法です。歯並びの状態によって、裏側に装置をつけることも可能です。
年齢問わずに治療できる代表的な歯列矯正方法であり、患者さんの要望に応えられるように細かい調整をできる特徴があります。
しかし、常に装置がついているため、見た目が気になったり痛みを感じたりすることがあります。食事の際、装置が外れることもあるため、硬い食べ物などは避けるようにしましょう。
部分矯正
部分的にワイヤーやマウスピース型を使って歯列矯正する治療方法です。八重歯や部分的な歯の隙間が気になる場合、おすすめの歯列矯正方法と考えられます。
全体歯列矯正よりも費用や時間がかからず、気になる前歯の症状を改善することが期待できるでしょう。
しかし、部分歯列矯正は歯並びの状態によってできる人は限られます。また、見た目はきれいになるかもしれませんが、噛み合わせの改善は期待できません。
歯科医師に相談し、噛み合わせの検査などを実施したうえで、治療方法を選択することが好ましいでしょう。
前歯ガタガタを放置すると生じる影響
前歯ガタガタの歯並びは見た目が気になるだけでなく、さまざまな症状を引き起こす原因となります。放置することで、徐々に心と体に好ましくない影響がでるかもしれません。
特に、前歯ガタガタは見た目に影響を与えるため、心理的なストレスを感じる場合もあるでしょう。
ここからは、前歯ガタガタを放置することで生じる影響を5つ紹介します。
見た目が気になる
前歯は人から見える位置にある歯であるため、見た目が気になると感じる人がほとんどです。ガタガタな前歯に対してコンプレックスを抱く人も少なくありません。
特に思春期などの繊細な心の状態では、人前で思いっきり笑えなかったり、会話を楽しめなかったりするかもしれません。成人後、心の傷が残る可能性も考えられます。
また、歯並びがいい人よりも、見た目の印象を悪くとられることがあります。「歯が命」という言葉があるくらいなので、歯並びは大切に考えるべきでしょう。
むし歯・歯周病リスクが高まる
前歯がガタガタしていると、むし歯や歯周病になるリスクが高まると考えられています。なぜなら、歯の磨き残しが増えるためです。
きれいな歯並びであれば、正しい歯磨きで十分に汚れを落とし、清潔に保てるでしょう。
しかし、歯と歯の重なりや歯の生える方向が異なるなどのガタガタした状態では、きれいに歯を磨くのは難しいでしょう。
磨き残しの状態が続くと慢性的な歯周病やむし歯を繰り返すことになるため、口臭や歯痛などの口腔トラブルが起こりやすくなります。
前歯ガタガタは口腔トラブルのもとになる可能性があるため、歯列矯正をするかどうか早めに歯科医師に相談するとよいでしょう。
口内炎ができやすい
歯が頬や舌などに長期にわたってあたることで口内炎ができやすくなります。前歯がガタガタな状態では歯がとがっていることがあり、自身の歯で口の中を傷つけてしまう可能性があります。
できた傷が炎症を起こして口内炎になるケースも多く見られます。物理的な原因であるため、歯の位置が変わらない限り、繰り返し同じ症状に悩まされるでしょう。
なかなか治らない口内炎があったり、同じ場所に何度も口内炎ができたりする場合は、自分の歯が原因かもしれません。
むし歯治療が難しい
むし歯治療はむし歯菌に侵された部位を削り、開いた穴に歯専用の材料を詰める処置をします。軽度のむし歯であれば、フッ素を塗るだけの削らない治療法もあります。
ところが、前歯がガタガタな状態で発見されるむし歯は見えにくい場所にできることがほとんどです。歯の痛みを感じて初めて気付くことになるかもしれません。
ガタガタな前歯では歯と歯の間の見えにくい位置の治療となるため、削る範囲も広く、難易度は高いと考えられます。
定期的な歯科検診を受けて、むし歯を予防するようにしましょう。
体のバランスが崩れる
ガタガタな前歯では、うまく食べ物を噛み切ることができません。そのため、ほかの歯を使って食事するようになります。
しかし特定の歯を使って咀嚼を続けると、顔のバランスが崩れて顎に大きな負担がかかる可能性があります。その結果、顔の歪みの原因になるかもしれません。
また、バランスの崩れた状態が続くとガタガタがさらに進行したり、発音が悪くなったりすることもあります。
矯正で前歯のガタガタを治す際の治療期間・費用相場
歯列矯正治療は始める時期によって、治療期間が異なります。特に、子どもの歯列矯正は乳歯と永久歯が混ざっているため、治療期間が長引くこともあります。
子どもの場合、噛み合わせや顎の成長を考慮して、治療を続けるか判断することも重要です。永久歯が生えそろった高校生〜大人の歯列矯正は歯の状態で歯列矯正期間が決まります。
いずれにしても歯のガタガタ具合で歯列矯正する期間が決定するため、歯並びが気になったタイミングで受診するようにしましょう。早い段階で治療を始めることが最短の治療につながります。
治療期間
永久歯が生えそろった大人の治療期間は、一般的に約2〜3年といわれています。子どもは第I期治療と第II期治療に分かれるため、歯の状態で治療期間が決定します。
大人は高齢になる程、歯が動きにくくなるため治療期間が延びる可能性を考慮するべきです。歯と歯茎が健康な状態でないと、歯列矯正はできないため早めに治療を始めるとよいでしょう。
子どもの歯列矯正の場合は、乳歯が生えている時期に行う第I期治療と成長期に歯列矯正を行う第II期治療があります。第II期治療は大人と同じ歯列矯正です。
噛み合わせに異常がなければ、第I期治療だけで終了することもあります。そのため、治療期間は歯の状態に左右されるといえるでしょう。
また、子どもの歯は動きやすく、治療ペースは大人よりも早いと考えられます。しかし、治療を開始した時期により、I期とII期の両方の治療が必要となるため時間がかかるかもしれません。
費用相場
費用相場は大人の歯列矯正で約80万〜120万円(税込)といわれています。健康保険が適用されないため、高額な費用とされていることがほとんどです。
子どもの場合は、第I期治療と第II期治療のどちらを行うかで費用もさまざまです。
自由診療、かつ治療方法が豊富にあるので、歯科医院ごとに費用にバラつきがあります。歯列矯正を検討している人は、歯科医院に確認しておくとよいでしょう。
なお、病気が原因で前歯のガタガタが起きている場合、保険適用となることがあります。保険適用となる疾患は限られているため、歯科医師に確認してみてください。
前歯のガタガタを矯正で治療する時期
一般的に歯列矯正治療を始めるのは、成長期の小学生〜中学生の年齢が好ましいといわれています。顎の成長に合わせて、歯列矯正をすすめられるからです。
前歯ガタガタの歯並びは叢生という不正咬合の一つであり、成長期で骨格に異常がない状態であれば、永久歯が生えそろってから治療を開始するとよいでしょう。
前歯がガタガタしているだけの状態であれば、噛み合わせの影響が少ないと考えられています。しかし、万が一異常がある場合は、早期に治療する必要があります。
噛み合わせが悪い状態を放置することは、前歯のガタガタを悪化させてしまうリスクがあるだけでなく、治療が長引く原因になってしまうためです。
一般的な治療時期を考慮して、前歯のガタガタが気になる場合は早めに歯科医師に相談しておくとよいでしょう。
大人が矯正を行う場合の注意点
一般的に成長期の子どもの頃に歯列矯正をすることが好ましいとお伝えしましたが、成人した大人でも歯列矯正することは可能です。
大人で歯列矯正するメリットは金銭的な余裕があることや治療の選択肢が増えることです。自分の求める理想の歯並びにするため、歯科医師とのカウンセリングを細かく行いましょう。
しかし、大人は永久歯が生えそろった状態での治療になるため、2つの注意点があります。
治療期間が長くなる
大人の歯は永久歯が生えそろった状態で、顎の成長が止まっています。歯列矯正は顎と歯のバランスをととのえる治療であり、大人は歯を動かすだけで歯列矯正することになります。
成長期の子どもは、顎の成長に合わせて歯を動かす歯列矯正です。そのため、歯が滑らかに動く特徴があります。一方で、大人の歯列矯正は顎が動かないため、歯の動きがゆっくりです。
顎が小さい場合は、スペースを空けるために抜歯をしなければなりません。顎が動かない分、大人の歯列矯正は治療の工程が増える場合があります。
また、大人は子どもよりも代謝が落ちていることも治療期間が長くなる原因の一つです。代謝がよいと歯の動きも滑らかになるため、歯列矯正は早い段階で始めるとスムーズでしょう。
後戻りする可能性がある
歯列矯正が終わった後は歯が後戻りする可能性があるため、保定装置をつける必要があります。動かしたばかりの歯は不安定で、元の場所に戻ってしまう性質があるからです。
保定装置は歯を歯列矯正した場所に留めるためのものであるため、保定装置の装着を怠ることは避けましょう。
保定装置は固定式と付け外しの2種類あるため、どちらにするかは生活習慣などに合わせて歯科医師と相談して決めるとよいでしょう。
なお、歯並びは加齢や口腔環境などで常に変化します。後戻りの対策だけでなく、常に口腔内を清潔に保ち、定期的に歯科医院に通うことが大切です。
まとめ
前歯ガタガタは遺伝や食習慣が原因で起こる歯と顎のバランスが崩れることで生じます。放置してしまうとガタガタの症状が進行し、心や体の健康を損なうかもしれません。
歯列矯正方法は4種類あり、患者さんと歯科医師の話し合いで治療法を選ぶ必要があります。歯列矯正に終わりはなく、患者さんに適切な治療を負担なく続けてもらうためです。
歯列矯正を始める時期は、成長期の小中学生が好ましいといわれていますが、大人でも問題ありません。つまり、歯列矯正したいと感じたときが始める時期といってもよいでしょう。
治療期間は一般的に大人で約2〜3年、費用は約80万〜120万円(税込)です。しかし、前歯のガタガタ具合で治療期間は前後します。
医療機関ごとに治療法や費用など異なるため、気になっているのであればお近くの歯科医院に相談してみてください。
参考文献
- 矯正歯科治療について|公益社団法人 日本矯正歯科学会
- 公益社団法人 日本矯正歯科学会 ポジションステートメント マウスピース型矯正装置による治療に関する見解|公益社団法人 日本矯正歯科学会
- 矯正歯科|昭和大学歯科病院
- アライナー型矯正装置による治療指針
- マルチブラケットによる目立たない歯列矯正|神奈川歯科大学附属 横浜クリニック・横浜研修センター
- 矯正歯科|東北大学病院
- 矯正歯科|日本歯科医師会
- 口腔機能廃用により叢生の発生が疑われた1例
- むし歯|日本歯科医師会
- むし歯|日本歯科医師会
- 口腔習癖(指しゃぶりなど)|日本歯科医師会
- 咬合、かみ合わせ|日本歯科医師会
- 治療期間・費用(成人)|公益社団法人 日本臨床矯正歯科医会
- 矯正期間の開始・治療方法(成長期)|公益社団法人 日本臨床矯正歯科医会
- 治療期間・費用(成長期)|公益社団法人 日本臨床矯正歯科医会
- 3.不正咬合の種類と治療法|公益社団法人 日本臨床矯正歯科医会
- 治療の開始時期・治療方法(成人)|公益社団法人 日本臨床矯正歯科医会