ワイヤー矯正

歯列矯正で頬こけが起きてしまった?その原因と対策方法を解説します

歯列矯正で頬こけが起きてしまった?その原因と対策方法を解説します

歯並びの乱れを細かく整える歯列矯正では、一部の症例で頬こけという症状が現れることがあります。頬こけは、老けた印象を与える症状なので、これから歯列矯正を受ける人はそのリスクがあることに不安を感じているかもしれません。あるいは、すでに歯列矯正中で、頬こけが起こってしまったという人もいることでしょう。ここではそんな歯列矯正で頬こけが起こる原因と対策方法について詳しく解説をします。

歯列矯正について

歯列矯正について
はじめに、歯列矯正の基本事項を解説します。

歯列矯正の方法

歯列矯正には主に表側矯正、裏側矯正(舌側矯正)、マウスピース型矯正の3つの方法があります。表側矯正は一般的な方法で、歯の表面にブラケットとワイヤーを装着し、歯を移動させる方法です。この方法は、矯正力が強く、細かな調整が可能であるため、幅広い症例に対応できます。 次に、裏側矯正(舌側矯正)です。歯の裏側にブラケットとワイヤーを装着する方法で、見た目を気にすることなく歯列矯正が行えます。特に、大人の患者さんや職業上、目立ちにくい矯正を希望する方が選択されます。ただし、裏側矯正(舌側矯正)は装置の装着や調整が難しく、費用が高くなる傾向があるでしょう。 最後に、マウスピース型矯正です。これは、透明なマウスピースを装着して歯を徐々に移動させる方法です。マウスピース型矯正は取り外しが可能で、食事や歯磨きがしやすい点がメリットです。また、見た目がほとんど目立ちにくいので、見た目を気にする方や、子どもの歯列矯正にて希望する方がおられます。ただし、自己管理が必要で、計画通りに装着しないと効果が得られにくいことがあります。

歯列矯正を受けるべき人

歯並びの異常がある人は歯列矯正を受けた方がいいとされています。歯並びの異常には下記があげられます。

◎出っ歯
出っ歯は、上の前歯が前方に突出している状態で、噛み合わせが悪くなる原因となります。専門的には上顎前突(じょうがくぜんとつ)と呼ばれます。

◎受け口
受け口も同様に、下の前歯が上の前歯よりも前に出ている状態で、発音や食事に影響を及ぼします。専門的には、下顎前突(かがくぜんとつ)と呼ばれます。

◎乱ぐい歯
乱ぐい歯は、歯が重なり合って生えている状態で、見た目の問題だけでなく、むし歯や歯周病のリスクが高まります。専門的には、叢生(そうせい)と呼ばれます。

◎開咬(かいこう)
開咬は、上下の前歯の間にすき間がある状態で、発音や食事に支障をきたすことがあります。 ◎交叉咬合(こうさこうごう) 交叉咬合は、上下の歯が左右にずれて噛み合う状態で、顔の非対称が生じることがあります。 ◎過蓋咬合(かがいこうごう) 過蓋咬合は、上の前歯が下の前歯を過剰に覆っている状態で、下の前歯が上の歯茎に当たることがあります。

◎空隙歯列(くうげきしれつ)
空隙歯列は、歯と歯の間に隙間がある状態で、見た目の問題や発音に影響を与えることがあります。一般的には、すきっ歯と呼ばれています。

歯列矯正にかかる期間

歯列矯正にかかる期間は、矯正の範囲や個々の歯の状態によって異なります。

◎部分矯正
部分矯正は、特定の歯や歯列の一部を矯正する方法で、一般的に6ヵ月から1年程度で完了します。この方法は、軽度な歯並びの問題に適しており、短期間で効果が得られるのが特徴です。

◎全体矯正
全体矯正は、すべての歯を対象とした矯正治療で、通常は1年半から3年程度の期間が必要です。全体矯正は、複雑な歯並びや噛み合わせの問題を根本的に解決するために行われます。この方法は、時間がかかる反面、より安定した結果が期待できます。

歯列矯正で頬こけする原因

歯列矯正で頬こけする原因
続いては、歯列矯正によって頬コケの症状が現れる原因を解説します。

抜歯によって頬がへこんでしまった

歯列矯正の治療過程で、場合によっては抜歯が必要となることがあります。特に、歯並びが乱れている場合や、歯のスペースを確保するために抜歯の必要性が高まります。この抜歯によって、歯茎や骨の支えが失われ、頬の肉が落ち込んでしまうことがあるのです。抜歯による頬のへこみを防ぐためには、事前に歯科医とよく相談し、必要な抜歯の数や位置について十分に理解することが重要です。

噛み合わせがよくなりハリが解消された

歯列矯正によって噛み合わせが改善されると、それまでの不適切な噛み合わせによって引き起こされていた筋肉の緊張やストレスが解消されることがあります。この結果、頬のハリが減少し、頬がこけて見えることがあります。これは、一見するとネガティブな変化のように感じられますが、実際には健康的な噛み合わせの改善がもたらす自然な結果です。顔全体の筋肉がリラックスし、自然な表情が戻ることは、医学的にも審美面においてもポジティブな変化ととらえることができるため、過剰に気にする必要はないといえます。

表情筋が弱まった

歯列矯正によって噛み合わせが変わると、顔の筋肉、特に表情筋に影響を与えることがあります。噛み合わせが改善されることで、これまで使われていた筋肉が少なくなる場合があり、結果として表情筋が弱まることがあります。これにより、頬がこけて見えることがあります。これはどちらかというとネガティブな変化であることから、後段で解説するような対策をとった方がよいといえます。

歯列矯正以外の老化など

頬がこける原因は歯列矯正だけではありません。老化も一つの大きな要因です。年齢を重ねると、皮膚の弾力が失われ、脂肪や筋肉の量も減少します。これにより、頬がこけて見えることがあります。また、急激な体重減少や栄養不足も頬のこけを引き起こす原因となります。

歯列矯正で頬こけしたときの対処方法

歯列矯正で頬こけしたときの対処方法
歯列矯正が原因で頬こけした場合は、以下に挙げる方法で対処しましょう。

担当医に相談する

歯列矯正によって頬がこけてしまったと感じた場合、最初にするべきことは担当医への相談です。歯列矯正は専門的な知識と技術が求められる治療であり、担当医は患者さんの口腔内の変化をよく理解しています。頬のこけが生じた原因や、今後の治療方針について詳細な説明を受けることができます。場合によっては矯正装置の調整が必要になるかもしれません。また、頬のこけを防ぐための特別な対策やアドバイスを受けることもできます。

表情筋のトレーニングを行う

頬のこけを改善するためには、表情筋のトレーニングを行うことが効果的です。歯列矯正によって噛み合わせが改善されると、これまで使われていた筋肉が少なくなり、結果として表情筋が弱まることがあります。表情筋のトレーニングを行うことで、筋肉の弾力を取り戻して頬のこけを改善できます。 フェイスヨガや顔のマッサージなどが効果的でしょう。例えば、口角を上げる運動や、頬を膨らませる運動を日常的に取り入れることで、表情筋を鍛えることができます。また、日常生活のなかで笑顔を心がけることも、表情筋のトレーニングにつながります。これらのエクササイズは、時間や場所を問わずに行えるため、忙しい患者さんでも続けやすい方法です。

自然に回復するのを待つ

頬のこけが生じた場合、必ずしも即座に対策を講じる必要はありません。多くの場合、時間が経過することで自然に回復することがあります。歯列矯正の初期段階では、口腔内の変化に体が適応するために一時的な変化が生じることがあります。しかし、これらの変化は時間とともに落ち着き、自然に回復することがあります。 自然に回復するまでの間、バランスの取れた食事や十分な睡眠を心がけることが重要です。全身の健康を保ち、頬のこけを改善するための土台を作ることができます。また、ストレスを避けることも大切です。ストレスは体全体の健康に悪影響を及ぼすことがあるため、リラックスできる時間を意識して作り、心身のバランスを保つようにしましょう。 以上の対処方法を実践することで、歯列矯正による頬のこけを効果的に改善することができることがあります。患者さんは、歯科医師としっかりとコミュニケーションを取り、適切な対策をすることで、健康な口腔環境と美しい笑顔を維持することができるでしょう。

歯列矯正で頬こけしないためには

歯列矯正で頬こけしないためには
歯列矯正では、さまざまな理由で頬こけすることがありますが、次にあげる点に注意することで、そのリスクを抑えられます。

経験豊富な歯科医師の施術を受ける

歯列矯正で頬こけを防ぐためには、経験豊富な歯科医師の施術を受けることが重要です。熟練した歯科医師は、矯正治療のさまざまなケースを経験しており、患者さんの状況に適した治療法の提案が可能です。そのため、歯列矯正の過程で生じるリスクや副作用についても事前に説明し対策をとってもらえるでしょう。

精密検査を受け、適切な治療法を選択する

頬こけを防ぐためには、治療前に精密検査を受けることが不可欠です。精密検査では、X線撮影や3Dスキャンを用いて、患者さんの歯並びや骨の状態を詳細に把握します。この情報をもとに、適切な治療法が選択できます。例えば、抜歯が必要か否か、どの矯正装置が適しているかなど、具体的な治療計画を立てることができます。 精密検査を受けることで、頬のへこみが生じるリスクを抑えることができます。治療後の仕上がりをシミュレーションできれば、患者さん自身が治療の流れを理解して、不安を軽減することもできるでしょう。

歯科医師と仕上がりのイメージを共有する

歯列矯正を成功させるためには、歯科医師と仕上がりのイメージを共有することが大切です。治療開始前に、どのような結果を期待しているのかを具体的に伝えることで、歯科医師もその期待に応えるための適切な治療計画を立てることができます。例えば、顔の形や表情にどのような変化が生じるか、頬のへこみを防ぐための配慮が必要かなど、詳細な要望を共有することが重要です。 矯正による仕上がりのイメージを共有することで、治療中の微調整もスムーズに行えるようになります。定期的なカウンセリングを通じて、進捗状況を確認し、必要に応じて治療方針を修正することが可能です。歯科医師とのコミュニケーションを密に保ち、自分自身の希望をしっかりと伝えることで、満足のいく結果を得ることができます。

歯列矯正による、頬こけ以外のデメリット

歯列矯正による、頬こけ以外のデメリット
歯列矯正では、頬こけ以外にも次に挙げるようなデメリットを伴う場合があります。

ブラックトライアングルができる

歯列矯正の結果、歯と歯の間に、ブラックトライアングルと呼ばれる黒い三角形の隙間ができることがあります。これは歯茎が下がり、歯と歯の間の隙間が目立つようになるためです。特に、歯並びが大きく変わる矯正治療の場合、この現象が発生しやすくなります。ブラックトライアングルは見た目に影響を与えるだけでなく、食べ物が詰まりやすくなるため、むし歯や歯周病のリスクも増加します。治療後は、しっかりとした口腔ケアを行うことが重要です。

抜歯で口元が下がってしまった

歯列矯正治療のなかで抜歯が行われることがありますが、その結果、口元が下がってしまうことがあります。抜歯によって前歯が後方に移動すると、唇や口元のボリュームが減少し、顔全体の印象が変わることがあります。特に唇が薄い方や、口元のボリュームが少ない方に顕著に現れます。事前に担当医と相談し、抜歯が必要な場合でも口元のバランスを考慮した治療計画を立てることが大切です。

顔が面長に見えるようになった

歯列矯正によって噛み合わせが改善されると、顔の輪郭や印象が変わることがあります。例えば、歯が整列して顎の位置が変わることで、顔が面長に見えることがあります。必ずしもデメリットとはいえませんが、患者さんの希望に合わない場合、不満が残ることもあるでしょう。治療前に担当医と仕上がりのイメージを共有し、顔全体のバランスを考慮した治療を行うことが重要です。

表情筋の衰えでほうれい線が深くなった

歯列矯正によって噛み合わせが改善されると、口元や頬の筋肉の使い方が変わることがあります。その結果、表情筋が衰え、ほうれい線が深くなることがあります。ほうれい線が深くなると、顔が老けた印象を与えることがあります。これを防ぐためには、矯正治療中や治療後に表情筋のトレーニングを行うことが効果的です。日常的に笑顔を心がけることや、顔のマッサージを取り入れることで、筋肉の衰えを防ぎ、若々しい表情を保つことができます。

抜歯によって出っ歯になる

一部のケースでは、抜歯によって予期しない形で出っ歯になることがあります。これは、抜歯後のスペースが適切に管理されない場合や、歯の移動が計画通りに進まない場合に発生します。出っ歯は見た目だけでなく、噛み合わせや発音にも影響を与えるため、問題を早期に発見し、対処することが重要です。治療中は定期的に担当医と進捗状況を確認し、必要に応じて調整を行うことで、理想的な結果を得ることができます。

まとめ

今回は、歯列矯正で頬こけが起こる原因と対策方法について解説しました。歯列矯正では、抜歯によって頬がへこむ、噛み合わせがよくなりハリが解消される、表情筋が弱まるなどの理由で頬こけが起こることがありますが、治療が終わった後に表情筋を鍛えたりすることで、改善できるケースも珍しくありません。もちろん、症例のなかには不可逆的な変化が現れることもあるため、歯列矯正による頬こけが不安だという人は、治療を開始する前の段階で歯科医師としっかり話し合っておくことが大切です。

参考文献

この記事の監修歯科医師
木下 裕貴医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

木下 裕貴医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

北海道大学歯学部卒業 / 医療法人社団天祐会 副理事長 / 専門はマウスピース矯正、小児矯正

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