ワイヤー矯正やマウスピース型矯正には、自分が気になる部分の歯並びを綺麗にできる部分矯正があります。
歯全体を矯正する治療と比べると矯正装置を付ける範囲が狭いことや装置が目立ちにくいことから、治療期間や負担する金額が少ないというメリットがあります。
歯を動かす治療である以上、個人差はあるものの部分矯正でも痛みを感じる人がいるでしょう。こちらでは、その痛みの原因や緩和方法、対処法について解説するのでぜひ参考にしてください。
部分矯正時は痛みがある?
部分矯正で治療を行う場合、痛みはあるのでしょうか。歯科矯正といえば、ワイヤーやマウスピースを使って歯に弱い力をかけ続けることで少しずつ歯を動かしていきます。
よって、痛みの感じ方に個人差はあるものの、歯を動かしているため痛みを感じることはあるでしょう。
年齢が若い場合は、歯の痛みが少ないといわれています。それは、年齢が若い方が歯の周りの骨が柔らかい状態のため歯が動きやすいからです。
歯の痛みが苦手という方は早めに治療に取り組むことで、歯が動くことによる痛みを少なくすることが可能です。
なお、歯の痛みを感じ始めるタイミングは矯正の治療を開始してから4〜5時間程度経過してからとなります。
その後、歯の痛みは2〜3日後にピークとなるでしょう。しかし、基本的には歯に触れなければ痛みを感じることは少なく、口に食べものを入れると痛みを感じやすいです。
さらに、4〜5日程度経過すれば歯の痛みは少しずつ感じなくなります。個人差はありますが、長くとも1週間以内に軽減するでしょう。
治療してから約1ヶ月後に受診をする必要がありますが、その日までずっと痛みが継続するわけではありませんので安心してください。
部分矯正の痛みの原因
歯の部分矯正をするにあたって感じる痛みの原因には、どのようなものがあるのでしょうか。
- 歯が動くことによるもの
- 器具が粘膜にあたることによるもの
- 噛むときの痛み
- 筋肉の緊張によるもの
こちらでは、この4つのポイントについて詳しく解説していきます。
歯が動くことによるもの
前述したように矯正治療では、歯を動かすため痛みが伴います。しかし、その痛みは歯が動いている証拠で、治療が進んでいるということです。
歯を動かすために歯に弱い力を加えていると、歯の根の部分で炎症反応が起きるのです。そして、歯の根の先端では血行障害が起きてしまいます。
それを正常な状態に戻すために骨を作る細胞と骨を溶かす細胞が作られます。これによって、理想とする歯並びに移動した歯の位置で歯茎が安定することで治療が進むのです。
器具が粘膜にあたることによるもの
ワイヤー矯正を歯の表面に装着すると、それらの装置が唇・頬の粘膜などに当たることで痛みを感じる場合があります。さらにそれが原因で、口内炎ができてしまい痛みを増幅させることがあるのです。
そのため、スポーツをしている方は特に注意が必要でしょう。ボールなどが口に当たってしまうと口内に傷ができてしまい痛みを伴うだけでなく、矯正装置に不具合が発生することがあります。
歯科用マウスピースを装着するなどして、矯正装置を保護するようにしましょう。
噛むときの痛み
矯正に伴う痛みは数日程度で、基本的に歯に触れなければ痛みはありません。しかし、食べものを食べると痛みを感じます。
長くても1週間以内に歯の痛みは軽減されるものの、食事をするときは歯に負担がかからないものを食べるようにしましょう。
筋肉の緊張によるもの
矯正治療に対するさまざまな不安な気持ちによって、歯の痛みを必要以上に強く感じてしまうことがあります。
特に、歯の矯正治療を始めたばかりの時期には少しの歯の痛みに対しても、過剰に反応してしまうこともあるでしょう。
治療前に十分な説明を受けているものの、初めての経験によって歯の筋肉が緊張してしまうのです。
歯の痛みに対して構え過ぎず、歯の痛みは「歯が動いている証」と思い、前向きに治療に臨みましょう。
部分矯正の痛みの緩和法はある?
歯の部分矯正に伴う痛みを緩和するためには、どのような方法があるのでしょうか。
- 痛み止めを服用する
- 患部を冷やす
- PBM治療を行う
こちらでは、この2つのポイントについて詳しく解説していきます。
痛み止めを服用する
歯を動かすことにより歯の痛みに耐えられない場合は、痛み止めを服用することで歯の痛みを軽減できます。歯の痛みが我慢できない場合は、無理をせず歯科医師に相談して痛み止めを処方してもらいましょう。
また、歯の矯正治療を始めるにあたって抜歯を行う場合があります。抜歯に伴う処置による痛みだけでなく、その処置した部分が腫れることで感染を引き起こしてしまうと炎症になり痛みを感じるでしょう。
まだ生えてきておらず歯茎に埋まっている親知らずのように深いところにある歯を抜いた場合などは、傷口が細菌感染を起こさないようにするために抗生物質を服用します。
抜歯後には痛み止めと抗生物質を処方されることが多く、それらを服用することで痛みを和らげます。
痛みや腫れを悪化させず、傷を早く治すためにも抗生物質は処方された用量と服用時間を守りすべて飲み切ることが大切です。
他には、矯正器具が変形して痛みを感じる場合があります。その際は、速やかに病院へ連絡し歯科医師の指示に従いましょう。
患部を冷やす
歯の痛みを感じる部分を冷やすと痛みを軽減して、腫れが治ります。 歯の痛みを感じる部分に、冷蔵庫などで冷やしたタオルを当てましょう。他には、氷を直接口に含むことで患部を直に冷やします。
ただし、冷やし過ぎるとよくないため長時間冷やさないように注意しましょう。頬や患部が十分に冷えたと感じたら、タオルなどを外します。
そして、しばらくしてからまた冷やすのを繰り返すのが良いでしょう。
アルコールを摂取したり、入浴などで体を温めたりしてしまうと、血行が良くなり痛みが強くなります。
そのため、歯の痛みがあるときはお酒を控え、長風呂をせずにシャワーだけにするなどして体を温めすぎないように気を付けましょう。
PBM治療を行う
部分矯正の痛みを和らげる方法として、PBM治療があります。PBM治療とは、低いレベルの近赤外線を歯周組織に照射する治療方法です。
PBM治療は、細胞中のミトコンドリアが反応し、歯を移動させようとする細胞エネルギーの働きを促すことができます。
そのため、歯の骨や組織にかかるストレスを軽減でき、痛みを和らげることができるでしょう。さらに歯の移動速度を早め、矯正治療期間を短くする効果が期待できます。
このようにPBM治療によって痛みを軽減できるため、興味がある方は事前に担当の歯科医に相談してください。
部分矯正の痛みへの対処法
歯の部分矯正に伴う痛みへの対処法には、どのようなものがあるのでしょうか。
- 固い食べものは避ける
- 歯磨きを優しく行う
- ワックスで装置をカバーする
- ワイヤーを弱く体にやさしいものを選んでもらう
こちらでは、この4つのポイントについて詳しく解説していきます。
固い食べものは避ける
固い食べものを避けることで、痛みに対処できます。
- おかゆ
- 柔らかく煮込んだ野菜スープ
- 豆腐
- ハンバーグ
- ヨーグルト
- ゼリー飲料
このようにほとんど力を入れずに食べられるようにして、なるべく歯に力を入れて嚙み切るような食べものは避けましょう。
矯正器具を付けたままの食事に慣れない時期には肉や魚などを食べることに苦労しますが、みじん切りなど小さく切るように工夫すると食べやすいです。
また、次のような食べものは矯正装置が変形・破損してしまい、口内を傷つけて痛みを伴う可能性があるため摂取を控えましょう。
- 大根や人参などの根菜
- フランスパンやスルメなど噛みちぎって食べるもの
- せんべいなどの固いもの
- キャラメルやガムなどの歯にくっつきやすいもの
矯正装置に不具合が生じた場合は、治療を遅らせることになりかねません。
歯磨きを優しく行う
力強く歯を磨いてしまうと、歯が痛んでしまいます。歯磨きは、優しく行うことが大切です。
歯磨きのポイントについて、確認しておきましょう。
まず、前歯の表側・奥歯の外側・奥歯の内側・奥歯の咬むところでは、歯に対して歯ブラシを直角に当てます。そして、細かく動かします。
他の箇所には、歯ブラシを45°の角度で当てると磨きやすいです。歯ブラシで歯茎を軽く圧迫しながら、毛先を動かさないように20回~30回程度、細かく振動させるように磨きます。
下の前歯の裏側は、縦にした歯ブラシのかかとで、細かく振動させるように1本ずつ丁寧に磨きます。
上の前歯の裏側を磨くときは、縦にした歯ブラシのつま先を使います。歯ブラシの柄が下の唇もしくは歯に当たるぐらいまで立てて、 細かく振動させるように磨きましょう。
歯を1本1本丁寧に磨くと、約20分は歯磨きに時間がかかります。歯磨き粉を使用する場合は米粒くらいの量にし、使わなくても問題はありません。
歯ブラシが歯にしっかりと当たっているか鏡で確認しながら磨くと、より効果的に歯磨きが行えます。
歯科医院では歯磨きの仕方を教えてもらえるため、わからないことがあれば質問するようにしましょう。
歯のトラブルを予防するためには、毎日の歯磨きを丁寧に行うことが大切です。
ワックスで装置をカバーする
唇や頬の粘膜にワイヤー装置が当たってしまうと痛みを感じてしまいます。口の中にできてしまった傷や痛みは回復するのが早いといわれていますが、より早く痛みを軽減して治療したい人もいるでしょう。
その場合は、ワイヤー装置をワックスでカバーすることで痛みに対処できるのです。リリーフワックスと呼ばれる半透明の粘土のようなもので、ワイヤーなどの装置に取り付けます。
ワイヤー装置が口内に当たって痛みを感じるところにワックスを装着して数日保護すると粘膜と馴染んでいき、痛みが軽減していき次第に痛みがなくなるでしょう。
食事をしてしまうと装着したワックスがワイヤーから外れてしまうことがあります。しかし、食べてしまっても問題はありません。
ワックスは、体内に入っても問題のない素材で作られているので安心して食事を楽しめます。
もし、ワックスが外れて痛みがある場合は病院を受診しましょう。ワックスが外れてワイヤーが飛び出してしまっている部分を切断することで、痛みを解消できます。
ワイヤーによって口内が傷付けられてできた口内炎が痛む場合は、軟膏を処方してもらえます。
ワイヤーを弱く体にやさしいものを選んでもらう
ワイヤー矯正の場合、歯の痛みを軽減できる「超弾性型Ti-Ni合金ワイヤー」と呼ばれる体に優しいものを選ぶことで歯の痛みに対処できます。
他にも、ワイヤーを固定するために歯に装着するブラケットにも「ローフリクションシステム(ブラケット)」と呼ばれる歯への負担を軽減できるものがあるのです。
これを装着することでブラケットにワイヤーを縛りつける必要がなくなり、ワイヤーが円滑に移動できます。
動きが自由で円滑になることでワイヤーとブラケットの間に生まれる摩擦を最小限に抑えられます。
歯への負担が少なくなるだけでなく、治療期間が短くできるなどの利点があります。
部分矯正中の痛みで通院が必要な場合
歯の部分矯正中に歯に痛みがあることなどについて解説してきましたが、痛みを感じて通院する必要がある場合とはどのようなときでしょうか。
- 歯肉の腫れ
- むし歯
- 口が開かない
こちらでは、この3つのポイントについて詳しく解説していきます。
歯肉の腫れ
歯肉が腫れてしまった場合は、治療をするために通院が必要です。歯肉が腫れることをいう歯肉炎は、歯茎が赤く腫れるといった炎症がある状態をいいます。
歯と歯の間、歯と歯肉の隙間に歯垢や歯石が溜まった状態が続いたことなどが原因で起こるとされています。
むし歯
むし歯になってしまった場合は、むし歯治療のために通院が必要となります。
矯正治療のためにワイヤーやブラケットなどを歯に装着していると歯磨きがしづらくなります。他にも、歯が移動したことによって歯と歯の間にあったむし歯が見つかることもあるのです。
十分に歯磨きができていない状態が続くとむし歯ができてしまい、それを放置してしまうと痛みを感じることがあるでしょう。
むし歯の治療に時間がかかってしまうと、歯科矯正治療が予定どおりに進まず治療期間が長くなってしまいます。
むし歯にならないためにも毎日の歯磨きを丁寧に行い、決められた通院を怠らないようにして歯科衛生士による歯のクリーニングを行うことが大切です。
口が開かない
口が開かない場合は、顎関節症になっている場合があるため通院が必要となります。
他にも、このような症状がある場合も注意が必要です。
- 関節が痛む
- 顎の周りにコリ・疲労・違和感がある
- 口が閉まらない
- 顎の関節が重い
- 側頭部・耳前部が痛い
噛み合わせや歯並びが悪いと、顎の関節に負担がかかっていることがあります。矯正治療で改善できますが、治療途中でも口が開かないなどの違和感があれば病院を受診するようにしましょう。
部分矯正は痛みを少なくする工夫が多い
これまで解説してきたとおり、歯の部分矯正に伴う痛みは普段の生活を見直したり、病院での処置や投薬してもらったりするなどの工夫次第で軽減できます。
自分の痛みの原因を見つけ、それに合った対処法を行うことが大切でしょう。そのためにも自分が納得できる治療をしてくれる病院を見つけて、歯科医師から指示されたことを守り、定期的な通院を怠らないことが必要です。
まとめ
歯の部分矯正について解説してきましたが、いかがでしたか。
歯の状態によっては部分矯正が適用できない場合があるものの、歯の痛みへの対処法が多くある部分矯正をしてみようと思った方も多いのではないでしょうか。
歯の痛みへの適切な処置を行うためには、痛みの原因を知ることがポイントとなります。
部分矯正を行うことによるリスクと対処法をしっかりと理解しておくと、治療がスムーズに進むでしょう。
そして、何より自分が納得できる歯科医師の指示のもとで最後まで治療を続けることが大切です。
参考文献