お口のなかのトラブルでよくあるのは歯並びや噛み合わせではないでしょうか。
それらを改善するために歯科医院で歯列矯正治療が行われますが、まだ歯や顎の成長が未発達な子どもには、1期と2期に分かれた小児矯正を行います。
1期は乳歯と永久歯が混在する時期、大体5歳から11歳くらいのお子さんが当てはまり、2期はすべて永久歯に生え変わった後に行われる歯列矯正です。
小児矯正は1期と2期どちらも行うことが通常だといわれていますが、1期のみで終了するケースもあるようです。
それはどのような場合なのでしょうか?
小児矯正の目的や治療の流れもあわせてご紹介します。
小児矯正について
- 小児矯正の流れを教えてください。
- 小児矯正は乳歯から永久歯に生え変わる7歳頃から始められます。以下が小児矯正の流れです。
- 相談(カウンセリング)
- 精密検査
- 診断
- 第1期治療開始
- 成長観察
- 第2期治療開始
- 治療終了・保定・メンテナンス
まず初めは口腔内診察後に歯科医師・保護者・お子さんの3人で、治療内容・期間・費用などについてお話しします。不安なことなどあればしっかり聞いておきましょう。次に顎や骨の状態をチェックするためにレントゲン撮影が行われます。精密検査・診断後、今後の治療方針をさらに細かくお話しし、第1期治療開始となります。治療期間は半年から1年半程です。そして中学生後期時期に第2期治療を開始し、期間は1年から2年程かかります。すべての治療が終わると装置を外し、保定装置を装着し、噛み合わせのチェックを行うメンテナンス時期に入ります。小児矯正の流れは、お子さんの口腔状態やフェーズによって異なるため、あくまでも参考として確認しておきましょう。
- 事前の精密検査ではどのようなことを行いますか?
- 精密検査では、まず口腔内と顎や歯の状態をチェックするためにレントゲン撮影が行われます。通常のむし歯の検査でも使用されているX線写真と、上顎や下顎の噛み合わせ状態など顔や骨を詳しく分析できる頭部X線規格写真(セファロ)撮影を行います。目視のみではわからない、まだ生える前の永久歯や余分な歯がないかなど歯ぐき茎の中の状態も見られるので大切な検査です。その他、必要に応じて歯の型取りも行います。*歯科矯正治療にセファロは必要不可欠です。
小児矯正第1期治療について
- 第1期の治療の目的は何ですか?
- 第1期の治療では、永久歯が生えてくるスペースを作ることや、上あごと下あごのズレ(位置)を整えることが大きな目的です。永久歯の生える場所が確保できなかったり、上あごと下あごのズレ(上顎前突:出っ歯や下顎前突:受け口)があると抜歯が必要になったり、正しい位置ではない場所に歯が生えてしまう場合もあるため、そのようなリスクを回避できます。また、乳幼児期の指しゃぶりが原因で歯並びが悪くなることがあるので、第1期での歯列矯正治療で歯並びの修正や上下の顎のバランスを整えられ、第2期の治療をスムーズに行えるようにする目的もあります。第1期の治療は将来の健康的なお口のための土台づくりといえるでしょう。
- 第1期の治療で使用する矯正装置を教えてください。
- 第1期の治療で使用する矯正装置の一例は以下のとおりです。
- 急速拡大装置
- 床矯正装置
- 機能的矯正装置
- リンガルアーチ
- マウスピース
- ヘッドギア
- 上顎前方牽引装置 など
矯正装置は大きく3つの種類に分かれており、個人で自由に取り外しが可能な可撤式矯正装置、お口のなかで固定するタイプの固定式矯正装置、頭の上などお口の外に装着する顎外固定装置があります。お口のなかの状態は一人ひとり違うので、自分に合った矯正装置を歯科医師とよく相談して使用することが大切です。
- 第1期の治療の流れを教えてください。
- 精密検査の診断後、治療方針に患者さんが納得できたら第1期の治療開始です。矯正装置を装着しますが、かかる時間は1〜2時間程と長くかかる場合があるのでご注意ください。装着が完了したら歯みがき指導をしてもらい、4〜8週間に1度の割合で定期検査が必要になります。歯の違和感や痛みなどが長く続く場合は歯科医師に相談しましょう。
小児矯正第2期治療について
- 第2期の治療の目的は何ですか?
- 第2期の治療は、最終的な噛み合わせを整えて美しく健康的な歯並びにすることが目的です。永久歯の生えそろった中学生後期から成人を対象にしており、第1期の治療が将来のための土台づくりに対して、第2期は仕上げの歯列矯正治療です。
- 第2期の治療で使用する矯正装置を教えてください。
- 第2期の治療で使用する矯正装置の一例は以下のとおりです。
- ブラケット(ワイヤー矯正装置)
- マウスピース型矯正装置
ブラケットは、ワイヤーのしなりを利用して歯並びを細かく整えるスタンダードな矯正装置で、さまざまな歯並びに対応可能です。また、マウスピース型の矯正装置を使用します。しかし、第2期では大人と同じく、一般の歯列矯正で使われている装置を装着します。薄く透明な仕様なので目立ちにくく、ストレスなく使用できますが、保険は適用されないので歯科医師によく確認しておきましょう。
- 第2期の治療の流れを教えてください。
- 第2期の治療は、ワイヤー装置やマウスピース型など大人も使用する一般的な矯正装置を装着します。その際歯や顎の成長程度を確認しながら、過度に噛み合わせが合わなかったり、上下の顎のバランスに大きなズレがある場合は抜歯や顎外科手術が必要になる可能性もあります。治療期間は2〜3年程で、4週間に1度の割合で定期健診が必要です。すべての歯列矯正治療が終了しても、歯列矯正を終えたばかりの歯や歯ぐきは元の位置に戻ろうとするので、2~6ヵ月に1度の割合で来院し、保定装置を使用して後戻りを防ぎます。第2期の治療では、すべての治療が終わった後のメンテナンスが重要です。
小児矯正は1期のみで終了するケースもある?
- 小児矯正は1期のみで終了するケースもありますか?
- 第1期の治療のみで、気になる部分の歯並びが改善されたら、2期の治療は行わなくてもよいのではないかと考える人もいるでしょう。第1期の治療と第2期の治療では目的が違います。第1期のみの治療で歯並びが完成するとは断言できないので歯科医師は継続をおすすめする場合が多いです。しかし、歯列矯正を行うお子さんのメンタルや経済的な問題を抱える保護者の負担を考えると、歯科医師は無理に第2期の治療を強要はできません。しかし、成長の過程で第2期の治療が必要ないと判断された場合は1期のみで治療が終了するケースもあります。お子さんの成長具合と保護者がどこまで治療を継続させるかが決め手となるでしょう。
- 第1期で治療を終了するメリットを教えてください。
- 第1期で治療を終了するメリットは以下のとおりです。
- 経済的負担が減る
- お子さんの精神的負担が減る
- 来院の手間がなくなる
小児矯正は時間もお金もかかります。お子さんのモチベーションが下がると、保護者の方も負担が大きいでしょう。第1期で治療を終了することでこれらのお悩みから解消されます。
- 第1期で治療を終了するデメリットはありますか?
- 第1期で治療を終了する大きなデメリットは、第2期の治療が必要ないと診断された場合は除き、最後まで歯列矯正治療が終了しないことです。通常、小児矯正は第1期と第2期で構成されているので、第1期で治療を終了することは小児矯正を途中でやめてしまうことになります。そのため、理想としていた美しい歯並びや噛み合わせが叶わない可能性があります。
編集部まとめ
この記事では、小児矯正の第1期と第2期の治療目的や流れ、第1期で終了するケースについてご紹介しました。
第1期と第2期では、それぞれ違った治療目的があり、お子さんの歯や顎の成長過程にあった治療を行っていることをご理解いただけましたでしょうか。
第1期治療後、第2期の治療開始まで個人差ありますが数年程空いてしまう場合があります。
その間にお子さんのやる気がなくなったり、経済的な理由で第2期の治療を断念するケースもあります。
歯は一生使うものなので子どもの頃からの歯列矯正治療は将来のためにとても重要です。
お子さんのお口の健康を考える保護者の方のご参考になれば幸いです。
参考文献