悪い歯並びというと、出っ歯や乱ぐい歯、すきっ歯などが思い浮かぶかと思います。いずれも見た目である程度、判別できるものの実際に治療が必要なのかどうかはよくわからないという人がほとんどでしょう。そもそもきれいな歯並びとはどのような状態なのか。歯並びを自分でチェックする方法について知っておくと、矯正治療も検討しやすいです。ここではそんな歯並びのチェック方法について詳しく解説します。
歯並びについて
はじめに、きれいな歯並びと悪い歯並びの基本事項を確認しておきましょう。
- きれいな歯並びとはどういう歯並びを指しますか?
- きれいな歯並びとは、上下の歯が正しく噛み合い、均等に並んでいる状態を指します。具体的には、前歯がまっすぐ並んでいて正中が一致しており、奥歯が正しく噛み合っていることが重要です。このような歯並びは、歯磨きがしやすくなり、むし歯や歯周病になりにくく、口腔内の健康を保ちやすいです。また、見た目も美しく、自信を持って笑顔を見せることができるのも特徴です。
- 悪い歯並びとはどのような歯並びですか?
- 悪い歯並びとは、歯が重なり合ったり、隙間が空いていたりする状態を指します。具体的には、前歯が出っ張っていたり、歯がデコボコに並んでいたりする状態が悪い歯並びです。このような歯並びは、噛み合わせが悪いため、食べ物をしっかり噛むことが難しく、むし歯や歯周病のリスクが高まります。また、歯並びの悪さが原因で発音に影響が出ることもあります。
- 悪い歯並びを放っておくとどうなるのか教えてください
- 悪い歯並びを治療せずに放置していると、次に挙げるリスクが生じるため注意が必要です。
◎むし歯や歯周病になるリスクが高まる
悪い歯並びのために歯が重なり合っていると、歯磨きが難しく、汚れがたまりやすくなります。その結果、むし歯や歯周病のリスクが高まります。
◎口元にコンプレックスになる
歯並びが悪いと、笑顔に自信を持てなくなり、口元にコンプレックスを抱えやすくなります。特に子どもの場合、友達やクラスメイトとの関係にも影響を与えることがあります。自信を持って笑えないことは、精神的なストレスとなり、日常生活にネガティブな影響を及ぼしかねません。
◎発音に悪影響が出る
悪い歯並びでは、正しい発音がしにくくなることがあります。特に、歯が重なっている場合や歯列が狭くなっている場合は、舌の動きが制限され、特定の音がうまく発音できないことがあるのです。滑舌も悪くなりがちです。
◎歯の摩耗や破折を招く
噛み合わせが悪いと、特定の歯に過度な負担がかかり、歯の摩耗や破折を招くことがあります。これにより、歯の表面がすり減ったり、ひび割れたりするため、長期的には歯の寿命を縮める原因となります。
◎顎関節症になる可能性がある
悪い歯並びは、顎関節にも負担をかけ、顎関節症を引き起こす可能性があります。顎関節症は、顎の痛みや違和感、頭痛、肩こりなどの症状を引き起こし、日常生活に大きな支障をきたします。早期に歯並びを改善することで、これらの問題を予防することができます。
このように、悪い歯並びを放置することは、口腔内の健康だけでなく、全身の健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。
悪い歯並びの種類と特徴
悪い歯並びは、いくつかの種類に分けられます。ここでは代表的な4つの不正咬合について解説します。
- 叢生(乱ぐい歯)とはどのような歯並びですか?
- 叢生(乱ぐい歯)とは、歯が重なり合って不規則に並んでいる状態を指します。症状としては、歯が重なり合ったり、前後にずれたりすることが挙げられます。叢生の主な原因は、顎の大きさに対して歯の本数が合っていない、あるいは歯が大きすぎることです。放置すると、歯磨きが難しくなり、汚れがたまりやすくなります。その結果、むし歯や歯周病のリスクが高まります。
- 下顎前突(受け口歯)とはどのような状態ですか?
- 下顎前突(受け口歯)とは、下の歯がうえの歯より前に出ている状態を指します。特徴として、噛み合わせが逆になるため、食べ物を正しく噛むことが難しくなります。下顎前突の主な原因は、遺伝的要因や成長過程での顎の不均衡が考えられます。放置すると、噛み合わせが悪くなるだけでなく、発音や顎関節症のリスクが高まります。
- 上顎前突(出っ歯)について教えてください
- 上顎前突(出っ歯)とは、うえの前歯が前方に突出している状態を指します。特徴として、前歯が見えやすく、口元が出っ張って見えることがあります。上顎前突の主な原因は、遺伝的要因や指しゃぶりなどの習癖、舌の位置が関与しています。放置すると、前歯の損傷リスクや噛み合わせの問題が生じ、発音にも影響を与えることがあります。
- 空隙歯列(すきっ歯)とはどのような状態ですか?
- 空隙歯列(すきっ歯)とは、歯と歯の間に隙間がある状態を指します。空隙歯列の主な原因は、歯の大きさに対して顎が大きすぎる、あるいは歯が小さいことが考えられます。放置すると、汚れがたまりやすくなり、むし歯や歯周病のリスクが高まります。
歯並びをセルフチェックする方法
ここでは、歯並びを自分でチェックする方法について解説します。
- 正面からのチェックポイントを教えてください
- 顔の上下の前歯の中心が顔の中心と合っていない場合、歯並びに問題がある可能性があります。また、うえの前歯が下の前歯よりも極端に突き出ている、あるいは下の前歯がうえの前歯の前にかぶさっている場合も注意が必要です。
上下の前歯の間に隙間がある、うえの前歯が下の前歯の半分以上にかぶさっている場合も、噛み合わせに問題があります。 さらに、歯と歯の並びがでこぼこしている、歯と歯の間に隙間がある場合や、下の奥歯がうえの奥歯より外側で噛み合っている、またはその逆の場合も矯正治療が必要なことがあります。早期のチェックと治療が、むし歯や歯周病の予防につながります。
- 横からの場合、どこをチェックすればよいですか?
- 鼻の先と顎の先を結んだ線(Eライン)よりも唇が大きく外側または内側に位置している場合、噛み合わせに問題があるかもしれません。次に、下顎が極端に長い、または前に出ている、あるいは逆に下顎が極端に小さく後退している場合も注意が必要です。
上下の歯が緊密に噛み合っていない場合や、うえの前歯と下の前歯の間に大幅な隙間がある場合も、矯正治療を検討するべきです。これらの問題は、見た目だけでなく、噛み合わせや発音、むし歯のリスクにも影響を与えるため、早めの治療が推奨されます。
- お口を開けたときのチェックポイントを教えてください
- 親知らずが横を向いて生えている場合は、ほかの歯に影響を与えやすく、むし歯や歯周病の原因となることがあります。
次に、親知らず以外の永久歯が28本以上、または少ない場合も歯列に異常がある可能性があります。また、歯並びがきれいな歯列弓(アーチ)を描かずにでこぼこしている場合も、矯正治療が必要です。 これらの問題は、見た目のコンプレックスだけでなく、噛み合わせや口腔内の健康に影響を与えるため、早期のチェックと治療が重要です。
- 子どもの歯並びの場合は何をチェックすればよいですか?
- 小学生未満の子どもに限定した話ではありますが、子どもの歯並びをチェックする際には、歯そのもののずれよりも、顎や骨格の異常である不正咬合(ふせいこうごう)に注目することが重要です。具体的には、以下のような不正咬合や悪習癖が見られる場合は早めに歯科医に相談することをおすすめします。
下顎前突: 下顎が前に出ている状態
- 開咬(かいこう): 奥歯を噛み合わせたときに上下の前歯の間に隙間ができる
- 過蓋咬合(かがいこうごう): 奥歯を噛み合わせたときにうえの歯が下の歯に深くかぶさりすぎる
- 交叉咬合(こうさこうごう): 上下の歯が前後または左右で逆に噛み合っている
- 顎の偏位: 顔を正面から見て下顎が左右どちらかに偏位している
- 異常嚥下癖: 成人の場合で、水や食べ物を飲み込むときに舌を上下の歯に挟み込む癖がある
編集部まとめ
今回は、歯並びをセルフチェックする方法について解説しました。悪い歯並びは、鏡でセルフチェックする方法がありますが、正確な診断は歯科医師でなければ下せません。ですから、今回紹介したセルフチェック方法はあくまで参考程度にとどめてください。自分の歯並びや噛み合わせに気になる点がある場合は、できるだけ早く歯科医師に相談しましょう。特に成長期の子どもは矯正治療を開始する時期が重要となるため、矯正相談は早めに受けるに越したことはありません。
参考文献