ワイヤー矯正

小児矯正の種類は?装置の使用方法・大人の矯正との違いを解説

小児矯正 種類

子どもの歯並びを見て、見た目・健康の観点から歯列矯正した方がよいのか悩んでいる方もいるでしょう。

歯並びが悪いと、むし歯になりやすかったり噛み合わせが悪いために肩こり・頭痛の原因となることがあったり、健康面において悪影響が懸念されます。

そうはいっても、小さな子どもが歯列矯正を受けるのにはさまざまな心配がつきものです。

幼い子どもが矯正による痛みに耐えられるのか・思春期の子どもなら矯正装置による自分の見た目を気にするといったこともあるでしょう。

そこで、小児矯正の種類・装着の使用方法・大人の歯科矯正との違いについて解説していきます。

小児矯正の治療時期

男児

小児矯正では、2つの治療期間があります。

  • 1期治療
  • 2期治療

1期・2期の治療期間・内容は、治療を受ける年齢に違いがあり、目的も違います。

そのため、小児矯正を検討する場合は、子どもの年齢や状況に合わせて治療を選択することが必要です。それでは、それぞれの治療期間について解説しましょう。

1期治療

1期治療を行う時期は、6~12歳の永久歯に生え変わるまでの混合歯列期のことを指します。

1期治療では、子どもの成長を活かし、顎の拡大や上下の顎のバランスを整える治療を行うのが一般的です。

6~12歳の幼児期は、成長・発育をしている段階のなかで顎のバランスを整えやすく、永久歯の生えるスペースをキープしやすい状態です。

そのため、1期治療を行うことによって顎の正常な発育を促し、将来的な歯列の問題を未然に防げます。

1期治療の治療期間は、1~3年程度となっています。

2期治療

2期治療を行う時期は、13歳以上の永久歯が生え揃った頃です。

この治療の目的は、永久歯の歯並びや噛み合わせを改善することです。永久歯が斜めに生えてしまい、正しい位置に生えない場合に行います。

2期治療は「成人矯正」とも呼び、大人とほぼ同じ治療方法で永久歯を動かします。見た目の美しさだけでなく、正しい噛み合わせが行えるよう、歯を並べる歯列矯正を行うのです。

2期治療の治療期間は、おおよそ1~2年となっています。

小児矯正1期治療に使用する可撤式矯正装置の種類・使用方法

歯並びの良い子供

可撤式矯正装置とは、自分で取り外しが可能な矯正装置です。

この装置を使うメリットは、むし歯のリスクが少なく、手軽に開始できます。一方デメリットとしてあげられるのは、子どもでも外せてしまうため、紛失に気をつけなければならないことです。

小児矯正1期で使われる可撤式矯正装置の種類は、以下のとおりとなっています。

  • 拡大床
  • バイオネーター
  • ムーシールド
  • プレオルソ
  • マイオブレース

それぞれどのように使用するのかを見ていきましょう。

拡大床

口を開ける

拡大床は、幼児期の顎の成長を利用しながら、ネジの力で狭い上顎と下顎の幅を横へ拡げるための装置です。

これを使うことにより、正しい位置に歯が生えるよう場所を拡げ、きれいな歯並びを目指せます。

拡大床を使う年齢としては7~12歳の間で、上の前歯が生え変わったときから永久歯が生えてくるまでが拡大床の能力が発揮できる期間となっています。

拡大床は主に横方向に拡げる装置なので、使用しても出っ歯になることはありません。ただし、拡大床は取り外し可能な装置ではあっても、目立ちやすいというデメリットもあります。

装着時間は、症状にもよりますが12~15時間程度が目安となっており、就寝時や学校からの帰宅後につけるのが一般的です。

バイオネーター

バイオネーターは、主に受け口の治療に使われており、下の歯に装着する装置です。

バイオネーターで下顎の幅を調整することにより、顎が成長しすぎて受け口になるのを予防します。

メリットとしては、バイオネーターは口周りの筋力を利用した構造になっているため、装着時の違和感が少なく痛みを感じにくいことです。

ただし、デメリットとして装着してから直ぐに一時的な痛み・違和感を覚えることもあるため、口の中にバイオネーターを装着することに慣れるための期間が必要となります。

下顎の成長は身長が伸びる時期に呼応して引き出しやすいので、約7~12歳までの間にバイオネーターを使用するのが一般的です。

装着時間は、自宅にいる時間が主となっており、就寝時や帰宅後に装着します。

ムーシールド

ムーシールドは、マウスピース型の矯正装置です。筋肉のバランスが悪く、受け口になってしまった場合に使用します。

ムーシールドをつける目的は、舌や口周りの筋肉を鍛え、舌を正しい位置に保つことで歯列改善を促すことです。

3~5歳の幼い子どもから装着でき、正常な顎骨の成長発育を促せるため、正しい永久歯の成長も期待できます。

また、装着時間は就寝時のみなので、日常生活は普通に過ごせるのもメリットのひとつです。

プレオルソ

プレオルソはやわらかい素材のマウスピース型の装置で、舌や唇などの口周りの筋肉のバランスを整える機能的矯正装置です。

また、お口ぽかん・口呼吸・舌の癖を改善するための装置として大きな効果を発揮します。

プレオルソを装着する目的は、歯並びが悪くなるのを防いだり、口呼吸・指しゃぶりなどの悪習慣を改善したりすることです。

そのため、歯列矯正のような1本1本の歯の傾き・歯の位置の異常を改善するような効果は見込めません。

プレオルソを装着する時間は、自宅で過ごす時間となっています。

マイオブレース

マイオブレースは、口周りの筋肉を矯正するマウスピース型装置です。口呼吸や指しゃぶり、舌の癖など歯並びに影響を及ぼす根本的な原因の改善をはかることを目的としています。

トレーニングをすることで、顎の発達や発育を促し、後戻りの少ない理想の歯並びを目指すことができます。

装着時間は自宅で過ごす1時間程度と就寝時ですが、毎日トレーニングを欠かさず行うことが大切です。

小児矯正1期治療に使用する固定式矯正装置の種類・使用方法

歯と子供

固定式矯正装置は、その名のとおり取り外しができない矯正装置です。口内に収まるものが一般的で、表からは見えないものが主流となっています。

可撤式に比べると治療効果に期待ができ、違和感の少ない装置が多いのが特徴です。固定式矯正装置には以下のような種類があります。

  • 急速拡大装置
  • クワドヘリックス
  • リンガルアーチ

それぞれどのような使用方法なのか見ていきましょう。

急速拡大装置

急速拡大装置は、上顎の歯列の横幅(歯列弓)を拡げるための装置です。金属製のバンド・太いワイヤー・歯列弓を押し拡げる力を調節する拡大ネジで構成されています。

拡大ネジを回して調整することで、900g程度からKg単位の強い力で歯列を外側へと押し拡げることが可能です。

急速拡大装置は、金属製のバンドで歯をしっかりと固定するので、外からは目立ちにくいです。

永久歯が生え揃う前(混合歯列期)に急速拡大装置を使用し、上顎を拡大して上の永久歯が自然な位置に生えるための隙間を確保します。

対象年齢は10歳前後といわれていますが、身体の成長には個人差があるため、10歳以降でも使用することがあるでしょう。

クワドヘリックス

クワドヘリックスとは、上の歯の生える場所を作るために歯列を側方に拡大させる装置のことです。

歯の生える場所が足りず、歯並びがガタガタになってしまった場合の治療に用います。

使う時期として、混合歯列期という乳歯と永久歯が混在する時期である7~12歳くらいの子どもに使うことが多い装置です。

装着して間もない頃は違和感があり、装置が気になる子どもも多いですが、1週間もすればほとんど気にならなくなるでしょう。

食事も普通に食べられますが、食べ物が装置に詰まりやすいため、大人が仕上げ磨きをしてあげることが必要です。

リンガルアーチ

リンガルアーチは舌側弧線装置とも呼び、1~数本の歯かつ2~3mm傾斜移動の治療ができる場合に使用する装置です。

つまり、一度に多数の歯を動かすことはできないため、数本の歯の移動に限られます。

治療法としては、歯の裏側にそってアーチにスプリングを接合し、スプリングの弾力を利用して歯を目的の方向へ動かすのです。

また、大臼歯の位置の固定・拡大後の後戻り防止装置としても使用されることがあります。

装着期間は7歳程度からとなっており、歯の生えかわりを待ちながら数年にわたって使用するのが一般的です。

小児矯正1期治療に使用する顎外固定装置の種類・使用方法

固定する

顎外固定装置は、ヘッドキャップのような形をしており、被ったり首の後ろに回したりして取り付ける装置です。

基本的に日中は装着せず、寝ている間や、夜自宅にいる時間に装着します。

主に、成長期のお子さんの矯正治療で使われることが多く、骨の成長期にあたる時期に装着することで、効果を発揮する装置です。顎外固定装置には以下のような種類があります。

  • ヘッドギア
  • フェイスマスク

可撤式・固定式とは一風変わった見た目である顎外固定装置ですが、どのような使用方法なのか見ていきましょう。

ヘッドギア

ヘッドギアは、上顎骨・上顎歯を後方へ移動させる際に使用する顎外固定装置です。フェイスボー・ヘッドキャップによって構成されています。

装着方法としては、頭部・頚部を固定源としてヘッドキャップをつけ、フェイスボーのフックをヘッドキャップのストラップへ挿入し牽引します。

この装置を使う目的は、上顎が前方に成長しないよう抑制するほか、奥歯を後ろに移動させたり歯を押し込めたりすることです。

ヘッドギアを使って矯正するメリットは、上顎の成長を無理なくコントロールでき、取り外しができるので自宅にいる時間のみの装着で済みます。

主な対象年齢は重症であれば9歳からで、10歳前後の子どもに効果的といわれています。

フェイスマスク

フェイシャルマスクとは、顔にかぶるマスクと口の中の装置とをゴムでつなぎ、上顎を前方への成長を刺激しながら下顎の成長をおさえて受け口を治していく装置です。

顎の成長が悪くて受け口になっているようなケースでは、フェイシャルマスクを使用して矯正治療をするのが一般的となっています。

対象年齢としては、主に上顎が成長する時期である7~13歳頃の子どもであり、自宅でのみ装着する装置です。

小児矯正2期治療に使用する矯正装置の種類

歯を見せる

小児矯正2期の治療に用いられる矯正装置は、大人の治療方法とほぼ同じものを使用します。種類は以下のとおりです。

  • ワイヤー
  • マウスピース型

それぞれどのような治療法なのかを見ていきましょう。

ワイヤー

口を開ける男の子

2期治療では「マルチブラケット装置」と呼ばれる、ワイヤーのついた装置を使って歯を動かします。

歯面に「ブラケット」という装置を装着し、ブラケットに通したワイヤーの力で歯を動かしていく方法です。

定期的にワイヤーを調整しながら歯の移動をコントロールし、歯並びを整えていきます。

痛みについては、マルチブラケット装置を装着した直後やワイヤーの調整をした後に出やすいです。痛みに個人差はありますが、3日~1週間程度で緩和するでしょう。

見た目が気になる子どもが着用できるよう目立ちにくい「クリアブラケット装置」もあります。

子どもの意見を尊重し、目立ちにくいクリアブラケット装置を選ぶとよいでしょう。

マウスピース型

マウスピース

矯正装置が目立つことが気になる場合は、マウスピース型の矯正装置「インビザライン(※) 」を使用するのが一般的です。

子どもの歯に合わせて形の違う透明のマウスピースを複数製作し、定期的に交換することで歯を動かしていき、歯並びを改善する矯正方法になります。

マウスピース型なので取り外しができ、痛みが少ないだけでなく、矯正中であることが周りにわかりにくいのが特徴です。

食事の前に取り外すことができるので、普段通りに食事を摂ることができたり歯磨きもくまなくできたりします。

また、金属アレルギーでブラケット装置がつけられない方や、ワイヤー装置で口内に傷がつくことが不安な場合はインビザライン矯正がおすすめです。

周りの目を気にする子どもにもおすすめの治療方法ともいえるでしょう。

(※) 未承認医薬品等であるため医薬品副作用被害救済制度の対象とはならない可能性があります。

小児矯正と大人の矯正との違いは?

子供の歯

小児矯正の主な目的は、「顎の骨を正常に発育させる」ことです。将来、永久歯をきれいに並べるための土台作りが小児矯正の基本となっています。

子どものうちは成長過程にあるため、歯も動きやすく永久歯が正しい位置に生えてくるように修正することが可能です。小児矯正をしておければ、将来的にきれいな歯並びが目指せます。

一方、大人の矯正は「歯の傾き・位置の異常を細かく整える」ことが主な目的です。

永久歯が生え揃った場合は簡単に抜歯することはできないため、生えている永久歯の位置を細かく整える治療を施します。

したがって、永久歯が生えてくる土台を作るのが小児矯正であり、生えてきた永久歯を整えるのが大人矯正であるといった違いがあるのです。

まとめ

歯を見る男の子

小児矯正の内容は、年齢によって1期・2期と治療方法が分かれます。矯正装置を選ぶときは、子どもの性格・生活習慣を考慮することも大切です。

乳歯から永久歯に生え変わってくると、乳歯のときはきれいに並んでいた歯が、突然歯と歯の間が開いたりガタガタになってしまったりすることがあります。

そうすると、永久歯が生える場所がなく、さらに歯列を悪化させることがあるのです。そうなる前に小児矯正を検討するとよいでしょう。

ただし、小児矯正は大人の歯列矯正と同じように痛みをともなうことがあります。年齢によっては痛みに耐えられない子どももいるので、子どもと相談しながら治療を検討しましょう。

また、正常な歯並びでない場合、むし歯になりやすかったり健康状態を悪化させたりしてしまうことがあります。

子どものうちは成長が著しい時期だからこそ、矯正装置を着用することできれいな歯並びを目指せるでしょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
宮島 悠旗医師(宮島悠旗ブライトオーソドンティクス)

宮島 悠旗医師(宮島悠旗ブライトオーソドンティクス)

愛知学院大学歯学部卒業 / 東京歯科大学千葉病院にて臨床研修医終了 / 東北大学大学院歯学研究科口腔発育学口座顎口腔矯正学分野 助教 / 宮島悠旗ブライトオーソドンティクス起業 / 著書「国際人になりたければ英語力より歯を“磨け”-世界で活躍する人の『デンタルケア』-」(幻冬舎)出版 / 合同会社T&Y Connection設立 / ASIA GOLDEN STARAWARD(企業家賞)受賞 / 著書「歯並び美人で充実人生-幸せを呼ぶゴールデンスマイル-」(合同フォレスト)出版 / 株式会社オーティカインターナショナル認定講師 / 現在は宮島悠旗ブライトオーソドンティクス代表としてフリーランス矯正歯科医を行っている / 専門は矯正歯科(Invisalign®︎、小児矯正、Myobrace®︎、マルチブラケット、アンカースクリュー、PBMオルソ(光加速矯正装置))

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愛知学院大学歯学部卒業 / 東京歯科大学千葉病院にて臨床研修医終了 / 東北大学大学院歯学研究科口腔発育学口座顎口腔矯正学分野 助教 / 宮島悠旗ブライトオーソドンティクス起業 / 著書「国際人になりたければ英語力より歯を“磨け”-世界で活躍する人の『デンタルケア』-」(幻冬舎)出版 / 合同会社T&Y Connection設立 / ASIA GOLDEN STARAWARD(企業家賞)受賞 / 著書「歯並び美人で充実人生-幸せを呼ぶゴールデンスマイル-」(合同フォレスト)出版 / 株式会社オーティカインターナショナル認定講師 / 現在は宮島悠旗ブライトオーソドンティクス代表としてフリーランス矯正歯科医を行っている / 専門は矯正歯科(Invisalign®︎、小児矯正、Myobrace®︎、マルチブラケット、アンカースクリュー、PBMオルソ(光加速矯正装置))

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