マウスピース型矯正治療ではまず、使用するマウスピース型の型取りを行います。シリコン印象での型取りが多い一方で、3Dスキャナーを使用したマウスピース型の型取りが増えています。
また、3Dスキャナーはマウスピース型の型取り以外にも使えるため、詰め物・被せ物の型取りやインプラント治療などに幅広く使われているのです。
この記事では、マウスピース型矯正の型取り方法・3Dスキャナーのメリット・失敗事例について紹介します。
マウスピース型矯正治療を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
マウスピース型矯正の型取り方法
マウスピース型矯正の型取り方法は主に次の2つです。
- シリコン印象を使用する
- 3Dスキャナーで撮影する
シリコン印象は従来行われている型取り方法です。粘土のようなものを口にくわえ、型を取ります。一方の3Dスキャナーは、機械を使って簡単かつスピーディーに型取りを行う方法です。
それぞれの方法について詳しく解説します。
シリコン印象を使用する
シリコン印象を噛み、歯型を取る方法です。シリコンが固まるまでしばらく噛んだままにしておく必要があります。
このとき材料が喉に流れて「オエッ」となりそうになるなど、不快感があります。
原料はシリコンラバーです。精度と安定性に優れるため、マウスピース型などの精密印象に使用されます。高価なため、自由診療で使われることが多い素材です。
歯に押し付けて型を取り、その型に石膏を流して作成します。
マウスピース型矯正をはじめとする、歯列矯正は自由診療になります。マウスピース型矯正は透明なマウスピース型を使用するので、矯正装置が目立ちにくいです。
自由に装着ができるため、歯磨きのときと食事のときは外すことができます。
しかし、装着時間を守らないと矯正に時間がかかる・症例によっては対応できないなどのデメリットがあります。
費用相場は全顎矯正の場合、80〜100万円(税込)程です。参考にしてみてください。
この金額には検査費用なども含まれており、シリコン印象を使った型取りの費用も含まれています。
3Dスキャナーで撮影する
患者さんにお口を開けてもらい、3Dスキャナーで歯の表面を撮影します。シリコン印象のようにお口を大きく開ける必要はありません。
疲れたら休憩もできます。撮影時間は短く、全顎のスキャンにかかる時間は数分程です。
その後、モニターにスキャンした歯型が映し出されます。患者さんは治療前と治療後の予想される歯並びを見比べることができます。
歯列矯正前後のシミュレーションができるため、安心して歯列矯正を受けられるでしょう。
また、治療の進行や変化についても把握できるため、歯列矯正完了までの目標や期待する効果について明確にできるでしょう。
マウスピース型矯正の型取りを3Dスキャナーで行うメリット
マウスピース型矯正の型取りをする際、多くの歯科医院では3Dスキャナーを使っています。3Dスキャナーにはさまざまなメリットがあります。
- 「オエッ」とならない
- 誤差が少ない
- シリコン印象よりも精度が高い
- 噛み合わせの強度がわかる
- 治療後の歯並びのシミュレーションができる
- 型取りを1回で済ませられる
シリコン印象のデメリットでもある「オエッ」となる心配がないことや、誤差が少なくシリコン印象よりも精度が高いのは機械だからこそといえるでしょう。
噛み合わせの強度が分かったり、治療後の歯並びのシミュレーションができたりなど、3Dスキャナーで型取りを行うことにはさまざまなメリットがあります。
これら6つのメリットについてみていきましょう。
「オエッ」とならない
従来のシリコン印象を使った型取りは、喉の方に材料が流れ「オエッ」となる場合がありました。
型が固まるまではかみ続けていないといけないため、不快感を覚える方も多いでしょう。シリコン印象が固まるまでに、約5分かかります。
上下の型を取る場合は約10分です。その間、不快感を我慢する必要があります。
しかし3Dスキャナーは材料をお口に入れる必要がないため、嘔吐反射の心配はありません。スキャンも数分程で終わります。
長時間お口を開けずに済むため、不快感が少ないです。
誤差が少ない
シリコン印象は外すときにずれることがあり、誤差が生じることがありました。人の手で作業をするため、ミスが起こる場合もあります。
ミスの起こったままマウスピース型が作成されてしまうと、完成後の調整時に時間がかかることにつながります。
しかし機械を使う3Dスキャナーは、そのような誤差や人為的ミスの心配がありません。
シリコン印象よりも精度が高い
シリコン印象よりも精度が高いのも、3Dスキャナーの特徴です。シリコン印象を使った型取りは、変形・劣化などによって正確なデータが得られない場合もあります。
3Dスキャナーはお口の中の情報を高解像度でスキャンします。その情報はコンピューター上で立体的に解析することが可能です。
そのため、精度の高いマウスピース型を作ることができるのです。お口の情報をデータ化することで、保存においてもメリットがあります。
従来の石膏をつかった歯列模型は長期保存が難しく、さらに場所も取ってしまいます。しかしデータ化することで場所の心配がなくなり、長期保存もできるようになったのです。
噛み合わせの強度がわかる
3Dスキャナーの種類によっては嚙み合わせの強度がわかる機器もあります。噛んだときに強く力が加わっている部位が色分けでモニターに表示されます。
そのため、噛み癖や噛むときにどこに力が加わっているのかを知ることが可能です。
噛み合わせがよくないと食事のときに食べにくいだけではなく、顔の歪み・肩こり・頭痛など、さまざまな症状を引き起こす原因となります。
治療後の歯並びのシミュレーションができる
治療後の歯並びのシミュレーションができるため、治療後のイメージがつきやすいです。スキャンしたデータを解析後、モニターに映し出されます。
治療後の歯並びが分かるため、イメージ通りの歯列矯正ができないと分かった場合は、治療方針を変更してもらえる場合があります。
イメージが違うなど、違和感を覚えたら担当の歯科医師に相談してみるとよいでしょう。治療経過も分かるため、モチベーションアップにもつながるのではないでしょうか。
型取りを1回で済ませられる
3Dスキャナーを使用することにより、型取りを1回で済ませられます。全顎の場合、上と下のそれぞれの型が必要です。
シリコン印象の型取りでは一度に上と下の型は取れないため、2回やらないといけません。「オエッ」となりやすい方にとって、2回型を取るのは苦痛でしょう。
このように、3Dスキャナーにはさまざまなメリットがあります。
マウスピース型の型取り以外に3Dスキャナーでできること
3Dスキャナーができるのはマウスピース型の型取りだけではありません。
- 詰め物・被せ物の型取り
- インプラント治療
これらも3Dスキャナーでできます。詰め物・被せ物の型取りは、マウスピース型と同じように歯型が必要です。
3Dスキャナーを使うことで、歯型を取ることができます。またお口の中の正確な情報を知ることができるため、インプラント治療にも使えます。
それぞれ詳しくみていきましょう。
詰め物・被せ物の型取り
詰め物・被せ物も、マウスピース型と同じように型取りが必要です。そのため、3Dスキャナーを使って行うことができます。
3Dスキャナーのデータを活用することでより精密な技工物の作成が可能になります。
また、詰め物・被せ物の型取りを3Dスキャナーで行うことにより自歯との噛み合わせのズレも少なく、詰めるときの調整に時間がかからないでしょう。
インプラント治療
インプラント治療を行うためには、お口の中の正確な情報が必要です。3Dスキャナーを使うことにより、お口の中の正確な情報を得ることができ、インプラント治療にも活用できます。
永久歯を失った場所にインプラントと呼ばれる金属製の歯根を埋め込み、その上に人工歯を装着するのがインプラント治療です。
インプラントを埋め込むので、自然の歯と同じようにしっかりと食べ物を噛むことができます。審美性に優れているメリットもあり、インプラント箇所が周りから見えても不自然ではないでしょう。
しかしデメリットもあります。インプラントを埋め込むための手術が必要です。骨とインプラントが結合するまでに時間がかかるため、通常の歯科治療よりも時間がかかります。
インプラントを検討する方は、メリットとデメリットを把握した上で検討しましょう。
なお、インプラント治療の費用相場は1本あたり30〜40万円(税込)です。
マウスピース型矯正の型取りは3Dスキャナーがおすすめ
マウスピース型矯正の型取りをするのなら、3Dスキャナーがおすすめです。
先述したように、「オエッ」となる不快感がなく、短時間で型取りが終わります。さまざまなメリットがあり、患者さん自身の負担も軽減できます。
従来のシリコン印象による型取りが苦手でマウスピース型矯正をためらっていた方は、3Dスキャナーで型取りをしてくれる歯科医院に相談してみてはいかがでしょうか。
ほとんどの歯科医院では、マウスピース型矯正の治療費の中に検査費用も含まれています。そのため、3Dスキャナーだからといって値段が高くなるなどはないでしょう。
マウスピース型矯正の型取り方法はメーカーによって異なる
マウスピース型矯正の型取り方法はメーカーによっても違います。マウスピース型矯正は、歯の動き具合にあわせて少しずつマウスピース型を作り直していきます。
そのため、作り直すたびに型取りをしなくてはいけません。患者さんに時間や身体的・金銭的負担がかかります。
しかしメーカーによっては初回の型取りで、治療終了までのマウスピース型を作成できる場合があります。
1回で作成するため、マウスピース型の完成を待つというタイムロスがありません。
また、マウスピース型を作り直してもらうには定期的な通院が必要ですが、1回で作成するので通院回数も少なくなります。
このように通院回数も変わってきますので、カウンセリングのときに歯型を取る回数も確認してみるとよいでしょう。
マウスピース型矯正の型取りで起こる失敗事例
最後に、マウスピース型矯正の型取りで起こる失敗事例を紹介します。
- 型取り前の治療に時間がかかった場合
- 型取りから装着までに時間がかかった場合
- 抜歯によって歯が倒れ込んでしまった場合
歯の治療が必要になり型取りまでに時間がかかったり、型取りをしてからマウスピース型を装着するまでの時間がかかったりすると治療が思うように進まない場合もあります。
そのため、マウスピース型の型取りの失敗となります。他にも、マウスピース型を装着する前に歯を抜いた場合も失敗です。
これら3つの失敗事例について詳しくみていきましょう。マウスピース型の型取りで失敗しないためには、失敗事例を知ることも大事です。
型取り前の治療に時間がかかった場合
マウスピース型矯正を始めるとき、歯の治療が必要な場所が見つかったらまず歯の治療を行います。歯の治療を後回しにしてマウスピース型矯正を行うことはできません。
歯の治療により、歯並びが変わる場合があるためです。しかし、歯列矯正だけを考えている方にとっては、歯の治療期間は想定外の時間となります。
場合によっては歯の治療で半年以上かかることもあるでしょう。そうなると、マウスピース型矯正を諦めてしまう方もいます。
型取りから装着までに時間がかかった場合
患者さんの癖によっては歯の位置が変わることがあります。そのため、マウスピース型が完成してから装着に時間がかかるとマウスピース型が合わない場合もあります。
なぜなら、型取りをしたときと歯の位置が異なるためです。その場合は再度、作り直しとなります。作り直しになると、追加で作成費などを払う必要があるでしょう。
マウスピース型ができたら、速やかに受け取りに行きましょう。3Dスキャナーで歯が動く位置などを予測できるのではと考える方もいるかもしれません。
しかし、3Dスキャナーで予測できるのはマウスピース型を装着した場合の動きです。
抜歯によって歯が倒れ込んでしまった場合
マウスピース型を装着する前に、抜歯によって歯がなくなってしまった方は治療の継続が難しいです。なぜなら、抜歯によってすき間が生じているためです。
マウスピース型の型取りをするとき、歯列に大きな変化がないようにしましょう。適切なマウスピース型の作成が難しくなります。
マウスピース型矯正の型取りで失敗しないためには、お口の中の状態をみてもらうことが重要です。むし歯などすぐに治療が必要な箇所はないか、抜歯をしないといけない歯がないかなどを確認してもらいましょう。
まとめ
ここまでマウスピース型矯正の型取りについてみてきました。マウスピース型矯正の型取りはシリコン印象や3Dスキャナーで行われます。
シリコン印象は患者さんに不快な思いをさせ、歯科医院側にとっても正確なデータが取れないなどのデメリットがあります。
そのため、3Dスキャナーを使った型取りが主流となってきているのです。型取りがネックとなり、マウスピース型矯正を悩んでいた方は一度、歯科医院に相談してみてはいかがでしょうか。
マウスピース型矯正できれいな歯並びを手に入れましょう。
参考文献