おしゃぶりは、赤ちゃんが泣きやまないときやぐずりがやまないときに安心感を与えて落ち着かせてくれるので、育児中の方にとってはお助けアイテムの1つです。
しかし、長期間の使用・使用方法によっては、歯並びに影響を与える可能性があるのをご存知でしょうか。
おしゃぶりを長期間使用すると、歯並びの崩れなどが起こり、将来的に歯列矯正が必要になる場合もあるのです。
この記事では、おしゃぶりが歯並びに与える影響について詳しく紹介します。
「おしゃぶりをいつまで使用させてよいかわからない」「おしゃぶりがなかなかやめられない」などの心配をお持ちの方は、ぜひ参考にしてください。
おしゃぶりが歯並びに影響するって本当?
おしゃぶりは、赤ちゃんに安心感を与えてくれるものですが、使用する時期・期間によっては歯並びに影響する可能性があります。
赤ちゃんのうちは影響はありませんが、2歳以降の使用には注意が必要です。それでは詳しくみていきましょう。
赤ちゃんのうちは影響はない
吸う動きが主な乳児期の赤ちゃんは、まだ乳歯も生え揃っていないため、おしゃぶりの使用が歯並びに与える影響はありません。
乳歯がまだ揃っていない場合は、上下の歯が触れ合わず、噛むような力もかけられないからです。
しかし離乳食が始まってくると、今までは吸うだけだった赤ちゃんの口の動きが、噛むへと徐々に変わってきます。
影響がないからといって、寝かしつけたい場合・泣きやませたい場合におしゃぶりを与え過ぎていると癖になり、なかなかやめられなくなってしまいます。
したがって、便利だからといっておしゃぶりに頼りすぎず、時間を決めて使用することが大切です。
そして、赤ちゃんの歯が生え始めたら、できるだけ早めにおしゃぶりの使用をやめることが望ましいでしょう。
また、おしゃぶりは赤ちゃんの月齢に合わせた形・サイズがありますので、赤ちゃんの成長に合わせての交換も重要です。
形・サイズ・使用方法などに関してわからないことがあれば、歯科医師に相談して適切なアドバイスを受けるようにしましょう。
2歳以降は注意が必要
2歳以降は乳歯が生え揃って奥歯の噛み合わせもできるようになるので、長時間おしゃぶりを使用すると歯並び・噛み合わせに影響が出やすくなります。
おしゃぶりを長時間口に含んでいると、上の前歯が前に突き出して上下の噛み合わせに支障が出るのです。
また、おしゃぶりを咥えると下顎の成長が妨げられ、口の閉じ方・舌の動きなどにも影響が出る場合もあります。
したがって、奥歯が生え始める1歳半頃から徐々におしゃぶりの使用時間を減らし、遅くとも2歳半くらいを目途に使用をやめることが望ましいでしょう。
おしゃぶりの影響で起こる歯並びの問題
おしゃぶりの長期間の使用は、歯並びにいくつもの問題を起こします。そのなかでも代表的な問題は以下の3つです。
- 出っ歯
- 開咬
- 交叉咬合
ここでは、この3つの問題について詳しく説明します。
出っ歯
出っ歯とは、上顎前突ともいい、前歯が前に突き出して上下の歯並びにズレが生じてしまっている状態をいいます。
おしゃぶりを長期間使用すると、上顎の成長が妨げられ、下顎が後退してしまう場合があります。このため、前歯が前方に突き出た状態になるのです。
出っ歯は、見た目が悪いだけでなく、顎骨の成長・永久歯列にも影響を及ぼします。そして症状が進むと、噛み合わせ不良・発声障害などを引き起こすため、早めの治療が重要です。
治療法としては、歯列矯正歯科治療や歯科外科手術がありますが、治療方法は個々によって異なります。
出っ歯を予防するためには、おしゃぶりの使用時間を減らし、おしゃぶりの形状や大きさに注意することが必要です。定期的な歯科検診や、歯磨き指導も重要です。
開咬
開咬とは、奥歯は噛んでいるのに前歯に隙間が空き、上下の前歯が噛み合わずに開いている状態をいいます。
おしゃぶりがきっかけで、歯列が前へと移動して上下の歯の接触が少なくなるため、前歯がきれいに噛み合わなくなるのです。
開咬は、さまざまな問題を引き起こします。
例えば、歯並びの悪化・見た目の悪さはもちろん、咀嚼・嚥下・発音などに障害をきたす場合があります。また、口呼吸となるので口臭の原因になることもあります。
開咬を予防するためには、おしゃぶりの使用を減らしていくことが必要です。おしゃぶりが原因で開咬になってしまった場合は、おしゃぶりをやめると改善するケースもあります。
開咬を放置して進行してしまうと、歯列矯正治療が必要となる場合があるので注意が必要です。
いずれにしても、開咬に気付いた場合は早めに歯科医師に相談しましょう。
交叉咬合
交叉咬合は反対咬合ともいい、上下の歯が反対方向に噛み合わさっている状態です。下の歯が突き出ているため受け口ともいわれます。
おしゃぶりの長期間使用が原因で、上顎の歯が内側に移動し、下顎の歯が外側に出てしまうのです。
症状としては、見た目の悪さ・歯並びの悪化・うまく噛めない・発音が舌足らずになるなどがあります。
交叉咬合は、下顎が成長する前に対処するのが一般的なので、まずは原因となるおしゃぶりの使用をやめることが重要です。
また、再発率が高いので、定期的な歯科検診・適切な歯磨き指導も重要となります。放置して進行すると、歯列矯正治療が必要になる場合があるので注意しましょう。
おしゃぶりをやめさせる方法
おしゃぶりは、赤ちゃんにとって落ち着きを与えてくれるアイテムですが、おしゃぶりを長期間使用すると歯並びの問題が生じる場合があります。
そのため、適切なタイミングでおしゃぶりをやめさせることが必要です。おしゃぶりをやめさせる方法は以下の4つです。
- 言葉で注意する
- おしゃぶりを隠す
- 運動や手遊びに誘導する
- スキンシップをする
詳しく紹介しますので、参考にしてください。
言葉で注意する
まず1つ目の方法は、言葉で注意することです。注意するといっても「やめなさい」ときつく言うことではありません。
ある程度、赤ちゃんが言葉が理解できるのであれば、わかりやすい言葉でおしゃぶりをやめる理由を説明しましょう。
例えば、「お姉さん(お兄さん)になるから」・「きれいな大人の歯が生えるように」といった具合に提案したり、言い聞かせたりする方法です。
また、楽しみにしている予定などがあれば「〇日になったら(おしゃぶりを)バイバイしようね」などもよいでしょう。
楽しみな日を設定すると、おしゃぶりをやめるよりも楽しみな気持ちの方が増すのでやめやすくなります。
そして、その日・その時が来たら赤ちゃんと一緒におしゃぶりを捨てるというのもよいでしょう。
赤ちゃんがまだ言葉を理解していない場合は、この方法は難しいかもしれません。
しかし、赤ちゃんはまだ言葉を理解できなくても、お母さんの言葉かけの抑揚・表情・しぐさなどをしっかり見ています。
言葉を理解できていてもいなくても、根気よく続けていくことが大切です。
おしゃぶりを隠す
2つ目の方法は、おしゃぶりを隠すことです。突然おしゃぶりを隠してやめさせる方法もありますが、急になくなると大きなストレスを感じてしまうことも考えられます。
先述したように、もし言葉が理解できるのであれば、おしゃぶりをやめる当日にかくすとよいかもしれません。
隠す場所は、赤ちゃんの目の届かないところがおすすめです。例えば、高い場所・引き出しの奥など、普段赤ちゃんがわからない場所にしましょう。
場合によっては、赤ちゃんがおしゃぶりを欲しがって泣く場合もあるでしょう。泣き続ける場合には、無理に隠さずにいったんおしゃぶりを与えることも大切です。
夜泣きがひどいとき・公共の場で寝るときだけおしゃぶりを使い、普段の生活では隠しておくなどタイミングを決めて、少しずつ使用を減らしてみるのもおすすめです。
運動や手遊びに誘導する
3つ目は、運動や手遊びに誘導することです。おしゃぶりは、赤ちゃんにとって安定剤のような役目でもあるので、やめることで大きなストレスを感じる場合もあります。
そこで、赤ちゃんがおしゃぶりを忘れてしまうような、代替となる方法を見つけることが大切です。その代替方法として、運動・手遊びがあります。
例えば、おしゃぶりの代わりに、気に入っているおもちゃで遊んだり、一緒に体操をしたりするとよいでしょう。散歩・公園での遊びも効果的です。
しっかりと体を動かして楽しんだ後は、おしゃぶりを思い出す暇もなく、よく眠ってくれるかもしれません。
毎回成功するとは限りませんが、根気よく続けて徐々に運動・手遊びの回数を増やし、慣らしていきましょう。
スキンシップをする
最後にご紹介する方法は、スキンシップをすることです。例えば、声かけ・抱っこ・マッサージなどのふれ合いで、赤ちゃんがしてほしいこと・やりたいことを行えるようにします。
おしゃぶりは、赤ちゃんにとって落ち着きや安心を与えるものですが、それが依存につながってしまってなかなかやめられない場合もあります。
そのような場合に、しっかりとスキンシップをして赤ちゃんに十分な安心感・満足感を与えると、おしゃぶりをやめやすくなるのです。
スキンシップをする際には、赤ちゃんの反応を見ながら、その時々に合わせたやり方を心がけることが大切です。
おしゃぶりがやめられない場合は医師に相談を
さまざまな方法を試してもおしゃぶりがやめられない場合は、歯科医師に相談しましょう。
歯科医師は、赤ちゃんの発達段階・歯並び・口の中の健康状態などから総合的に判断したアドバイスが提供できます。
歯並びに大きな影響を与える問題がある場合、歯列矯正治療が必要になる場合もありますので、安易な自己判断は禁物です。
- おしゃぶりが合っているかわからない
- おしゃぶりがやめられない
- 歯並びが気になる
- おしゃぶりをやめようとすると赤ちゃんの様子が不安定になる
これらの不安を抱えている方は、気軽に歯科医師に相談してみましょう。
まとめ
おしゃぶりが歯並びに与える影響・おしゃぶりをやめられる方法についてお伝えしました。
おしゃぶりは、赤ちゃんに安心感を与えてくれるので、泣き止まないとき・ぐずるとき・なかなか寝ないときには育児のお助けアイテムとなります。
一方で、長期間使用すると歯並びが悪くなり、出っ歯・開咬・交叉咬合といった問題を引き起こす可能性があります。
特に、2歳以降も使用を続けてしまうと、影響が出やすくなるので注意が必要です。
日本小児歯科学会でも、2歳までにおしゃぶりの使用をやめることで、歯並びへの影響は改善されると提唱しています。
したがって、2歳までにはおしゃぶりをやめて、歯並び・噛み合わせの異常が起こらないようにしましょう。
おしゃぶりをやめさせる方法としては、言葉で注意する・おしゃぶりを隠す・運動や手遊びに誘導する・スキンシップをするといった方法をご紹介しました。
焦らず根気よく、赤ちゃんに合った方法を実践してみてください。
歯並びに影響を与える問題があると、歯列矯正治療が必要になる場合があります。赤ちゃんの健康と発達を考えると、早めに対処することが大切です。
なかなかおしゃぶりがやめられない場合には、歯科医師に相談してアドバイスを受けましょう。
参考文献