噛み合わせ

噛み合わせが深い原因は?過蓋咬合の原因と解決策を解説

噛み合わせが深い 原因

噛み合わせが深い、いわゆる「過蓋咬合」は、上下の歯が正常よりも深く噛み合うことを指し、見た目の問題だけでなく、頭痛や顎関節症などの健康上の問題を引き起こす可能性があります。その原因はさまざまで、遺伝的要因、癖や習慣、顎の成長の問題などが挙げられます。この記事では、以下の点について詳しく解説します。正しい診断と治療法を知ることで、健康的な口腔環境を取り戻し、生活の質を向上させるための一歩を踏み出しましょう。

  • 噛み合わせが深くなる原因
  • 噛み合わせが深いことにより起こる問題点
  • 過蓋咬合の治療法

噛み合わせが深い原因について理解するためにもご参考いただけると幸いです。 ぜひ最後までお読みください。

過蓋咬合(かがいこうごう)とは

過蓋咬合(かがいこうごう)とは

過蓋咬合は、上下の前歯の噛み合わせが通常よりも深くなっている状態を指します。健康な噛み合わせの場合、上の前歯は下の前歯を約2~3ミリ程度覆いますが、過蓋咬合の場合、この覆いが半分以上になり、時には下の前歯を隠してしまうこともあります。
このような噛み合わせの異常は、前歯の機能に影響を及ぼし、結果として奥歯への不均等な力の配分を引き起こします。これにより、さまざまな口腔内の問題やリスクが生じる可能性があります。

噛み合わせが深くなる原因

噛み合わせが深くなる原因

噛み合わせが深くなる原因は多岐に渡ります。以下に噛み合わせが深くなる原因について解説します。正しい知識と早期の対応が、健康な口腔環境を維持する鍵となります。

顎関節の異常

顎関節に異常が生じると、その影響で顎の位置が変動し、結果として噛み合わせの深さに変化が現れることがあります。顎関節症やそのほかの顎関節障害は、顎の動きを不自然にし、結果として噛み合わせを不均等にしてしまう原因となります。
顎骨が不均衡に成長してしまったり、顎の位置の後退によっても引き起こされたり、下顎が後方に押し下げられると過蓋咬合(噛み合わせが深くなる状態)へと進行するリスクが高まります。

歯ぎしり・食いしばり

歯ぎしりや食いしばりは、噛み合わせに深刻な影響を及ぼす行為として知られています。これらの習慣は、特にストレスや緊張が原因で発生することが多く、歯や顎関節に過度の圧力をかけることで、徐々に噛み合わせの深さに変化をもたらします。継続することで、奥歯の摩耗や歯茎への圧迫が進み、これがさらに前歯の噛み合わせに悪影響を与える可能性があります。
このように、歯ぎしりや食いしばりは奥歯の位置の下降を引き起こし、噛み合わせ全体の不均衡へと繋がるのです。そのため、これらの習慣による影響を抑えるためには、ストレス管理の方法を見つけるとともに、必要に応じて専門の治療を受けることが重要です。

歯の問題

奥歯に発生したむし歯は、噛み合わせに関わっています。奥歯が損傷を受けたり、詰め物や冠が取れたりすると、バランスが乱れ、結果として噛み合わせが深くなることがあります。
また、乳歯を早く失うことも、永久歯が適切な位置に生えてこない原因となり、噛み合わせの問題を引き起こす可能性があります。
さらに、前歯のサイズや位置の異常も影響を及ぼします。上顎の前歯が過度に大きかったり、下顎の前歯が内側に傾いたりしている場合、深い噛み合わせを生じさせる要因となり得ます。

上下の顎骨のバランス

顎骨の不均衡な発達は、噛み合わせの問題を引き起こす主な原因の一つです。上顎と下顎の成長のバランスがとれていない場合(例えば上顎が過剰に発達していたり、下顎が十分に成長していなかったり)、噛み合わせの深さに影響を及ぼす可能性があります。
なかでも、上顎が前方に突出しているか、下顎が後退している場合、歯が適切に噛み合わない状態になり、深い噛み合わせを引き起こす可能性があります。このような骨格の不均衡は、見た目の問題だけでなく、咀嚼機能にも影響を及ぼします。

生活上での癖や習慣

生活習慣となってしまっている特定の癖は、噛み合わせに深刻な影響を与えることがあり、これらは過蓋咬合やそのほかの歯列不正を引き起こす原因となります。
例えば、指しゃぶりや下唇を噛む行為、食いしばり、口呼吸、頬杖をつくといった行為が挙げられます。これらの行為が長期にわたって続くと、下顎の前歯が内側へ、上顎の前歯が外側へ傾く傾向が見られます。
このような癖は、歯や顎の正常な成長を妨げ、時間とともに噛み合わせの問題を悪化させる可能性があります。

遺伝

遺伝は顎の成長や歯の配置における重要な役割を果たし、噛み合わせの深さにも影響を及ぼすことがあります。特定の遺伝的特徴、例えば上顎の過剰な発達、下顎の不十分な成長、歯の位置や向きの異常、または前歯のサイズが大きい場合などは、噛み合わせの問題、過蓋咬合を引き起こす可能性があります。
これらの遺伝的要因は、外部からの影響に関係なく、個人の口腔内状態に影響を与え、むし歯や日常の癖などがなくても噛み合わせが深くなる可能性があります。遺伝的背景に基づく噛み合わせの問題に対処するには、個々の状況に応じた矯正治療が推奨されます。

噛み合わせが深いとどうなるか

噛み合わせが深いとどうなるか

噛み合わせが深い状態は、見た目の問題だけでなく、日常生活におけるさまざまな不便や健康上の問題を引き起こす可能性があります。正しい噛み合わせの重要性を理解し、早期に適切な対策を講じることが、健康的な口腔環境を維持するための第一歩です。

顎関節への負担が増大

深い噛み合わせは、顎関節に過剰な負荷をかける原因となり、結果として顎関節症のリスクを高めます。この状態では、顎の位置が異常になり、顎関節に不必要なストレスが加わりがちです。
継続的なストレスが顎関節症を促進し、痛み、開口障害、顎の動きに伴うクリック音などの症状を引き起こすことがあります。症状は日常生活において支障をきたし、治療を必要とすることが多いようです。

歯の喪失

深い噛み合わせは、歯の健康と寿命に直接的な影響を及ぼす可能性があります。前歯が適切に接触しないため、奥歯に過度の負荷がかかり、結果、奥歯の早期劣化や寿命の短縮が懸念されます。
また、前歯の不適切な噛み合わせは、唾液の自浄作用が十分に機能しない場合があり、むし歯や歯周病のリスクを増加させます。特に、下の前歯が上の歯茎を傷つけることにより、歯周病のリスクが高まります。
これらの要因は、将来的に歯を早期に失う原因となり得るため、深い噛み合わせの問題には早急に対処することが、歯の健康を守る上で重要です。

被せ物が壊れやすい

深い噛み合わせは、歯と歯の接触が異常に強く、詰め物や被せ物に過剰な力が加わります。結果、治療材料が外れやすくなったり、破損するリスクが高まります。
治療材料が外れたり壊れたりすると、歯がさらなるダメージを受ける可能性があり、むし歯の進行や歯の破損のリスクも増大します。
また、歯の折れや割れといった重大な問題を引き起こす可能性があるため、早期に適切な治療を受けることが極めて重要です。

むし歯や歯周病になりやすい

深い噛み合わせは、歯同士が過度に接近しているので、歯磨き時に歯ブラシの届きにくい環境になってしまいます。歯磨きが難しくなると、歯垢の蓄積を促し、結果としてむし歯のリスクを高める主要因となります。
さらに、歯間ブラシやデンタルフロスの使用が困難になりがちで、歯垢が歯間部へ蓄積し、むし歯や歯周病の発生率をさらに上昇させます。深い噛み合わせは、口腔内での衛生管理を著しく難しくするだけでなく、奥歯の過度の摩耗、前歯への不必要な圧力、顎関節症のリスク増加など、ほかの多くの口腔健康問題へとつながる可能性があります。

奥歯がすり減る

深い噛み合わせは、奥歯に大きな影響を及ぼします。上下の歯が過度に圧迫され合い、その結果、奥歯の表面が摩耗しやすくなります。この過剰な圧力は、エナメル質の早期摩耗を引き起こし、象牙質の露出を促進します。
象牙質が露出すると、歯は外部の刺激に対してより敏感になり、温度変化や甘酸っぱい食べ物に対する痛みを引き起こしやすくなり、むし歯の発生リスクも高まります。深い噛み合わせによる奥歯の摩耗は、単に見た目の問題だけではなく、歯の機能と健康に直接的な影響を及ぼします。

過蓋咬合の治療法

過蓋咬合の治療法

過蓋咬合は深刻な噛み合わせの問題であり、未治療時には多くの口腔内トラブルを引き起こします。以下では、その治療法と改善に向けたアプローチを紹介します。

顎顔面矯正

顎顔面矯正治療は、深い噛み合わせの問題を抱える成人を含む患者さんに対する治療法のひとつです。この治療法では、顎の骨格構造自体を手術により調整し、噛み合わせの深さを根本から改善します。特に大人は、顎の成長が停止しているため、顎顔面矯正が適した治療選択肢となります。
顎顔面矯正の治療法には、「急速拡大装置」と呼ばれる特殊な固定装置が用いられます。この装置は、患者さんの歯列の内側に取り付けられ、中央にあるネジを定期的に調整することで、顎骨を徐々に拡大し、理想的な骨格形状に導きます。このプロセスにより、歯並びと顔貌が自然かつ理想的な形に調整されるだけでなく、鼻腔が広がり鼻呼吸が容易になるなど、全体的な健康状態の改善にも寄与します。
顎顔面矯正治療は、単に見た目の改善に留まらず、患者さんの噛み合わせ機能を向上させ、長期的な口腔健康の基盤を築くものです。

ワイヤー矯正

ワイヤー矯正は、深い噛み合わせや不整な歯並びを矯正するための一般的な手法です。この方法は、ブラケットとワイヤーを組み合わせて歯を段階的に移動させ、理想の位置へと導きます。歯の配置や傾斜を細かく調整できるため、多様な噛み合わせの問題に対応可能とされています。美しい歯並びと機能的な噛み合わせの実現を目指す治療です。
従来のワイヤー矯正の欠点として指摘されることが多いのが、装置が目立つことによる審美的な問題です。しかし、技術の進歩により、透明または歯に色を合わせたブラケットとワイヤーが開発され、治療中の見た目の懸念を大きく軽減しています。
ワイヤー矯正は、定期的な調整を要する長期的な治療ですが、終了後には患者さんの口腔健康と自信を大きく向上させるでしょう。

マウスピース型矯正

マウスピース型矯正は、見た目を意識する患者さん向けに設計された、透明な装置を用いた矯正治療法です。このアプローチでは、各々にカスタマイズされた透明なプラスチック製マウスピースを段階的に使用し、歯を理想的な位置にゆっくりと導きます。主に軽度から中等度の噛み合わせの問題や歯並びの不整を改善するのに適しており、その目立たない点が大きな魅力となっています。
マウスピース型矯正の大きな利点は、その審美性と取り外し可能な所にあります。日常生活での目立ちにくさは、社会生活や仕事での見た目を気にする方にとって、重要なポイントになります。しかしながら、この治療法はすべての噛み合わせの問題に対応可能というわけではなく、重度の症状にはほかの矯正治療法の方が適している場合があります。

過蓋咬合の予防策

過蓋咬合の予防策

過蓋咬合は子どもの成長段階で注意が必要です。日々の生活習慣が噛み合わせの問題を引き起こす可能性があるため、特定の行動パターンを持つ子どもは注意が必要です。具体的には、お口の周りの筋肉に常に緊張させる子、猫背の姿勢が常態化している子、細かい手作業を好む子、話すことが少ない子、食事の際に姿勢が良くない子、頻繁に頬杖をつく子などがリスクを抱えています。
過蓋咬合を未然に防ぐためには、子どもの日常生活における習慣を見直し、以下のような予防策を取り入れることが良いでしょう。

  • コミュニケーションの促進: 子どもが積極的に話す環境を作り出すことは、口周りの筋肉を適切に使う機会を増やし、下顎の健全な発達を促します。また、子どもの精神的な発達にも良い影響を与えます。
  • 活発に遊ぶ: 全身を使った活発な遊びを奨励しましょう。これにより、子どもは大声を出すことが多くなり、結果として顎の筋肉を強化し、顎の成長を促進します。さらに、遊びを通じて食欲が増すことも顎の健康に寄与します。
  • 食事時の正しい姿勢の実践: 食事時には正しい姿勢を保ち、犬食いや猫背を避けるようにしましょう。お茶碗やフォーク、スプーンを正しく持つことで、正しい食事姿勢が身につきます。この姿勢を食事以外の場面でも維持することが重要です。

これらの予防策を日常生活に取り入れることで、過蓋咬合のリスクを減少させ、子どもの口腔健康と全体的な発達をサポートできます。親や保護者がこれらの習慣を認識し、子どもの健康な生活習慣を育むことが、過蓋咬合予防の鍵となります。

まとめ

まとめ

ここまで噛み合わせが深い原因についてお伝えしてきました。
噛み合わせが深い原因の要点をまとめると以下の通りです。

  • 噛み合わせが深くなる原因は顎関節の異常、歯ぎしり、顎骨のバランス不良、生活習慣、遺伝など多岐にわたる
  • 噛み合わせが深いことにより起こる問題点は深い噛み合わせは顎関節症、歯の喪失、治療材料の破損、むし歯・歯周病のリスク増大、奥歯の摩耗を引き起こし、口腔健康に多大な影響を与える
  • 過蓋咬合の治療法は、主に「顎顔面矯正」、「ワイヤー矯正」、「マウスピース型矯正」などが挙げられる

これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
宮島 悠旗医師(宮島悠旗ブライトオーソドンティクス)

宮島 悠旗医師(宮島悠旗ブライトオーソドンティクス)

愛知学院大学歯学部卒業 / 東京歯科大学千葉病院にて臨床研修医終了 / 東北大学大学院歯学研究科口腔発育学口座顎口腔矯正学分野 助教 / 宮島悠旗ブライトオーソドンティクス起業 / 著書「国際人になりたければ英語力より歯を“磨け”-世界で活躍する人の『デンタルケア』-」(幻冬舎)出版 / 合同会社T&Y Connection設立 / ASIA GOLDEN STARAWARD(企業家賞)受賞 / 著書「歯並び美人で充実人生-幸せを呼ぶゴールデンスマイル-」(合同フォレスト)出版 / 株式会社オーティカインターナショナル認定講師 / 現在は宮島悠旗ブライトオーソドンティクス代表としてフリーランス矯正歯科医を行っている / 専門は矯正歯科(Invisalign®︎、小児矯正、Myobrace®︎、マルチブラケット、アンカースクリュー、PBMオルソ(光加速矯正装置))

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