歯列矯正治療では、矯正装置が外れたり、破損したりすること、噛み合わせが悪くなり、頭痛や肩こり、顎関節症などを引き起こすことがあること、治療中に痛みや違和感が生じること、治療後に歯並びが元に戻ってしまうことがトラブルとして起こり得ます。本記事では、歯列矯正とトラブルについて、以下の点を中心にご紹介します。
- 歯列矯正のトラブルとは
- 歯列矯正のトラブルの原因とは
- トラブルが起きた場合の対処法とは
歯列矯正のトラブルを知るために、ぜひ最後までご覧ください。
歯列矯正で起こり得るトラブル
- 抜歯の際に起こるトラブルとは?
- 抜歯は、からだの一部を傷つける処置であるため、注意が必要です。
抜歯によって起こるトラブルには、麻酔によるショック症状、抜歯後の腫れや痛み、親知らずの抜歯後に起こる頬の腫れ、持続的な痛み、神経麻痺、骨の破折などがあります。抜歯に伴うこれらのトラブルを予防するために、心身ともに良好な状態で受けることが重要です。
麻酔によるショック症状は、まれな症状であり、適切な麻酔の管理と監視が必要です。抜歯後の腫れや痛みは、一時的なものであり、氷や痛み止めなどを用いて対処することができます。ただし、親知らずの抜歯後に起こる頬の腫れ、持続的な痛み、神経麻痺、骨の破折などは、専門家の手技や設備が必要な場合があります。また、以下のトラブルについても留意してください。
抜歯矯正治療では、特に前歯の抜歯後に歯列を後方に移動させることで、口元が過度に引っ込むことがあります。この現象は、顔のプロファイルに影響を与え、特に側面から見たときの顔のバランスを変える可能性があります。
顔の形状や顎の構造を考慮して、抜歯の必要性とその影響を慎重に評価する必要があります。抜歯を伴う矯正治療では、抜歯スペースを閉じるために必要な時間や、歯列を整えるための追加の処置が必要になることから、治療期間が延長する可能性があります。
治療期間の延長は、精神的、経済的負担を増加させることになるため、治療期間とその過程についての理解と同意を得ることが重要です。抜歯による矯正治療後、口元の後退が顕著になると、ほうれい線が深くなることがあります。これは、顔の軟組織に対する支持が減少することにより、皮膚のたるみが生じるためです。特に中年以降の患者さんでは、皮膚の自然な弾力性が低下しているため、この現象が顕著に現れやすいです。治療前に患者さんの年齢や皮膚の状態を考慮し、抜歯の影響を抑えるためのアプローチを計画することが望ましいです。抜歯前に、歯科医との相談を重ね、自身の状態を正確に把握し、抜歯前後の注意点を理解することが大切です。また、抜歯後のケアも重要であり、適切なケアを行うことで、抜歯後のトラブルを防ぐことができます。抜歯に関しては、口腔外科医もしくは口腔外科専門の歯科医師の指導やアドバイスをしっかり受け、安心して受けることができるように心がけることが必要です。
- 抜歯を伴わない治療で起こるトラブルとは?
- 抜歯を伴わない歯列矯正治療(非抜歯矯正治療)は、歯を抜かずに矯正治療を行う方法です。非抜歯矯正治療にはいくつかのトラブルが関連することがあります。以下は、その代表的なものです。混み合った歯の配置:抜歯しないため、歯の配置が適切に調整されず、歯が混み合った状態が続くことがあります。
歯列アーチの拡大過剰:非抜歯矯正治療では、歯列アーチを拡大することが一般的ですが、過度に拡大されると、適切な咬み合わせが得られなくなり、顎関節症状や歯周組織への負担が増加することがあります。
歯の過剰な前方移動:前歯の拡大を行う場合、歯が過剰に前方へ移動し、適切な咬み合わせが得られないことがあります。これにより、歯周組織への負担が増加し、安定性が低下することがあります。
矯正治療期間の延長:抜歯を伴わない矯正治療は、歯の移動範囲が限られているため、治療期間が長引くことがあります。
治療後の安定性の低下:非抜歯矯正治療では、歯の移動範囲が限られるため、治療結果が安定しない場合があります。その結果、矯正治療後に歯が元の位置に戻るリスクが高まります。
歯根が唇側・頬側に移動することによるリセッション、歯肉退縮:非抜歯治療では、歯を動かす際に歯根が唇側や頬側に過度に移動することがあります。この結果、歯肉のリセッション(退縮)が生じることがあり、これは歯肉の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。歯肉退縮は、歯の敏感さの増加や、将来的に歯周病のリスクを高める可能性があります。
口元が出る:非抜歯治療において、特に下顎の前方への歯の移動は、口元が前に突出する原因となることがあります。これは、特に顎の成長が完了した成人において顕著になることがあります。口元の突出は、顔貌に影響を及ぼし、患者さんの自信や社会生活に影響を与える可能性があります。治療計画を立てる際には、顔貌の変化を予測し、十分に相談することが求められます。
最後臼歯の萌出障害:非抜歯治療を行う際にはスペースの確保が重要ですが、十分なスペースがない場合、最後の臼歯(第二大臼歯)の正常な萌出に障害が生じることがあります。 12歳頃に生えてくる永久歯で、食べ物をかみ砕いたり、すり潰したりする役割を持つ奥歯ですが、萌出障害により斜めに生えて横の歯に悪影響を及ぼしたり、そもそも生えてこなくなるケースがあります。
治療計画では、将来の歯の萌出を考慮し、必要に応じて早期の介入を行うことが推奨されます。このような問題を防ぐには、親知らずの抜歯を行えば防ぐことができます。問題は非抜歯矯正の治療方針で矯正治療を進めていて第二大臼歯の萌出障害が起きた場合です。
- むし歯や歯周病にかかることはありますか?
- むし歯と歯周病は、お口の中の細菌によって引き起こされる病気ですが、それぞれ異なる症状や影響をもたらします。
むし歯は、歯の表面を溶かし、歯の中に進行していく病気で、歯痛や歯の欠損を引き起こします。一方、歯周病は、歯肉の炎症や腫れ、出血、歯茎からの膿などを引き起こします。歯周病が進行すると、歯の支持組織が破壊され、歯が抜け落ちることもあります。
また、歯周病は、口腔内だけでなく全身にも悪影響を与えることがわかっています。歯周病が進行すると、炎症や細菌が全身に広がり、動脈硬化や脳卒中、心筋梗塞、糖尿病、認知症などのリスクを高めることがあります。そのため、歯周病は放置せずに治療することが重要です。
むし歯や歯周病は、定期的な歯科検診や適切な歯磨きなどの予防策を行うことが大切です。
- 後戻りが起こることはありますか?
- 歯科矯正治療を経た後に起こり得る「後戻り」は、治療によって得た美しい歯並びが元の状態に戻ってしまう現象です。矯正装置が取り外された後の歯やその周囲の骨がまだ安定していない状態であるため、歯が動きやすくなっている時期にしばしば発生します。
歯はこの不安定な期間において、本来の位置へ戻ろうとする特性を持ちます。また、後戻りを引き起こす別の主な原因は、保定期間中の保定装置(リテーナー)をしっかり装着しない点です。矯正治療は、歯を移動させる段階と、新しい位置で歯を固定する段階の2つの主要な部分で構成されています。新たに整えられた歯並びを維持し、安定させるためには、保定期間中にリテーナーの使用が不可欠です。
- 治療方針の変更等がトラブルになることはありますか?
- 治療方針の変更や不一致は、患者さんや家族にとって大きなストレスとなることがあります。
例えば、患者さんの病状が進行した場合、治療方針を変更する必要があることがあります。しかし、このような場合にも患者さんや家族とのコミュニケーションを欠かさずに行うことが大切です。
また、治療方針を決定する際には、医師や専門家の意見を聞くことも重要です。治療方針を決定するためのカンファレンスが行われることもありますが、患者さんが治療方針を決める際には、医師に相談することもできます。治療方針の変更や不一致が生じた場合には、患者さんや家族と医師とのコミュニケーションを密に行い、最善の選択肢を探り続けることが大切です。
なぜトラブルが起こるのか。トラブルの原因
- 歯列矯正によるトラブルの原因は何が考えられますか?
- 歯列矯正によるトラブルの原因は、多岐にわたります。
例えば、精密検査や予測に基づいた治療計画が、実際の歯を動かす過程でズレが生じてしまった場合や、予期しない歯の動きによって治療がうまく進まないことが挙げられます。
これは日本矯正歯科学会認定医ではない歯科医師が矯正治療を行っている場合に、起こる可能性が高いとされています。
また、歯科医師が不適切な矯正装置を使用した場合や、装置が適切に装着されなかった場合にもトラブルが生じることがあります。さらに、適切なメンテナンスが行われなかったり、患者が治療期間中に予定通りのケアを怠ったりした場合にも、トラブルが発生する可能性があります。
- 矯正装置の不良や破損がトラブルの原因となることはありますか?
- 歯列矯正において、矯正装置の不良や破損はトラブルの原因となることがあります。矯正装置を装着したことで痛みが生じたり、不快感を感じることがあるため、その対処方法に注意が必要です。また、装置を扱う際に指や舌で触れたり、力を加えたりすることがあるため、取り扱いにも細心の注意が必要です。
さらに、矯正治療中に必要な抜歯を行わなかった場合、矯正の働きが得られず、治療期間が延びることがあります。また、抜歯をしたものの、抜歯箇所に問題がある場合もあり、矯正の働きが得られないことが報告されています。
これらのトラブルを防ぐためには、歯科医師とのコミュニケーションを大切にし、治療計画や装置の取り扱いについて十分に理解することが重要です。また、定期的なメンテナンスを行い、装置の状態を確認することもトラブル予防につながります。
- 歯列矯正によるトラブルのリスクを減らすために、何をすべきですか?
- 歯列矯正治療を受ける際に、トラブルを減らすためにはいくつかの方法があります。
まず、歯科医師の指示に従うことが大切です。治療計画に合わせて装置の着脱やクリーニングなどを行うことで、治療の効果を最大限に引き出すことができます。また、歯科医師とのコミュニケーションを大切にし、治療に関する疑問や不安を遠慮せずに相談することも重要です。歯科医師は患者さんの要望や症状に合わせて治療を進めるため、十分な情報を共有することでトラブルを未然に防ぐことができます。
また、治療の進行状況を定期的に確認することも大切です。歯科医師からのアドバイスや指示に従い、定期的に通院して治療の進捗状況を確認することで、トラブルを予防することができます。さらに、矯正治療について十分に理解することも重要です。治療期間や装置の種類、ケア方法などを理解することで、治療に対する不安や疑問を解消することができます。
トラブルが起きた場合の対処法
- トラブルが起きた場合、どのような行動が必要ですか?
- まずは自分自身を落ち着かせるために、深呼吸をしたり、時間をおいて冷静になることを心がけましょう。次に、状況を把握し、問題の解決に向けて具体的な行動を起こすことが重要です。また、トラブルが起きた場合は、関係者とのコミュニケーションを大切にし、相手の意見を尊重することも大切です。
さらに、トラブルに遭遇した場合は、問題の解決に向けて自分自身が行動することが重要です。自分で解決できない場合は、第三者機関に相談することもできます。また、トラブルが解決した後は、反省し、同じトラブルが起こらないように改善策を考えましょう。このように、トラブルが起こった場合には冷静に対処し、解決に向けて具体的な行動を起こすことが大切です。
編集部まとめ
ここまで歯列矯正とトラブルについてご紹介しました。
歯列矯正とトラブルについてまとめると、以下の通りです。
- 歯列矯正のトラブルには、抜歯によるものと抜歯以外のものが存在する
- 歯列矯正のトラブルの原因には、装置の不良や定期的なメンテナンスを行っていないことなどが挙げられる
- トラブルが起きた場合は、まず落ち着いて医師に相談することが大切である
治療には、さまざまなトラブルが起こる可能性があります。トラブルを防ぐためにも、疑問がある場合は医師に相談し、定期的な検診やクリーニング、適切な歯磨きやケアをしてトラブルを減らせるようにしましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。