マウスピース型矯正で前歯だけを治療するデメリットとは？メリットや費用・治療期間の目安も併せて解説

前歯の歯並びが気になってしまい、話すときや笑うときにためらってしまう方は少なくありません。目立たせずに歯並びを改善するために、マウスピース型の器具で歯列矯正を検討する方もいるでしょう。
しかし、マウスピース型矯正で前歯だけを治療する場合、どのようなデメリットがあるのでしょうか？

本記事ではマウスピース型歯列矯正で前歯だけ治療するデメリットについて、以下の点を中心にご紹介します。

• マウスピース型歯列矯正で前歯だけ治療するデメリット
• マウスピース型歯列矯正で前歯だけ治療するメリット
• マウスピース型歯列矯正で前歯だけを治療する際にかかる費用と期間

マウスピース型の歯列矯正治療を理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

マウスピース型矯正は前歯だけ治療できる？

マウスピース型歯列矯正は、透明なマウスピースを使用して歯を移動させる治療法です。
全体的な歯並びの改善だけでなく、前歯のみを対象とした部分的な治療も行うことが可能とされています。
従来のワイヤー矯正でも前歯のみの治療は可能でしたが、装置が目立つことが気になる方にとって、透明で目立ちにくいマウスピース型矯正はメリットも感じられるでしょう。

また、後程詳しく解説しますが、前歯のみの歯列矯正は、上の前歯や下の前歯など、部分的な治療に限られるため、治療期間が短くて済む傾向があり、費用も抑えられる点が特徴です。

しかし、前歯だけを治療する場合には、考慮すべき点がいくつかあります。例えば、すべての症例に適応できるわけではなく、適応可否は歯科医師の診断が必要です。

マウスピース型矯正で前歯だけ治療できる症例

症例によっては、マウスピース型歯列矯正で前歯だけ治療できます。なかでも、前歯の軽度から中等度の歯並びの乱れには効果が期待できるでしょう。
具体的には、以下のような症例に対応することが可能とされています。

• 出っ歯
• すきっ歯
• 軽度の歯列の乱れ
• 軽度の八重歯

また、以前に歯列矯正を受けた方でも、歯の位置がもとに戻ってしまった場合には再度治療を行えます。

これらの症例では、マウスピース型歯列矯正を用いることで、全体的な歯列矯正よりも短期間で目標を達成できる可能性があります。ただし、個々の状況によって適応が異なるため、医師との相談が不可欠です。

マウスピース型矯正で前歯だけの治療が難しい症例

マウスピース型歯列矯正は、すべての方が利用できるわけではありません。ここでは、マウスピース型矯正で前歯だけの治療が難しい症例を詳しく解説します。

奥歯の噛み合わせが悪い

奥歯の噛み合わせが悪い場合、気になる部分が前歯だけであっても、単体での治療は難しいことがあります。
噛み合わせの問題は、全体的な歯列のバランスに影響を与えるため、部分的な治療では不十分になるでしょう。
奥歯の位置や角度が前歯に影響を及ぼしている場合、全体的な歯列矯正が必要となることがあります。

抜歯が必要

歯列矯正を行う際に、抜歯が必要な場合も前歯だけの治療が難しいことがあります。 前歯を理想的な位置に移動させるスペースを確保するために、抜歯を必要とする場合、全体的な歯列矯正が求められます。
部分的な治療では、抜歯後のスペースを効果的に利用できないことがあります。

また、抜歯を必要するケースでは、マウスピース型矯正ではなくワイヤー矯正が用いられる傾向があります。

前歯がインプラント

前歯がインプラントである場合、マウスピース型矯正での治療が難しいことがあります。インプラントは顎の骨に埋め込まれて固定されており、天然歯にある歯根膜が存在しないからです。

歯根膜は歯と骨の間でクッションの役割を果たし、矯正治療で歯を動かすために必要な組織です。しかし、インプラントには歯根膜がないため、天然歯のように動かせません。そのため、前歯にインプラントが入っている場合、マウスピース型矯正で前歯を動かすことができず、歯列矯正が難しくなります。

しかし、インプラントの位置や本数によっては、ほかの歯を部分的に矯正できる場合もあります。例えば、インプラントの位置的に治療目標を達成できない症例以外はむしろインプラントが絶対的な固定源として有効です。

矯正治療を検討する際は、インプラントの有無を歯科医師に伝え、治療法を相談しながらインプラントの存在を考慮した治療計画を提案してもらいましょう。

重度の歯周病

重度の歯周病がある場合、前歯だけのマウスピース型歯列矯正が困難になることがあります。歯周病が進行すると、歯を支える骨や歯周組織が著しく弱くなり、歯の移動に必要な力を加えることが難しくなるからです。
また、歯周ポケットが深くなると、マウスピースが適切にフィットしない可能性もあります。

重度の症例

歯並びが過度に悪い場合、前歯だけのマウスピース型歯列矯正では十分な改善が得られないことがあります。
例えば、歯の位置や角度が大きく乱れている場合、単に前歯を動かすだけでは適切な噛み合わせや見た目を実現できない可能性があります。また、顎の骨格に問題がある場合、前歯の位置を変えても根本的な問題は解決されません。

マウスピース型矯正で前歯だけ治療するデメリット

マウスピース型歯列矯正で前歯だけを治療することは、見た目の改善が得られる魅力的な選択肢です。しかし、この方法にもいくつかのデメリットがあります。
ここでは、マウスピース型歯列矯正で前歯だけを治療する際に考慮すべきデメリットを詳しく解説します。

歯を削る場合がある

マウスピース型歯列矯正で前歯だけを治療する場合、歯を削る必要が生じることがあります。これは、歯と歯の間のスペースを確保するために行われる処置です。歯を削ることで、マウスピースがより効果的に機能し、歯の移動をスムーズに行えます。

しかし、歯を削ることには慎重な検討が必要です。健康な歯質を削ることになるため、将来的に歯の強度や感覚に影響を与える可能性があります。削った部分はもとに戻せないため、矯正治療のために健康な歯を削る必要があるかどうか、よく考慮した方がよいでしょう。

理想の歯並びにならないこともある

マウスピース型歯列矯正で前歯だけを治療する場合、理想的な歯並びが得られないこともあります。これは、前歯の位置が奥歯の位置や全体的な歯列のバランスに影響を受けるためです。

前歯だけを移動させても、奥歯の位置が適切でない場合、噛み合わせのバランスが崩れる可能性があります。また、顎の骨格に問題がある場合、理想的な歯並びにするためには、全体的な歯列矯正が必要になることがあります。

マウスピースを長時間着用しなければならない

マウスピース型歯列矯正の成功には、継続する力が必要です。マウスピースを1日20時間以上着用することが求められているからです。これは、食事や歯磨き以外の時間はほぼ常にマウスピースを装着する必要があることを意味します。

長時間の着用は、日常生活に影響を与える可能性があります。例えば、会話や表情の変化に若干の制限が生じることがあります。また、マウスピースの着脱や清掃に時間がかかるため、生活リズムの調整が必要になるでしょう。

着用時間が不十分な場合、治療効果が得られなかったり、治療期間が延長したりする可能性があります。そのため、自身の自己管理能力と強い意志が求められます。

噛み合わせの治療はできない

マウスピース型歯列矯正で前歯だけを治療する場合、噛み合わせの問題の解決は困難です。噛み合わせは、前歯だけでなく奥歯を含む全体的な歯列のバランスによって決まるためです。

前歯の位置を変えても、奥歯の噛み合わせが適切でない場合、咀嚼や顎に問題が生じる可能性があります。
噛み合わせの問題がある場合は、全体的な歯列矯正や、場合によっては外科的処置を含む包括的な治療が必要になることがあるので、まずは医師と相談しましょう。

マウスピース型矯正で前歯だけ治療するメリット

マウスピース型歯列矯正で前歯だけを治療することには、いくつかのメリットがあります。例えば、全体的な歯列矯正と比べて、費用面や時間的な負担が軽減されるだけでなく、日常生活への影響も少ないのが特徴です。
ここからは、マウスピース型歯列矯正で前歯だけを治療する際のメリットを詳しく解説します。

治療費を抑えられる

マウスピース型歯列矯正で前歯だけを治療する場合、全体的な歯列矯正と比べて治療費を抑えられることがメリットのひとつです。前歯のみを対象とするため、使用するマウスピースの数が少なくなり、それに伴い製作費用も抑えられます。

また、治療期間が短くなることで、通院回数も減少し、結果的に総治療費が低く抑えられる傾向にあります。ただし、具体的な費用は個々の症例によって異なります。歯の移動量や治療の複雑さによって、必要なマウスピースの数や治療期間が変わってくるためです。

追加の処置が必要になる場合もあるため、初診時に詳細な見積もりを確認しましょう。

治療期間が短い

マウスピース型歯列矯正で前歯だけを治療する場合、全体的な歯列矯正と比べて治療期間が短くなることもメリットです。前歯は動きやすい歯であり、また限られた範囲の治療であるため、短期間で目に見える改善が得られやすいです。

前歯だけの治療では6ヵ月〜1年程度で完了します。2年以上かかることもある歯列矯正と比べるとかなり短い期間で、負担も軽減されるでしょう。

ただし、治療期間は、歯の移動量や自身のマウスピース装着時間によっても変わってきます。予想以上に時間がかかる場合もあるため、柔軟な心構えを持つことが大切です。

矯正装置が目立ちにくい

マウスピース型歯列矯正の大きな特徴は、装置が目立ちにくいことです。透明なプラスチック製のマウスピースを使用するため、金属製のワイヤーやブラケットを使用する従来の歯列矯正と比べて、外見上の影響が少ないです。

特に、前歯だけの治療の場合、マウスピースがさらに目立ちにくくなります。前歯は人目につきやすい部分ですが、透明なマウスピースであれば、気付かれにくいでしょう。また、取り外し可能なため、重要な会議やイベントの際には一時的に外すこともできます。

お手入れしやすい

マウスピース型歯列矯正は、お手入れがしやすいことも大きなメリットです。特に前歯だけの治療の場合、口腔衛生の維持が容易になります。

マウスピースは取り外し可能とされているため、食事や歯磨きの際に外せます。これにより、従来の固定式歯列矯正装置と比べて、食べかすが装置に詰まるリスクが低くなります。また、歯ブラシや歯間ブラシを使用して歯磨きができるため、むし歯や歯周病のリスクも軽減されます。

マウスピース自体のお手入れも簡単です。専用の洗浄剤を使用したり、ぬるま湯でやさしく洗ったりするだけで清潔に保てます。ただし、熱湯や強い洗剤の使用は避け、マウスピースの変形や劣化を防ぐことが大切です。

マウスピース型矯正で前歯だけを治療する際にかかる費用と期間

マウスピース型歯列矯正で前歯だけを治療する場合、全体的な歯列矯正と比べて費用や期間が抑えられることが魅力の一つです。しかし、具体的にどの程度の費用がかかり、どれくらいの期間を要するのかは、気になるところです。

ここからは、マウスピース型歯列矯正で前歯だけを治療する際の費用と期間を詳しく解説します。

治療費

マウスピース型歯列矯正で前歯だけを治療する場合の費用は、30万〜80万円程度とされています。この価格帯は、全顎歯列矯正の費用が50万〜150万円程度なので、抑えられていることがわかります。

費用の内訳としては、初診料、検査費用、マウスピースの製作費、定期的な調整費用などです。また、歯科医院によっては、治療後のリテーナー（保定装置）の費用も含まれることがあります。

治療費の支払い方法には、一括払いのほかに分割払いを選択できる歯科医院も増えています。医療ローンを利用できる場合もあるため、支払い方法については事前の相談をおすすめします。

治療期間

マウスピース型歯列矯正で前歯だけを治療する場合の期間は、6ヵ月〜1年程度とされています。これは、全顎歯列矯正の平均的な治療期間が1年半〜2年程度なので短い期間なことがわかります。

治療期間は、歯の移動量や年齢、普段のマウスピースの装着時間などで変動します。治療の進行状況に応じて、当初の予定より期間が延びることもあるので注意です。また、治療後もリテーナーが必要とされ、これは数ヵ月〜数年続くことがあります。

まとめ

ここまで、マウスピース型矯正で前歯だけを治療するデメリットについてお伝えしてきました。 マウスピース型矯正のデメリットについての要点をまとめると以下のとおりです。

• マウスピース型歯列矯正で前歯だけ治療するデメリットは、歯を削らなければならない場合があること、理想の歯並びにならないこともあること、マウスピースを長時間着用しなければならないことなど
• マウスピース型歯列矯正で前歯だけ治療するメリットは、治療費を抑えられる、治療期間が短い、矯正装置が目立ちにくいなど
• マウスピース型歯列矯正の費用は30万〜80万円程度で、治療期間は6ヵ月〜1年程度

自身にあった治療を受け、歯や口内の健康を維持しましょう。
本記事が少しでもお役に立てれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。