噛み合わせ

歯列矯正中にうまく噛めない・噛み合わせに違和感がある場合の原因や対処方法を解説

歯列矯正中にうまく噛めない・噛み合わせに違和感がある場合の原因や対処方法を解説

歯列矯正と聞くと、歯並びを整え見た目をきれいにする治療法と考える方も少なくないでしょう。見た目を整えることも治療の目的ですが、、第一の目的は噛み合わせをよくすることです。

歯列矯正では歯を移動させ噛み合わせを改善させますが、歯を動かしていく過程で痛みが起こったり噛み合わせがうまくいかなかったりすることがあります。

うまく食べ物が噛めないと悩む方も少なくありません。本記事では、歯列矯正中にうまく噛めない・噛み合わせに違和感がある場合の原因と対処法を解説します。

歯列矯正中にうまく噛めない・噛み合わせに違和感がある原因

診察

歯列矯正中に食べ物をうまく噛めない原因を教えてください。
歯列矯正中に食べ物をうまく噛めないのは、矯正装置を歯に装着するためです。歯列矯正にはワイヤー矯正とマウスピース型矯正の2種類があります。
マウスピース型矯正の場合は食事のときに矯正装置を外すことができますが、ワイヤー矯正は取り外しができません。そのため、食べているときに違和感を覚えることがあります。しかし、時間の経過とともに慣れてくると気にならなくなってきます。装着に慣れるまではなるべくやわらかいものを中心に食べる、食べ物を小さく切ってゆっくりと食べるようにするといいでしょう。
避けた方がいい食べ物はありません。気になる方はフランスパンやお煎餅のような固いもの、お餅のような粘着性のある食べ物は避けるといいでしょう。ただし、固いものや粘着性のある食べ物を気にせずに食べている患者さんもいるため、個人差があります。
歯列矯正を始めてから奥歯に違和感があるのですが……。
歯列矯正は、歯を移動させる治療となるので歯列矯正中は違和感が出ます。片側しか噛み合わせが合っていない、歯が浮いたような感じがするなどの違和感を覚えることがありますが、これは一時的なものです。治療が進むにつれて、違和感は解消されていきます。
特にマウスピース型矯正の場合、奥歯に違和感を覚えるケースが少なくありません。マウスピースは歯に被せるため、マウスピースの厚みの分、奥歯が歯茎に沈み込んでしまうことがあるためです。
歯ぎしりや食いしばりの癖がある方は奥歯が沈み込んでしまうことが少なくないため、注意が必要です。奥歯が沈み込んだことで噛み合わせに違和感を覚える場合は、奥歯を引っ張りあげる処置をすることもあります。
矯正装置に慣れてくれば噛みにくさや違和感はおさまりますか?
矯正装置に慣れてくれば、噛みにくさや違和感は改善します。個人差はありますが、1週間程度で落ち着くでしょう。治療を始めてすぐのときや矯正装置を交換もしくは調整したときは、歯が動きやすいため違和感を覚えやすいです。
ワイヤー矯正はワイヤーの引っ張る力を利用して歯の移動を促すために、違和感や噛みにくさを感じることが少なくありません。事前のカウンセリングで歯の状況を見ながら矯正装置のタイプを決めます。
歯を大きく移動させなければいけないときはワイヤーの力を強めなくてはいけないため、違和感も大きくなるでしょう。経過を見ながらワイヤーの力も弱めていくので、歯並びが改善するにつれ違和感は少なくなっていきます。違和感や噛みにくさがなかなか改善しない場合は、歯科医師に相談しましょう。
うまく噛めず噛み合わせの違和感が続く場合、歯列矯正は失敗ですか?
うまく噛めない、噛み合わせの違和感が続く場合、歯列矯正が失敗したと思う方も少なくありません。しかし、一概に失敗とは言い切れないです。
歯列矯正治療で、最初に感じる噛み合わせによる違和感は徐々に和らいでいきます。ただし、個人差があるので違和感の感じ方も人それぞれです。人によっては違和感を長く感じるケースもあるでしょう。気になる症状がある場合はまず、歯科医師に相談してください。
矯正装置に問題がある場合は、調整をすることで改善できます。なかなか違和感が抜けない場合は、ほかの矯正装置に変更して治療を行うことも可能です。
ただし、お口の中の状態や歯をどれくらい移動させるかによって、選択できる矯正装置が限られることもあります。矯正治療に不安な点や気になる点があれば、ほかの歯科医院に助言を求めるセカンドオピニオンを利用するのも一つの方法です。

歯列矯正中にうまく噛めない・噛み合わせに違和感がある場合の対処法

マウスピースはめる人

自分でできる噛み合わせへの対処法はありますか?
噛み合わせに違和感がある場合は歯科医院に相談してください。患者さん自身でできる対処法は、食べやすい物を食べることと矯正装置に不具合が生じていないか確認することです。
噛み合わせがずれているときはしっかりと噛むことができないため、固い物は食べにくいです。無理して固い物を食べる必要はないので、おかゆやうどんなどのやわらかい物を食べるとよいでしょう。
矯正装置が外れていたり装着時間が十分でなかったりした場合、噛み合わせに影響が出ることがあります。噛み合わせが崩れたことで歯ぎしりが起こることもあるため、マウスピース型矯正をしている方は、マウスピースに穴が開いていないか確認してください。矯正装置に不具合が生じている場合や外れている場合も、速やかに歯科医院に相談しましょう。
歯科医院に相談する目安を教えてください。
歯列矯正中にうまく噛めなかったり噛み合わせに違和感を覚えたりするのはある程度は仕方ないことで、しばらくすれば落ち着きます。しかし、噛み合わせに違和感がある状態が長く続くときは歯科医院に相談してください。違和感がある状態を長く放置しているとトラブルが起こることも少なくありません。
一部の歯や顎に負担がかかったり、ストレスから歯ぎしりや食いしばりをしてしまったりすることもあります。歯にダメージを与えたり顎関節症を引き起こしたりするリスクもあるため、気になる症状があるときはまず、相談するようにしましょう。少しでも不安や悩み、疑問点を感じる場合は歯科医院に相談することがおすすめです。
歯科医院ではどのような対応をしてもらえますか?
噛み合わせの違和感がある場合、経過観察が主となるでしょう。ただし、なかなか違和感が消えない、痛みがあるなどの訴えがある場合は検査を行います。精密検査ではレントゲン撮影で、歯列矯正が順調に進んでいるかどうかを確認します。
治療がうまくいっていない、矯正装置が合っていないなどの場合は矯正治療方法を変えることもあるでしょう。痛みがある場合は、歯茎の腫れなどの状態を確認して痛み止めを処方し、緩和治療を行います。

歯列矯正の対象の症例や治療の種類

矯正中の人

歯列矯正が必要となる噛み合わせの症例を教えてください。
歯列矯正が必要な噛み合わせの症例は以下のとおりです。
  • 出っ歯(上顎前突)
  • 受け口(下顎前突)
  • 八重歯・乱ぐい歯
  • 開咬

受け口は、歯科医院の指導によるトレーニングで改善する可能性がありますが、出っ歯や八重歯、開咬は歯列矯正の対象となります。受け口の場合は上の歯を前に出した後に必要に応じて歯列矯正を行います。開咬は上下の歯がうまく閉じない状況で、幼い頃の指しゃぶりが原因となることもあるようです。

歯列矯正の治療の種類を教えてください。
歯列矯正の治療の種類は、ワイヤー矯正とマウスピース型矯正の2種類です。ワイヤー矯正は歯の表面にブラケットと呼ばれる装置をつけ、ワイヤーで繋げる治療法です。ワイヤーの力を利用して歯列矯正を行うので、どのような症例にも対応できます。しかし、矯正装置が目立ちやすいというデメリットがあります。
マウスピース型矯正は、マウスピースと呼ばれる矯正装置を嵌めて行う治療法です。矯正装置が透明なので目立ちにくく、食事のときや歯磨きのときは取り外しができます。しかし、歯の移動量が多い場合はマウスピース型矯正では対応が難しいこともあり、ワイヤー矯正と併用して行うことも少なくありません。
いずれの場合も、歯列矯正治療を行う前に適切な検査や診断を行って、治療方針を決定します。
歯列矯正の治療期間はどのくらいですか?
歯列矯正の治療期間は患者さんの年齢やお口の状態、使用する矯正装置によって変わってきます。例えば、ワイヤー矯正の場合は約2~3年です。後戻りを防ぐために、歯列矯正が終わった後はリテーナーを装着しますが、この期間は約1~2年です。保定期間も含めると、3年以上かかることになります。
乳歯のある状態から歯列矯正を行う場合は、さらに治療期間が長くなることも少なくありません。部分的に矯正を行う部分矯正の場合は、治療期間は短いです。

編集部まとめ

歯を見せて笑う人

歯列矯正中は食事がしづらかったり噛み合わせに違和感を覚えたりすることがあります。矯正装置に慣れていないために起こるトラブルなので、慣れてくると違和感は落ち着いてくるでしょう。

歯列矯正の期間は個人差があるため、患者さんによってまちまちです。根気が必要な治療であり、年単位で考えなくてはいけないケースもあります。

歯がなかなか移動してくれないことも多く、患者さんにとって不安や不満の気持ちが溜まるケースも少なくありません。

気になる症状があったり、疑問や不安があったりする場合はまず、歯科医院に相談しましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
木下 裕貴歯科医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

木下 裕貴歯科医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

北海道大学歯学部卒業 / 医療法人社団天祐会 副理事長 / 専門はマウスピース矯正、小児矯正

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