噛み合わせの治療といえば、ワイヤーやマウスピースを使うイメージがありますが、ストリッピングという歯を削る治療法があります。
少し不安に思う方もいるかもしれませんが、歯を削ることは噛み合わせを良くするために必要な治療です。
この記事では、なぜ歯を削る必要性があるのか詳しく解説します。歯列矯正を考えている方や治療中の方にとって役立つ知識となれば幸いです。
噛み合わせが悪くなる原因・治療方法
- 正しい噛み合わせのセルフチェック方法を教えてください。
- 正しい噛み合わせは上の歯1本に対し、下の歯2本が噛み合っている状態です。お口を「い」と発音する状態にしたときに、顔の中心と上下の歯がまっすぐ(平行)であることも大切です。割りばしを奥歯で噛み、水平になることや、奥歯をカチカチと噛んだときに左右にばらつきがないこともポイントです。お口を大きく開けたときに縦に指が3本入らなかったり、顎に痛みを感じたりする場合は顎の関節に異常が起きている場合があります。
永久歯が生える時期には、噛み合わせが悪く見えることもありますが、多くの場合、顎の骨のなかに歯が埋まっているだけで正常な状態です。万が一噛み合わせが心配な場合は、歯科医院に相談しましょう。
- 噛み合わせが悪くなる原因を教えてください。
- 頭蓋骨に固定されている上顎と、咬筋や側頭筋など多数の筋肉により下顎は釣り下がっています。これらの筋肉が伸び縮みすることで、顎関節を中心に下顎が動きます。噛み合わせには、歯・筋肉・顎関節・中枢神経系が関与するため、どれか1つでも異常があると問題を引き起こすのが特徴です。
幼稚園児や小学生になっても指しゃぶりの癖がある・片側だけの咀嚼・頬杖をつく・歯の欠損・合わない義歯の使用・舌で前歯を押す・むし歯・外傷なども原因となります。また、歯の大きさや隙間のアンバランスなど遺伝による原因も挙げられます。
- 噛み合わせが悪いとどのようなリスクがありますか?
- 噛み合わせが悪いと顎の正常な成長や発育が阻害され、ますます歯並びや噛み合わせが悪くなります。噛み合わせは食事で咀嚼する際に重要になりますが、咀嚼の効率が悪くなり、接触している歯だけに負担がかかってしまいます。
会話では発音が難しくなったり、唇が閉じにくい・お口が乾きやすい・唾液が飛びやすいなど多くの悪影響を及ぼしたりすることも特徴です。口腔内だけではなく、頭痛や肩こり、消化器への負担が生じることもあります。また、むし歯や歯周病にもなりやすいため、歯の寿命が短くなる可能性もあります。
- 噛み合わせの治療方法を教えてください。
- 一般的な噛み合わせの治療として歯列矯正を行います。歯列矯正は歯を動かして顎の位置や大きさを調整するため、治療には年単位の期間が必要です。
治療には歯の表面に装置を付けてワイヤーを通して固定する方法と、患者さん自身で取り外しのできる装置を使う方法があります。歯列矯正装置を使用し始めたばかりの時期や調整後は痛みを感じたり、食事制限はありませんが、硬い物が噛みにくかったりすることがあります。ただし、キャラメルやガムなどくっつきやすいものは歯列矯正装置を壊す可能性があるので控えましょう。
歯列矯正装置を使用していると、むし歯のリスクが高まるため、普段よりも丁寧に磨くことが大切です。歯並びの程度・歯の萌出方向や位置・顎の大きさや形から、歯を抜く場合もあります。
歯列矯正の痛みには個人差がありますが、2日程度で治まることが多いです。通院頻度は歯を動かしている時期だと歯列矯正装置を調整するため、1ヵ月に1回の場合が一般的ですが、歯科医師の指示に沿いましょう。治療が終わっても後戻りがしないよう、数ヵ月に1回の通院で噛み合わせを診てもらう必要があります。
噛み合わせの治療で歯を削ることはある?
- 歯を削らないで噛み合わせの治療を受けることはできますか?
- 歯を削らずに噛み合わせの治療を受けることは可能です。
噛み合わせの問題は、歯そのものだけでなく身体のバランスや口腔内の状況に影響されることが多く、必ずしも歯を削る治療が必要とは限りません。
身体の歪みが原因で噛み合わせに違和感が生じている場合や歯科金属により発生する口腔内電流が原因で咀嚼筋(側頭筋・咬筋)が緊張し、噛み合わせに異常が生じている場合は、歯を削らなくても噛み合わせの異常が改善することが少なくありません。
- 噛み合わせの治療で歯を削らなくてはいけないケースを教えてください。
- 噛み合わせの治療において、歯を削らなくてはならないケースも存在します。噛み合わせの状態や症状の深刻度に応じて選ばれ、ストリッピングといい、歯と歯の隙間を少し削る治療です。
歯を削るのはむし歯治療で行うイメージが強いですが、むし歯治療よりも削る厚さ(量)は少なく、歯の側面を少し削るだけの治療です。
- 治療のために健康な歯を削るとデメリットがありますか?
- 健康な歯を削ることのデメリットとして、1つ目は健康な歯でありながら削らなければならないことへのストレスを感じる可能性があることです。治療前に歯科医師から十分な説明を受けたうえで治療に臨む必要があります。
2つ目は、削った歯はもとに戻らないため、治療をしても隙間が完全に埋まらない可能性があることです。歯科医師も具体的に治療計画を立ててくれますが、うまく歯の移動が進まない場合もあります。
3つ目は知覚過敏を引き起こす可能性があることです。歯を削ることでエナメル質が薄くなるため、冷たい物などを摂取した際に刺激を感じることもあります。基本的には削っても安全性を保てる範囲で治療を行いますが、心配な場合は事前に歯科医師から十分な説明を受けましょう。
噛み合わせの治療で歯を削る場合
- どのような方法で歯を削るのですか?
- 削り方は3種類あり、1つ目は歯と歯の間にやすりを入れて削っていく方法です。
手動で削る方法や、エンジンを使って削る方法があり、歯科恐怖症の患者さんで、エンジン音で恐怖心が高まる場合には手動で行います。やすりは正確に削る量を調整することが可能です。
2つ目はタービンという機械にバーという回転切削器具を付けて削る方法です。むし歯治療にもバーは使いますが、違いとしては細いバーを使って削ります。
3つ目はディスクという丸い円盤の機械で歯の側面を削る方法です。タービンもバーも音が出るので、苦手な人にとっては苦痛に感じる場合もあります。
- 歯を削るときは痛みがありますか?
- 3種類の削り方を紹介しましたが、いずれも象牙質まで削らず、エナメル質の表面しか削らないので、痛みは感じません。
編集部まとめ
噛み合わせの治療で歯を削ることに不安を感じる方もいるかもしれませんが、適切な治療を受けることで噛み合わせや歯並びが整い、長期的な口腔内の健康につながります。
また治療期間が長いことから、その時々の治療経過で疑問や不安を感じる可能性があります。噛み合わせの治療は見た目だけではなく、健康面にも影響を与える治療です。
治療前だけでなく、治療中も適宜歯科医師と十分に相談し、納得のいく治療を進めましょう。この記事も治療をサポートする一助となれば幸いです。
参考文献