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歯列矯正で乱杭歯(叢生)を治療できる?乱杭歯(叢生)の原因・治療方法も解説

歯列矯正で乱杭歯(叢生)を治療できる?乱杭歯(叢生)の原因・治療方法も解説

乱杭歯を放置するとコンプレックスの原因となるだけでなく、むし歯や口臭の原因といったさまざまなリスクがあります。

場合によっては二度と生えてこない大事な永久歯を失ってしまうことにもつながるので、乱杭歯は放置できません。

この記事では乱杭歯の原因やどのようなリスクがあるのかだけでなく、その治療法や期間を細かく解説します。

歯列矯正で乱杭歯(叢生)を治療できる?

治療する歯科医師と歯科衛生士

乱杭歯(叢生)は歯列矯正で治療ができます。

歯列矯正とは歯に直接器具を取り付けて歯並びや噛み合わせを整える治療法です。

歯を削らずに治せるのが特徴で、顎の骨に異常がない限り年齢に関係なく治療が可能です。

器具に慣れるまで少し時間がかかったり、年単位で治療したりする必要がありますが、見栄えやコンプレックスの解消といった歯に対する意識の高まりもあり需要は増えています。

乱杭歯(叢生)の原因

八重歯

叢生とは本来ならきれいに生えてくるはずの歯が、なにかしらの原因がありバランスが崩れた状態で生えてくる現象です。

そのため歯が正しい方向に生えず、歯と歯が重なり合った状態になります。

これには顎が小さいケースや、逆に顎に対して生えてくる歯が大きいなどいくつかの原因があります。

叢生は一般的に乱杭歯とも呼ばれ噛み合わせの悪さが原因となり歯を失う大きなリスクです。

ここではどのような原因で乱杭歯になるのか解説します。

顎が小さい

顎が小さく歯の生えてくるスペースが足りないのが原因の一つです。

これには遺伝による先天的なものと食生活による後天的なものがあります。

骨格は遺伝するケースが高く、親御さんの顎が小さい場合はそうでない場合に比べてお子さんの顎が小さくなる可能性が高くなります。

次に、食生活が影響する場合です。

顎はおよそ15歳くらいまで成長を続けますが、やわらかい食べ物を中心とした食生活を続けていると顎が発達せず成長が終わります。

最近は噛まずに食べられる食品やお菓子も増えており、意識的に噛む動作を行わないと昔より顎が発達する機会が少なくなります。

歯が大きい

顎は正しい発達をしているのに、生えてくる永久歯のサイズが大きい場合があります。

一般的に前歯の横幅の平均値は男性で8.6mm、女性で8.5mmです。

前歯の横幅が9mm近くあると、前歯が大きい印象がもたれるでしょう。

前歯の大きさも遺伝が影響している可能性が高いとされ、親御さんの前歯が大きければお子さんの前歯も大きい可能性が高いです。

また前歯が前に出ているため相対的に大きく見えるケースもあります。

単純に大きいのか相対的に大きいのかで治療法も変わるため、ご自身で判断せず歯科医師に相談しましょう。

歯の生え変わりがうまくいかなかった

抜けた乳歯

乳歯の生え変わりは早い方で5歳前後、なかには中学生にあがってから生え変わる方もいます。

しかしなかには生え変わらない場合があり、これは先天的なものと後天的なものがあります。

先天的なものは永久歯が形成されない(先天的欠如歯)ケースで、永久歯が生えてこないため乳歯が抜け落ちません。

およそ10人に一人が先天性欠如があるといわれており、これは男性より女性に多い傾向です。

乳歯のまま残った歯は永久歯と比べ強くありません。

そのため大人になってからなにかの拍子に乳歯が抜けると隙間が生まれ、ほかの歯とのバランスが悪くなり歯並びが悪くなります。

また後天的なものは永久歯の生える準備が整わないうちに乳歯が抜けてしまい、空いたスペースに周りの歯が移動して永久歯の生える場所がなくなるケースです。

顎のサイズが普通でも、通常より永久歯が大きかったり生える本数が多かったりすると起こりやすくなります。

いずれの場合も将来的に歯並びが乱れる可能性があります。

乱杭歯(叢生)を放置するリスク

歯の治療やリスクの予防のイメージ

乱杭歯を放置するとさまざまなリスクが生まれます。

このため欧米では乱れた歯並びを整えることは当然とされ、歯列矯正は一つのステータスとして考えられるほどです。

歯がアーチ状にきれいに並んでいない乱杭歯はデコボコが多く、お手入れの際に死角になる部分が増えてしまい歯周病や口臭になりやすいリスクがあります。

また、噛み合わせの悪さによって消化不良を招き、胃腸に悪影響を及ぼす恐れもあります。

見た目がよくないのもリスクの一つです。

ここからは乱杭歯を放置するとどの様なリスクがあるのかを解説します。

むし歯や歯周病の原因になる可能性

乱杭歯を放置するとむし歯や歯周病の原因になるリスクがあります。

乱杭歯は通常の歯並びに比べてデコボコが多く、歯磨きをしても歯の隙間や重なった部分の磨き残しが多くなり汚れが溜まるなど歯垢が定着する大きな原因です。

これによりむし歯菌が増え、むし歯になりやすくなります。プラークによって、歯周病のリスクも高くなるでしょう。

乱杭歯の方は10代でも50%もの方が歯周病になるとされ、将来的に歯が抜けてしまう原因になります。

永久歯は一度抜ければ二度と生えてきませんので、お口の健康を守るためにも改善が重要です。

口臭の原因になる可能性

悪臭に困って鼻をつまんでいる若い女性

乱杭歯はきれいな歯並びに比べて磨き残しが多く、お口のなかに残った食べかすや歯垢が口臭の原因になります。

また口呼吸も口臭の原因の一つであり、乱杭歯が原因で口呼吸になる場合があります。

口呼吸から来る口臭は、口呼吸によってお口のなかが乾燥し臭いのもととなる細菌が増えることが原因です。

本来私たちの舌はお口の上側に収まっていますが、乱杭歯により口腔内が狭くなると舌の位置が下がりやすくなります。

舌の位置が下がることで舌が前歯の方向につき出しやすくなり出っ歯の原因になります。

その出っ歯による歯の隙間が口呼吸の原因です。

また出っ歯でなくても歯の隙間が多いと口呼吸になりやすい傾向があり、口呼吸を行わないためにも乱杭歯の改善が重要です。

コンプレックスに感じる可能性

乱杭歯を放置すると見た目のコンプレックスにつながる可能性があります。

例えば歯並びが悪いと口元を大きく開けることが恥ずかしいと感じる方もいます。

また歯並びの悪い方は偏咀嚼になりやすく、お顔の左右のバランスが崩れやすい傾向です。

これらの理由から積極的に発言しにくくなったり、人前にあまり出なくなったりする方もいるでしょう。

乱杭歯の改善は見た目のコンプレックスの解消がすべてではありませんが、乱杭歯を改善することでコンプレックスが解消され、自信の回復につながるでしょう。

歯列矯正による乱杭歯(叢生)の治療方法

メリット デメリット

歯列矯正による乱杭歯の治療方法にはいくつかの種類があり、それぞれにメリット・デメリットが存在します。

歯列矯正の方法によって通院の頻度・歯磨きのしやすさ・見た目にも影響するため、それぞれに合った方法を取ることが重要です。

ここからはどのような歯列矯正の方法があるのかを解説します。

ワイヤー矯正

矯正器具を付けた女性の口元

歯列矯正の治療方法のなかでもスタンダードな矯正装置です。

ブラケットと呼ばれる小さな装置を歯に取り付け、中心にある溝にワイヤーを通すことで歯を動かします。

歯を細かく動かすことができ幅広い症例に対応します。

また、軽度の乱杭歯であれば奥歯を動かさずに前歯の一部分だけを歯列矯正する部分矯正でも治療が可能です。

ワイヤー矯正のメリットはどのような症例でも対応できることです。

普段の生活の邪魔にならないので、今までと同じように生活を送ることができます。

ただし粘着性のある食べ物は注意が必要です。

一方であきらかに歯列矯正していることがわかるデメリットもあります。

また一度装着したら取り外せないため歯磨きに手間がかかり、むし歯ケアが必要です。

このほかにも金具がお口のなかを傷つけ口内炎になる可能性もあります。

最近ではセラミック製のブラケットもあるので、金属アレルギーの方も装着でき、見栄えも改善しています。

部分・全体に関わらず3~4週間に一度の通院が必要です。

裏側矯正(舌側矯正)

矯正器具のイメージ

裏側矯正(舌側矯正)とは歯の裏側にブラケット装置を装着する治療法です。

外側から歯列矯正をしているとわからないため見栄えがよく、歯の裏側を舌で触ることができないため出っ歯の原因となる舌癖の解消にもつながります。

またホワイトニングの同時進行も可能です。

一方で常に舌側に装置があるため異物感や痛みがあり発音や咀嚼にも影響します。

またオーダーメイドのものが多く費用は高額になりがちです。

裏側矯正(舌側矯正)も一度装着したら取り外せず、歯磨きにとても手間がかかります。

ワイヤー矯正と同様に、軽度の乱杭歯であれば前歯の裏面の一部分にブラケットを装着する部分矯正での治療が可能です。

部分・全体に関わらず3~4週間に一度の通院が必要です。

マウスピース型矯正

歯科用マウスピースを装着する女性

取り外しが可能なマウスピース型の矯正装置を使用し歯並びを改善します。透明なマウスピースを使用するので、歯列矯正中とわからないのが特徴です。

光学スキャナーで型取りをし、できあがったものを7~14日に一度交換しながら使用します。

マウスピースは最初に歯列矯正が終わるまでのすべての分を受け取るので、通院は経過観察のための1~2ヶ月に一度で問題ありません。

また、自分で取り外し可能なので、食事も普段どおり楽しめます。歯磨きの際にも外して磨けるため、むし歯になりにくいです。

一方で1日20時間以上の装着が必要なため、徹底した自己管理が必要です。

またワイヤー矯正よりも完治までに時間がかかることが多く、歯並びや骨格によっては使用できないケースもあります。

マウスピース型矯正も部分矯正が可能ですが、前歯から第2小臼歯までの範囲しか対応しておらず軽度な治療のみ可能です。

なおマウスピース型矯正に使用するインビザラインは未承認医薬品であり、医薬品副作用被害救済制度の対象外のため注意しましょう。

乱杭歯(叢生)の治療期間

治療を受ける患者

乱杭歯の治療期間は治療方法と内容によって変わります。

また治療した後に移動させた歯が元の位置に戻らないよう保定治療を行います。

いずれの治療方法も保定期間も含めるとかなり長期の治療期間が必要です。

ここではそれぞれの治療期間を、歯列矯正の種類・全体矯正・部分矯正に分けて解説します。

ワイヤー矯正の場合

ワイヤー矯正の場合の治療期間は全体矯正で2~2年半ほどになりますが、乱杭歯の状態・患者さんの普段のメンテナンス・治療への協力度によっても変わります。

またワイヤーの調節を3~4週間に一度行うため通院が必要です。

治療終了後は保定治療を行いますが、この際にも数ヶ月に一度の通院が必要となります。

保定の期間は2~3年が目安です。

部分矯正を行う場合の治療期間は6ヶ月~1年ほどになります。

これもワイヤーの調節が必要なため3~4週間に一度の通院が必要です。

部分矯正であっても歯の戻りに変わりはないため2~3年の保定期間が必要になります。

裏側矯正(舌側矯正)の場合

裏側矯正(舌側矯正)の場合の治療期間もワイヤー矯正より少しだけ長く2年半~3年ほどになります。

乱杭歯の状態によって裏側矯正(舌側矯正)の治療までの期間が変わるのは同じです。

患者さんの普段からの心がけ次第で治療期間は早くなります。

またワイヤーの調節を3~4週間に一度行うため通院が必要です。

保定も同様で、数ヶ月に一度の通院と2~3年の保定期間が必要になります。

部分矯正を行う場合の治療期間もワイヤー矯正と同様の期間になり6ヶ月~1年ほどです。

こちらも3~4週間に一度の通院と2~3年の保定期間が必要になります。

マウスピース型矯正の場合

マウスピース型矯正の治療期間は全体矯正の場合で2~2年半となります。

ただしマウスピース装着の自己管理を怠り歯型が変わってしまったり途中でむし歯や歯周病になり治療が必要な場合、期間が延長される可能性があります。

マウスピース型矯正は交換式のマウスピースを最初の段階ですべて制作するため、歯科医師の組んだスケジュールどおり進まなくなった場合に作り直しが必要です。

治療の際は歯科医師の計画やアドバイスに従いましょう。

部分矯正の場合の治療期間は期間は6ヶ月から1年ほどになります。

この場合もスケジュール変更があった場合に期間が延びる可能性があり注意が必要です。

いずれも保定期間は2年ほど必要です。

乱杭歯(叢生)の治療の費用相場

費用の文字と豚の貯金箱

乱杭歯の治療にかかる費用は大まかに4つにわけることができます。

初診料・検査料・治療費・処置料です。治療費を除く3つはどの矯正方法でもほぼ変わらない固定費用になります。

歯科医院によって違いはありますが初診料は2,200~4,400円(税込)ほどです。

診断費は検査の内容により33,000~66,000円(税込)が目安になります。

処置料は通院ごとに3,300~5,500円(税込)が目安です。

歯列矯正の内容によって大きく変化するのは治療費です。これは矯正装置の違いや技術料にくわえ抜歯の本数などが影響します。

どの歯列矯正でも抜歯が必要な場合は1本につき2,200~22,000円(税込)、歯列を広げる場合は40,000~70,000円(税込)が目安です。

ここからはそれぞれの治療法による費用相場を解説します。

ワイヤー矯正の場合

ワイヤー矯正に必要な矯正装置代は全体矯正で880,000~1,100,000円(税込)になります。

部分矯正の場合は矯正装置代を440,000~550,000円(税込)まで抑えることが可能です。

裏側矯正(舌側矯正)の場合

裏側矯正(舌側矯正)に必要な矯正装置代は全体矯正で1,364,000~1,650,000円(税込)になります。

ワイヤー矯正とは異なる特別な知識と技術が必要なため、ワイヤー矯正と比べると高額になります。

部分矯正の場合は矯正装置代を550,000~990,000円(税込)まで抑えることが可能です。

マウスピース型矯正の場合

マウスピース型矯正に必要な矯正装置代は全体矯正で660,000~1,320,000円(税込)になります。

ワイヤー矯正と比べてそこまで費用の差がないマウスピース型矯正ですが、前述したように徹底した自己管理が必要です。

マウスピースの作り直しが必要になった場合には、高額な追加費用が出る可能性に注意しましょう。

目安ですがマウスピースを一つ交換するのに11,500円(税込)ほどの費用が必要です。

部分矯正の場合は矯正装置代が前歯上下合わせて12本にのみ可能なもので210,000~380,000円(税込)、前歯~小臼歯まで使用可能なもので440,000~550,000円(税込)となります。

まとめ

歯科衛生士と患者

永久歯は一度抜けると二度と生えてこない大切な歯です。

治療費は高額ですが、早めに乱杭歯を治療しておくことは後の健康にもつながります

乱杭歯を放っておいた結果、別の治療費が大きくかかってしまったとなっては意味がありません。

また乱杭歯がコンプレックスになっている方は自信の回復につながります。

乱杭歯に少しでもご不安を感じるようでしたらまずは歯科医院に相談してみましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
木下 裕貴歯科医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

木下 裕貴歯科医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

北海道大学歯学部卒業 / 医療法人社団天祐会 副理事長 / 専門はマウスピース矯正、小児矯正

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