顎が小さい場合、歯が生えるためのスペースが足りず、歯が重なったり、前後にずれてしまうことがあります。結果、歯並びが悪くなる可能性があります。
本記事では歯並びは顎が小さいと悪くなるのかについて以下の点を中心にご紹介します。
- 顎が小さいとはどのような状態なのか
- 顎が小さいことによる影響
- 顎が小さい場合の対処法
歯並びは顎が小さいと悪くなるのかについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
顎の大きさについて
- 顎が小さいとはどのような状態ですか?
- 顎が小さいというのは、下顎が発達しておらず、後ろに引っ込んでいる状態を指します。欧米人の横顔と比べて顎が引っ込んだように見えるため、フェイスラインが平坦になり、全体的に下顎が控えめな印象になります。
また、顎が小さいと見た目だけでなく、噛み合わせや呼吸機能にも影響を及ぼす可能性があります。実際、日本人の睡眠時無呼吸症候群(SAS)患者さんの30%程が、小さな顎による気道の狭さが原因で無呼吸を引き起こしているといわれています。
顎が小さいと、気道のスペースが狭くなり、特に体重が増えることで、無呼吸のリスクが高まるのです。
- 顎が小さいのはどのような原因が考えられますか?
- 顎が小さいと考えられる原因は以下のとおりです。
1.遺伝による先天的な要因
顎の大きさや形は、家族から遺伝することが多く見られます。親や祖父母のなかに顎が小さい人がいる場合、子どもにも似たような特徴が現れることがあります。歯並びの良し悪しも遺伝的な要素に大きく左右され、目、鼻、耳の形状と同様に骨格の特徴も受け継がれるのです。
ただし、同じ家族内でも遺伝の組み合わせによって顎の形状は異なることがあり、兄弟姉妹でも顎の大きさに違いが見られるケースがあります。親や祖父母に顎の成長や歯並びに問題がある場合、早期に歯科検診を受けて、必要に応じて適切な対策をとることが大切です。2.成長過程における後天的な要因
幼少期の食生活や口腔習慣も、顎の発達に大きな影響を与えます。やわらかい食べ物が中心になると、噛む回数が減り、顎の筋肉が十分に刺激されないため、顎の成長が不十分になってしまいます。3.栄養状態と咀嚼の影響
栄養状態も顎の成長に大きく関係しています。成長期に栄養バランスが偏っていると、顎が十分に発達しないことがあります。特に、カルシウムやタンパク質など、骨の成長に必要な栄養素をしっかり摂取することが大切です。また、十分に咀嚼する習慣を持つことで、顎の筋肉が刺激され、顎の発達を手助けします。硬いものを噛むことで、顎の骨や筋肉がしっかりと鍛えられ、顎の形が整うことにつながります。
- 顎の大きさはいつ決まりますか?
- 顎の大きさはいつ決まるのかについて以下で詳しく解説します。
1.顎の成長は5歳までに半分程が完了
顔の骨の成長は、5歳頃までに40~45%が完了し、10歳頃には80%に達します。その後、20歳頃までにほぼ成長が止まるとされています。しかし、上顎と下顎の成長には違いがあり、それぞれ成長のピークが異なるのが特徴です。- 上顎の成長ピーク:小学校低学年から中学年にかけて
- 下顎の成長ピーク:小学校高学年から思春期終盤
このように、上顎は早い段階で成長するのに対し、下顎の成長は思春期にピークを迎えます。特に下顎の成長は、思春期の成長ホルモンの影響を強く受けるため、小学校高学年から中学生の間に大きく変化することが多いようです。
2.乳幼児期から幼児期の顎の成長
顎の成長が活発なのは、乳幼児期から幼児期にかけてです。この時期に乳歯が生え揃い、顎の骨も急速に発達します。適切な栄養を摂取し、口腔環境を整えることで、顎の健康的な成長をサポートすることができます。特に、乳歯が生え始める時期は、永久歯が生えるためのスペースを確保する重要な段階です。乳歯と永久歯の移行期に適切なスペースができると、歯並びが整いやすくなると言われています。
3.思春期の顎の成長
思春期は、顎の成長が急激に進む時期です。特に下顎の成長は、思春期のホルモン分泌によって大きな影響を受けます。この時期には、身長の伸びとともに顎の骨も成長するため、歯並びの歯列矯正にはおすすめなタイミングとされています。急激な成長に合わせて歯列矯正治療を行うと、顎の形状を効果的に改善することが可能とされています。
成長期のピークを逃さないことが、将来的な噛み合わせや見た目の改善に重要なポイントとなります。
顎が小さいことによる影響
- 顎が小さいことは歯並びに影響しますか?
- 顎が小さいと、歯並びが乱れやすくなります。永久歯がすべて正しい位置に並ぶためには、親知らずを除いて28本の歯が収まるスペースが必要です。しかし、顎が小さい場合、スペース不足により歯が重なったり前に傾斜したりして、歯並びに影響が出てしまいます。
- 顎が小さいことで生じる可能性があるリスクを教えてください
- 顎が小さいことは、口腔内の健康や全身の機能にさまざまなリスクをもたらす可能性があります。以下では、具体的なリスクについて詳しく解説します。
1.食べ物の咀嚼への影響
顎が小さいことで歯並びが悪くなると、食べ物をしっかりと噛むことが難しくなります。噛む力が不十分だと、消化不良を引き起こす可能性があり、胃腸の負担が増えることがあります。咀嚼がしにくいことで、食事を楽しめないといった生活の質の低下も考えられます。2.言語発音の問題
顎の小ささは舌の動きにも影響を及ぼします。顎が小さいと舌が十分に動くスペースが確保されず、サ行やタ行、ラ行などの発音が不明瞭になり、滑舌が悪くなることがあります。このような発音の問題は、人とのコミュニケーションに自信を失わせる要因にもなりかねません。3.口呼吸の傾向
顎が小さいと、鼻呼吸が困難になり、口呼吸に頼るケースが増えます。口呼吸が続くと、口腔内が乾燥し、むし歯や歯周病のリスクが高まるだけでなく、口臭の原因にもなります。また、口呼吸によって喉や扁桃腺に炎症が生じやすくなり、風邪をひきやすいなど健康面にも悪影響を及ぼします。
4.いびきや睡眠時無呼吸症候群
下顎が小さいと、寝ているときに舌が喉の奥に落ち込み、気道が狭くなることで、いびきや睡眠時無呼吸症候群を引き起こす可能性があります。よって、十分な酸素が体内に取り込まれず、睡眠の質が低下するため、日中の疲労感が抜けなかったり、集中力の低下につながったりする可能性があります。
5.鼻腔の狭さによる健康リスク
上顎が狭いと鼻腔も狭くなるため、鼻づまりや慢性的な鼻炎を引き起こすことがあります。この影響で口呼吸が常態化し、口腔内の健康を損なうリスクが高まります。また、空気中の細菌が直接喉に届くことで、扁桃腺の炎症など、免疫力にも影響を与えることがあります。
顎が小さい場合の対処法
- 歯列矯正で顎が小さいことを改善できますか?
- 顎が小さいことは、歯列矯正によって改善できる可能性があります。成長期の子どもに対する歯列矯正では、顎の成長を手助けする矯正装置を使い、顎を広げて歯がきれいに並ぶスペースを確保することが可能とされています。
- 拡大床について教えてください
- 拡大床は、歯が正しく並ぶためのスペースが不足している場合に使用される矯正装置です。上顎や下顎の歯を外側に広げることで、抜歯を回避しながら歯列を整えるためのスペースを確保します。主に子どもの歯列矯正に用いられますが、大人の歯列矯正でも症例に応じて併用されることがあります。
- 拡大床の特徴と効果
拡大床は、取り外し可能な装置であり、患者自身で調整が可能とされています。そのため、食事や歯磨きの際に外せる利便性があります。ただし、1日12〜16時間の装着が必要で、装着時間が短いと治療が計画どおりに進まなくなるリスクがあります。この装置は、顎の骨格自体を広げるわけではありませんが、歯の傾きや向きを調整することでスペースを作り、歯並びを改善する効果が期待できます。特に、歯が内側に倒れている場合に有効とされています。
- メリットと注意点
拡大床の大きなメリットは、抜歯をせずに歯列矯正が可能になる点です。しかし、装着時間を守らない場合や調整が不十分だと、治療効果が減少する恐れがあります。そのため、定期的な歯科医師のチェックを受け、自己管理を徹底することが重要です。拡大床を使用することで、歯列の改善が期待できるため、歯並びに悩む方にとって有効な矯正方法の一つといえます。
拡大床を使用することで、歯列の改善が期待できるため、歯並びに悩む方にとって有効な矯正方法の一つといえます。
- 拡大床の特徴と効果
- 顎の成長のために普段の生活の中でできることはありますか?
- 顎の成長のためには、食べ物をよく噛むことが大切です。噛む動作によって顎の骨が刺激され、成長の手助けをします。また、食事中の姿勢も顎の成長に影響を与えます。しっかり噛む力を発揮するためには、安定した姿勢で食事を取ることが大切です。
編集部まとめ
ここまで歯並びは顎が小さいと悪くなるのかについてお伝えしてきました。歯並びは顎が小さいと悪くなるのかの要点をまとめると以下のとおりです。
- 顎が小さいというのは、下顎(したあご)が発達しておらず、後ろに引っ込んでいる状態を指す
- 顎の成長は5歳までに半分程が完了し、10歳頃には80%程に達すると言われている
- 顎が小さいことで、食べ物の咀嚼への影響が出たり、言語発音の問題が起きたりする可能性がある
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。