マウスピース矯正

小児矯正で使用するマイオブレースとは?メリット・デメリット、注意点を解説

小児矯正で使用するマイオブレースとは?メリット・デメリット、注意点を解説

近年、小児矯正の一つとして注目されているマイオブレースは、ワイヤーを使わずに歯並びを改善できるマウスピース型矯正装置です。歯並びが悪くなる原因とされる口呼吸や舌癖といった悪習癖に着目し、成長期に適したトレーニングと装置の併用により、顎の正常な発育を促します。本記事では、マイオブレースの基本的な仕組みや従来の歯列矯正との違い、メリット・デメリット、使用時の注意点についてわかりやすく解説します。これから小児矯正を検討されているご家庭にとって、選択肢の一つとして参考になる内容です。

マイオブレースの概要

はじめに、マイオブレースの概要を説明します。

マイオブレースとは何ですか?
マイオブレースとは、主に成長期の子どもに使用される取り外し式のマウスピース型矯正装置で、お口まわりの筋機能や呼吸習慣の改善を通じて、歯列不正の予防や顎の正常な発育をサポートすることを目的としています。一般的な歯の移動を目的とした歯列矯正とは異なり、歯並びが悪くなる原因そのものにアプローチする機能的矯正法といえます。マイオブレースは、日中1~2時間の装着と就寝時の使用で治療が進められるのが特徴で、見た目や日常生活への影響を少なく抑えられる点もメリットです。さらに、舌の使い方や正しい呼吸法を学ぶトレーニングも並行して行い、身体全体の発育バランスを整える狙いもあります。
マイオブレースはどのような目的で使用される矯正装置ですか?
マイオブレースは、歯列不正の根本的な原因とされる悪習癖の改善を目的として用いられる矯正装置です。例えば、口呼吸・低位舌・逆嚥下・頬杖などの習慣は、顎の成長を妨げ、歯が正しく並ぶスペースを確保できなくなる原因になります。マイオブレースは、こうした悪習癖を改善するための機能的トレーニングとマウスピースの装着を組み合わせ、歯列や顎の適切な発育を促します。目的は単に歯並びを整えることではなく、将来的なむし歯や噛み合わせの不良、睡眠時無呼吸群などのリスク軽減にもつながるとされています。このように、全身の健康に配慮した包括的なアプローチが特徴です。
従来の小児矯正とマイオブレース矯正にはどのような違いがあるのか教えてください
従来の小児矯正では、拡大床やワイヤー矯正といった固定式の装置を用いて顎の幅を広げたり、歯を物理的に移動させたりすることが一般的です。一方、マイオブレースは、取り外し式の装置と日常生活のなかで行うトレーニングを組み合わせ、顎や歯並びの成長を自然な形で促す機能的アプローチをとります。歯そのものを動かすことを主目的とせず、呼吸や舌の位置、飲み込み方など、お口の周囲の機能を整えることにより、結果的に正しい歯列へと導く点が大きな違いです。また、使用時間が短くて済むことや、装置を自分で外せることも子どもにとっての負担軽減につながります。
マイオブレースによる矯正治療はどのくらいの期間がかかりますか?
マイオブレースの治療期間は、平均して1年半から3年程度とされていますが、これはお子さんの年齢や悪習癖の程度、顎の成長状態によって変動します。初期段階では装置による機能訓練が中心となり、呼吸・舌・姿勢といった問題点を改善していきます。その後、必要に応じて発育を促すための補助的な装置や追加トレーニングが行われることもあります。治療効果を安定して得るには、毎日の装着とトレーニングの継続が重要で、生活習慣の見直しも含めて取り組む必要があります。症状や成長の度合いによっては、永久歯列期に再評価を行い、必要であればワイヤー矯正を併用する場合もあります。

マイオブレースのメリット・デメリット

マイオブレースのメリット・デメリット

マイオブレースを使った小児矯正のメリットとデメリットを解説します。

マイオブレースを使用するメリットを教えてください
マイオブレースの主なメリットは、歯並びの乱れを引き起こす根本的な要因にアプローチできる点です。悪習癖を改善することで、歯並びだけでなく、正しい呼吸や飲み込み方が身につき、健康的な成長発育を促す効果が期待できます。顎の成長を自然な方向へ誘導できるため、将来的に抜歯や本格矯正の必要性を軽減できる可能性もあります。また、装置は取り外しが可能で、基本的に日中1〜2時間と就寝時のみの使用で済むため、学校生活などへの支障が少ないのも利点です。ワイヤー装置と違って固定されていないため、むし歯や歯茎のトラブルが生じにくいという衛生面でのメリットもあります。
マイオブレースの使用には、どのようなデメリットがありますか?
マイオブレースは、お子さん本人が装置を装着し、トレーニングを継続する必要があるため、モチベーションの維持やご家庭でのサポートが欠かせません。装着時間が足りない、トレーニングが不十分といった場合には、治療の効果が得られにくくなることがあります。また、装置に慣れるまでは違和感や話しにくさを感じたり、寝苦しさを訴えたりすることもあります。すでに歯並びが大きく乱れていたり、永久歯がほとんど生えそろっていたりする場合には、マイオブレースだけでは対応が難しく、別の矯正治療が必要になることがあります。使用の可否は歯科医師による慎重な診断が必要です。
どのような方にマイオブレースが適しているのか教えてください
マイオブレースは、乳歯列期から混合歯列期にかけての4〜10歳前後の子どもに適した治療法です。特に、口呼吸・舌癖・逆嚥下などの悪習癖が認められる場合や、顎が小さく永久歯の生えるスペースが不足しそうな場合には効果が期待されます。また、歯並びの問題が軽度で、骨格の成長段階であれば、マイオブレースによって自然な歯列誘導が可能になることもあります。一方で、永久歯列が完成している年齢や、重度の歯列不正があるケースでは効果が限定的となるため、そうした場合は従来型の矯正装置との併用を含めて検討が必要です。まずは歯科医院での診断が第一歩となります。

マイオブレースを使用する際の注意点

マイオブレースを使用する際の注意点

最後に、小児矯正でマイオブレースを使用する場合の注意点を解説します。

マイオブレースは1日に何時間くらい装着する必要がありますか?
マイオブレースは、日中に1〜2時間程度と就寝中の装着が推奨されています。これは、顎の発育やお口まわりの筋肉に働きかけるための最低限の時間とされており、継続的な使用が治療効果に直結します。短時間で済むからといって装着を怠ったり、気が向いたときだけ使ったりするような不規則な使用では、十分な変化が得られにくくなります。また、装置をしっかりと装着したうえで、正しい舌の位置や鼻呼吸を意識するトレーニングを併用することが重要です。装着時間を守ることに加え、毎日の習慣として定着させることで、よりよい治療結果へとつながります。
マイオブレース装着中に気をつけるべき生活習慣はありますか?
マイオブレースの治療では、装置の使用だけでなく、日常生活における習慣の見直しが重要です。特に注意すべきは口呼吸、舌癖、姿勢の悪さなどで、これらは顎の発育や歯並びに大きく関わります。例えば、日中に口が開いていることが多い場合、口呼吸が習慣化している可能性があり、歯列不正の原因となり得ます。また、舌が常に下にある低位舌の状態も、上顎の発育を妨げます。装置を使っていても、これらの悪習癖が残っていると効果が十分に発揮されないことがあるため、日常のなかで正しい舌の位置や鼻呼吸を意識することが大切です。加えて、猫背などの姿勢不良も呼吸や舌の動きに影響するため、正しい姿勢を保つ習慣も身につけていくことが望まれます。
より効果を出すために親が家庭内でサポートできることがあれば教えてください
まず、毎日の装着時間を守るための声かけや習慣化の工夫が必要です。例えば、就寝前やテレビを観る時間に装着するなど、決まったタイミングを設けることで、子どもが自然に装置をつけられるようになります。また、トレーニングの継続も大切な要素であるため、家庭での呼吸や舌の位置のチェック、トレーニング動画を一緒に見るなどの関わりが有効です。さらに、子ども自身が矯正治療の意味を理解し、自主的に取り組めるよう、成長に応じた声かけや励ましを行うことも大切です。親子で一緒に取り組む姿勢が、マイオブレースの成果に大きく影響します。

編集部まとめ

マイオブレースは、成長期のお子さんに対して歯並びの乱れを予防し、顎の健やかな発育をサポートする矯正装置です。ワイヤーで歯を動かすのではなく、悪習癖を改善することで歯列不正の根本原因に働きかけるという特徴があります。適切な装着時間やトレーニングの継続、そしてご家庭でのサポートが治療効果に直結するため、ご家族の協力が欠かせません。お口の機能と成長のバランスを整えるという意味でも、早期の取り組みが重要です。マイオブレースを検討する際は、まず歯科医院での診断を受け、お子さんに合った治療法を見極めましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
小田 義仁歯科医師(小田歯科・矯正歯科 院長)

小田 義仁歯科医師(小田歯科・矯正歯科 院長)

岡山大学歯学部 卒業 / 広島大学歯学部歯科矯正学教室 / 歯科医院勤務をへて平成10年3月小田歯科・矯正歯科を開院 / 所属協会・資格:日本矯正歯科学会 認定医 / 日本顎関節学会 / 日本口蓋裂学会 / 安佐歯科医師会 学校保健部所属 / 広島大学歯学部歯科矯正学教室同門会 会員 / 岡山大学歯学部同窓会広島支部 副支部長 / 岡山大学全学同窓会(Alumni)広島支部幹事 / アカシア歯科医会学術理事

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