噛み合わせが悪いことで起こるデメリットは、審美性が劣るだけではありません。顎関節症やお顔の歪み、頭痛・肩こりなどの原因になるとも考えられています。
噛み合わせが悪い場合は、咬合調整による歯列矯正が有効です。本記事では咬合調整の具体的な方法や注意点を解説します。
咬合調整の費用や注意点、治療で得られるメリットも解説します。最後までお読みいただき、咬合調整への理解を深めてください。
噛み合わせと咬合調整について
- 噛み合わせが悪くなる原因を教えてください。
- 噛み合わせが悪くなる要因は、先天的要因と後天的要因に大きく分けられます。先天的要因とは、歯の作りや骨格など、両親から遺伝として受け継ぐものです。
歯並びや顎の骨のバランスが悪い方がいれば、遺伝で噛み合わせが悪くなるかもしれません。ただし、必ず遺伝するわけではなく、後天的な要因に注意すれば噛み合わせが悪くなるのを避けられる可能性があります。
後天的な要因とは、生活習慣や普段の癖によるものです。下記のような生活習慣は噛み合わせが悪くなる要因ですので、普段から注意しましょう。- 頬杖
- 歯ぎしり・食いしばり
- 口呼吸
- 唇や爪を噛む癖
- うつ伏せ寝
- 猫背
- 指しゃぶり
- 歯周病
上記は一例ですが、歯や顎に強い負荷がかかる行為は、できるだけ避けるようにしましょう。また、欠損した歯をそのままにしておくことで、歯並びが悪くなることもあります。
すき間があることで、前後の歯が傾いたり動いたりしてしまうからです。歯が抜けてしまった場合は、速やかに歯科医師の治療を受けるようにしましょう。
- 咬合調整とは何ですか?
- 咬合調整(こうごうちょうせい)とは、噛み合わせのバランスを整えることです。噛み合わせの際に特定の歯に力が集中するのを避け、歯列全体に咬合力を分散させます。
噛み合わせの改善につながるだけでなく、咬合性外傷の解消で歯周組織の保護にもつながります。咬合性外傷とは、噛み合わせが悪いことで歯周組織に悪影響を招く状態です。
- 噛み合わせを調整するとどのようなメリットや効果がありますか?
- 噛み合わせを調整すると、下記のようなメリットがあります。
- むし歯や歯周病の予防
- 頭痛・肩こり・腰痛の軽減
- 消化促進
- 美しい歯並びの実現
- 顎関節症の改善
- 歯の寿命が伸びる
噛み合わせが悪いと、歯ブラシが細部に届きません。汚れがしっかり取れないので、むし歯や歯周病の原因になるでしょう。
また、一部の筋肉に負荷がかかることで、頭痛や肩こり・腰痛・顎関節症の原因になります。噛み合わせを調整すれば、むし歯や歯周病・頭痛・肩こり・腰痛・顎関節症などが軽減できるでしょう。うまく噛めるようになるため、食べ物をしっかり咀嚼できるのもメリットです。
細かく噛んでから胃腸に運ばれるので、消化にもよくなります。歯並びがきれいになるので、自分の笑顔に自信を持てるようになるのもメリットのひとつです。さらに、一か所の歯に負担がかからないので、歯の寿命も伸ばせるでしょう。
噛み合わせと頭痛や顎関節症の関連性は、まだ正確なことがわかってはいません。噛み合わせを改善すれば、必ず頭痛や顎関節症が治るわけではないことには注意が必要です。
- 噛み合わせの調整が必要なケースを教えてください。
- 噛み合わせが悪いと、さまざまな異常が生じるので、早めの治療が必要です。とはいえ、自分の噛み合わせが正常なのか、それとも咬合矯正が必要なのか迷っている方もおられるでしょう。噛み合わせが悪いかどうかは、セルフチェックで確認できます。セルフチェックでは下記の項目を確認してみましょう。
- 左右のずれ
- 水平方向の傾き
- 奥歯の噛み合わせ
- 顎の関節の動き具合
- 指が縦に3本入るかどうか
鏡の前で、お口を開けてみて、左右のずれや水平方向の傾きをチェックします。割り箸を使ったセルフチェック方法も有効です。割り箸をお口にくわえ、奥歯で噛んでみましょう。
割り箸が曲がっている場合は、歯の高さが左右でずれている可能性があります。また、カチカチを噛み合わせてみて、左右の音の違いで奥歯の噛み合わせを確認しましょう。
お口を閉じて噛み合わせても、上の歯と下の歯の間にすき間ができている状態も要注意です。顎の関節の動き具合は、お口をゆっくりと開けると確認できます。こめかみ部分に手を当て、左右のずれがないかをチェックしましょう。
噛み合わせを調整する方法
- 噛み合わせの調整方法を教えてください。
- 歯の表面を少しずつ削ったり歯列矯正をしたりしながら、噛み合わせを調整します。咬合調整には、いくつかの種類があり、噛み合わせが悪くなる原因や症状にあわせて治療方法を変えるのが一般的です。
例えば、歯並びが悪い場合には歯列矯正で、歯並びを整えて噛み合わせを正常に戻します。ブラケットやワイヤー、マウスピース型の矯正機器を使うのが一般的です。また歯の高さが違う場合には、歯の表面を削って整えることで、噛み合わせの調整が可能です。
歯が失われたことで噛み合わせが悪くなっている場合には、インプラントやブリッジを使った補綴治療(ほてつちりょう)が行われる場合もあります。
- 咬合調整はどのような流れで行いますか?
- まず、触診や視診・咬合紙を使った方法で、噛み合わせを確認します。型取りのできる咬合検査用のシリコンを使用する場合もあります。
歯科医師の説明を聞き、治療方針を決めていきましょう。治療方法が決まったら、切削や歯列矯正で噛み合わせを調整します。
最後に噛み合わせの確認をすれば、咬合調整の完了です。一回の調整で治らないケースも多いので、定期的に通院しながら調整していきます。
- 被せ物や義歯が入っていても治療できますか?
- 被せ物や義歯が入っていても、咬合調整は可能です。むしろ、被せ物や義歯も使用しているうちにすり減ることや歯茎がやせるなどで咬合に変化が生じることがあるため、違和感がある場合は早めに調整することをおすすめします。
被せ物や義歯の場合は、被せ物自体を削ったり、すり減った部分に盛り足したりしながら調整します。
噛み合わせ調整を行わずに使い続けると、残っている歯や歯茎に負担がかかるので、定期的にメンテナンスを行いましょう。
噛み合わせ調整(咬合調整)の費用や注意点
- 噛み合わせ調整の費用や期間を教えてください。
- 噛み合わせ調整は、治療法によって費用や期間が異なります。例えば、歯列矯正の場合は1年半〜3年ほどが目安です。治療の種類にもよりますが、500,000〜1,200,000円(税込)ほどかかります。
矯正治療が終わってからも、歯が元の位置に戻ろうとするのを防ぐために、矯正期間と同じくらいの間保定装置を装着しなければいけないと考えられています。少しずつ歯を削って噛み合わせを調整する場合は、保険適用で1回あたり1,000円程度です。
インプラントを使用した補綴治療は外科手術が必要で、3ヶ月〜1年程度かかります。基本的には保険適用外となるため、1本あたり300,000〜500,000円(税込)程度かかるのが一般的です。使用する素材や歯科医院によっても費用が変わるため、事前に詳しい金額を確認しておきましょう。
- 咬合調整を受ける際に注意すべきことはありますか?
- 咬合調整を受ける際には、下記2点に注意が必要です。
- 正しい歯科医院を選ぶ
- 治療後のメンテナンスを怠らない
咬合調整では歯を削ることもあるので、経験豊富で信頼できる歯科医院を選ぶようにしましょう。歯を削りすぎると、神経が傷ついたり、歯と歯の間にすき間ができてむし歯になりやすくなったりします。
患者さんが納得いくまで説明してくれる歯科医師なら、不安要素を減らして治療を受けられるでしょう。
咬合調整は最終的な手段であり、どのような状態の歯でも削ればよいというわけではありません。気軽な咬合調整は避けられるべきです。
また、治療後のメンテナンスも重要です。定期的な歯科検診や日々の丁寧な口腔ケアがトラブル予防に役立ちます。異変に気付いた場合は、すぐに歯科医師に相談しましょう。
編集部まとめ
本記事では、噛み合わせの調整(咬合調整)の詳細を解説しました。
噛み合わせが悪いと、見た目が悪いばかりでなく、肩こりや頭痛・腰痛の原因になります。さらに、むし歯や歯周病・顎関節症につながるケースもあるため、早めに治療しましょう。
咬合調整は必要な場合に限り歯を削ったり、歯列矯正をしたりしながら噛み合わせを整えていきます。症状や原因によって調整方法は異なるので、信頼できる歯科医師に相談しながら治療を進めるのが重要です。
噛み合わせを調整して、歯並びだけでなく身体全体の不調を整えましょう。
参考文献